中山恒夫『標準ラテン文法』(白水社、1987 年) 第 15 課と第 16 課の解答例。同じ著者による解答つきの『ラテン語練習問題集』(白水社、1995 年、新装版 2009 年) と同じ文を発見できたかぎりで指示を与えている。
そういえば第 9 課を最後に語形変化の練習問題をぱったり見なくなったが、この第 15 課こそ接続法の活用を練習させてもよかったのではなかろうか。先のほうを見てみると今後も最後までこの種の練習はもう現れないようだ。このへんまで来ればあとはやる人が勝手にやれというわけか。
目次リンク:第 1 課・第 2 課・第 3 課・第 4 課・第 5 課・第 6 課・第 7 課・第 8 課・第 9 課・第 10 課・第 11 課・第 12 課・第 13 課・第 14 課・第 15 課・第 16 課・第 17 課・第 18 課・第 19 課。
そういえば第 9 課を最後に語形変化の練習問題をぱったり見なくなったが、この第 15 課こそ接続法の活用を練習させてもよかったのではなかろうか。先のほうを見てみると今後も最後までこの種の練習はもう現れないようだ。このへんまで来ればあとはやる人が勝手にやれというわけか。
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第 15 課
和訳
1. 誰かが言うかもしれない、このことを成しとげるために十分な金が私たちにはないと。しかしパトロンがあらゆる手段で私たちを支援してくれると私は思いたい。〔最初の dīcat と最後の putāverim が可能性の接続法 (後者は完了だがどちらも現在の意味)。ad hanc rem cōnficiendam は「成しとげられるべきこのことのために=このことを成しとげるために」の意、こういう目的のときに動詞の不定法は用いない (小林『独習者のための楽しく学ぶラテン語』§233)。後半の iuvātūrum は esse が省略されている未来不定法。〕
2. (受けた) 親切のために両親にお礼を伝えようではないか。〔『練習問題集』XXIV 2. 5) とやや類似。〕
3. 神々が私を友人たちから守りますように;敵たちからは私を私自身が守るだろう。〔明らかな敵からは自衛できるが、友人の裏切りは自力ではどうしようもないということ。前者は現在の実現可能な願望、または 3 人称命令「守りたまえ」、後者は可能性の接続法、または直説法未来でもよい。細かいことだが ipse は主格なので隠れた主語 ego の同格であって、mē の同格「私自身を」ではない。〕
4. すべての民族が自分たちの法律を持ち、平和を享受し、義務を果たすことができたらいいのに。〔possent は接続法未完了過去で、現在の非現実願望。〕
5. 君は自分の親切を自慢するな。〔練 XXVI 9. 2) と同文。〕
6. 私たちの祖先のことを思いだそうではないか。〔練 XXVIII 1. 4) と同文。māiōrēs が「祖先」という意味の複数名詞で meminī の属格目的語。いまさら māior をわざわざ引く人は少なかろうから落とし穴である。〕
7. みなが私を見捨てた。私はどうしたらいいだろう。どこへ向かえばいいだろう。〔ためらい (懐疑) の接続法。〕
8. クラウディアは本当のことを言ったと私はなんらの疑い [ためらい] なしに断言するだろう。〔練 XXIX 3. 3) とほぼ同文。穏やかな主張。〕
9. アテーナイの住民たちはテーセウスをすでに長いこと待っており願っている:「テーセウスがミーノータウロスを征服していますように。」〔実現可能な過去の願望。〕
10. 病人たちは担架で庭へ運ばれよ。〔練 XXIV 1. 4) と同文。3 人称命令。〕
11. 君が私のところに来ていたらなあ。〔実現不可能な過去の願望。〕
12. 町は略奪されたと人は考えたかもしれない。〔過去の可能性の接続法。dīreptam esse は不定法受動態完了で、相対時制なので考えた以前のできごと。〕
13. 君がいなければなにも楽しくないはずだ。〔現在の非現実。〕
14. 君がいなければ私は助からなかったはずだ。〔過去の非現実。servātus (nōn) essem は接続法受動態過去完了。〕
15. カエサルを私は殺すべきではなかったか。〔過去の懐疑。〕
16. 誰をも軽蔑しないことだ [しないでもらいたいものだ]。〔2 人称に対する禁止は現在の意味でも〈nē + 接続法完了〉だが、ここは現在であるから [1] b. 不特定の 2 人称への警告、または [7] a. 現在の実現可能な願望と見ることができる。ただし松平・国原『新ラテン文法』§614 によれば接続法現在による禁止も「詩の中または初期の作家」に限っては見られるという。〕
17. これらはなるほど間違ってはいる;(だが) 恥ずべきものでは決してない。〔譲歩の接続法。〕
18. 年長の牛によって耕しかたを年少の (牛) は学ぶべきだ (=に学ばしめよ)。〔3 人称命令、または願望。原典はアエソープス (=アイソーポス=イソップ) の寓話 50 番「父と息子」(‹ Dē patre et fīliō ›) 10 行。〕
19. 君が君にされたいと思わないことを、ほかの人たちにしてはならない。〔fēceris は接続法完了で禁止。〕
20. 嘘をつくことは醜い [不名誉だ] ということを誰があえて否定するか。〔可能性の接続法。mentīrī が形式受動の不定法で、turpe は turpis の中性単数対格 (対格不定法)。〕
21. 国を先導する者は、ほかのすべての者たちに徳の点で優っているべきだ。〔praestet は praestō の接続法現在で、3 人称命令または願望。〕
22. 逆境を辛抱強く耐えようではないか。〔練 XXIV 1. 3) と同文。勧奨の接続法。〕
1. (Utinam) dī nautās ex perīculō servent!
2. Lēgēs observentur et ā rēgibus et ā populīs.
3. Vērum dīcere nē timeāmus!
4. Nē aliīs maledīxerit!
5. Moneam [Moneāmus] an abeam [abeāmus]?
1. マールクスは友人に、なぜ自分を信じてくれないのか尋ねる。〔crēdō は与格目的語をとる。〕
2. 誰がローマを建設したか私に言ってくれ。
3. 友人たちはいつユーリウスが自分たちを訪ねてくるつもりか知らない。
4. 父は母に、息子はまもなく戻ってくるだろうかと尋ねた。
5. ヘルウェーティイー族はローマ人たちの防壁を突破できるかどうか試みた。〔『練習問題集』28 課 3 節 4) の例文と同文。〕
6. 私の計画はよいと君が思っているかどうか、私に書き送ってくれ。
7. 材料なしに家が建てられることはありえない、ということが疑われることはありえない。
8. 船乗りたちは船が嵐によって岩に投げ出されないようにと神々に懇願した。
9. カエサルは兵士たちに、荷物を一箇所に集めるようにと命じた。〔練 XXIV 2. 7) と同文。〕
10. なぜ君は友人が助けてくれないのではないかと恐れるのか。
11. 将軍は軍隊とともに川を渡った、敵たちを攻撃し彼らの不法に復讐するために。〔練 XXVI 6. 5) と同文。〕
12. 私はより多くを書くことを悲しみによって妨げられている。〔練 XXX 1. 1) と同文。〕
13. アリオウィストゥスはカエサルのところに来ることを拒んだ。〔練 XXX 1. 2) と同文。〕
14. ゲルマーニア人は武器をもって戦うことを拒まなかった。〔練 XXX 1. 5) と同文。〕
15. ソローンは債権者たちに、債務者たちを奴隷として売ることを禁じた。
16. 急げ、君が行きたいところのそこへいっそう早く到達できるように。
17. もう少しで敵たちが陣営を占領するところだった。〔練 XXX 1. 10) と同文。〕
18. 最低の身分に生まれた男たちが最高の顕職に到達するということがしばしば起こる。〔練 XXII 2. 1) と同文。〕
19. ハンニバルは何物も勇気 [武勇] によって克服されえないほどに困難ではないと思っていた。〔練 XXX 1. 9) と同文。〕
20. 要塞内には誰も傷つけられていない (=負傷していない) 兵士はいなかった。〔mīlitum は部分の属格「兵士たちのうち誰も」。〕
21. キケローは追放先の地にいたときに、ほとんど一日たりとも友人のアッティクスに手紙を書かずには過ごさなかった。〔esset は歴史的 cum (§72 B. [1]) のため接続法未完了。これまた未説明の事項を先取りする不注意。〕
22. 誰も自分たちの (仲間) を見分けることができないほど、それほどの大勢だった。
23. おのおのがおのおののことについて何を聞いたかを旅人たちから聞きだす、というのがガリア人たちの習慣だった。〔『ガリア戦記』IV 巻 5 章 2 節の要約。説明の ut。quid 以下は間接疑問なので接続法過去完了。〕
24. 被告はすべてのことに耐え、仲間たちの名を言わないほどだった (=仲間たちの名を言うよりはむしろすべてのことに耐えた)。
1. Nesciō, utrum Mārcus redīret necne.〔練 XXVIII 3. 10) と同文。〕
2. Pater fīlium interrogāvit, sī quid scrīpsit.〔sī のあとなので aliquid でなく短形 (§55 [3])。〕
3. Ōrō tē, ut librum mihi dōnēs.〔練 IX 5. 1) と同文。〕
4. Timeō, nē pater mē pūniat.〔練 XXVII 2. 1) と同文。〕
5. Puer tam aegrōtus est, ut medicus vocētur. / Cum puer aegrōtus sit, medicus vocātur.〔理由の cum は次の課の §72 B. [3] で説明される。〕
2. (受けた) 親切のために両親にお礼を伝えようではないか。〔『練習問題集』XXIV 2. 5) とやや類似。〕
3. 神々が私を友人たちから守りますように;敵たちからは私を私自身が守るだろう。〔明らかな敵からは自衛できるが、友人の裏切りは自力ではどうしようもないということ。前者は現在の実現可能な願望、または 3 人称命令「守りたまえ」、後者は可能性の接続法、または直説法未来でもよい。細かいことだが ipse は主格なので隠れた主語 ego の同格であって、mē の同格「私自身を」ではない。〕
4. すべての民族が自分たちの法律を持ち、平和を享受し、義務を果たすことができたらいいのに。〔possent は接続法未完了過去で、現在の非現実願望。〕
5. 君は自分の親切を自慢するな。〔練 XXVI 9. 2) と同文。〕
6. 私たちの祖先のことを思いだそうではないか。〔練 XXVIII 1. 4) と同文。māiōrēs が「祖先」という意味の複数名詞で meminī の属格目的語。いまさら māior をわざわざ引く人は少なかろうから落とし穴である。〕
7. みなが私を見捨てた。私はどうしたらいいだろう。どこへ向かえばいいだろう。〔ためらい (懐疑) の接続法。〕
8. クラウディアは本当のことを言ったと私はなんらの疑い [ためらい] なしに断言するだろう。〔練 XXIX 3. 3) とほぼ同文。穏やかな主張。〕
9. アテーナイの住民たちはテーセウスをすでに長いこと待っており願っている:「テーセウスがミーノータウロスを征服していますように。」〔実現可能な過去の願望。〕
10. 病人たちは担架で庭へ運ばれよ。〔練 XXIV 1. 4) と同文。3 人称命令。〕
11. 君が私のところに来ていたらなあ。〔実現不可能な過去の願望。〕
12. 町は略奪されたと人は考えたかもしれない。〔過去の可能性の接続法。dīreptam esse は不定法受動態完了で、相対時制なので考えた以前のできごと。〕
13. 君がいなければなにも楽しくないはずだ。〔現在の非現実。〕
14. 君がいなければ私は助からなかったはずだ。〔過去の非現実。servātus (nōn) essem は接続法受動態過去完了。〕
15. カエサルを私は殺すべきではなかったか。〔過去の懐疑。〕
16. 誰をも軽蔑しないことだ [しないでもらいたいものだ]。〔2 人称に対する禁止は現在の意味でも〈nē + 接続法完了〉だが、ここは現在であるから [1] b. 不特定の 2 人称への警告、または [7] a. 現在の実現可能な願望と見ることができる。ただし松平・国原『新ラテン文法』§614 によれば接続法現在による禁止も「詩の中または初期の作家」に限っては見られるという。〕
17. これらはなるほど間違ってはいる;(だが) 恥ずべきものでは決してない。〔譲歩の接続法。〕
18. 年長の牛によって耕しかたを年少の (牛) は学ぶべきだ (=に学ばしめよ)。〔3 人称命令、または願望。原典はアエソープス (=アイソーポス=イソップ) の寓話 50 番「父と息子」(‹ Dē patre et fīliō ›) 10 行。〕
19. 君が君にされたいと思わないことを、ほかの人たちにしてはならない。〔fēceris は接続法完了で禁止。〕
20. 嘘をつくことは醜い [不名誉だ] ということを誰があえて否定するか。〔可能性の接続法。mentīrī が形式受動の不定法で、turpe は turpis の中性単数対格 (対格不定法)。〕
21. 国を先導する者は、ほかのすべての者たちに徳の点で優っているべきだ。〔praestet は praestō の接続法現在で、3 人称命令または願望。〕
22. 逆境を辛抱強く耐えようではないか。〔練 XXIV 1. 3) と同文。勧奨の接続法。〕
作文
1. (Utinam) dī nautās ex perīculō servent!
2. Lēgēs observentur et ā rēgibus et ā populīs.
3. Vērum dīcere nē timeāmus!
4. Nē aliīs maledīxerit!
5. Moneam [Moneāmus] an abeam [abeāmus]?
第 16 課
和訳
1. マールクスは友人に、なぜ自分を信じてくれないのか尋ねる。〔crēdō は与格目的語をとる。〕
2. 誰がローマを建設したか私に言ってくれ。
3. 友人たちはいつユーリウスが自分たちを訪ねてくるつもりか知らない。
4. 父は母に、息子はまもなく戻ってくるだろうかと尋ねた。
5. ヘルウェーティイー族はローマ人たちの防壁を突破できるかどうか試みた。〔『練習問題集』28 課 3 節 4) の例文と同文。〕
6. 私の計画はよいと君が思っているかどうか、私に書き送ってくれ。
7. 材料なしに家が建てられることはありえない、ということが疑われることはありえない。
8. 船乗りたちは船が嵐によって岩に投げ出されないようにと神々に懇願した。
9. カエサルは兵士たちに、荷物を一箇所に集めるようにと命じた。〔練 XXIV 2. 7) と同文。〕
10. なぜ君は友人が助けてくれないのではないかと恐れるのか。
11. 将軍は軍隊とともに川を渡った、敵たちを攻撃し彼らの不法に復讐するために。〔練 XXVI 6. 5) と同文。〕
12. 私はより多くを書くことを悲しみによって妨げられている。〔練 XXX 1. 1) と同文。〕
13. アリオウィストゥスはカエサルのところに来ることを拒んだ。〔練 XXX 1. 2) と同文。〕
14. ゲルマーニア人は武器をもって戦うことを拒まなかった。〔練 XXX 1. 5) と同文。〕
15. ソローンは債権者たちに、債務者たちを奴隷として売ることを禁じた。
16. 急げ、君が行きたいところのそこへいっそう早く到達できるように。
17. もう少しで敵たちが陣営を占領するところだった。〔練 XXX 1. 10) と同文。〕
18. 最低の身分に生まれた男たちが最高の顕職に到達するということがしばしば起こる。〔練 XXII 2. 1) と同文。〕
19. ハンニバルは何物も勇気 [武勇] によって克服されえないほどに困難ではないと思っていた。〔練 XXX 1. 9) と同文。〕
20. 要塞内には誰も傷つけられていない (=負傷していない) 兵士はいなかった。〔mīlitum は部分の属格「兵士たちのうち誰も」。〕
21. キケローは追放先の地にいたときに、ほとんど一日たりとも友人のアッティクスに手紙を書かずには過ごさなかった。〔esset は歴史的 cum (§72 B. [1]) のため接続法未完了。これまた未説明の事項を先取りする不注意。〕
22. 誰も自分たちの (仲間) を見分けることができないほど、それほどの大勢だった。
23. おのおのがおのおののことについて何を聞いたかを旅人たちから聞きだす、というのがガリア人たちの習慣だった。〔『ガリア戦記』IV 巻 5 章 2 節の要約。説明の ut。quid 以下は間接疑問なので接続法過去完了。〕
24. 被告はすべてのことに耐え、仲間たちの名を言わないほどだった (=仲間たちの名を言うよりはむしろすべてのことに耐えた)。
作文
1. Nesciō, utrum Mārcus redīret necne.〔練 XXVIII 3. 10) と同文。〕
2. Pater fīlium interrogāvit, sī quid scrīpsit.〔sī のあとなので aliquid でなく短形 (§55 [3])。〕
3. Ōrō tē, ut librum mihi dōnēs.〔練 IX 5. 1) と同文。〕
4. Timeō, nē pater mē pūniat.〔練 XXVII 2. 1) と同文。〕
5. Puer tam aegrōtus est, ut medicus vocētur. / Cum puer aegrōtus sit, medicus vocātur.〔理由の cum は次の課の §72 B. [3] で説明される。〕
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