本を買う趣味が嵩じて国内のものでは飽きたらなくなり,いつしか諸外国から書籍を買い集めるようになりました.もちろん以下のどの言語も読めるというわけではないですが,それでも自分が専門に勉強してきた分野の本や,ほかの言語がテーマになる語学書ならば,まったくわからないということはなく,語学学習の励みになります.
以下では言語別に,私が本を購入したことのあるオンラインストアを,注文までのさまざまなアドバイスや,送料や所要日数などのレポートつきであげていきます.各国とも複数のオンラインストアがありますが,とくに先進国以外では日本への発送を受けつけていないサイトが多いため選択肢は限られます.決済手段はいずれも VISA または MasterCard のクレジットカードが使えます.カード決済に JCB が使える場合は特記します.また,PayPal 経由で JCB が使える場合があります.
ジャンプ:英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語,ルーマニア語,ロシア語,ポーランド語,セルビア語,クロアチア語,リトアニア語,ラトビア語,エストニア語,トルコ語,ギリシャ語,ヘブライ語.
ジャンプ:英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語,ルーマニア語,ロシア語,ポーランド語,セルビア語,クロアチア語,リトアニア語,ラトビア語,エストニア語,トルコ語,ギリシャ語,ヘブライ語.
英語 (アメリカ・イギリス・カナダ),ドイツ語 (ドイツ),フランス語 (フランス),イタリア語 (イタリア),スペイン語 (スペイン).―― よほど専門的なものでもないかぎり,新本ならば原則として各国の Amazon (Amazon.com, Amazon.co.uk, Amazon.de, Amazon.fr, Amazon.it, Amazon.es, Amazon.ca) で間にあいます.
ただし送料がバカにならないので,このうち英語およびドイツ語の書籍については,日本の Amazon.co.jp から購入したほうが安上がりになる場合が多いです.とくに英語の書籍は日本に在庫していることが多く,デジタルパブリッシングで日本国内の印刷が委託されている場合もあり,すぐに手に入ります.同じ英語でも版元がカナダの書籍だけは,日本でもアメリカ経由でもなく直接カナダから取り寄せたほうが安いことがあります (個人的な経験ではクリー語についての本).ドイツのものはなぜだか不明ですが .co.jp の値段が多くの場合安く,「2〜3 週間以内に発送」という表示であれば直接取寄と同程度です.為替リスクを避けられるという利点もあります.
仏・伊・西の書籍については,日本 Amazon では商品のページが存在しないか,あってもほとんどは注文不可能もしくは「一時的に在庫切れ」となっており,後者の場合注文じたいは可能ですが 3, 4 ヶ月後に取寄不可能だったとのメールがきます.これらの国の本のうち日本 Amazon から注文が可能なまれな例外は,ごく大衆的な本です (有名な文学作品のペーパーバックなどで,この場合はドイツと同様 .co.jp を通しての注文が安いことがあります).
ちなみに,英語以外の書籍を日本 Amazon で検索するには,直接日本 Amazon で検索するのではなく,まず当該国のサイトに行って気になる本を見繕ったあと,その ISBN をコピーして検索 (もしくは URL バーから直接ジャンプ) することをおすすめします.その理由は書籍のタイトルに含まれる文字で,日本 Amazon では仏・伊・西の書籍がアクサンやセディーユつきの文字が文字化けしたまま登録されていることが少なくないこと,また独の書籍ではウムラウトつきの文字,たとえば ä が ae と代用表記されていたり,されずに a となっていたりすること,あるいは語尾変化のファジィ検索が日本のデータベースでは弱い [注] といった理由から,正しいタイトルで検索をしても見つからない場合に自分の手落ちなのかそもそも商品ページが存在しないのかわかりかねるためです.求める内容の書籍にどんなものがあるのかという最初の調査を日本 Amazon でするべきでないのも同じ理由です.
アメリカの Amazon を例外として,各国とも送料は固定 10 ユーロ強 (イギリスはポンド換算) に冊数分の上乗せがかかるので,ある程度の冊数をまとめて買うほうが得です.Amazon.com は例外的に 1 冊での送料がかなり安いので,1 冊からの注文もよくします.注文手続きに入ると,Amazon Currency Converter というサービスによって円建てで支払うか,ドル・ポンド・ユーロで決済するかを選べますが,通常のレートより約 5 円も高くなるので,よほど為替が不安定な局面を除いては現地通貨での決済のほうがよいのではないでしょうか.
到着までの日数はというと,追加で数千円出すと 2, 3 日で届くという驚くべきオプションもありますが,いちばん安い通常配送でも注文から 12〜14 日といったところです.注文の冊数が少なく小さな包みになる場合では,同じいちばん安い手段で 8, 9 日で届くことがありました.以上はヨーロッパの話ですが,アメリカだけは非常に遅く,早いほうでも 18 日程度はかかります.いずれにせよ早めの注文を心がけるべきでしょう.
古書では Amazon の関連サイトである上記各国の AbeBooks が役に立つことがあり,たいていの出品者は海外発送をしてくれます.Amazon のマーケットプレイスも重要ですが,これは国内向けの発送が多いです.いずれも国ごとにデータベースは共有されていないようなので,言語が違ってもダメもとで検索してみる必要があります.あるとき英語の絶版本で日米英の AMP ではどこも価格が 3 万円程度に高騰していたものが,なぜかフランスの AMP ですごく安く手に入ったことがあります.
ルーマニア語 (ルーマニア).―― elefant.ro. ルーマニアは EU 加盟国ですがまだユーロを導入しておらず,現在の通貨はレウ (2005 年のデノミ後の新レウ:RON) で,書籍も送料も非常に安いです (15 冊 6.9 kg で送料 50 レイ:約 1 500 円).発送はあまり早くなく,私の場合では注文から発送まで 10 日,そこから到着まで 8 日を要しましたが,発送の時点で通知のメールがなく心配でした (ただ,到着してみれば,最初の注文確定メールに書いてあった到着予定日とほぼ同じ (予定日より 1 日遅れ) でした.こういうものはクレームのつかないよう余裕をもった遅めの予定日を書くものだと思うのですが).梱包はダンボールの箱に,ダンボールを網状に裁断したウェーブクッションを緩衝材として十分に入れてあり,エコで丁寧な印象を受けます.
ロシア語 (ロシア).―― Лабиринт (www.labirint.ru) というサイトでは JCB が使えて重宝します.ロシアの通貨はルーブル (RUB) で,書籍じたいもそう高くありません.ショッピングカートとウィッシュリストが別個に保存できるので購入候補の管理に便利です [注].ここは発送も異常に早く,単価千円程度の小さな本を 20 冊ほど買ったときは,通常の配送手段なのに注文確定からたったの 4 日と数時間で届いて驚きました.梱包はずいぶん簡素で,書籍じたいも新本にしては汚れている印象を受けましたが.
代替的な手段としては,日本国内にも日ソ (www.nisso.net) とナウカ (www.naukajapan.jp) という 2 大ロシア書籍専門店があり,多少割高にはなりますが,本選びから注文まで日本語で行うことができます.ただしリストにある多くの品は国内に在庫がないのが難点です.いちど買うとしばらくカタログ (分野別に原題・その日本語訳・値段を列挙した小冊子) を定期的に送ってくれるので,ロシアの最新の出版情報もわかります.
もうひとつはアメリカの Amazon.com で,一部のロシア語書籍が手に入ります.難点は書籍のタイトルがラテン翻字のため,たとえば я が ya だったり ja だったりして検索が困難です.
また,ロシアの出版事情を含む一般的な情報について,東京大学のスラヴ語スラヴ文学研究室のサイトが詳しく,参考になると思います.そちらでロシアの 2 大ネット書店として紹介されている OZON と Alib はいまのところ利用したことがないので紹介できません.
ポーランド語 (ポーランド).―― 日本から注文できるポーランド国内の書店としては merlin.pl が唯一です (ほかに,アメリカに本拠を置きポーランドの書籍を扱っている書店もありますが,品ぞろえも劣りますしドル建てで非常に高価になります).ポーランドの通貨はズウォティ (PLN) で,書籍の値段が尋常でなく安いです.ただし日本への送料が本代と同じくらいかかるので,そこまでお得ではありません (それでも安いです).ショッピングカートとウィッシュリストがあり,しかもその間の移動がワンクリックで非常に便利です (どちらの方向にもでき他方からは消えます.Amazon の「カートに保存 (後で買う)」に似ています).
この書店の最大の注意点は,「24 時間以内に発送」が大嘘だということです.何度か注文しましたが,これらのうちほとんどの本は在庫しておらず,注文から 2, 3 日たつと「入手まで日数がかかりますが,1. 待ちますか,2. キャンセルしますか」,あるいは「一部の本だけ発送できますが,1. すべてそろうまで待ちますか,2. 一部のみ発送しほかをキャンセルしますか,3. すべてキャンセルしますか」と選ばせるメールがきます.とはいえそんなに驚くほど待つことにはならず (都合 5〜7 日くらい),発送から到着まではかなり迅速でした.発送メールはなぜか同じものが何度もきました.
Amazon.com にも少なからずポーランド語の書籍の登録がありますが,データがあるだけで実際に (AMP でなく Amazon から直接) 注文できるものは見たことがありません.
(2015 年 8 月 17 日追記) Merlin.pl さんに 3 度めの注文をしました.今回は注文から 2 日後の発送,さらに 5 日後つまり注文からは 7 日と 17 時間で手もとに到着しました.今回はメール通知も,注文直後の確認メール,翌日の出荷準備の連絡,翌々日の発送メールと手際よく重複もなく,また 10 冊の注文にもかかわらず遺漏がなく,最初の 2 度の注文での不手際が嘘のようでした.
ところで今回はまたべつの問題も経験しました.今回,操作をどこで間違えたのかある本の注文数量が 2 冊になってしまったのですが,注文の変更やキャンセルがサイト上ではできず,定められた連絡先に直接メールをするように書かれています.そこでメールで変更のお願いを書き送ったところ,相手方のメールボックスがいっぱいだとかでメールが弾かれ (2 度試し,2 度めは極力サイズを小さくするようプレーンテキストで短い文にしましたが),結局変更はできないままその本は 2 冊届いてしまいました.
セルビア語 (セルビア),クロアチア語 (クロアチア).―― Knjižara.com (www.knjizara.com) がおそらくこれも唯一日本への発送を行っているのではないでしょうか.セルビアの通貨はディナール (RSD) ですが,日本への発送を選ぶとユーロ建てに切りかわります.品ぞろえはわりと豊富で,ほとんど同じ言語を話す隣国クロアチアの出版物も購入できます.それに加えてセルビア国内のセルビア語でもキリル文字とラテン文字が併用されている事情から,本ごとにどちらの文字表記かが示されているのがおもしろいところです.発送は迅速で,輸送日数もヨーロッパからの平均的な長さ (注文から 10 日内外) でした.
ここにははじめ注文がうまくいかずメールで問いあわせたのですが,英語で非常にきめ細かに対応していただきました (注文品のリストを伝えてくれれば金額を見積もるので銀行振込で発送できるとのこと.最終的にサイト上でうまくいったので不要でしたが).注意点として,ロシア語の項で触れましたが,ショッピングカートの中身が時間経過で消えます.
リトアニア語 (リトアニア).―― knygos.lt. 発送時にメール通知がきます.国外への配送は TNT Express という業者がやっていて,トラッキングサービス (説明は英語) で荷物の所在地をリアルタイムで確認できます (カウナスから発送されたあと翌日にヴィリニュス,そこから国外に出て 4 日 (初日を入れると 5 日め) でポーランドのアンノポル, 5 日でドイツのハノーヴァー,7 日でフランクフルトを経て,8 日で成田に到着したようです.そのあと税関などでもう 3 日かかっています).発送から到着までは 11 日でした.リトアニアは 2015 年元日に 19 ヵ国めのユーロ導入国となっています.クレジットカードによる支払はどのカードでも PayPal アカウントの登録が必要になるらしく,VISA も MC も JCB も使えます.梱包は適切でした.
ラトビア語 (ラトビア).―― Zvaigzne ABC (www.zvaigzne.lv) にはいちど大量の本を注文したのですが,消印によると注文の 2 日後には発送され,なんとその 5 日後には届きました (ただし注文確認メールのあと発送の連絡はありませんでした).国外への配送オプションは 2 通りありましたが安いほうでこれだけ早いのは驚きです.梱包はあまり親切ではなく,かなり隙間のある大きなダンボールに緩衝材もなく詰めこまれているだけでした.送料の計算は冊数ではなく重量のみによっており,階級別なので軽い本なら何冊か追加しても送料が変わらないことがあります (送料は注文画面に入らずともカートで随時確認できます).私は試していませんが電子書籍も充実しているようです.ラトビアでは 2014 年の元日に 18 ヵ国めのユーロ導入国となっています.ラトビアも本が比較的に安く,私が買ったなかではラトビア語–ポーランド語辞典,B5 判に近い大きさで 1 550 ページ,本体重量 2 kg を超える大部のもの (それも版権切れのリプリントではなく,インターネットなどの用語も入った最新のもの) が,たったの 10 ユーロというのが最大の驚きでした.
エストニア語 (エストニア).―― エストニアには 4 つのオンライン書店があるようで,そのどれも日本への配送が可能です.ここではそのうち 2 つを紹介します.見たかぎりではどちらか一方でしか売っていない本も多く,共通部分では価格の差もあるので,両方を調べてうまく使いわけるのがよいでしょう.エストニアの通貨は 2011 年元日よりユーロです.
注意すべきこととして,ここで紹介しないサイトも含めてどのストアもアカウント作成ができません.その理由はエストニアの国民番号制で,エストニアでは行政から日常生活に至るまでかなり広範に国民 ID を使用しているらしく,アカウント作成時にもその入力が必須のため私たちには不可能です.ユーザ登録をしなくても注文は可能です.
Apollo (www.apollo.ee) は,日本語によるエストニア (語) 紹介のウェブサイトでよくあげられているので,いちばん老舗なのかもしれません.もうひとつは Rahva Raamat (www.rahvaraamat.ee) で,スタイリッシュで現代的なページデザインが目を引きます.送料はどちらもかなり割高ですが,前者のほうが固定部分が大きくある程度まとまった冊数まで変わらず,後者は冊数に応じて微調整されるようでした.注文から到着までの日数は前者が 14 日,後者が 9 日でしたが,発送後配送に要した日数はどちらも 6 日ほどのようです.梱包は後者のほうが丁寧に感じましたが,もともとの書籍の状態がどちらもとてもきれいで,私のこれまでの 100 回を超える海外取引のなかでもこれほど美しい状態の本に出会ったことはありません (エストニアの出版社・印刷所の品質管理が厳格なのか,ただの幸運な偶然なのかはわかりませんが).
トルコ語 (トルコ).―― paNdora (www.pandora.com.tr). トルコの通貨はリラ (TRY) で,書籍はかなり安いです.注文から到着までは 11 日でした (発送連絡がないので発送までの日数はわかりませんが,商品ごとに在庫状況が書いてあり注文時におおよその日数がわかります.今回の場合はおそらく発送までに 5 日,配送に 6 日というところだったでしょう).
ギリシャ語 (ギリシャ).―― Bibliohora (www.bibliohora.gr). ギリシャ国内最大手と見られる Books.gr が発送を行っていないので,これも選択肢は限られます.ギリシャは近年財政破綻の危機に揺らいでいますが,通貨はいまのところユーロ (EUR) で,送料も書籍もかなり割高に感じられます (いっそのことドラクマに戻ってもらえば激安で買えそうですが).この書店は発送通知のメールをくれず,到着まで 17 日ほども待ったので,本当に商品が届くのか不安でした.
ギリシャ語の書籍は各国 Amazon での取り扱いは非常に限定的ですが,姉妹サイトの Book Depository では若干のギリシャ語書籍が購入可能です.ギリシャ語のまま検索ができるので,ラテン文字転写に関わる問題は生じません.こちらは日本円での取引ができ,送料込の値段も比較的安いので,購入可能なものはこちらのほうがいいかもしれません.
すでに述べたとおり一般の書籍はそう安くありませんが,ギリシャでは大部の高校生向け教科書が単価 3〜6 ユーロくらいの破格の安さで市販されており,とくにギリシア史や古典ギリシア語のものなどは,ギリシア語を学ぶ日本の私たちが手もとにもっていてもおもしろいのではないでしょうか.
ヘブライ語 (イスラエル).―― מאגנס (www.magnespress.co.il) はヘブライ大学の出版局にあたるようです.インターナショナル版 (英語版) への切りかえができ,メールでの連絡も英語でできます.支払いはドル建てでした.発送は平均的な対応ですが,エルサレムから日本への配達が予想よりずっと早くて驚きました (発送メールから 4, 5 日くらい).サイトにもよく読むと注意書きがありますが,各書籍の重量が記載されていて,合計が何 kg だかを超えると配送手段の都合で送料が跳ねあがり,その場合は同じものを 2 度にわけて注文するほうが安上がりになります.
都合 2 度こちらから本を購入しましたが,2 度とも問題が発生してメールでクレームを入れる事態になりました.1 度めは買った本の一部 (計 16 ページ) が印刷不良で完全な白紙になっており,交換を申しこんだところ返品不要で新しいものをお送りいただきました.2 度めは 6 冊注文したうち 1 冊が入っていなかったのですが,前回のことがあったぶんなんだか申し訳なく,まったくこちらの落ち度ではないのにあきらめてしまいました (4 千円くらいの損).
ただし送料がバカにならないので,このうち英語およびドイツ語の書籍については,日本の Amazon.co.jp から購入したほうが安上がりになる場合が多いです.とくに英語の書籍は日本に在庫していることが多く,デジタルパブリッシングで日本国内の印刷が委託されている場合もあり,すぐに手に入ります.同じ英語でも版元がカナダの書籍だけは,日本でもアメリカ経由でもなく直接カナダから取り寄せたほうが安いことがあります (個人的な経験ではクリー語についての本).ドイツのものはなぜだか不明ですが .co.jp の値段が多くの場合安く,「2〜3 週間以内に発送」という表示であれば直接取寄と同程度です.為替リスクを避けられるという利点もあります.
仏・伊・西の書籍については,日本 Amazon では商品のページが存在しないか,あってもほとんどは注文不可能もしくは「一時的に在庫切れ」となっており,後者の場合注文じたいは可能ですが 3, 4 ヶ月後に取寄不可能だったとのメールがきます.これらの国の本のうち日本 Amazon から注文が可能なまれな例外は,ごく大衆的な本です (有名な文学作品のペーパーバックなどで,この場合はドイツと同様 .co.jp を通しての注文が安いことがあります).
ちなみに,英語以外の書籍を日本 Amazon で検索するには,直接日本 Amazon で検索するのではなく,まず当該国のサイトに行って気になる本を見繕ったあと,その ISBN をコピーして検索 (もしくは URL バーから直接ジャンプ) することをおすすめします.その理由は書籍のタイトルに含まれる文字で,日本 Amazon では仏・伊・西の書籍がアクサンやセディーユつきの文字が文字化けしたまま登録されていることが少なくないこと,また独の書籍ではウムラウトつきの文字,たとえば ä が ae と代用表記されていたり,されずに a となっていたりすること,あるいは語尾変化のファジィ検索が日本のデータベースでは弱い [注] といった理由から,正しいタイトルで検索をしても見つからない場合に自分の手落ちなのかそもそも商品ページが存在しないのかわかりかねるためです.求める内容の書籍にどんなものがあるのかという最初の調査を日本 Amazon でするべきでないのも同じ理由です.
[注] たとえば言語名の -isch, -ische, -ischen といった形はタイトルのつけかたによって変わりますが,こうしたものをドイツの検索エンジンではどれからでも引いてくれる一方,日本では想定していないのでいちどでうまくひっかかりません.各言語の単複も同様です.英語についてはすでに融通が利くようなのですが.
アメリカの Amazon を例外として,各国とも送料は固定 10 ユーロ強 (イギリスはポンド換算) に冊数分の上乗せがかかるので,ある程度の冊数をまとめて買うほうが得です.Amazon.com は例外的に 1 冊での送料がかなり安いので,1 冊からの注文もよくします.注文手続きに入ると,Amazon Currency Converter というサービスによって円建てで支払うか,ドル・ポンド・ユーロで決済するかを選べますが,通常のレートより約 5 円も高くなるので,よほど為替が不安定な局面を除いては現地通貨での決済のほうがよいのではないでしょうか.
到着までの日数はというと,追加で数千円出すと 2, 3 日で届くという驚くべきオプションもありますが,いちばん安い通常配送でも注文から 12〜14 日といったところです.注文の冊数が少なく小さな包みになる場合では,同じいちばん安い手段で 8, 9 日で届くことがありました.以上はヨーロッパの話ですが,アメリカだけは非常に遅く,早いほうでも 18 日程度はかかります.いずれにせよ早めの注文を心がけるべきでしょう.
古書では Amazon の関連サイトである上記各国の AbeBooks が役に立つことがあり,たいていの出品者は海外発送をしてくれます.Amazon のマーケットプレイスも重要ですが,これは国内向けの発送が多いです.いずれも国ごとにデータベースは共有されていないようなので,言語が違ってもダメもとで検索してみる必要があります.あるとき英語の絶版本で日米英の AMP ではどこも価格が 3 万円程度に高騰していたものが,なぜかフランスの AMP ですごく安く手に入ったことがあります.
ルーマニア語 (ルーマニア).―― elefant.ro. ルーマニアは EU 加盟国ですがまだユーロを導入しておらず,現在の通貨はレウ (2005 年のデノミ後の新レウ:RON) で,書籍も送料も非常に安いです (15 冊 6.9 kg で送料 50 レイ:約 1 500 円).発送はあまり早くなく,私の場合では注文から発送まで 10 日,そこから到着まで 8 日を要しましたが,発送の時点で通知のメールがなく心配でした (ただ,到着してみれば,最初の注文確定メールに書いてあった到着予定日とほぼ同じ (予定日より 1 日遅れ) でした.こういうものはクレームのつかないよう余裕をもった遅めの予定日を書くものだと思うのですが).梱包はダンボールの箱に,ダンボールを網状に裁断したウェーブクッションを緩衝材として十分に入れてあり,エコで丁寧な印象を受けます.
ロシア語 (ロシア).―― Лабиринт (www.labirint.ru) というサイトでは JCB が使えて重宝します.ロシアの通貨はルーブル (RUB) で,書籍じたいもそう高くありません.ショッピングカートとウィッシュリストが別個に保存できるので購入候補の管理に便利です [注].ここは発送も異常に早く,単価千円程度の小さな本を 20 冊ほど買ったときは,通常の配送手段なのに注文確定からたったの 4 日と数時間で届いて驚きました.梱包はずいぶん簡素で,書籍じたいも新本にしては汚れている印象を受けましたが.
[注] なにをあたりまえのことをと思われるかもしれませんが,ID を登録してクッキーも有効なのにもかかわらず時間が経つとショッピングカートが空になるというサイトも海外にはあります.不慣れな言語で本を探すのは大変で,せっかく気になる本をいろいろ見つけてカートに入れたのに消えて探しなおしになったということが何度かあり,すぐには買わないとなるとブラウザのブックマークで 1 冊ごとに管理することになります.
代替的な手段としては,日本国内にも日ソ (www.nisso.net) とナウカ (www.naukajapan.jp) という 2 大ロシア書籍専門店があり,多少割高にはなりますが,本選びから注文まで日本語で行うことができます.ただしリストにある多くの品は国内に在庫がないのが難点です.いちど買うとしばらくカタログ (分野別に原題・その日本語訳・値段を列挙した小冊子) を定期的に送ってくれるので,ロシアの最新の出版情報もわかります.
もうひとつはアメリカの Amazon.com で,一部のロシア語書籍が手に入ります.難点は書籍のタイトルがラテン翻字のため,たとえば я が ya だったり ja だったりして検索が困難です.
また,ロシアの出版事情を含む一般的な情報について,東京大学のスラヴ語スラヴ文学研究室のサイトが詳しく,参考になると思います.そちらでロシアの 2 大ネット書店として紹介されている OZON と Alib はいまのところ利用したことがないので紹介できません.
ポーランド語 (ポーランド).―― 日本から注文できるポーランド国内の書店としては merlin.pl が唯一です (ほかに,アメリカに本拠を置きポーランドの書籍を扱っている書店もありますが,品ぞろえも劣りますしドル建てで非常に高価になります).ポーランドの通貨はズウォティ (PLN) で,書籍の値段が尋常でなく安いです.ただし日本への送料が本代と同じくらいかかるので,そこまでお得ではありません (それでも安いです).ショッピングカートとウィッシュリストがあり,しかもその間の移動がワンクリックで非常に便利です (どちらの方向にもでき他方からは消えます.Amazon の「カートに保存 (後で買う)」に似ています).
この書店の最大の注意点は,「24 時間以内に発送」が大嘘だということです.何度か注文しましたが,これらのうちほとんどの本は在庫しておらず,注文から 2, 3 日たつと「入手まで日数がかかりますが,1. 待ちますか,2. キャンセルしますか」,あるいは「一部の本だけ発送できますが,1. すべてそろうまで待ちますか,2. 一部のみ発送しほかをキャンセルしますか,3. すべてキャンセルしますか」と選ばせるメールがきます.とはいえそんなに驚くほど待つことにはならず (都合 5〜7 日くらい),発送から到着まではかなり迅速でした.発送メールはなぜか同じものが何度もきました.
Amazon.com にも少なからずポーランド語の書籍の登録がありますが,データがあるだけで実際に (AMP でなく Amazon から直接) 注文できるものは見たことがありません.
(2015 年 8 月 17 日追記) Merlin.pl さんに 3 度めの注文をしました.今回は注文から 2 日後の発送,さらに 5 日後つまり注文からは 7 日と 17 時間で手もとに到着しました.今回はメール通知も,注文直後の確認メール,翌日の出荷準備の連絡,翌々日の発送メールと手際よく重複もなく,また 10 冊の注文にもかかわらず遺漏がなく,最初の 2 度の注文での不手際が嘘のようでした.
ところで今回はまたべつの問題も経験しました.今回,操作をどこで間違えたのかある本の注文数量が 2 冊になってしまったのですが,注文の変更やキャンセルがサイト上ではできず,定められた連絡先に直接メールをするように書かれています.そこでメールで変更のお願いを書き送ったところ,相手方のメールボックスがいっぱいだとかでメールが弾かれ (2 度試し,2 度めは極力サイズを小さくするようプレーンテキストで短い文にしましたが),結局変更はできないままその本は 2 冊届いてしまいました.
セルビア語 (セルビア),クロアチア語 (クロアチア).―― Knjižara.com (www.knjizara.com) がおそらくこれも唯一日本への発送を行っているのではないでしょうか.セルビアの通貨はディナール (RSD) ですが,日本への発送を選ぶとユーロ建てに切りかわります.品ぞろえはわりと豊富で,ほとんど同じ言語を話す隣国クロアチアの出版物も購入できます.それに加えてセルビア国内のセルビア語でもキリル文字とラテン文字が併用されている事情から,本ごとにどちらの文字表記かが示されているのがおもしろいところです.発送は迅速で,輸送日数もヨーロッパからの平均的な長さ (注文から 10 日内外) でした.
ここにははじめ注文がうまくいかずメールで問いあわせたのですが,英語で非常にきめ細かに対応していただきました (注文品のリストを伝えてくれれば金額を見積もるので銀行振込で発送できるとのこと.最終的にサイト上でうまくいったので不要でしたが).注意点として,ロシア語の項で触れましたが,ショッピングカートの中身が時間経過で消えます.
リトアニア語 (リトアニア).―― knygos.lt. 発送時にメール通知がきます.国外への配送は TNT Express という業者がやっていて,トラッキングサービス (説明は英語) で荷物の所在地をリアルタイムで確認できます (カウナスから発送されたあと翌日にヴィリニュス,そこから国外に出て 4 日 (初日を入れると 5 日め) でポーランドのアンノポル, 5 日でドイツのハノーヴァー,7 日でフランクフルトを経て,8 日で成田に到着したようです.そのあと税関などでもう 3 日かかっています).発送から到着までは 11 日でした.リトアニアは 2015 年元日に 19 ヵ国めのユーロ導入国となっています.クレジットカードによる支払はどのカードでも PayPal アカウントの登録が必要になるらしく,VISA も MC も JCB も使えます.梱包は適切でした.
ラトビア語 (ラトビア).―― Zvaigzne ABC (www.zvaigzne.lv) にはいちど大量の本を注文したのですが,消印によると注文の 2 日後には発送され,なんとその 5 日後には届きました (ただし注文確認メールのあと発送の連絡はありませんでした).国外への配送オプションは 2 通りありましたが安いほうでこれだけ早いのは驚きです.梱包はあまり親切ではなく,かなり隙間のある大きなダンボールに緩衝材もなく詰めこまれているだけでした.送料の計算は冊数ではなく重量のみによっており,階級別なので軽い本なら何冊か追加しても送料が変わらないことがあります (送料は注文画面に入らずともカートで随時確認できます).私は試していませんが電子書籍も充実しているようです.ラトビアでは 2014 年の元日に 18 ヵ国めのユーロ導入国となっています.ラトビアも本が比較的に安く,私が買ったなかではラトビア語–ポーランド語辞典,B5 判に近い大きさで 1 550 ページ,本体重量 2 kg を超える大部のもの (それも版権切れのリプリントではなく,インターネットなどの用語も入った最新のもの) が,たったの 10 ユーロというのが最大の驚きでした.
エストニア語 (エストニア).―― エストニアには 4 つのオンライン書店があるようで,そのどれも日本への配送が可能です.ここではそのうち 2 つを紹介します.見たかぎりではどちらか一方でしか売っていない本も多く,共通部分では価格の差もあるので,両方を調べてうまく使いわけるのがよいでしょう.エストニアの通貨は 2011 年元日よりユーロです.
注意すべきこととして,ここで紹介しないサイトも含めてどのストアもアカウント作成ができません.その理由はエストニアの国民番号制で,エストニアでは行政から日常生活に至るまでかなり広範に国民 ID を使用しているらしく,アカウント作成時にもその入力が必須のため私たちには不可能です.ユーザ登録をしなくても注文は可能です.
Apollo (www.apollo.ee) は,日本語によるエストニア (語) 紹介のウェブサイトでよくあげられているので,いちばん老舗なのかもしれません.もうひとつは Rahva Raamat (www.rahvaraamat.ee) で,スタイリッシュで現代的なページデザインが目を引きます.送料はどちらもかなり割高ですが,前者のほうが固定部分が大きくある程度まとまった冊数まで変わらず,後者は冊数に応じて微調整されるようでした.注文から到着までの日数は前者が 14 日,後者が 9 日でしたが,発送後配送に要した日数はどちらも 6 日ほどのようです.梱包は後者のほうが丁寧に感じましたが,もともとの書籍の状態がどちらもとてもきれいで,私のこれまでの 100 回を超える海外取引のなかでもこれほど美しい状態の本に出会ったことはありません (エストニアの出版社・印刷所の品質管理が厳格なのか,ただの幸運な偶然なのかはわかりませんが).
トルコ語 (トルコ).―― paNdora (www.pandora.com.tr). トルコの通貨はリラ (TRY) で,書籍はかなり安いです.注文から到着までは 11 日でした (発送連絡がないので発送までの日数はわかりませんが,商品ごとに在庫状況が書いてあり注文時におおよその日数がわかります.今回の場合はおそらく発送までに 5 日,配送に 6 日というところだったでしょう).
ギリシャ語 (ギリシャ).―― Bibliohora (www.bibliohora.gr). ギリシャ国内最大手と見られる Books.gr が発送を行っていないので,これも選択肢は限られます.ギリシャは近年財政破綻の危機に揺らいでいますが,通貨はいまのところユーロ (EUR) で,送料も書籍もかなり割高に感じられます (いっそのことドラクマに戻ってもらえば激安で買えそうですが).この書店は発送通知のメールをくれず,到着まで 17 日ほども待ったので,本当に商品が届くのか不安でした.
ギリシャ語の書籍は各国 Amazon での取り扱いは非常に限定的ですが,姉妹サイトの Book Depository では若干のギリシャ語書籍が購入可能です.ギリシャ語のまま検索ができるので,ラテン文字転写に関わる問題は生じません.こちらは日本円での取引ができ,送料込の値段も比較的安いので,購入可能なものはこちらのほうがいいかもしれません.
すでに述べたとおり一般の書籍はそう安くありませんが,ギリシャでは大部の高校生向け教科書が単価 3〜6 ユーロくらいの破格の安さで市販されており,とくにギリシア史や古典ギリシア語のものなどは,ギリシア語を学ぶ日本の私たちが手もとにもっていてもおもしろいのではないでしょうか.
ヘブライ語 (イスラエル).―― מאגנס (www.magnespress.co.il) はヘブライ大学の出版局にあたるようです.インターナショナル版 (英語版) への切りかえができ,メールでの連絡も英語でできます.支払いはドル建てでした.発送は平均的な対応ですが,エルサレムから日本への配達が予想よりずっと早くて驚きました (発送メールから 4, 5 日くらい).サイトにもよく読むと注意書きがありますが,各書籍の重量が記載されていて,合計が何 kg だかを超えると配送手段の都合で送料が跳ねあがり,その場合は同じものを 2 度にわけて注文するほうが安上がりになります.
都合 2 度こちらから本を購入しましたが,2 度とも問題が発生してメールでクレームを入れる事態になりました.1 度めは買った本の一部 (計 16 ページ) が印刷不良で完全な白紙になっており,交換を申しこんだところ返品不要で新しいものをお送りいただきました.2 度めは 6 冊注文したうち 1 冊が入っていなかったのですが,前回のことがあったぶんなんだか申し訳なく,まったくこちらの落ち度ではないのにあきらめてしまいました (4 千円くらいの損).