Kenneth G. Chapman, Graded Readings and Exercises in Old Icelandic, 1964 の Lesson 4 の翻訳。ここで簡単に「スノッリのエッダ」と呼ばれているのはその第 1 部「ギュルヴィたぶらかし」のこと。邦訳は谷口幸男訳『エッダ——古代北欧歌謡集』(新潮社、1973 年) に収められている。
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第 4 課
スノッリのエッダ (第 22 章) から
Annarr sonr Óðins er Baldr, ok er frá honum gott at segja. Hann er beztr, ok hann lofa allir. Hann er svá fagr álitum ok bjartr, svá at lýsir af honum, ok eitt gras er svá hvítt, at jafnat er til Baldrs brár. Þat er allra grasa hvítast, ok þar eptir mátt þú marka fegrð hans, bæði á hár ok á líki. Hann er vitrastr ásanna ok fegrst talaðr ok líknsamastr. Hann býr þar, sem heitir Breiðablik. Þat er á himni.
オージンの第 2 の息子はバルドルで、彼については言うのによいことがある。彼は最良の者で、彼を誰もがほめる。彼はとても容姿端麗で明るく、彼から光が出るほどであり、またある草はあまりに白く、バルドルのまつげにたとえられるほどである。それはあらゆる草のなかでもっとも白く、そこからあなたは彼の美しさを、髪と体との両方の〔美しさを〕推し量ることができる。彼は神々のうちでもっとも賢く、もっとも雄弁で、もっとも親切である。彼はブレイザブリクという名のところに住んでいる。それは天の上にある。
4.1—強変化形容詞の中性単数主格
強変化形容詞の中性単数主格語尾は -t で、形容詞の語幹にじかに付加される:hvítr—hvítt。
特別な語幹規則:1—語幹が -ð に終わるとき、-t に変わる:góðr—gott。
2—語幹が -t に終わりその前がべつの子音であるとき、〔重ねて〕もうひとつの t が付加されることはない:hvítastr—hvítast, beztr—bezt, bjartr—bjart。
4.2—変化表の復習:強変化形容詞の男性・中性の単数主格・属格 (cf. 1.5 節)
男性 中性
主格 -r -t
属格 -s -s
男性単数主格の -r には 1.2 節の細則がかかわる。
4.3—最上級
最上級は形容詞の語幹に -ast または -st を付加して作られる。後者の場合、幹母音はしばしば変化する:fagr—fegrstr (fagr の末尾の -r が最上級形において保持されていることは、この末尾の -r が男性単数主格語尾でなしに、語幹の一部であるということを示している。同様に、vitr (cf. 1.2.4)—vitrastr、しかし hvítr—hvítastr)。
4.4—副詞の作りかた
形容詞の副詞形は中性単数主格形と同一である:fegrst talaðr という句における fegrst「もっとも美しく」、これは文字どおりには「もっとも美しく話されたる」の意。副詞はまた形容詞に接尾辞を付加することでも作られる:vandliga「入念に、注意深く」は vandr「注意深い」から。
4.5—形容詞として使われる過去分詞
過去分詞が形容詞として使われるとき、適当な形容詞語尾をとらねばならない。たとえば jafna「たとえる」と tala「話す」から作られた jafnat と talaðr。これらの動詞は 2 つとも母音のつなぎのある弱変化動詞 (cf. 3.7.1) であり、分詞語幹 (弱変化動詞の場合、過去語幹と同一) は -að で終わる。注意として、過去分詞の場合、語幹の末尾の -ð は中性主格語尾 -t をつけるまえに脱落するのであり、t に変わるのではない (cf. 4.1.1)。
4.6—名詞と形容詞の複数属格
すべての名詞の複数属格は -a に終わる:中性 gras から grasa、また男性 áss から ásanna (= ása + inna で、冠詞の複数属格 inna の最初の i- が母音の後で消失したもの)。こうした複数属格の同一性は女性名詞にも広げられる。
すべての強変化形容詞の複数属格は -ra に終わる:allra grasa。同様に allra ása, góðra ása 等々。この語尾が形容詞の語幹に付加されるとき、男性単数主格語尾 -r に適用されたのと同じ規則 (cf. 1.2 節) に従う:mikilla ása, vænna ása, fagra grasa 等々。
4.7—独立定冠詞の複数属格
独立した位置における冠詞の複数属格は、次の文に例を見られる:
エギル・スカッラ゠グリームスソンのサガ (第 20 章) より
Maðr hét Yngvarr, ríkr ok auðigr, hann hafði verit lendr maðr inna fyrri konunga.
男が〔いて〕ユングヴァルという名で、有力で裕福であり、〔かつては〕先の王たちの家臣であった。
4.8—現在時制の 3 人称複数
動詞の現在 3 人称複数形は (若干の過去現在動詞を除いて) 不定詞と形において同一である。いずれの形も -a に終わり、それが現在幹に付加される:lofa, marka (現在 3 複)、segja (不定詞)。
4.9—不定詞標識 at
不定詞句において不定詞は小辞 at に先立たれる。これは形において前置詞 at や接続詞 at と同一であることに注意せよ。
練習問題
1. 3 人称男性単数代名詞 hann の変化表を書き、暗記しなさい (変化形はすべて読解 4 に出ている)。
2. 必要ならば語尾を埋めなさい:
a) Skip___ var fagr__ ok hvít__. Þat val all___ skip__ bezt__.
b) Baldr hét in__ hvít__ ás__. Hann val all___ ás__ bezt__ ok fegrst__.
c) Konung_____ gekk__ til in__ bezt__ skip__. Þat var i___ vænst__ skip.
d) Yngvar__ var vitrast__ konung_____. Hann var sonr Egil__, líknsam__ mann__ ok fagr__.
3. 第 3 課の練習問題の文 4〔Þeir Þorstein__ ok Grím__ horf__ á land__.〕を現在形で書きなおしなさい。
4. 適した名詞と形容詞を埋めなさい:
a) ______r var ______astr ______anna, ______r ok ______n.
b) Skipit var ____ra ____a ______ast ok ______st.
〔解答〕
1. 主格 hann, 属格 hans, 与格 honum, 対格 hann.
2. a) Skipit var fagrt ok hvítt. Þat var allra skipa bezt.
b) Baldr hét inn hvítr áss. Hann var allra ása beztr ok fegrstr.
c) Konungrinn gekk til ins bezta skips. Þat var it vænsta skip.
d) Yngvarr var vitrastr konungr. Hann var sonr Egils, líknsams manns ok fagrs.
3. Þeir Þorsteinn ok Grímr horfa á landit.
4. a) Baldr var vitrastr ásanna, fagr ok vænn.
b) Skipit var allra skipa hvítast ok fegrst.
語彙の復習
名詞 男性 áss「神」
女性 fegrð「美しさ」
中性 hár「髪」、líki「体」
形容詞 allr「すべての、あらゆる」、annarr「べつの、第 2 の」、beztr「最良の」、eitt「1 つの (中性)」、fagr「美しい」、hvítr「白い」
接続詞 sem「〜するところの人・もの」、bæði ... ok ...「…も…も」
前置詞 af「〜から」、frá「〜から」(注意:つねに与格支配)
副詞 svá「それほど」
動詞 強変化 hann býr「彼は住んでいる」、hann heitir「彼は〜という名である」
弱変化 þat lýsir「それは輝く」、lofa「ほめる」、segja「言う」
法助動詞 þú mátt「あなたはできる」
不定詞標識 at
句 á himni「天に」
fagr álitum「(容貌において) 美しい、端麗な」
fegrð á hár「髪の美しさ」
fegrð á líki「体の美しさ」
þar eptir「したがって、それによると」
at segja frá「〜について言う」
hann hafði verit「彼はかつて〜だった〔過去完了〕」
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