中山恒夫『標準ラテン文法』(白水社、1987 年) 第 3 課と第 4 課の解答例。ここでは学習者が答えを照合しやすいよう可能なかぎりの直訳を意図している。問題には同じ著者による『ラテン語練習問題集』(白水社、1995 年、新装版 2009 年) と類似あるいはまったく同じ文がしばしば登場するので、私が気づいたかぎりでクロスリファレンスを指示していくことにする (2 回め以降「練」と略記する)。この『問題集』はとてもいい本で、本書よりもいくぶんか易しいし質・量ともに十分なトレーニングになるので、真剣にラテン語を学習したい人、そして『標準』のほうがやや厳しいと感じている人にはとくにおすすめできる。
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第 3 課
§13 練習
magnus : 男単 magnus, (呼格 magne), magnī, magnō, magnum, magnō; 複 magnī, magnōrum, magnīs, magnōs, magnīs; 女単 magna, magnae, magnae, magnam, magnā; 複 magnae, magnārum, magnīs, magnās, magnīs; 中単 magnum, magnī, magnō, magnum, magnō; 複 magna, magnōrum, magnīs, magna, magnīs.
残りはほぼ違いはないため省略。ただし meus の男性単数呼格は mee でなく mī であることだけ注意 (このことは第 2 課 §11 [3] で出てきている)。
和訳
1. ローマとウェローナは有名な都市である。
3. 多くの人たちがギリシアとローマの詩人たちを愛している。
4. 詩人は小さいデーロス島と大きいロドス島を訪れる。〔練 III 5. 4) とほぼ同文。〕
5. 大洋は船乗りたちを多くの危険で脅かす。〔練 III 7. 6) とほぼ同文。〕
6. 農夫たちの富は大きい。〔練 IV 3. 2) と同文。〕
7. 先生は生徒に美しい本を贈る。〔dōnō には対格の人に奪格の物を与えるという語法もある。これは英語の present, provide, equip などの動詞が、与える・提供する相手の人を直接目的語=対格に、物を with 前置詞句=奪格に置くのとよく似ている。〕
8. 奴隷たちの生活は悲惨である。
9. 私たちは危険なしに川を右岸から左岸へ泳ぎきる。
10. 祖父は多くの美しい物語を語ることができる。〔練 XIII 2. 1) と同文。〕
11. 詩人たちは楽しませるか役に立つかする。
12. 子犬が食卓の下へ走りこむ。
13. 先生は生徒たちとともにローマの詩人たちと哲学者たちについての話を読む。
14. 少年たちは高い壁から下り、野へ走っていく。
15. 主人は奴隷たちの怠惰のために激怒する。
16. 少年たちは小舟で川を渡る。
17. 農夫は自分の娘にだけでなく隣人の娘にも果物を与える。〔練 IV 11. 1) とほぼ同文。〕
18. 私たちの友人たちは危険を私たちから遠ざける。
19. 君たちの援助は私たちの役に立つ。〔練 XIII 1. 1) と同文。〕
20. それらの言葉は彼 [彼女] にとって楽しい。
21. 君たちのうちの誰がアウグストゥスについて語るか。〔部分 (配分) の属格。〕
22. 私たちは君たちとともに神々に懇願する。
作文
1. Rōma oppidum magnum clārumque est.
2. Avus puerō librum novum [puerum librō novō] dōnat.
3. Poētae nōbīs pulchrās fābulās narrāre possunt.〔形容詞の前置は和訳の 10. に倣った語順。〕
4. Tibi librum dō.
5. Cum eā lūdō.〔eō, eā は人称・再帰代名詞ではないので eācum のようにはならない。〕
第 4 課
§18 練習
cantō : 未完了過去 cantābam, cantābās, cantābat, cantābāmus, cantābātis, cantābant; 未来 cantābō, cantābis, cantābit, cantābimus, cantābitis, cantābunt.
habeō : 未完了過去 habēbam, habēbās, habēbat, habēbāmus, habēbātis, habēbant; 未来 habēbō, habēbis, habēbit, habēbimus, habēbitis, habēbunt.
lūdō : 未完了過去 lūdēbam, lūdēbās, lūdēbat, lūdēbāmus, lūdēbātis, lūdēbant; 未来 lūdam, lūdēs, lūdet, lūdēmus, lūdētis, lūdent.
faciō : 未完了過去 faciēbam, faciēbās, faciēbat, faciēbāmus, faciēbātis, faciēbant; 未来 faciam, faciēs, faciet, faciēmus, faciētis, facient.
veniō : 未完了過去 veniēbam, veniēbās, veniēbat, veniēbāmus, veniēbātis, veniēbant; 未来 veniam, veniēs, veniet, veniēmus, veniētis, venient.
adsum : 未完了過去 aderam, aderās, aderat, aderāmus, aderātis, aderant; 未来 aderō, aderis, aderit, aderimus, aderitis, aderunt.
redeō : 未完了過去 redībam, redībās, redībat, redībāmus, redībātis, redībant; 未来 redībō, redībis, redībit, redībimus, redībitis, redībunt.
pēs : pēs, pedis, pedī, pedem, pede; pedēs, pedum, pedibus, pedēs, pedibus.〔m. 足〕
nātiō : nātiō, nātiōnis, nātiōnī, nātiōnem, nātiōne; nātiōnēs, nātiōnum, nātiōnibus, nātiōnēs, nātiōnibus.〔f. 民族〕
corpus : corpus, corporis, corporī, corpus, corpore; corpora, corporum, corporibus, corpora, corporibus.〔n. 体〕
iter : iter, itineris, itinerī, iter, itinere; itinera, itinerum, itineribus, itinera, itineribus.〔n. 道〕
pater : pater, patris, patrī, patrem, patre; patrēs, patrum, patribus, patrēs, patribus.〔m. 父〕
senex : senex, senis, senī, senem, sene; senēs, senum, senibus, senēs, senibus.〔m., f. 老人〕
puppis : puppis, puppis, puppī, puppim, puppī; puppēs, puppium, puppibus, puppīs/ēs, puppibus.〔f. 船尾〕
exemplar : exemplar, exemplāris, exemplārī, exemplar, exemplārī; exemplāria, exemplārium, exemplāribus, exemplāria, exemplāribus.〔n. 見本〕
animal : animal, animālis, animālī, animal, animālī; animālia, animālium, animālibus, animālia, animālibus.〔n. 動物〕
fīnis : fīnis, fīnis, fīnī, fīnem, fīne; fīnēs, fīnium, fīnibus, fīnēs/īs, fīnibus.〔m. 終わり〕
nox : nox, noctis, noctī, noctem, nocte; noctēs, noctium, noctibus, noctēs/īs, noctibus.〔f. 夜〕
mōns : mōns, montis, montī, montem, monte; montēs, montium, montibus, montēs/īs, montibus.〔m. 山〕
1. 私の友人たちは農夫たちの勤勉さを褒めるだろう。
2. 奴隷たちの生活は悲惨であった。〔『練習問題集』V 3. 3) とほぼ同文。前の課の和訳 8. を未完了過去にしたもの。〕
3. 私たちはしばしば君たちに問うていた;君たちはいつも私たちに答えていた。〔練 VI 1. 9) とほぼ同文。〕
4. 主人は野生の馬を飼いならすことができるだろう。〔練 XIII 2. 4) と同文。〕
5. 明日ふたたび学校へ行き、多くのことを学びなさい。〔2 人称の未来は命令の意味がある (§18)。〕
6. 君たちの援助は私たちの役に立つだろう。〔前の課の和訳 19. を未来時制にしたもの。〕
7. ローマ人たちは多くの神と女神をもっていた;彼らは神々の神殿を金や銀で飾っていた。
8. 奴隷たちは多くの苦労と苦痛に耐えていた。〔練 XIII 6. 1) と同文。〕
9. 正義は判事の最高の義務である。〔練 XIII 3. 8) と同文。〕
10. (以下のような) ことわざがある:人間は人間にとって狼である。しかし私たちは人間のなかに人間を見ることに努めるだろう。〔前半は練 XIII 9. 4) と同文。〕
11. 船乗りたちは遠くに高い塔を見ていた;塔の中では炎が燃えていた。〔練 XVII 5. 1) を短く簡単にしたもの。XVIII 6. 2) にも類似。「塔の上で」と訳してもいいと思うが、そちらの 2 文の解答に倣った。〕
12. 古代には人間は深い海を恐れ、海岸のそばを航海していたものだった。〔altus は「高い」と「深い」を兼ねる、要するに鉛直方向に距離が大きいということか。現代語でもフランス語 haut やイタリア語 alto にはそれが残る:たとえば仏で haute montagne は「高い山」だが haute mer はもちろん「高い海」ではなく「沖合、遠洋」つまり「深い海」のこと。シュペルヴィエルの『沖の小娘』は水深 6 000 メートルの haut Atlantique の上に住んでいる。〕
13. 父たちと母たちの心配は大きい。〔練 XIII 8. 4) と同文。〕
14. 敵たちは市民たちの甚大な殺戮を行う。
15. 犬は骨を口で保持している (=くわえている)。〔os, ossis, n.「骨」と ōs, ōris, n.「口」の違いを学ばせようとする意図が明白。〕
16. アテーナイの町では学芸と文学が栄えており、ローマの町では法学が (栄えていた)。〔iūs と lēx はどちらも「法、法律」であり、「法と法の学」としたのでは違いがよくわからないが、水谷『羅和辞典』の語釈を見比べた感じでは iūs のほうが抽象的、lēx が具体的な法文・条文という印象を受けた (法哲学と実定法学のような?)。じっさいこの文では iūris が単数属格であるのに対し lēgum は複数属格である。だがさほどはっきりした違いはないかもしれない。なお本問は練 III 7. 8) と類似だが、そちらでは後半が「コリントスは富で」なので参考にはならない。〕
1. Amīcī epistulam [litterās] legēbant.
2. Agricola cum servīs suīs frūmentum in urbem feret.
3. Pulchritūdō maris [marium] multōs dēlectat.
4. Lēgātī nūntium pācis afferunt.〔練 XXIV 2. 3) の前半とほぼ同文。〕
5. Vēre multī flōrēs flōrent.
habeō : 未完了過去 habēbam, habēbās, habēbat, habēbāmus, habēbātis, habēbant; 未来 habēbō, habēbis, habēbit, habēbimus, habēbitis, habēbunt.
lūdō : 未完了過去 lūdēbam, lūdēbās, lūdēbat, lūdēbāmus, lūdēbātis, lūdēbant; 未来 lūdam, lūdēs, lūdet, lūdēmus, lūdētis, lūdent.
faciō : 未完了過去 faciēbam, faciēbās, faciēbat, faciēbāmus, faciēbātis, faciēbant; 未来 faciam, faciēs, faciet, faciēmus, faciētis, facient.
veniō : 未完了過去 veniēbam, veniēbās, veniēbat, veniēbāmus, veniēbātis, veniēbant; 未来 veniam, veniēs, veniet, veniēmus, veniētis, venient.
adsum : 未完了過去 aderam, aderās, aderat, aderāmus, aderātis, aderant; 未来 aderō, aderis, aderit, aderimus, aderitis, aderunt.
redeō : 未完了過去 redībam, redībās, redībat, redībāmus, redībātis, redībant; 未来 redībō, redībis, redībit, redībimus, redībitis, redībunt.
練習
pēs : pēs, pedis, pedī, pedem, pede; pedēs, pedum, pedibus, pedēs, pedibus.〔m. 足〕
nātiō : nātiō, nātiōnis, nātiōnī, nātiōnem, nātiōne; nātiōnēs, nātiōnum, nātiōnibus, nātiōnēs, nātiōnibus.〔f. 民族〕
corpus : corpus, corporis, corporī, corpus, corpore; corpora, corporum, corporibus, corpora, corporibus.〔n. 体〕
iter : iter, itineris, itinerī, iter, itinere; itinera, itinerum, itineribus, itinera, itineribus.〔n. 道〕
pater : pater, patris, patrī, patrem, patre; patrēs, patrum, patribus, patrēs, patribus.〔m. 父〕
senex : senex, senis, senī, senem, sene; senēs, senum, senibus, senēs, senibus.〔m., f. 老人〕
puppis : puppis, puppis, puppī, puppim, puppī; puppēs, puppium, puppibus, puppīs/ēs, puppibus.〔f. 船尾〕
exemplar : exemplar, exemplāris, exemplārī, exemplar, exemplārī; exemplāria, exemplārium, exemplāribus, exemplāria, exemplāribus.〔n. 見本〕
animal : animal, animālis, animālī, animal, animālī; animālia, animālium, animālibus, animālia, animālibus.〔n. 動物〕
fīnis : fīnis, fīnis, fīnī, fīnem, fīne; fīnēs, fīnium, fīnibus, fīnēs/īs, fīnibus.〔m. 終わり〕
nox : nox, noctis, noctī, noctem, nocte; noctēs, noctium, noctibus, noctēs/īs, noctibus.〔f. 夜〕
mōns : mōns, montis, montī, montem, monte; montēs, montium, montibus, montēs/īs, montibus.〔m. 山〕
和訳
1. 私の友人たちは農夫たちの勤勉さを褒めるだろう。
2. 奴隷たちの生活は悲惨であった。〔『練習問題集』V 3. 3) とほぼ同文。前の課の和訳 8. を未完了過去にしたもの。〕
3. 私たちはしばしば君たちに問うていた;君たちはいつも私たちに答えていた。〔練 VI 1. 9) とほぼ同文。〕
4. 主人は野生の馬を飼いならすことができるだろう。〔練 XIII 2. 4) と同文。〕
5. 明日ふたたび学校へ行き、多くのことを学びなさい。〔2 人称の未来は命令の意味がある (§18)。〕
6. 君たちの援助は私たちの役に立つだろう。〔前の課の和訳 19. を未来時制にしたもの。〕
7. ローマ人たちは多くの神と女神をもっていた;彼らは神々の神殿を金や銀で飾っていた。
8. 奴隷たちは多くの苦労と苦痛に耐えていた。〔練 XIII 6. 1) と同文。〕
9. 正義は判事の最高の義務である。〔練 XIII 3. 8) と同文。〕
10. (以下のような) ことわざがある:人間は人間にとって狼である。しかし私たちは人間のなかに人間を見ることに努めるだろう。〔前半は練 XIII 9. 4) と同文。〕
11. 船乗りたちは遠くに高い塔を見ていた;塔の中では炎が燃えていた。〔練 XVII 5. 1) を短く簡単にしたもの。XVIII 6. 2) にも類似。「塔の上で」と訳してもいいと思うが、そちらの 2 文の解答に倣った。〕
12. 古代には人間は深い海を恐れ、海岸のそばを航海していたものだった。〔altus は「高い」と「深い」を兼ねる、要するに鉛直方向に距離が大きいということか。現代語でもフランス語 haut やイタリア語 alto にはそれが残る:たとえば仏で haute montagne は「高い山」だが haute mer はもちろん「高い海」ではなく「沖合、遠洋」つまり「深い海」のこと。シュペルヴィエルの『沖の小娘』は水深 6 000 メートルの haut Atlantique の上に住んでいる。〕
13. 父たちと母たちの心配は大きい。〔練 XIII 8. 4) と同文。〕
14. 敵たちは市民たちの甚大な殺戮を行う。
15. 犬は骨を口で保持している (=くわえている)。〔os, ossis, n.「骨」と ōs, ōris, n.「口」の違いを学ばせようとする意図が明白。〕
16. アテーナイの町では学芸と文学が栄えており、ローマの町では法学が (栄えていた)。〔iūs と lēx はどちらも「法、法律」であり、「法と法の学」としたのでは違いがよくわからないが、水谷『羅和辞典』の語釈を見比べた感じでは iūs のほうが抽象的、lēx が具体的な法文・条文という印象を受けた (法哲学と実定法学のような?)。じっさいこの文では iūris が単数属格であるのに対し lēgum は複数属格である。だがさほどはっきりした違いはないかもしれない。なお本問は練 III 7. 8) と類似だが、そちらでは後半が「コリントスは富で」なので参考にはならない。〕
作文
1. Amīcī epistulam [litterās] legēbant.
2. Agricola cum servīs suīs frūmentum in urbem feret.
3. Pulchritūdō maris [marium] multōs dēlectat.
4. Lēgātī nūntium pācis afferunt.〔練 XXIV 2. 3) の前半とほぼ同文。〕
5. Vēre multī flōrēs flōrent.
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