田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 41 課から第 44 課までを扱う。
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XLI 第三変化の名詞 (4) — σ 語幹 (ες, ας) の名詞
§407. 練習問題 78
1. 悪い利得はつねに罰をもたらす。
2. 悪い利得の望みは罰の始まり。
3. 煽動家たちは大衆に (彼らが) 喜ぶように語っている。
4. 人間にとっては時が性格の試金石である。
5. 輝ける家も大量の黄金も氏族の栄誉も支配権の大きさも、心には静穏をも平和をも与えない。
6. 私は年に 3 度アテーナイの友人たちのところへ来ている。
7. 三段橈船の指揮者はトリエーラルコスと呼ばれていた。
8. 肉はどこにある。——ほら、テーブルの上に肉と葡萄酒が (ある)。
9. 肉体は剣によって傷つけられるが、精神は嘘によって (傷つけられる)。
10. アンタルキダースは、青年たちの徳 [勇気] はスパルタの城壁だと言っていた。
§408. 練習問題 79
1. ὑπὸ τοῦ Σωκράτους ἐπαιδεύοντο [πεπαίδευνται] πολλοὶ νεᾱνίαι.〔「ていた」という問題文は未完了過去にも現在完了にもとれそうだが、「によって」に ὑπό を使えという初歩的な指示がわざわざ与えられているからには、(現在完了+与格行為者ではなく) 未完了を使ってほしいのかもしれない。〕
2. τοῖς στρατιώταις δίδωσι οὐ μόνον σῖτα, ἀλλὰ καὶ κρέᾱ.
3. ἐν τῇ ῞ῡλῃ ἐστὶ πολλὰ γένη θηρίων.〔日本語とは逆で、「種類」のほうが主格で「野獣」がそれを修飾する属格。〕
4. τῆς Σπάρτης τείχη ἐστὶν ἡ ἀρετὴ ῡ̔μῶν [ἡ ῡ̔μετέρη ἀρετή], ὦ νέοι.
5. αἰσχρόν ἐστι πλουτεῖν ἀδίκῳ κέρδει.
XLII 関係代名詞
§417. 練習問題 80
1. 誰であれ他人を傷つける者は自分自身をも傷つけるのだ。
2. ほかの人たちと共通に私たちがもっている悪いこと [欠点] は、私たちにとってより軽いものに見える。
3. 君たちが市民たちから得ている尊敬と名声はなんと立派であるか。
4. ああ、いま私たちがもっている運命は。
5. 君が話している事柄はなんと滑稽であるか。
6. 老人たちは彼らがもっているわずかな髪にも喜ぶ。
7. それ (=家) のなかでは主人が、(ちょうど) 外では法のゆえに (律されて) あるように、自分自身のゆえにそのようにあるところの (家) が、最良の家である。〔おそらく本書中もっとも難解な問題。まず無冠詞の ἄριστος οἶκος を述語にとる (あくまで構文解析の話。訳はべつに「最良の家とは〜」と始めてもかまわない)。主語は文頭の οὗτος で、これに ἐν ᾧ 以下最後までの長い関係節がかかっている。家のなかと外での態度が対比されており、外では「法律」のためにちゃんと生活している、それと同じことを家のなかでは「自分自身」を理由として行うこと、つまり自分で自分を律するということになる。この文が理解しがたいのはひとつには関係詞の多いこと、とくに初出の τοιοῦτος ... οἷος の使いかたがわかりづらいことと、前置詞の意味の説明が十分でないことにもよるが、内容じたい現代人の考えかたとなじまない点にも理由がありそうだ。私たちの常識では家のなかだろうと当然法律の支配下にあると思っているので、あたかも家のなかには法律が及ばないかのようなこの文の主張はなかなかピンとこず、訳せても正しいのかどうか確信しづらい。ちなみに原典はプルタルコス『モラリア』中の「七賢人の饗宴」12 節一部改変。〕
8. 誰であれ名誉に注目する者はみな自由でない。
9. 誰であれ自分自身を愛さない者は誰も存在しない。
10. ほかの人たちがすることを君が欲しないところのことをするな。
§418. 練習問題 81
1. ταῦτα ποιήσω ἃ τοὺς ἄλλους ποιεῖν βούλομαι.
2. γέλοιόν ἐστι πάντα ἃ λέγεις.
3. οἳ τῑμῶσι τοὺς ἄλλους καὶ ὑπὸ τῶν ἄλλων τῑμῶνται.
4. ταῦτα μὴ λέξῃς ἃ οὐκ ἀκούειν βούλομαι.〔聞きたくない「ような」という部分を重んじるなら関係節の否定詞も μή のほうがいいかもしれない。οὐ だとなにか特定の具体的な話題が念頭にあってそれを言うなという感じ、μή ならなんであれ僕が聞きたくないようなことは言うなという意味あいだと思う。〕
5. ὡς καλὴ ἦν ἡ ῞ῡλη ἐν ᾗ ἀνεπαυόμεθα.
XLIII 希求法能動相.目的および恐怖・危惧を示す副文章における希求法
§430. 練習問題 82
1. 君が欲しがっているものを君が得られるように。
2. 私たちが案内人をもてるように、その男を将軍は私たちに送ってよこした。
3. 私たちは (自分たちのために) クセノポーンを指揮官にした、敵の国を通って私たちを導いてくれるように。
4. 彼らは市民たちによって追放されはしないかと恐れてあった。
5. なぜなら彼ら自身が同じことを蒙りはしないかと恐れたのだ。
6. 私は十分な同盟者たちを得られないのでないかとそのことを恐れていた。
7. 私は彼らがなにを言っているのか彼らにしつこく尋ねた、同時になにかを私は彼らから学べもするように。〔ἅμα はここでは与格をとる準前置詞でなく、目的語なしに副詞として用いられているが、このことは本書の語彙集その他に説明がない。原典は『ソクラテスの弁明』7 章 (22b)。私=ソクラテス、彼ら=詩人たちで、詩の難解な箇所の意味を問いただしている。〕
8. 私たちが彼らからなにか悪いものを得るのではないかという危険があった。
9. だが私は彼女を恐れてあった、なにか悪いことを計画するのではないかと。〔副文の動詞は希求法アオリストであって現在 βουλεύοι ではないので「計画している」とは訳せない。〕
10. 私は君になにか有益なことを助言するために来ていた。
§431. 練習問題 83
1. μετεπεμψάμεθα αὐτόν, ἵνα ἡμῖν χρηστόν τι συμβουλεύσειεν [συμβουλεύοι].
2. κίνδῡνος ἦν μὴ τᾱ̀ς γεφῡ́ρᾱς καταλῡ́σειαν οἱ πολέμιοι.
3. ἐφοβούμεθα μὴ κακόν τι πάθοιμεν.
4. ταῦτά σοι ἔλεξα, ἵνα μὴ πρᾱ́γματα ἔχοις.
5. αὐτοῖς ἔπεμψα δῶρον καλόν [χαρίεν], ἵνα μὴ κακῶς λέγοιεν ῡ̔μᾶς.
XLIV 希求法中動および受動相.配慮・計画を意味する文
§437. 練習問題 84
1. おお息子よ、おまえが父よりも幸運であるように、そしてほかの点では同様であるように。
2. 私が欲することがではなく (真に) 有益なことが私に起こるように。
3. その人たちには金銭が彼らから奪いとられるのではないかという不安があった。
4. 医者たちはその病が不治にならないように努めている。
5. もし私たちが、最良の人々は尊敬を受けるように、他方ほかの人々は何事も不正を行わぬようにと思いめぐらすならば、それは結構なことだろう。〔前文は ἐᾱ́ν + 接続法現在 σκοπῶμεν、後文は直説法未来 ἕξει なので、予想的未来の条件文 (§373)。〕
6. 子どもたちが幸せであるようにということが父親にはなによりも気がかりなのだ。
7. アテーナイ人ティーモテオスは、ギリシア人のうち誰も彼を恐れるのではなく、不正な者たち以外は皆が安心していられるようにと行っていた。
8. ディオゲネースはある悪人からほめられて、(自分は) なにか悪いことをしてあるのではないかと恐れていた。
9. 私たちはあなたがたが誠実でないのではないかと恐れてあった。
10. 私は双方にとって正しく [公正で] あろうとしてそのように言っていた。
§438. 練習問題 85
1. ὦ νεᾱνίαι, γένοισθε ἡμῶν εὐτυχέστεροι.
2. ὁ πατὴρ ἐφοβεῖτο μὴ ὁ υἱὸς αὐτοῦ κακῶς παιδεύοιτο ὑπὸ σοφιστῶν.
3. ἐπεμελούμην ὅπως ὁ ἀνὴρ ἐπαινεθήσεται ὑπὸ πάντων τῶν πολῑτῶν.
4. ὁ στρατηγὸς ἐφοβεῖτο μὴ αὐτὸς αἴτιος εἴη τῆς ἥττης.
5. μέλει μοι, ὦ παῖ (μου), ὅπως εὖ πρᾱ́ξεις.
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