lundi 3 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (1)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 1 課から第 4 課までを扱う。

本書はわが国の大学でもっともよく使われてきているギリシア語教科書であり、その読者の多さに比例して、本書の解答案を作ろうとする試みはすでにネット上に数多い。市場調査ということでその先駆者たちのサイトを列挙してみると以下のようである (ほかにも 3 つ 4 つ、あまりにも短いものや消えてしまったところがあるが、それらは省く):

このなかで最終課まで到達しているかたが 1 人だけいらっしゃるが、載せているのは和訳問題のほうだけである。作文に挑戦しているかたがたについては、いずれも本全体 (全 70 課) の半分より手前で頓挫してしまっている。簡単に見てみたかぎり、解答の精度としていちばんあてになるのは最後の timestalker さんのところだと私には思われるが、それだけに作文がないのは惜しい。

ともあれ、和訳問題と作文問題とをぜんぶやりきってはじめて完走だと考えるとすれば、以上のサイトはひとつとして半分を超えたところがないということになる (厳密に言うと和訳のほうが分量が多いので、和訳を完走した Weetabix eater さんは半分強であろうか)。また正確さについて見ても——私じしん他人のことを言えた立場ではないが——じゅうぶん満足と言いきれるものは見あたらない。ここに屋上屋を架すゆえんである。

当サイトの解答には複数の長所がある。まずはなによりも、最後まで完結した唯一のものであるということと、作文問題も省略せずにすべて取り組んでいること。それからこれは後追いの者として当然の義務であろうが、正確さの点でも改善しているということ (少なくとも和訳については)。そしてわかりにくいと思われた箇所には煩を厭わず解説のコメントを付して、初学者の理解の便を図ったことである。とはいえ私の作ったものにも不備はあるに違いないから、必要であれば上掲のサイトとも見比べつつ注意してご利用いただけばまだしも安全であろう。




I 字母.発音.音韻の分類.気息記号


§13. 練習問題 1


〔発音練習なので文字で答えてもしょうがないが、いちおうカタカナで書いておく。発音するときは帯気音を無気音と区別し、また υ [y] はユ [ju] とは違うことに注意すること。下書きのイオータは括弧書きした。〕

1 行め:ソークラテース、アイスキュロス、アンゲロス、オイコノミアー;
2 行め:クセノポーン、スピンクス、テオス、ムーセイオン;
3 行め:メーテール、ヘッラス、パラデイソス、トゥーキューディデース;
4 行め:アウトノミアー、アントローポス、アストロノミアー、ティーマー (イ);
5 行め:プシューケー、ポーネー、ドラーマ、ピュシス。

§14. 練習問題 2


1 行め:ἡρως, παιδαγωγος, Βακχος, συνταξις,
2 行め:ὀρχηστρᾱ, δαιμων, Χιμαιρα, ῥητωρ,
3 行め:ἠχω, Ἀπολλων, αἱρεσις, ἀναλυσις,
4 行め:Ἡρακλειτος, ὁμογενης, πῡς, ὑποθεσις,
5 行め:φαλαγξ, ΠΟΛΙΣ, ΚΥΚΛΩΨ, ΖΕΥΣ.


II 音節.アクセント.句読点.語末音


§32. 練習問題 3


太字の部分を高く読む。〕

1 行め:アイスキュロス、ントローポス、スンクス、リュトス;
2 行め:デーモクラティアー、ドーマ、パデイソス、オー (イ) イオン;
3 行め:ヘーオドス、ランクス、クセノーン、ビブオン;
4 行め:トゥーキューディデース、パテル、スイラ、ヒュイス。


III 動詞変化.現在直説法能動相


§48. 練習問題 4


1. 君は書く。

2. 私たちは命ずる。

3. 君たち [彼ら] 2 人は信ずる。

4. 彼らは逃げるか。

5. 君たちは戸を閉める。

6. なぜ君たちは逃げるのか。

7. 私は言うのではなく、書く。

8. 彼はいかにあるか (=具合・調子はどうか)。〔のっけから独習者泣かせの問題。与えられている語義からは「いかに持っている」か「いかにある」としか訳せないし、後者だと判断してもいまひとつ意味はわからない。これはじつは健康状態を尋ねているのだが説明が足りない。注釈をつけるか、少なくとも次の和文希訳問題に類例を含めるべきだった。〕

9. 彼はよくあるのではなく、悪しくある (=具合はよくはなく、悪い)。〔同前。単語欄に従い「悪しくある」などと訳してみてもまるで意味不明で、これでは独習は不可能。実を言うと、はるか後の LX 課 (!) の作文問題に至ってはじめて κακῶς ἔχω が「加減がわるい」という意味であることが判明するので、この疑問を終盤まで覚えていればそこでようやく自己完結することになる。〕

10. 彼は言うのみならず、信じもする。

§49. 練習問題 5


1. πιστεύουσιν.

2. κελεύετε.

3. γράφει ;

4. τί κλείεις τὴν θύρᾱν ;

5. οὐ μόνον γράφουσιν, ἀλλὰ καὶ λέγουσιν.


IV 名詞変化.第一変化 (Α-変化) の名詞 (1) — ᾱ に終る女性名詞


§62. 練習問題 6


1. 家々のなかには戸が (ある)。

2. 彼らは暴力に屈する。

3. (その) 家々はその地方にあった。

4. 夕方には家の影が延びる。

5. 知恵は幸福の戸。〔τῆς εὐδαιμονίᾱς「幸福の」の属格が前後どちらにかかるのかは、文法だけからは決定できず文脈の判断によるほかない。「幸福の知恵は戸」では意味が通らないので、さきのようにする。次の V 課の和訳 2. とも比較せよ。〕

6. 家は戸をもっている (=家には戸がある)。

7. なぜ君たちは軍隊をその国へ送らないのか。

8. なぜ君は昼に家の戸を閉ざすのか。

9. 不正は災いをもたらす。

10. 欲望は幸福を害する。

§63. 練習問題 7


1. ἐν τῇ χώρᾳ οἰκίᾱν ἔχει [ἔχει οἰκίᾱν]. / τὴν οἰκίᾱν ἔχει ἐν τῇ χώρᾳ.〔οἰκίᾱν に冠詞をつけるべきか否か、これは文の重点がどこにあるかと関わってくる。問題文は「彼はその地方に家をもっている」とあるが、彼が家を所有しているということが新情報であるなら前者のように無冠詞で文末近くに置く、逆に家がどこかにあることは前提で「その地方に」という所在が重要であるなら後者のように、家のほうは冠詞つきで文頭で早くも言ってしまうのが自然であると思う。〕

2. οὐκ εἴκει τῇ βίᾳ.

3. εἰς τὴν χώρᾱν ἄγομεν στρατιᾱ́ν.

4. τῆς ἡμέρᾱς οὐ προτείνει ἡ σκιᾱ̀ τῶν οἰκιῶν.

5. ἡ ἀδικίᾱ οὐ φέρει εὐδαιμονίᾱν, ἀλλὰ συμφορᾱ́ς.

Aucun commentaire:

Enregistrer un commentaire