mardi 29 septembre 2020

中山『標準ラテン文法』練習問題解答 (7)

中山恒夫『標準ラテン文法』(白水社、1987 年) 第 13 課と第 14 課の解答例。同じ著者による解答つきの『ラテン語練習問題集』(白水社、1995 年、新装版 2009 年) と共通する文をなるべく探してすべて対応させるよう心がけているが、完璧とはいかないのでこれまでの課も含めてお気づきの点があればコメントでお知らせいただきたい (だが今回の第 13 課はこれまでと違い問題集で見た覚えのない文が多かったので、見逃していても 1 つ 2 つかと思う)。ラテン語著作の原典の検索についても同様、出典があるのに残念ながら私が気づいていないことは多々あるだろう。

目次リンク:第 1 課・第 2 課第 3 課・第 4 課第 5 課・第 6 課第 7 課・第 8 課第 9 課・第 10 課第 11 課・第 12 課・第 13 課・第 14 課・第 15 課・第 16 課第 17 課・第 18 課第 19 課


第 13 課


本文 §61 [5] に multitudō とあるのは multitūdō の誤り。

和訳


1. カティリーナにとってキケローが殺されることははなはだ重要であった。〔magnī は価値の属格。〕

2. テーバイ人たちにはポリュネイケースの遺体を地面で覆う (=埋葬する) ことは許されていなかった。〔ソポクレース『アンティゴネー』26 行以下:「ところが悲惨な最期を遂げたポリュネイケスの亡骸は、町じゅうにもうお布令を出して、けして葬いをして葬ってはいけない、また泣き悼んでもいけない……」(呉茂一訳。ただし絶版のため前掲リンクはかわりに中務哲郎訳)。〕

3. 君は務めをおろそかにしてはいけない。〔officiī は neglegēns の属格目的語。〕

4. 私は自分の愚かさに腹が立つばかりか、恥ずかしい。〔出典はキケローの『わが家について』(Dē Domō Suā) という作品の 29 節改変。原文では ut 節なので動詞が接続法 pigeat, pudeat.〕

5. 病気になった人には医者が必要である。〔morbō afficī「病気で影響を受ける=病気になる」の完了時。quī は関係文のなかでは受動の主語で主格だが、その外側の主文における格をはっきりさせるため、opus est が要求する与格の指示代名詞 eī が置かれている。cf. 松平・国原『新ラテン文法』§247.〕

6. 平和という名前は快い。〔説明の属格。〕

7. 悪人たちを大目に見る者は善人たちに害をなす。〔第 7 課和訳 15. を能動文に直したもの。〕

8. 青年たちはオリュンピアでしばしば大きな栄誉を自分たちにも自分たちの国のためにも手に入れた。

9. アッロブロゲース族にとって自由を失ったことは悲しみであった;なぜなら (彼らは) 自由を熱望していたから。〔dolōrī は目的の与格。lībertātis は cupidus の属格目的語。〕

10. 両親を愛することは私たちの (義務・本分) だ。

11. 親たちの愛は子どもたちから報酬 (=見返り) を要求しない。

12. 人民の暴君への憎しみは正当である。〔populī も tyrannī も属格なので主語的か目的語的かは意味を考えて選ぶしかない。〕

13. マールクス・ポルキウス・カトーは辛辣な舌の (=毒舌の・舌鋒鋭い) 人だった。〔性質の属格。『練習問題集』XXVII 3. 2) と同文。〕

14. ローマ人たちは武器・戦争・戦闘を愛していた;(彼らは) 武器と戦争と戦闘に熟達しており、名誉を熱望していた。

15. 君たちのうち誰が私たちを覚えているか。〔どちらも人称代名詞の属格だが、vestrum は部分の属格、nostrī は属格目的語の形なので、反対に「私たちのうち誰が君たちを〜」ととることは不可能。〕

16. ローマ人たちは小さな剣と大きな盾をもっていた。〔所有者の与格。〕

17. 君たち (について) の記憶をいつまでも私は保持するだろう。〔文脈からも明らかだが、vestrī は目的語的属格なので「君たちがもっている記憶」memoriam vestram とは違う。〕

18. アウグストゥスの時代にローマ帝国には確固とした平和があった;アウグストゥスのすぐれた法律は国 [市民たち] にとって救い [安全] であった。〔前半 aetāte は時の奪格、imperiō Rōmānō は所有者の与格、したがって erat < sum は存在ととる。〕

19. カエサルという名前はゲルマーニア人たちにとって最高の威厳をもつ名称とされた [となった]。〔Caesaris は説明の属格、summae dīgnitātis は性質の属格。factum est は fīō の完了=faciō の受動態完了で、この文は「nōmen ... を vocābulum ... とする」という二重対格の能動文を受動にした二重主格。〕

20. 君にとって損になることは、君の敵たちにとって喜びとなるだろう。

21. 君は私に何をしてくれるのか。〔利害または関心の与格。日本語では「くれる」だけで mihi の感じが出るので、とくに関心なら「私に」は不要かも。〕

22. ミルティアデースはアテーナイ人への裏切りのかどで告訴された;死刑は免除されたが、多額の金銭で罰せられた (=多額の罰金を科された)。〔Athēniēnsis は主格・属格が同形なので、ここでは prōditiō にかかる目的語的属格として訳したが、ミルティアデースの同格として「アテーナイ人ミルティアデースは裏切りのかどで〜」ととることもできるだろう。〕

23. 私に向かって叫ぶな。〔関心または方向の与格?〕

24. 航行している者から見れば、立って (=静止して) いるもの (のほう) が動いているように見える。〔nāvigantibus は判断者の与格。movērī「動く」は moveō の不定法受動態現在で、いわゆる中動態的受動態 (§28 [3])。〕

25. 怠け者は価値が低い:一文の価値もない。〔価値の属格。前半は松平・国原 §419 にほぼ同文あり。〕

作文


1. Auxiliō mihi opus est.

2. Eum paenitet sceleris suī.

3. Valētūdō tua mihi magnae cūrae est.

4. Parentum amor līberōrum magnus est.

5. Hunc librum plūrimī [maximī] aestimō.


第 14 課


和訳


1. 先生は少年たちに文字 (または文学・学問) を教える。〔『練習問題集』V 3. 13) とほぼ同文。〕

2. カエサルは 15 フィートの幅の堀を 2 つ作った。それらの後ろに 12 フィートの高さの防柵を築いた。〔練 XXVI 3. 1) と同文。〕

3. カエサルは騎兵たちの大部分に川を渡らせた。

4. 元老院は外国の諸民族の元首たちを、ローマ国民に対する大きな功績のために、友人かつ同盟者と呼ぶ習慣であった。〔練 XXVIII 1. 2) と同文。〕

5. 青年たちは体育館でさまざまな方法で互いに競っていた。〔練 XXI 1. 11) とほぼ同文、また練 XIII 2. 3) にも類似。〕

6. 下女たちは女主人の賞賛をとても喜ぶ。〔練 XXI 1. 1) と同文。〕

7. カティリーナは高貴な家柄の生まれで、精神力も体力も大きかったが、性格 [品行] が悪かった。〔練 XXI 1. 6) とほぼ同文。genere < genus, vī < vīs, mōribus < mōs すべて性質の奪格。mōrēs は「品行」でも通りそうだが、問題集の解答は「性格」としている。〕

8. ゲルマーニアは外見の点でイタリアと大きく異なっている。〔練 12 課 1 節の例文と同文、さらに練 XXV 6. 8) にも同文。speciē は関係 (限定) の奪格。〕

9. 適切な場所でカエサルは戦闘隊列を築いた。〔練 XXVI 1. 4) と同文。場所の奪格。〕

10. コルネーリアは最高の賞賛に値する。

11. 包囲された町の住人たちは迅速な救援を必要としていた。

12. 町じゅうで家々や神殿が燃えていた。

13. ガリアの住人たちは言語・制度・法律の点で互いに異なっていた。〔練 XXIV 2. 6) と類似。原典は『ガリア戦記』I 巻 1 章 2 節改変。〕

14. エピダウロス (の町) は有名なアエスクラーピウス (=アスクレーピオス) の神殿でにぎわっていた。〔原因の奪格。〕

15. 父の死の 3 年後に母が亡くなった。〔程度の奪格。〕

16. カエサルは最高の才能をもった男で、身長は高く、色は白く、目は黒かった。〔summī ingeniī は性質の属格、残りは性質の奪格。〕

17. 私たちは有名な戦いを戦った。〔同族対格。〕

18. おお、人間たちの希望のあてにならないことよ。〔感嘆の対格。〕

19. あの家は高く売られたが、価値はまったくない。〔magnō は価格の奪格、nihilī は価値の属格。〕

20. 生活費はかつて少ししかかからなかったが、いまでは商品はもっと高い。〔parvō は価格の奪格、plūris も意味は価格だが比較級なので属格。動詞 sunt が複数なので、mercēs は mercēs, mercēdis, f.「報酬」ではなく merx, mercis, f.「商品」の複数主格とわかる。〕

21. 私はこのことを君に説得したい、逆境においては大いに不屈 (の心) が力を持つということを。〔中性単数対格 hoc は真の目的語である不定法句を予示するもので、cōnstantiam posse がその対格不定法の主語と動詞。multum「大いに」は形容詞の中性単数対格が副詞となったもので (松平・国原『新ラテン文法』§352)、私はここからが不定法句と解した。volō にかけて「大いに説得したい」ととれなくもないが、それなら volō の前に立つのが自然である (副詞はそれがかかる動詞に前置されることが原則:松平・国原 §355、ダンジェル『ラテン語の歴史』邦訳 154–55 頁)。〕

22. ゲルマーニア人の女たちは下腕と上腕 (=腕全体) をむきだしにしていた。〔関係の対格。〕

作文


1. Graecī decem annōs Trōiam oppūgnāvērunt.

2. Senātus Augustum patrem patriae appellāvit [vocāvit].

3. Quis ab cūrīs līber est?

4. Tarquinius magnam superbiam et crūdēlitātem habēbat.

5. Quantī habitātis? ― Permagnō habitāmus.

Aucun commentaire:

Enregistrer un commentaire