田中利光『ラテン語初歩』(岩波書店、初版 1990 年、改訂版 2002 年) 第 44 課から第 47 課までの解答例 (旧版・新版両対応)。この箇所は初版と改訂版とのあいだで唯一章の順番が食い違っているところで、改訂版では「XLIV 形容詞の不規則な比較」「XLV 数詞」となっているところ、初版では逆に「XLIV 数詞」「XLV 形容詞の不規則な比較」なのである。最初に述べた方針のとおり、改訂版の読者の便宜を優先して掲載の順番は改訂版に準拠したものとする。
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XLIV (旧 XLV) 形容詞の不規則な比較
§411. [練習問題 85] (旧 §389. [練習問題 87])
1. 愛の見せかけは憎しみより悪い。
2. 最良のものの堕落は最悪 (である)。
3. 悪いぶどう酒より悪いものは何もなく、よい (ぶどう酒) よりよいものは何もない。
4. 死は日々に私たちにより近い。
5. 何者も欠点なしに生まれない;最小の (欠点) を持つ者が最良なのだ。
旧 1. =新 1.
旧 2. =新 2.
旧 3. =新 3.
旧 4. =新 4.
旧 5. 期待された勝利よりも確実な平和のほうがよりよくより安全である。
旧 6. =新 5.
旧 7. インダス (川) はすべての川のうちでもっとも大きい。
旧 8. マールクスはクィーントゥスよりも年の点で大きい (=年上である)。
旧 9. 敵が多ければ多いほどそれだけ勝利の栄光は大きい。
旧 10. 私たちの金は (私たちの) 心よりもより多く信じられる。
旧 11. もし君の隣人が君の (馬) よりもよい馬を持っているとして、君は君の馬を選ぶか、それともその人の (馬を) か。—— その人の (馬を選ぶ)。
旧 12. 時間の点でより前にいる者は、法 [権利] の点でよりまさっている。
§412. [練習問題 86] (旧 §390. [練習問題 88])
1.〔=和訳の 1. と同文。〕
2. Corruptiōnem optimī pessimam (esse) putō.
3.〔=和訳の 3. と同文。〕
4. Mors vōbīs cottīdiē est propior.
5. Nēmō sine vitiīs nāscitur; quantō minōra cujus vitia, tantō ille melior est.〔和訳の 5. と同文でもよいと思うが、比較級を使わせたい雰囲気があるのでその線で作文してみた。〕
旧 1. Pejor est nōn facere quam facere.
旧 2. Pessimum est tacēre.
旧 3. Melior pāx est bellō.
旧 4. Pāx nōn semper optima est.
旧 5. Nōs minorēs nātū sumus quam vōs.
XLV (旧 XLIV) 数詞
§417. [練習問題 87] (旧 §383. [練習問題 85])
1. 私の娘は 18 歳だ。
2. カエサルはほぼ 56 歳で殺され、キケローはほぼ 63 歳で (殺された)。
3. キリスト紀元前 44 年にカエサルは殺され、キリスト紀元前 43 年にキケローは (殺された)。
4. ローマ建国紀元 710 年にカエサルは殺され、ローマ建国紀元 711 年にキケローは (殺された)。
5. その商人は 1 000 頭の牛を売り、3 000 頭の羊を買った。
旧 1. =新 1.
旧 2. =新 2.
旧 3. ローマの都では 1 年ごとに 2 人ずつの執政官が選ばれていた。
旧 4. =新 5.
旧 5. =新 3.
旧 6. =新 4.
旧 7. ローマ人民には 3 つの種類の民会があった:氏族の民会 [クーリア民会]、百人隊の民会 [ケントゥリア民会]、地区の民会 [トリブス民会]。
旧 8. セルウィウス・トゥッリウス王はローマ人民を財産に応じて 6 つの階級に分けた:6 番めの最低の階級が無産者 [プロレタリア] 階級である。
旧 9. ローマ人はカルタゴ人との戦争を 3 回行った。
旧 10. カエサルは 5 回執政官に、4 回独裁官になった。
§418. [練習問題 88] (旧 §384. [練習問題 86])
1. Fīlius ejus vīgintī ūnum annōs nātus est.〔年齢は広がりの対格なので ūnum。〕
2. Caesar mortuus est quīnquāgintā sex ferē annōs nātus, Cicerō sexāgintā trīs ferē annōs nātus.
3.〔=和訳の 3. と同文。〕
4.〔=和訳の 4. と同文。この 2 問も 2. のように「亡くなった」に変えればいいのにミスではないか?〕
5. Eī mercātōrēs vēndidērunt duo mīlia boum et ēmērunt mīlle equōs.〔bōs「牛」の複数属格は不規則。〕
旧 1. =新 1.
旧 2. Phaedrus nātus est ferē annō duodēvīcēsimō ante Christum nātum.
旧 3. Mihi sunt quattuor fīliae. / Quattuor fīliās habeō.
旧 4. Nōnne Servius dīvīsit populum in quīnque classēs?
旧 5. Mīlle Rōmānī vīcērunt decem mīlia hostium.
XLVI 動名詞 (gerund)
§429 (旧 §400). [練習問題 89]
1. 忍耐が欠けている者はもっとも教えることに向いていない。
2. 少年たちは遊んだあとにより多くの力を学ぶことに用いる。
3. あえて (=思いきって) することで勇気は増し、ためらうことで恐れが (増す)。
4. カエサルは地勢を知るために騎兵たちを先遣した。
5. 老練なゲルマーニア人たちは馬に乗ることと泳ぐことにきわめて熟達している;なぜなら少年のころから馬に乗ることと泳ぐことに努力するから。
旧 1. =新 1.
旧 2. =新 2.
旧 3. =新 3.
旧 4. =新 4.
旧 5. =新 5.
旧 6. キケローは善くかつ幸福に生きることについて多くのことを説明した。
旧 7. 昼は行動の時間、夜は休息の (時間である)。
旧 8. 欠点は覆う [覆われる] ことによって助長される。
旧 9. よく分析し、真と偽を区別することの技術を私たちは知らない。
旧 10. 原告にとって証明することの重荷が負担となる。
旧 11. 私たちは教えることによって学ぶ。
旧 12. 滴は石を穿つ、力によってではなく頻繁に落ちることによって。
§430 (旧 §401). [練習問題 90]
1. Eī quibus dēest patientia minimē aptī docendō sunt.
2. Puerī post lūsūs plūs vīrium afferent ad discendum.〔なんだか間違い探しのようなので、和訳との相違点に下線を引いておく。〕
3. Audendō virtūs crēscet, tardandō timor.
4. Caesar equitem loca cognōscendī causā praemittit.
5. Veterēs Germānī equitandī et natandī erant perītissimī.
旧 1. Patiendō discimus.
旧 2. Germānī pugnandī erant perītissimī.
旧 3. Puerī legendō et scrībendō operam dant.
旧 4. Discipulī artem discendī, magistrī docendī scīre dēbent.
旧 5. (Eī) ad edendum vīvunt.
XLVII 動形容詞 (gerundive)
§436 (旧 §407). [練習問題 91]
1. すべてのことはそれ自身の時間 [時機] になされるべきである。
2. 国家は最良の男たちによって管理されるべきである。
3. すべての人間たちによって死なれねばならない (=人間はすべて死なねばならない)。
4. 厳格に教育されるべき少年たちを君は甘やかして教育している。
5. 冬が始まるとカエサルは軍団が冬季陣営のなかへ引率されるべく配慮する。〔hieme ineunte は独立奪格。〕
旧 1. =新 1.〔括弧内は「すべてのことは時機をもつ」。この部分が新版では §438 [引用句 27] になる。〕
旧 2. =新 2.
旧 3. =新 3.
旧 4. 私たちによって祖国と自由のために戦われるべきである (=私たちは……戦うべきである)。
旧 5. =新 4.
旧 6. 何物も人によって嫉妬と同じほどに恐れられるべきものはない (=人が嫉妬より恐れるべきものは何もない)。
旧 7. =新 5.
旧 8. 君によって舌が制御されるべきである (=君は舌 [言葉づかい] を制御するべきである)。
旧 9. 知恵は生きることの技術と考えられるべきである。
旧 10. 誰であれ自分の技術に熟達した者は信頼されるべきである。〔これまでの問題のように与格 cuilibet を動形容詞の行為者の与格と考えると迷路にはまることになる:すなわち「A によって V されるべき → A は V すべき」と置換すると「誰であれ信頼すべき」となり間違いになる。正しくはこれは crēdendum < crēdō の与格目的語である。行為者はとくに示されていない不定の文 (このように混乱のおそれのある文では、もし行為者が必要なら与格でなく通常の〈ā + 奪格〉で示される。中山『標準ラテン文法』§59 B.)。〕
旧 11. 好みについて論議されるべきではない。
旧 12. おのおのの最大の幸運は最小に信頼されるべきである (=もっとも信頼してはならない)。
§437 (旧 §408). [練習問題 92]
1. Omne suō tempore faciendum est.
2. Arbitror rempūblicam gerendam esse virīs meliōribus.
3.〔=和訳の 3. と同文。〕
4. Puellās sevērē ēducandās ēducātis indulgenter.
5. Fīliās bene ēducandās cūrat.
旧 1. Nunc nōbīs agendum est.
旧 2. Vōbīs colenda est lībertās.
旧 3. Lībertās colenda nōn colunt.
旧 4. =新 5.
旧 5. Āctōrī probandum est.
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