田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 17 課から第 20 課までを扱う。
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XVII 直説法能動相副時称の人称語尾
§163. 新約聖書より
1. 善い人は心の善い宝庫から善いものを取りだすが、悪い (人) は悪い (宝庫) から悪いものを (取りだす)。
2. 神は愛であり、愛のうちにとどまる者は神のうちにとどまるのである。神もまた彼のうちに (とどまる)。
3. 汝ら自身のために地の上に宝を貯えるな、そこはしみと腐蝕が (宝を) 損ない、また盗人どもが掘って忍びこみ盗むところである。しかして汝ら自身のために天に宝を貯えよ、そこはしみも腐蝕も損なうことがなく、また盗人が掘って忍びこみ盗むこともない。すなわち汝の宝があるところ (はどこであれ)、そこには (汝の) 心もまたあるであろう。〔最終文の ὅπου ..., ἐκεῖ ... は相関する副詞。ウルガタでは ubi ..., ibi ...〕
XVIII εἰμί「ある」および φημί「言う」の現在直説法.後倚辞のアクセント
§179. 練習問題 32
1. 人間にとって時間は苦悩の医者である。〔どちらの主格名詞にも定冠詞がないので、主語は読み手が判断するしかない。X 課和訳 1. ὁ χρόνος ῑ̓ᾱτρὸς τῶν πόνων ἐστίν. にならって χρόνος のほうを主語にとるのが本命であるが、「苦悩の医者=苦悩を癒やしてくれるのは時間である」という訳も自然なのでどちらでもよいと思う。そもそも「主語」という概念がギリシア語と日本語で同一ではなく、「苦悩の医者は」と書いたとしてそれが「主語」だとは限らない。〕
2. 法は国家の魂である。
3. 神々にかけて、私たちは大地のどこにいるのか。——私たちはすでに村の近くにいる。
4. 私はそれらのことに責任はない:なんとなればまだあのときには私は子どもだったからだ。
5. かつて神々がいた、他方で死すべき者 (=人間) はいなかった時代があった。
6. ナイルはエジプトの川である。
7. 教育 [教養] は、幸運な者たちにおいては飾りであるが、不運な者たちにおいては避難所である。〔デモクリトスの言葉とされる。〕
8. 君は強いのか、若者よ。——事実たしかに私は強い。
9. 彼はその人は死に値すると言っている。
10. 彼らはそのソフィストは手紙を書かないと言っている。
§180. 練習問題 33
1. αἱ ἡδοναὶ πολλάκις αἰτίᾱ ἐισὶ λῡ́πης.
2. ἦν ποτε χρόνος ὅτε οἱ ἄνθρωποι ἄλῡπον βίον ἦγον ὡς οἱ θεοί.〔XI 課和訳 6. を参考。形容詞のかわりに ἄνευ λῡ́πης と言うこともできる (cf. XXIV 課和訳 4.)。〕
3. ὁ δικαστής φησι τούτου αἴτιον εἶναι ἐκεῖνον (τὸν ἄνθρωπον).
4. (οὗτοι) οἱ προδόται ἄξιοί εἰσι θανάτου.
5. ἆρ’ ἐστὲ ἕτοιμοι, ὦ ναῦται ;〔前の語が省音を行っているので ἐστέ にアクセントが残る (§172)。〕
XIX 疑問代名詞および不定代名詞
§188. 練習問題 34
1. 彼らはどんな [何の] 祝宴を今の時に行っているのか。——彼らはヘーラーのために祝宴を行っているのだ、異邦人よ。
2. 何のために君はその少女に指輪を与えるのか。——それがおまえにとって何だというのか、おかしな奴め。
3. 誰が敗戦に責任があるのか。——敗戦に責任があるのはその軍事委員と煽動家だ。
4. 彼らの言語は何だ。まさか彼らは蛮族ではなかろうな。〔「何」と訳したが、τίς は φωνή に一致して女性。〕
5. あなたは何のためにこちらへ来ているのか、異邦人よ。——あなたがたの (兵士たち?) の視察のために来ているのだ、勇敢な人々よ。〔「あなたがたの視察」ではない、そうであれば θεωρίᾱ にかかるのは人称代名詞 ῡ̔μῶν である。ここでは所有形容詞の複数属格 τῶν ῡ̔μετέρων が使われているから、「あなたがた」に所属する性が不明の複数属格名詞が「視察」の対象である。たとえば兵士たちとか、武具とか。〕
6. 長い (時間) を通じずに (=短いうちに、まもなく) ある客人たちが宴会に来るだろう。——その客人たちとは誰か。〔冒頭の句はいわゆる緩叙法 (litotes) で、「長くない」ということでかえって「短い」ということを強調する言いかたと思われる。〕
7. 節度とは何か。——ある種の快楽を、そして欲望を自制すること。
8. 君は現下の戦争についてどんな見解をもっているか。
9. クセノポーンはしばしば驚いてしまっていた、いったいどんな言葉によってソークラテースの告発者たちはアテーナイ人たちを説得しおおせていたのか、彼 (=ソークラテース) が死に値するということを。
10. ある人が言っていた、「私は哲学に不向きである」と。「それでは君はなぜ生きているのか」とディオゲネースは言った。
§189. 練習問題 35
1. τίνι πιστεύετε τῶν σοφιστῶν τούτων ;
2. τίνι δίδως τόν ῥόδον τόδε ;
3. τοῦ ἕνεκα ἥκουσιν αἱ παρθένοι ; θεωρίᾱς ἕνεκα ἥκουσι τῆς ἑορτῆς.〔動詞 ἥκω (cf. §117) は現在形で「来た (現在いる)」という現在完了のような意味なので、ここは現在でいい。〕
4. τί ὁ στρατηγὸς δίκην δίδωσιν ; αἴτιος γάρ ἐστι τῆς ἥττης.
5. Ἀθηναῖοί τινες λέγουσιν “ὁ Σωκράτης διαφθείρει τοὺς νεᾱνίᾱς.”
XX 現在,未完了過去および未来の直説法中動相
§198. 練習問題 36
1. 敵たちは (自分たちのために) 収穫物を畑から運んでいる。
2. 弟子よ、なぜおまえは悪行をやめないのか。
3. いつになっても人々は戦争・戦闘をやめないだろう。
4. アレクサンドロスはキュドノス河に向かって来て水浴びしていた。
5. まず第一に計画をし、それから実行せねばならない。
6. 誰も激情とともにつまずかずに計画しない。〔計画を立てるときは落ちついて。〕
7. 森のなかで休息することはなんと快いのか。〔不定詞が中性扱いになることは XVI 課の和訳 1. (注 2) で例示された。〕
8. ラケダイモーン人たちは笛とともに進軍しはじめた。
9. 私たちは (自分たちのために) 若者たちを徳へと大いに教育している。〔この中動相は間接再帰「自分たちのために」(田中利光『新ギリシャ語入門』§229 (ロ);ただし間接再帰というこの本の用語は語弊があるが)。たぶんこの若者たちは自分たちの次代を担うとかそういう点で迂遠な利害関係がある。〕
10. 私たちはその隷属から人々を解放するだろう、そしてかの人々は自由を味わうだろう。
§199. 練習問題 37
1. οὐ διὰ μακροῦ [ἐν βραχεῖ] παύσονται οἱ πολέμιοι τῆς μάχης.
2. ναῦταί τινες ἀναπαύονται παρὰ τῇ θαλάττῃ.
3. πρῶτον μὲν δεῖ τοῖς θεοῖς εὔχεσθαι, ἔπειτα δὲ στρατεύεσθαι εἰς τὴν χώρᾱν τὴν πολεμίᾱν [τῶν πολεμίων].
4. ἐν ἐκείνῳ τῷ χρόνῳ οἱ ἄνθρωποι οὐκ ἐγεύοντο τῆς δουλείᾱς ἀλλὰ τῆς ἐλευθερίᾱς.
5. ἐβουλοντο ἐν τῷ ποταμῷ λούεσθαι.
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