田中利光『ラテン語初歩』(岩波書店、初版 1990 年、改訂版 2002 年) 第 5 課から第 8 課までの解答例 (旧版・新版両対応)。まだまだ内容が簡単なためとりたてて文法について注意することがない。
名詞・形容詞の「活用」という用語の不適切であることは前回述べたとおりだが、動詞の「第五活用」というのも——こちらは好みの問題に過ぎないが——あまりよろしくない。多くの本では「3b 型」や「第三変格活用」などと呼ばれているもので、これは表の並べかたにも関わることだが、この「第五」は第三と第四の特徴を分けもっているのだから、その間に入るのが学習上見比べやすくわかりよいと思われる。
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V 動詞 第三,第四,第五活用
§48. [練習問題 7]
1. 君は知っているか。
2. 私は知らない。
3. 君はよく生きていない。
4. 君は長く生きているが知恵を学んでいない。
5. 君は見ることも聞くこともしない。
旧 1. =新 1. + 2.
旧 2. 彼は金銭を受けとらない。
旧 3. 彼らは読みも書きもしない。
旧 4. 彼らは名声を得ようとする。
旧 5. 君はよく生きていないが、悪く (生きている)。
旧 6. 彼は少女に手紙を書くのに、送らない。
旧 7. 彼らは長く生きているが、知恵を学んでいない。
旧 8. 私たちは思慮分別を失い、倒れる。
旧 9. 私たちは速く走るが、倒れない。
旧 10. 蛙は蝿をとり、呑みこむ。
旧 11. ギリシア人たちは知恵を求める。〔新版では第 7 課末尾の §69 [引用句 3] として紹介される。〕
§49. [練習問題 8]
1. Scītis?
2. Nescīmus.
3. Nōn bene vīvitis.
4. Diū vīvunt et sapientiam discunt.
5. Neque vidētis neque audītis.
旧 1. Nescītis sed nōn discitis.
旧 2. Neque legis neque scrībis.
旧 3. Nōn glōriam sed sapientiam quaerunt [petunt].
旧 4. Lentē curritis sed caditis.
旧 5. Pecūniam dōnāmus sed nōn capiunt.
この末尾に新版では §50 として「引用句 1」が入るため、次の課から節番号がずれる。
VI 名詞 第二活用 (1)
§56 (旧 §55). [練習問題 9]
1. 主人は奴隷たちを呼ぶ。
2. 奴隷たちは主人に仕える。
3. 奴隷たちは主人の言葉を聞く。
4. 人生は刑罰 [苦悩] である。
5. 戦争とは悪である。
旧 1. 医者は世話をし、自然が健康にする。
旧 2. 自然が健康にするのであり、医者がではない。
旧 3. =新 4.
旧 4. 戦争とは悪である。〔新 5. と同じだが、こちらは複数形。〕
旧 5. 戦争の悪は大きい。
旧 6. 君たちは戦争によって祖国を破滅させる。
旧 7. =新 2.
旧 8. =新 1.
旧 9. 私たちは友人たちの言葉を信頼する。
旧 10. 君たちは事実を知らない。
旧 11. 哲学は心の耕作 [訓練] である。〔新版では §101 [引用句 5] としてもっと詳しい説明がある。〕
§57 (旧 §56). [練習問題 10]
1. Servī dominum vocant.
2. Dominus servō servit.〔語形変化の練習にしてもこの問題文は変ではないか?〕
3. Dominus verba servōrum audit.
4. Vīta vānitās est.
5. Bella sunt mala.
旧 1. Verbīs medicī nōn crēdunt.
旧 2. Bellum supplicium est.
旧 3. Servī dominum cūrant.
旧 4. Nātūra docet nōn verbō sed factō.
旧 5. Saepe amīcō [ad amīcum] epistulam scrībit.
VII 形容詞活用 第一,第二活用 (1)
§67 (旧 §65). [練習問題 11]
1. 主人はよい奴隷たちをほめ、悪い (奴隷たち) をとがめる。
2. 奴隷たちはよい主人をほめ、悪い (主人) を軽蔑する。
3. 少年は長い手紙を愛する少女へ送る。
4. 少年は愛する少女にバラを贈る。
5. 蝉は蝉に親しく、蟻は蟻に (親しい)。
旧 1. =新 1.
旧 2. =新 2.
旧 3. 真の友人はまれである。
旧 4. 悪い者たちもよいものを求める。
旧 5. =新 4.
旧 6. =新 3.
旧 7. (彼は) 多くのことを少ない (言葉) で言う。
旧 8. よい女 (=妻) は男 (=夫) を多くのしかたで助ける。
旧 9. 神々は大きなことを慮り、小さなことを顧みない。
旧 10. わが魂が崇めるのは主である。
旧 11. =新 5.
§68 (旧 §66). [練習問題 12]
1. Dominus laudat bonum servum, culpat malum.
2. Servī laudant bonōs dominōs, malōs contemnunt.
3. Puella epistulās multās ad cārum puerum mittit.
4. Puerī cārīs puellīs rosās dōnant.
5. Cicādae cicādīs cārae, formīcae formīcīs.
旧 1. =新 3.
旧 2. Malī amīcī multī.
旧 3. Aegrōtī bonum medicum laudant.
旧 4. Sapientia mea parva est.
旧 5. Bonī virī fēminās nōn contemnunt.
VIII 未完了過去直説法能動相
§75 (旧 §72). [練習問題 13]
1. 君は不正を見ていたのに黙っていた。
2. 彼らは黙っていたが、叫んでいた。〔これだけでは意味不明だが、キケローの『カティリーナ弾劾演説』I, 21 における言葉 « cum tacent, clāmant. »「彼らは沈黙のうちに叫んでいるのだ」が下敷きにある。旧版にはこの文句への言及がある。〕
3. 彼らは聞いていたが、黙っていた。
4. 私は不正に対して抵抗していた。
5. 私は少女にバラを毎日送っていた。
旧 1. 彼らは聞いていたが、理解していなかった。
旧 2. 私たちは忠告していたが、君たちは聞いていなかった。
旧 3. 彼は言っていただけでなく、信じていた。
旧 4. なぜ君は少女にバラを毎日送っていたのか。
旧 5. 私はそのとき (その) 少女を愛していたが、いまでは愛していない。
旧 6. 少女は森のなかで迷っていた。
旧 7. 私たちは不正に対して抵抗していた。
旧 8. 私は不正を見ていたが、黙っていた。
旧 9. 彼らは黙っていたときに [黙っていたことによって] 叫んでいた。〔こちらでは接続詞 cum を使っており、新 2. と少し違う。説明の cum という用法。〕
旧 10. ベルガエ族はガリアに住んでいた。
§76 (旧 §73). [練習問題 14]
1. Injūriam vidēbant sed tacēbant.
2. Tacēbāmus sed clāmābāmus.
3. Audiēbam sed tacēbam.
4. Resistēbāmus contrā injūriam.
5. Ad puellam rosam cottīdiē mittēbat.
旧 1. =新 1.
旧 2. Nōn sōlum tacitē dīcēbāmus, sed etiam clāmābāmus.
旧 3. Errābātis sed rīdēbātis.
旧 4. Bellum patriam meam perdēbat.
旧 5. Factum nesciēbās.
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