vendredi 6 août 2021

Chapman『古アイスランド語読解演習』第 3 課

Kenneth G. Chapman, Graded Readings and Exercises in Old Icelandic, 1964 の Lesson 3 の翻訳。「エギルのサガ」第 36 章を用いていることと、前半 (3.5 節まで) の文法事項は Byock and Gordon の Lesson 4 の全体におおむね対応している。弱変化動詞の解説は Byock and Gordon では Lesson 5 である。したがって本書を終えたあとそちらを読めばよい復習になりそうだ (ただ、向こうは語幹とは何、接尾辞とは何、格とは何……といった事柄から説き起こしているので、用語に不慣れな初学者には逆の順番のほうが勧められる)。



第 3 課
エギル・スカッラ゠グリームスソンのサガ (第 36 章) より

Þat var einn dag, er þeir Þórólfr ok Bjǫrn gengu ofan til skipsins; þeir sá, at Eiríkr konungsson var þar, gekk stundum á skipit út, en stundum á land upp, stóð þá ok horfði á skipit. Þá mælti Þórólfr: “Vandliga hyggr þú at skipinu, konungsson; hversu lízk þér á?” “Vel,” segir hann, “it fegrsta er skipit,” segir hann. “Þá vil ek gefa þér,” sagði Þórólfr, “skipit, ef þú vill þiggja.” “Þiggja vil ek,” segir Eiríkr.

ある日のことだった、彼らソーロールヴとビョルンとは船へ下っていった;彼らは見た、王子エイリークがそこにいること、〔彼が〕まず船に上がりこみ、次にまた地に上がったこと、そしてそれから立って船を見ていたことを。そこでソーロールヴが語った:「入念に船を眺めていますね、王子。気に入りましたか?」 「まことに」と彼は言う。「この船はもっとも美しい」と彼は言う。「それではあなたに差しあげましょう」とソーロールヴが言った。「この船を。もしあなたが受けとられるなら」。「受けとろう」とエイリークが言う。

〔訳注:冒頭の þeir Þórólfr ok Bjǫrn という代名詞 þeir「彼ら」の使いかたについては後の 6.12 節も参照のこと。いわゆる歴史的現在もしくは物語の現在と呼べるもので、「言う」と「言った」などが頻繁に入れかわり混在しているので、活用形を正確に把握すること (もちろん意味はすべて過去である。Cf. Gordon and Taylor, An Introduction to Old Norse, §167)。〕

3.1—接尾定冠詞


定冠詞は、名詞が形容詞に修飾されていないとき、名詞に接尾される。〔上の文章に出ている〕skipit (主格・対格)、skipsins (属格)、skipinu (与格) という形に例示されているとおり。

3.2—強変化中性名詞


強変化中性名詞の単数の変化は、3.1 節で並べた skip の諸形から接尾定冠詞を取り除くことで示されうる:主 skip, 属 skips, 与 skipi, 対 skip。

注 1) 主格には語尾がなく、この点で強変化男性名詞の屈折とは異なっている。

  2) 属格語尾は -is であり、男性名詞の大部分の場合と同様である。

  3) 中性名詞の主格と対格の形は、接尾冠詞がついている場合もついていない場合も〔それぞれで〕同一である。

  4) 与格語尾は -i である (cf. 読解 2 に出てきた Englandi という形もそうであった)。

3.3—独立定冠詞中性単数


独立定冠詞の中性単数主格形はこの課の読解に現れている:it fegrsta。完全な変化表は次のとおり (3.1 節で並べた形と比べよ):主 it, 属 ins, 与 inu, 対 it。

注 1) 主格と対格の形はここでも同一である。

  2) 属格形は男性単数属格形と同一である (cf. 2.1 節)。

  3) 冠詞が名詞に接尾されるとき、適当な格語尾の後ろに付加される。すなわち skipsins = skip + -s + ins。

  4) i- で始まる冠詞の与格形が、-i で終わる名詞の与格形に付加されるとき、結果として生じる重複した母音は単純化される (冠詞の最初の母音は落ちる)。

3.4—形容詞の中性の変化


中性と男性の単数属格形が似ていること (cf. 3.2.2, 3.3.2) は強変化と弱変化いずれの形容詞の形にも広げられる:

強変化形容詞の中性単数属格は -s であり、弱変化形容詞の中性単数属格は -a である (これらはいずれもまだ読解には出ていないが)。

他方、形容詞の中性単数主格の形は、対応する男性形とは異なっており、これは名詞の場合と同様 (cf. 3.2.1)。弱変化形容詞の中性単数主格語尾は読解 3 に出ている:it fegrsta。強変化形容詞の中性単数主格語尾は読解 4 で例示される。

3.5—変化表の復習:弱変化形容詞の男性および中性の単数主格・属格 (cf. 2.4 節)


   男性 中性
主格 -i   -a
属格 -a  -a

3.6—動詞の不定形


ほとんどすべてのアイスランド語の動詞は、動詞幹に -a を付すことで不定詞を作る。例:gefa, þiggja。不定形は法の助動詞の後ろで使われる。例:ek vil gefa, ek vil þiggja。

3.7—弱変化・強変化動詞、過去時制の作りかた


1—弱変化動詞

伝統的に「弱変化」動詞と呼ばれているある種の動詞は、動詞幹に歯音接尾辞 (t, d, ð) を付加することで過去時制を作る。この接尾辞に今度は適切な人称語尾が付加される。たとえば:

  horfði = horf- + -ð- + -i (3 人称単数語尾)
  mælti = mæl- + -t- + -i
  sagði = sag- + -ð- + -i

歯音接尾辞の形 (つまり t, d, ð のいずれなのか) は、動詞幹の末子音の音声的性質による。弱変化動詞のある大きな一群では、動詞幹と歯音接尾辞とのあいだに母音的なつなぎを用いており、この場合には歯音接尾辞はつねに -ð- になる、たとえば

  kallaði = kall- + -a- + -ð- + -i「彼は呼んだ」

2—強変化動詞

べつのグループの動詞 (「強変化」動詞) は、語幹内部の母音の変化によって過去時制を作る (ときに語幹の子音構造における変化も伴う):hét (読解 1) は heita の、réð (読解 2) は ráða の、gekk と gengu (読解 3) は ganga の、stóð (読解 3) は standa の過去時制である。

3—母音転換のある弱変化動詞

いくつかの動詞は語幹の母音の変化と歯音接尾辞の付加との両方によって過去時制を作る:segja から segir (現在 3 人称単数) と sagði (過去 3 人称単数)。このような動詞はふつう弱変化動詞として分類される。

〔訳注:「母音転換」は vowel shift の訳語である。詳しいことは第 12 課のまえがきを参照されたい。〕

3.8—動詞の過去時制 3 人称の人称語尾


1—強変化動詞

読解 1, 2, 3 には以下の形が登場した:3 単 var, hét, réð, gekk, stóð。3 複 gengu, sá。

強変化動詞は過去時制において、規則的に 3 単で語尾なし、3 複で語尾 -u をもつ。ただし語尾 -u は、á または ó に終わる過去時制の動詞幹には付加されない、たとえば þeir sá。強変化動詞の多くは過去時制で異なる単数語幹と複数語幹をもつ:hann gekk, þeir gengu; hann var, þeir váru だけが、そのような動詞でこれまでに登場しているものである (3 複 váru はまだ出ていない)。

2—弱変化動詞

弱変化動詞の過去時制の 3 単語尾は -i である (cf. 3.7.1, 3.7.3 で与えた例)。

強変化動詞の場合と同様、3 複語尾は -u である。

練習問題


必要ならば語尾を埋めなさい:

1. Konung____ var in__ fegrst__ mað__ í Englandi.

2. Harald__ hersi__ stóð ok horf__ á skip____.

3. Egil__ gekk__ til konung____. “Ek vil gef__ þér land___,” sagði konung____.

4. Þeir Þorstein__ ok Grím__ horf__ á land___.

5. Bjǫrn ok Þórólfr geng__ á skip___ út, stóð__ þá þar.

6. Kveld-Úlfr gekk__ ofan til skip____.

7. Þeir hét__ Þórólfr ok Egill.

8. Þeir Harald__ ok Álf__ réð__ fyrir Vínland__.

〔解答〕


1. Konungrinn var inn fegrsti maðr í Englandi.

2. Haraldr hersir stóð ok horfði á skipit.

3. Egill gekk til konungsins. “Ek vil gefa þér landit,” sagði konungrinn.

4. Þeir Þorsteinn ok Grímr horfðu á landit.

5. Bjǫrn ok Þórólfr gengu á skipit út, stóðu þá þar.

6. Kveld-Úlfr gekk ofan til skipsins.

7. Þeir hétu Þórólfr ok Egill.

8. Þeir Haraldr ok Álfr réðu fyrir Vínlandi.

語彙の復習


名詞 男性 konungsson「王子」
   中性 land「土地、国」、skip「船」

形容詞 fegrstr「もっとも美しい」、einn「1 つの、1 人の (男性)」

代名詞 ek「私は」、þú「君は (主格)」、þér「君に (与格)」、þat「それ」、þeir「彼ら (男性)」

接続詞 at「〜ということ」、ef「もし〜ならば」、er「〜するとき」

前置詞 á「〜の上で・に」、til「〜へ」(注意:つねに属格支配)

副詞 hversu「いかに」、ofan「下へ」、upp「上へ」、út「外へ」、vel「とても」、þá「そのとき、それから」、þar「そこに・で」、stundum ... stundum「まず……それから」

動詞 (特記なきかぎり、これ以後動詞は不定形で掲げる)

弱変化 horfa「見る」、mæla「話す」、hann segir「彼は言う」、hann sagði「彼は言った」

強変化 þat er「それは〜だ」、gefa「与える」、hann gekk「彼は行った」、þeir gengu「彼らは行った」、þeir sá「彼らは見た」、hann stóð「彼は立っていた」、þiggja「受けいれる、受けとる」

法助動詞 ek vil「私は〜するだろう」、þú vill「君は〜するだろう」

句 einn dag「ある日 (決まった時間)」
  horfa á「〜を見る」
  hversu lízk þér á「〜をいかが思うか」

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