dimanche 8 août 2021

Chapman『古アイスランド語読解演習』第 5 課

Kenneth G. Chapman, Graded Readings and Exercises in Old Icelandic, 1964 の Lesson 5 の翻訳。本課と同じ「ギースリのサガ」第 5 章と「ハーヴァルズのサガ」第 1 章が出てくるのは Byock and Gordon では Lesson 9 で、女性名詞・形容詞の弱変化と強変化もそこで説明される。ただ向こうのほうが 1 課あたりの内容が厚いぶん、だんだんと対応がずれて独自性が発揮されてきているようだ。Chapman をさらっと仕上げたあと Byock and Gordon に進んで復習がてら詳しく勉強するというプランも有効そうである。



第 5 課
ギースリ・スールスソンのサガ (第 5 章) より

Þorbjǫrn hét maðr ok var kallaðr selagnúpr; hann bjó í Tálknafirði at Kvígandafelli; Þórdís hét kona hans, en Ásgerðr dóttir. Þessarar konu biðr Þorkell Súrsson ok getr hana at eiga, en Gísli Súrsson bað systur Vésteins, Auðar Vésteinsdóttur, ok fekk hana; búa nú báðir saman í Haukadal.

ソルビョルンという名の男がいて、セラグヌープ (アザラシの崖) と呼ばれていた;彼はクヴィーガンダ山のタールクナフィヨルドに住んでいた;ソールディースというのが彼の妻で、アースゲルズが娘〔だった〕。この女〔=アースゲルズ〕をソルケル・スールスソンは求め、彼女と結婚する。一方ギースリ・スールスソンはヴェーステインの妹、アウズル・ヴェーステインスドーッティルを求め、彼女を得た〔=と結婚した〕;いま両人はいっしょにハウカ谷に住んでいる。

〔訳注:地名の訳しかたは悩みどころである。クヴィーガンダ山やハウカ谷というのは、前半も主格に直したほうがいいのだろうか? タールクナフィヨルドはそのままがいいような気もするが、漢字の「山・谷」か外来語の「フィヨルド」かで基準が変わるというのもおかしな話だ (山をフィヤル、谷をダルのままにするという抜け道はありうるにせよ)。それに、属格のまま結合させるなら、たとえばフェンリスウールヴも「フェンリス狼」と称することになるが (山室などはむしろぜひそうすべきと述べているが=『北欧の神話』文庫版 211 頁)、一般的には「フェンリル狼」のほうが通りがよいだろう。同じ固有名詞だが、地名とは分けて考えてよいものか。〕

5.1—弱変化女性名詞の単数主格・属格


弱変化女性名詞は主格では -a、属格では -u で終わる:kona, konu (注意:動詞 biðja は〔目的語に〕属格をとる)。

5.2—変化表の復習:弱変化男性・女性名詞の単数主格・属格 (cf. 2.4 節)


   男性 女性
主格 -i   -a
属格 -a  -u

5.3—強変化女性名詞の単数主格・属格


強変化女性名詞はふつう単数主格で語尾をもたない:Þórdís, fegrð (読解 4)。しかし語尾 -r〔も〕とりわけ固有名詞においてはかなり一般的である:Ásgerðr, Auðr。

強変化女性名詞の単数属格はほとんどの場合 -ar に終わる:Auðar。しかし少数の女性名詞は単数属格が -ur に終わる:systir (主格)—systur (属格)、dóttir (主格)—dóttur (属格);また móðir (主格)—móður (属格)。

名詞の語幹が母音で終わるならば、属格語尾 -ar の最初の a- は省かれる:brár (読解 4) = brá + -ar。

5.4—強変化形容詞の女性単数主格・属格


強変化形容詞の女性単数主格形は語尾をもたない。女性単数属格形は -rar に終わる:

ハーヴァルズのサガ (第 1 章) より

Hon var ung kona ok stórrar ættar.

彼女は若い女で、大きな一族に属していた。

属格語尾 -rar が形容詞の語幹に付加されるとき、男性単数主格語尾 -r に適用されるのと同じ規則 (cf. 1.2.1–1.2.4) に従う。

5.5—変化表の復習:全性の強変化形容詞の単数主格・属格形


   男性 女性 中性
主格 -r   —   -t
属格 -s   -rar  -s

男性主格 -r と女性属格 -rar には 1.2 節の注意。

練習問題


語尾を埋めなさい:

1. Maðr hét Gísli. Hann var sonr Ásgerð__, kon__ Þorkel__ in__ mikl__, auðig__ mann__ ok væn__.

2. Kon__ Gísl__ hét Auð__. Hon var syst___ Véstein__ in__ auðg__, mikil__ mann__ ok væn__.

3. Véstein__ bað Ásgerð__, dótt___ Gísl__ ok Auð__ ok syst___ Yngvar__.

4. Gísl__ bað Auð__, ágæt___ kon__ ok vitr___.

5. Egil__ var faðir Ásgerð__, væn___ kon__ ok mikil___.

6. 強変化名詞の名前をすべて弱変化名詞の名前の変化形に置きかえて 1 から 5 をやりなおしなさい。たとえば、Gísli と Vésteinn の形を交換するか、なんでもほかの男性名を使えばよい。強変化の女性名 Auðr と Ásgerðr の置きかえには、弱変化の女性名 Helga と Bera を用いなさい。

〔解答〕


1. Maðr hét Gísli. Hann var sonr Ásgerðar, konu Þorkels ins mikla, augiðs manns ok væns.

2. Kona Gísla hét Auðr. Hon var systir Vésteins ins auðga, mikils manns ok væns.

3. Vésteinn bað Ásgerðar, dóttur Gísla ok Auðar ok systur Yngvars.

4. Gísli bað Auðar, ágætrar konu ok vitrar.

5. Egill var faðir Ásgergar, vænnar konu ok mikillar.

6.〔Gísli ↔ Vésteinn、Ásgerðr → Helga、Auðr → Bera、残りの強変化の男性名 (Þorkell, Yngvarr, Egill) は Ingi で置きかえることにする。〕
    1. Maðr hét Vésteinn. Hann var sonr Helgu, konu Inga ins mikla, auðigs manns ok væns.
    2. Kona Vésteins hét Bera. Hon var systir Gísla ins auðga, mikils manns ok væns.
    3. Gísli bað Helgu, dóttur Vésteins ok Beru ok systur Inga.
    4. Vésteinn bað Beru, ágætrar konu ok vitrar.
    5. Ingi var faðir Helgu, vænnar konu ok mikillar.

語彙の復習


名詞 男性 dalr「谷」
   女性 kona「女、妻」、systir「姉、妹」、ætt「家族」
   中性 fell「山」

形容詞 stórr「大きい」、ungr「若い」

代名詞 hana「彼女を (hon の対格)」、báðir「両方 (男性複数主格)」

副詞 nú「いま」、saman「いっしょに」

動詞 hann bað, hann biðr「彼は求めた/求める」(不定詞 biðja)、búa「住む」、hann fekk「彼は得た」(不定詞 fá)、hann getr「彼は手に入れる」(不定詞 geta)、kalla「呼ぶ」、eiga「所有する、結婚する」

句 at biðja konu (属格)「女に結婚を求める」
  at geta hana at eiga「結婚するために彼女を得る=彼女と結婚する」

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