Kenneth G. Chapman, Graded Readings and Exercises in Old Icelandic, 1964 の Lesson 13 の翻訳。Byock and Gordon では Lesson 15 に対応する (ただしそちらでは動詞の 1・2 人称の活用は Lesson 9 でとっくに既出なので、この課での文法説明は減っている)。
目次リンク:第 1 課・第 2 課・第 3 課・第 4 課・第 5 課・第 6 課・第 7 課・第 8 課・第 9 課・第 10 課・第 11 課・第 12 課・第 13 課・第 14 課・第 15 課
❀
第 13 課
エギル・スカッラ゠グリームスソンのサガ (第 81 章) より
Síðan stóð Egill upp ok mælti hátt: “Hvárt er Ǫnundr sjóni hér í þingbrekkunni?” Ǫnundr kvazk þar vera, —“ek em feginn orðinn, Egill, er þú ert kominn; mun þat allt bœta til um þat, er hér stendr milli máls manna.” “Hvárt ræðr þú því, er Steinarr, sonr þinn, sœkir sǫkum Þorstein, son minn, ok hefir dregit saman fjǫlmenni, til þess at gera Þorstein at urðarmanni?” “Því veld ek eigi,” segir Ǫnundr, “er þeir eru ósáttir; hefi ek þar lagt til mǫrg orð ok beðit Steinar sættask við Þorstein.” “Brátt mun þat,” segir Egill, “ljóst verða, hvárt þú mælir þetta af alvǫru eða hégóma, þótt ek ætla þat síðr vera munu. Man ek þá daga, at hvárumtveggja okkrum mundi þykkja ólíkligt, at vit myndim sǫkum sœkjask eða stilla eigi sonu okkra, at þeir fari eigi með fíflsku slíkri, sem ek heyri, at hér horfisk til. Sýnisk mér þat ráð, meðan vit erum á lífi ok svá nær staddir deilu þeira, at vit takim mál þetta undir okkr ok setim niðr, en látim eigi þá Tungu-Odd ok Einar etja saman sonum okkrum sem kapalhestum.”
それからエギルは立ち上がって声高に言った:「見者オヌンドはここシングブレッカ〔=議会の坂〕にいるか否か?」 オヌンドは〔自分が〕そこにいると言った——〔そして続けた:〕「私はうれしくなったよ、エギル、君が来ていたことで;それ〔=エギルの出席〕は大いに改善すると思う、ここで人々の事情の妨げになっていることを」。〔エギルは尋ねた:〕「おまえは掌握しているのか、おまえの息子ステイナルが俺の息子ソルステインを訴追し、そしてソルステインを無法者と〔宣告〕するために群衆をともに引き連れていることを?」 「それは私が引き起こしているのではない」とオヌンドは言う、「彼らが反目していることは;私はそこで多くの言葉を言い、ステイナルがソルステインと和解することを求めた」。「すぐに明らかになるだろう」とエギルが言う、「おまえがそれを言っているのが誠実さからか、それとも偽りからなのか。ただし俺はそれ〔=後者・偽りということ〕が〔可能性が〕少ないだろうと思うが。俺はあの日々を覚えている、俺たち二人のおのおのにとって、互いに訴追しあうだとか、ここで起ころうとしていると俺が聞いているようなこんな馬鹿げたことに彼らが乗りださないよう俺たちの息子たちを制止しないだとか、そういうことはありそうもないように思われた〔日々を覚えている〕。俺には〔望ましい〕助言のように思える、俺たちが生きていてこれほど近くに彼らの諍いがあるあいだに、俺たちがこの問題を俺たちの手のもとにとって〔=引き受けて〕解決し、トゥング゠オッドとエイナルには俺たちの息子たちを駄馬のように扇動させておかないことが」。
〔訳注:Scudder の英訳だと第 84 章の半ばすぎにある部分で、この抜粋では中間のオヌンドの発言が一部省略されている。エギルの 2 度めの発言中 saman は副詞「いっしょに」。エギルの最後のセリフはなるべく直訳したためたいへん読みにくくなってしまったが、要するにエギルとオヌンドは友人どうしであって互いの息子たちの諍いを望んでいないので、当人たちに任せておかず自分たち親どうしで調停しようという主張。続きではこう言われたオヌンドも同意して息子から決定権を取り上げ、エギルを信頼して最終判断は全面的に委ねると言う。ただし息子ステイナルのほうはしかたなく父に任せたものの判定を不安視していて……?(続きは web で)〕
13.1—現在 1 人称単数
強変化動詞と母音転換のある弱変化動詞の現在 1 人称単数はふつう語尾がない:ek veld (< at valda)。幹母音は 3 人称単数 (cf. 10.2 節) と同じであることに注意。これまでに出たもので例外は 2 つで、1 つは強変化動詞でもう 1 つは母音転換のある弱変化動詞:ek heiti (cf. 10.2: hann heitir);ek segi (cf. 6.9.3: hann segir)。
規則的な弱変化動詞の現在 1 人称単数も語尾がなく、現在 1 人称単数形は母音の語幹接尾辞 (cf. 6.9.2) に終わる:ek ætla, ek heyri, ek hefi (注意:動詞 at hafa—hafði—haft には現在幹の母音交替がある:þeir hafa—hann hefir)。
13.2—現在 2 人称単数
弱変化動詞と強変化動詞のいずれも現在 2 人称単数は現在 3 人称単数 (cf. 6.9 節) と同じである:þú hyggr (読解 3), þú segir (読解 9), þú mælir, þú ræðr (< at ráða)。
13.3—変化表の復習:弱変化・強変化動詞の現在単数 (cf. 6.10 節)
強変化 弱変化
1 単 — (i/a/—) —
2 単 -r (i/a/—) -r
3 単 -r (i/a/—) -r
13.4—過去現在動詞の現在単数
ほとんどの法助動詞の活用はその他の動詞とは異なっている。現在単数形の規則的な語尾は:1 単 —、2 単 -t、3 単 —。
Cf. þat mun, þat má (読解 9), þú mátt (読解 4), muntu (munt þú: cf. 7.6)。母音に終わる語幹に 2 人称単数語尾 -t がつくときは二重になることに注意:mátt。
その他若干数の動詞のうち、このパターンの活用をするのは:vita「知っている」—ek veit (読解 9);muna「覚えている」—ek man;eiga「所有する、結婚する」—ek á, þú átt, hann á。これらの動詞はすべて過去現在動詞、すなわちその現在形はほんらい強変化動詞の過去形だったものである。それゆえこれらの語尾は強変化動詞の過去単数語尾と同一なのである (cf. 3.8.1, 9.7)。
13.5—vera の現在単数
at vera「〜である、いる」の現在単数は、法助動詞の活用に部分的に似ている:ek em, þú ert, hann er。
13.6—過去現在動詞の過去
過去現在動詞の過去時制の語尾は、弱変化動詞の過去時制の語尾 (cf. 3.8.2) と同一である:3 単 mundi、3 単 átti (読解 8)。2 人称単数形は -ir、1 人称単数形は -a に終わる (cf. 9.7 節)。
13.7—1 人称双数
代名詞 vit は双数代名詞「私たち 2 人」である。動詞の 1 人称双数形は -um に終わる。この語尾は、現在時制でも過去時制でも、すべての弱変化動詞とすべての強変化動詞に使われる。語尾に -u- が存在することで動詞幹に a-ǫ 交替が起こる (cf. 9.2 節):vit tǫkum (< at taka), vit sǫgðum (< at segja) など。
13.8—接続法現在 (cf. 6.11 節も見よ)
接続法現在は、1 人称単数 (-a に終わる) を除くすべての語尾に -i- が存在することが特徴的である:þeir fari, vit takim, vit látim (すべて読解 13);3 単 fari, siti (読解 6)。
3 単と 3 複の形が同一であることに注意せよ:hann fari, þeir fari。接続法現在では、語尾の -i- は幹母音に変化を引き起こさない (cf. 10.2, 10.7, 10.8 節)。
13.9—意見や信念を表す非人称構文
アイスランド語では若干の非人称構文が意見や信念を表すのに用いられる。こうした構文では、論理的な主語は与格になる:再帰動詞 at sýnask, at virðask を用いた sýnisk mér, virðisk mér (読解 9);および Ásum þótti, hvárumtveggja okkrum mundi þykkja における動詞 at þykkja。こうした表現に従う従属節の動詞は接続法に置かれる。
13.10—所有形容詞の変化
所有形容詞 minn「私の」および þinn「君の」は sinn のように変化する (cf. 12.4 節)。その他の所有形容詞は規則的な強変化形容詞のように変化する:okkarr「私たちの」の複数属格 okkra、与格 okkrum。第 2 音節の母音の消失については 2.6 節。
注意:hvárumtveggja okkrum「私たち〔2 人〕のそれぞれ〔にとって〕」という句において、所有形容詞は人称代名詞 okkr のかわりに使われている。所有形容詞はふつう分格的表現において代名詞 hvárrtveggja との関連で使われる (これは hvárr「おのおの」と tveggja:数詞「2」の複数属格からなっている:cf. 12.1 節)。この複合代名詞では hvárr- の部分だけが変化することに注意せよ。
練習問題
以下の動詞の現在 1・2・3 単の活用形を書きなさい:
弱変化動詞
at kalla (過去幹 kallað-):ek ______, þú ______, hann ______〔以下この欄は省略〕
at mæla (過去幹 mælt-)
at nefna (過去幹 nefnd-)
不規則な弱変化動詞 (cf. 7.7 節も見よ)
at berja, at kveðja, at spyrja, at velja.
強変化動詞
at biðja, at draga, at gefa, at standa, at þiggja.
〔解答〕
at kalla—ek kalla, þú kallar, hann kallar.
at mæla—ek mæl, þú mælr, hann mælr.
at nefna—ek nefni, þú nefnir, hann nefnir.
at berja—ek ber, þú berr, hann berr.
at kveðja—ek kveð, þú kveðr, hann kveðr.
at spyrja—ek spyr, þú spyrr, hann spyrr.
at velja—ek vel, þú velr, hann velr.
at biðja—ek bið, þú biðr, hann biðr.
at draga—ek dreg, þú dregr, hann dregr.
at gefa—ek gef, þú gefr, hann gefr.
at standa—ek stend, þú stendr, hann stendr.
at þiggja—ek þigg, þú þiggr, hann þiggr.
語彙の復習
名詞 男性 hégómi「偽り」
女性 alvara「まじめ、誠実さ」、fíflska「愚かさ」、sǫk「訴訟」
中性 fjǫlmenni「群衆」、mál「事件、事情」、orð「言葉」、ráð「助言、忠告」、líf「命」
形容詞 feginn「うれしい」、ósáttr「不和の、反目した」、okkarr「私たち (2 人) の」、ljóss「明らかな」
接続詞 þótt「〜だけれども」、eða「か、または」
代名詞 vit「私たち (2 人) は」、okkr「私たち (2 人) を」、hvárrtveggja「(2 人のうちの) それぞれ」
副詞 brátt「すぐに、すばやく」、hvárt「〜かどうか」、meðan「〜のあいだ」〔この 2 つは接続詞では?〕、síðr「より少なく」
動詞
弱変化 bœta—bœtti—bœtt「改善する」
leggja—lagði—lagt「置く、横たえる」
sœkja—sótti—sótt「探す、求める」
þykkja—þótti—þótt「〜に見える」
強変化 draga (dregr)—dró—drógu—dregit「引く」
láta (lætr)—lét—létu—látit「〜させる」
valda (veldr)—olli—ollu—valdit「引き起こす」
句 á lífi「生きている」〔原文はアクセントなしの lifi だが直した。〕
at etja hestum「馬たちを (戦わせるため) 刺激する」
at fara með fíflsku「愚行を犯す」
at horfask til「予期されている、見込みがある」
at leggja orð til「言う」
at setja niðr「(争論を) 解決する」
at sættask við「〜と和解する」
at taka undir sik「〜を引き受ける」
sýnisk mér「私には思われる」
Aucun commentaire:
Enregistrer un commentaire