vendredi 31 décembre 2021

Gordon and Taylor『古ノルド語入門』(3) §§30–44

E. V. Gordon and A. R. Taylor, An Introduction to Old Norse, pp. 270–273,「古ノルド語小文法」§§30–44. 第 2 部「音韻論」のうち「A. 母音」の 4 割くらい。

訳語の方針として、文法用語が略記されているときは日本語でもなるべく略して示してある。たとえば pp. とあれば「過分」であって、わざわざ「過去分詞」のようには書かない。いずれも常識的に通じるであろうものだが、そもそもこの本じたいこういった基本的な略号の凡例をどこにも示していないのである (p. [xvi] および語彙集冒頭の略号一覧はかなり簡略である)。

なお新年からはいったんまたギリシア語に戻る予定なので、しばらく古ノルド語はお休みします。更新再開まで気長にお待ちください。


第 2 部 音韻論


30. アイスランド語の屈折形の規則的な関係と曲用・活用の構造は、隣接する音がもう一方に及ぼす影響によってしばしば不明瞭にされている。heimr の単数与格は heimi だが、dagr の単数与格は degi であり、これは gi が先行する a に与える影響によっている。動詞 bregða, skjálfa, finna, søkkva が同じ活用に属すべきだということ (§129 を見よ) は一見不規則に見えるが、幹母音に後続する音の影響を考慮に入れるならば、これらの動詞がすべて同じ型であることは、そのどれにおいても本来の幹母音が e であることから明白である。変化を引きおこしてきた音はしばしば消失している:land の複 lǫnd が、skip (複も skip) と比較でき同じ曲用に属するように。a から ǫ への変化は、かつてこの曲用の複数主・対格語尾であった u の影響によっていた;skip の i は後続する u に影響されなかったのだ。音声変化の説明はしばしばより古い形のなかに求められるので、ノルド語の音韻論を歴史的に研究することはこの言語の文法構造を理解するために必要である。ノルド語の音声の歴史が以下に与えられるが、あくまで屈折形についての十分な実用的知識にとって必要なかぎりにおいてである。

31. 音声変化はアイスランド語の文法的語形に不規則な見せかけを与えているけれども、他方で文法的語形とパターンとの自然な関連は一見した不規則性を排除する傾向がある。類推的な形成への傾向がしばしば音声変化の効果を取り除く;たとえば stíga は一見して不規則な過 3 単 *stāh (§50) をもっていた。この動詞の母音体系を、それと同じ活用 (§127) に属するほかの動詞のものと一致させるため、新たな過 3 *steih が形成された;規則的な音声変化により *steih は sté となったが、活用のパターンはまたべつの過 3 steig を形成することでふたたび修復された。類推はアイスランド語の文法において相当の役割を演じており、顕著なのは名詞の i-変化においてである;だがほかのゲルマン語のいずれにおけるよりも大きな母音と子音の変動が〔アイスランド語の〕変化表には残っていた。

A. 母音


a-変異


32. 次の音節のなかに a, ō (のちに a), または ǣ が続くとき、j または n+子音が介在して防がれないかぎりにおいて、ゲルマン語の u は o へ、また (短音節における) i は e へと低められた。この変化はしばしば、変化表のなかで a の存在しないべつの形との類推によって不明瞭にされており、異なる諸方言のなかでは u と o との揺らぎが頻繁だった。例:*hurna > horn, *truga > trog, 強変化動詞の過分 holpinn, orðinn, borinn、しかし sumar (東ノルド語 somar), una, gull および過分 bundinn には変異がない。主格形 sonr は属 sonar < *sunar からの新しい形成として説明されてきたが、複合語の第 2 要素になっているとき u から o への弱化を伴っている -sun(r) からとするのがよりもっともらしい;また男性名における -olfr という形を ulfr と比較せよ。i の a-変異の例はわずかである:niðr と並ぶ neðan, heðan, また verr「男」。

前方変異


33. 前方変異 (front mutation) とは、特定の前母音によって先行音節にある強勢母音に作用される影響である。ほかのゲルマン諸語と共通に最初の徴証は、次の音節に i または j が後続するとき e が i へと高められることにある:*beðjan > biðja, *werðjan > virða, *weniz > vinr。注意されるべきは、第 3, 第 4, 第 5 活用の強変化動詞の現在単数において、この変異は類推によって不明瞭にされていることである:*berir は *birr としてではなく berr と、*verðir は *virðr ではなく verðr として現れている。

34. 後期原ノルド語期において、すべての後母音と二重母音は、次の音節に -i- または -j- が後続するとき、対応する前母音へと前方化された:

a は ę になった:fram と fremja、mann と複 menn を比較せよ。
á は æ に:Áss, 複 Æsir;mál と mæla。
o は ø に:koma と現 3 単 kømr。
ó は œ に:fór (行った) と fœra。
u は y に:fullr と fylla;lopt < *lupta と lypta。
ú は ý に:brún, 複 brýnn。
au は ey に:lauss と leysa。
jú は ý に:fljúga, 現 3 単 flýgr;ljósta < *ljústa, 現 3 単 lýstr。
ǫ は ø に:hǫggva, 現 3 単 høggr。

上記の規則に対するひとつの重要な例外がある:次の音節に j が続くときと、また長音節のあとに i が続くときには変異は規則的であるが、短音節のあとに i が続くときには変異は、その i が ʀ で表される音と組みあわさっていたときにだけ現れたように見える:cf. *gasti > gest (gestr の単対), *staði (staðr の単対) > stað では変異なし、*komiʀ (koma の現 2 単) > kømr。*staðiʀ のように短い i-幹名詞の単主における変異は、staðr になるのであり期待されるように *steðr ではない、これは斜格との類推によって取り除かれてしまったのである。

35. 変異のこうした欠如の難点はいまだ十分に説明されたことがない。Axel Kock は変異に 3 つの時期があったと示唆している:

(a) i (消失した) と j による、長音節の母音の〔変異〕、600–700 年ころ;
(b) iʀ の組みあわせ (このうち i は消失した) と j による、単音節の母音の〔変異〕、700–850 年ころ;
(c) 文献時代にも残っている i による、長短両方の音節の母音の〔変異〕、*karling- > kerling; *katilʀ > ketill のように。

変異を引きおこした j は一定の条件下でも失われる、§62。

Kock は前方変異を非アクセントの i の消失 (§56) と関連づけているようで、iʀ の組みあわせを除いて、i は単音節に後続しているとき変異を引きおこさずに消失したと主張する。この見解は強く批判されてきた、cf. A. M. Sturtevant による Journ. of Engl. and Germ. Philol. xlv, pp. 346–52 における、B. Hesselman, Omljud och brytning i de nordiska språken, Stockholm, 1945 の書評。

変異の欠如について考えうる代替的な説明は、短い語幹音節のあとで非アクセントの i は、それが開音節に立っているとき e へと低められたということである。

36. この変異はふつう西暦 600 年と 900 年のあいだに比定される。注意されるべきは、後期の発達の非アクセント i は、g または k との組みあわせにある場合 (§38) を除いて変異を引きおこさなかったということである;a-幹名詞の単与と弱変化男性名詞の単主は変異をもたない:harmi (harmr の単与) と hani。

37. ʀ (ゲルマン語 z に由来する硬口蓋子音) は、直前にある後母音または二重母音を変異させた:gler「ガラス」< *glaʀ;kýr < *kūʀ;þær「彼女ら」女複 < þāʀ;eyra「耳」。Cf. 古英語 glæs, cū, þā およびゴート語 ausō。

38. 硬口蓋変異:短い a は、gi または ki が直後に続くとき e になった。ここでこの i はより以前の e または æ からの後期の発達である:dagr の単与 degi (cf. harmr の単与 harmi)、過分 tekinn, genginn (cf. farinn, haldinn)。変異していない母音はしばしば、その語の〔変化表における〕変異のないべつの語形から類推的に修復された。vaki, heimdragi, baki (bak の単与) のように。

唇音変異


39. u (ときには唇子音に補助されて) または w の影響によって、丸め〔=円唇〕のない先行母音が丸められた。

u-変異


40. これらの変化は後続音節における本来の u によって引きおこされた:

a は丸められて ǫ になった:land, 複 lǫnd は *landu から;sǫk (cf. 古英語 sacu);複与 lǫndum。この変化は古アイスランド語ではきわめてありふれていたが、ほかのノルド語諸方言ではそれほどでない (§41)。
á は ǫ́ に:しかし 1250 年ころまでに変化後の音ともとの á とが〔同一の音に合流し〕両方 á と書かれた (§8)。
e は ø に:割れ (§45) を受けないとき:róa の過 3 単 røru;tøgr (*teguʀ から)。

非アクセント音節のなかで a の u-変異によって生じた ǫ は、u-変異の時期が終わるまえに u へと移行した。というのはそれが、先行する a の第 2 の u-変異を引きおこしたからである:ǫnnur は *annǫru、より早くは *annaru から。

41. 以上の例からわかるように、古アイスランド語において u-変異は、変異を引きおこした u が保持されていようと結果として失われていようと生じた。ほかのノルド語諸方言、とくに古デンマーク語においては、保持されている u による u-変異はまれであって、このことは地域的には非アクセントでこもりぎみの u は円唇母音でなくなっていたことを示唆している。

w-変異


42. 後続する w (これは文献時代以前に v になったか、もしくは失われた) の影響によって:

a は ǫ になった:hǫggva, sǫngr。
e は ø になった:søkkva、これは bresta と同じ活用。
ę は ø になった (§7):gøra、これは *gęrwa からで、より古くは *garwjan。
i は y になった:slyngva; vi は vy になり、それから v が脱落した (§63)、対 kykvan のように。
ei は ey になった:kveykva。

43. w が非円唇母音の直後に続くとき、その母音が長くかつその w が同じ音節に属していたならば、変異が起こった:Týr は *Tīwr から (cf. Tīur, p. 182)、複 tívar「神々」と比較せよ;bý は *bīw から、古デンマーク語 bī 18/26 と比較せよ。

組みあわせ唇音変異


44. 先行する唇子音と後続する u との組みあわさった影響により、á は ó になった:koma の過 3 複 kómu は kvámu と並んで〔どちらのつづりも見られる〕;i は y になった:systur (*swistur から);æ は œ になった:Sœnskr (*Swænsk- から、与格におけるように u が後続するとき)。同様にして、隣接する鼻子音と後続する u との影響により、á は ó になった:nótt (対 *nahtu から) は nátt と並んで;hánum は hónum となった、これは非アクセントの用例において honum へと短くされた。

jeudi 30 décembre 2021

Gordon and Taylor『古ノルド語入門』(2) §§11–29

E. V. Gordon and A. R. Taylor, An Introduction to Old Norse, pp. 267–270,「古ノルド語小文法」§§11–29.  第 1 部「アルファベットと発音 (承前)」はここまで。今回の最後のあたりはいまひとつ釈然としない部分が残ったのでそのうち調べなおしたい。続きを読んでいくうちにわかるか?


子音


11. 二重子音はそのあとに母音が続くとき二重に発音される;したがって drekka の kk は〔英語の〕book-keeping のように。一方 dreki の k は〔英〕bookie のように単音で。語末にある、もしくは同一音節内にべつの子音が続くとき、二重子音は長く発音され、そうして hamarr (主格) は hamar (対格) から、また munnr「口」は munr「精神」から区別される。

12. d, t, n, l (§13 を見よ) は舌の尖端を歯にあてて、フランス語やドイツ語のように発音される。英語のように舌の先端を歯茎にあてるのではない。無声の l と n は語頭では hlaupa, hnipinn のように hl, hn と綴られる。l と n はまた、vatn, hasl におけるように無声子音に続く語末、もしくは vatns のように無声子音のあいだに立つときにも無声である (この後者はおそらく 13 世紀には vats のような音になった)。

13. l は語頭、d, n, l, r の隣に立つとき、または非アクセント母音に後続するときには、フランス語やドイツ語の l のような音であった:land, falla, halda, aðal。それ以外の位置では (無声の場合を除いて) l は、英 people のもっとも一般的に使われる発音におけるように、舌の背が u の位置へと高められるときの、後舌の響きをもっていた。

14. n は ng または nk (まれ) の組みあわせにおいて、英 single, sink におけるように発音された。

15. f は語頭、または無声子音が後続するとき、英 fat のように無声であった:fara, gaft。それ以外の位置では f は英 v の有声音であった:gefa, gaf。有声の f は n が後続するとき鼻音化される。jafn におけるようにで、これはしばしば jamn と綴られた。

16. v は 12 世紀には、ドイツ語 quelle の u やスペイン語 saber の b のような有声両唇摩擦音だった;13 世紀のあいだに v は英語の v のような唇歯音、アイスランド語の語中および語末の f と同じ音になった。こうして ævi のような語がしばしば æfi と綴られた。hv という組みあわせでは v は無声であったが、14 世紀には hv はいくつかの方言で kv となった。

17. p は英語におけると同様に発音された。例外は s または t が後続するときで、無声両唇摩擦音であり §15 の無声の f と同一であった:lopt, keypta (kaupa の過去分詞)。もっとも近い音は英 loft の f である。

18. r はつねにスコットランド方言のような強い舌先のふるえ音である。dagr のような単語の語末の r は成節的ではなかった;〔つまり〕この単語全体は単音節語であった。drykkr のように無声子音に続くとき、r は無声だった。語頭においては無声の r は hringr のように hr と綴られた。

19. ʀ は文献以前の時代にのみ現れ、のちには §18 の r と同一になった。これはゲルマン語の z に由来し、文献以前期におけるその発音は決定するのが難しい。たぶんその発達は z から r の音色を帯びた z へ、そこから硬口蓋化した r へ、そしてふるえ音の r へと至ったかもしれない。

20. s はつねに英 blast のように無声である:blása「吹く」。

21. þ は最古のアイスランド語写本において、英 thin の無声の th 音と then の有声音との両方に用いられた。1225 年ころ ð が導入され、段階的に þ は語頭のみ、そして ð はそれ以外の位置において用いられるようになった。すると þ は無声音だけを表すようになり、一方 ð は、無声子音に後続するとき (その場合 ð はふつう t になったので稀だが) を除いて、有声であった:faðir, við。

22. z は ts の音をもっていた:beztr, Vestfirzkr。

23. j は英 young の y のような音だった:Jórk「ヨーク York」、liggja。

24. h はふつう気息音だったが、j の前では英 hue におけるような前寄りの気音であった:hjarta「心臓」。hl, hn, hr は無声の l, n, r だった。hv という組みあわせでは h は独立した音価 (おそらく独 ach における後寄りの無声の気音) をもっていたことは、hv から kv への後代の発達により示されている。

25. g はアイスランド語で複数の異なった音価をもっていた:

(1) 英 got のような有声軟口蓋破裂音。語頭、ng の組みあわせ、および二重化したとき:góðr, ganga, ungr, grjót, liggja。

(2) ng または gg が s または t の前に立ったとき、k へと無声化された:ungs, ungt, eggs (unks, unkt, ekks と発音された)。

(3) 独 tage のような有声軟口蓋摩擦音。語中および語末で、直後に s または t が来る場合を除く。後者の場合は無声化してスコットランド方言 loch の ch の音になる。有声音は draga, dagr, 複 dagar, sagði, bjarg;無声音は単属 dags, 過分 sagt。

(4) すでに文献時代以前から、語中で i と j の前にあっては、(3) の有声軟口蓋摩擦音は硬口蓋音になり、ng もまた硬口蓋化された:degi, segja, genginn。この硬口蓋化は degi と genginn における語根母音の変異によって証拠づけられる (§38)。

(5) 前舌母音または j が後続するとき、(1) の語頭の軟口蓋破裂音は、13 世紀後半において硬口蓋化の過程のなかにあった:gefa, gil, gjǫf, geyja。

26. k は英 caught の c のような無声軟口蓋破裂音だった。語中で i と j の前のとき、これは文献以前期には硬口蓋音になっており (§38)、語頭では 13 世紀後半において、前舌母音と j の前で硬口蓋化の過程にあった。

音節


27. 任意の強勢音節 (stressed syllable) は、短母音で終わるか、または長母音であっても直後に短く弱い強勢 (weakly-stressed) の母音が続くとき、短い〔音節である〕。それゆえ geta, fara, konungr, búa, róa の第 1 音節は短い。búa の長母音が短くされることは、現代英語において動詞 ‘to do’ の母音が、‘do it!’ のように母音の直前に立つとき短くされることに比しうる。上記以外のすべての強勢音節は長い。kalla, kjósa, binda の第 1 音節、konungr, elskandi, ríkastr の第 2 音節、さらに単音節語 ungr, góðr, gott, bú におけるように。

28. §27 に与えた例は、ge-ta, kal-la, bin-da, seg-ja, stǫð-va というような、通常のゲルマン語の音節分けを前提しており、こうした音節分けが発話において普通であったことはほとんど疑いを容れない。しかしながらスカルド詩の韻文においては、韻が異なる慣習的な音節分けを呈し、それによって j と v を除く単子音が前の音節に属する、また 2 子音にしてもそれらが全変化表を通じているならば同様である:get-a, kall-a, bind-a, ey-jar, æ-vi, seg-ja, stǫð-va、しかし ham-arr からの ham-ri、gat-a からの gat-na〔は、格変化を通して共通していない部分なので、2 つめの子音は前の音節には入らない〕。この音節分けは慣習的に古アイスランド語テクストの印刷において踏襲されている。複合語では分節は kǫgur-sveinn のようにもとの要素のあいだに落ちる。

アクセント


29. アクセントは 3 段階を区別しうる:主 (primary)、副 (secondary)、弱 (weak) あるいは非アクセント (unaccented)。主アクセントはつねに第 1 音節にある。例外は fyrirbjóða のような派生動詞で、ここでは主アクセントは動詞要素の語根音節にあり、前つづりは弱アクセントである。副アクセントは複合語において現れ、me͞insằmir のように第 2 要素の語根音節に落ちる〔訳注:前半 mein- の ei にまたがってかかる上線の上にさらに鋭アクセントがあり、この二重母音に主アクセントが乗ることを表している〕。また派生語において、屈折語尾が付されうる接尾辞の上に落ちる:he͞ilā̀gri, he͞ilū̀g〔やはり ei にまたがるマクロンの上に鋭アクセント〕;jā́fnằði。しかしながら短い派生音節の上の副アクセントは、多くの語において詩語および古風でしかなかった。すべての語尾、接続詞、前置詞、接続副詞、およびたいていの代名詞は、弱アクセントであった。形容詞、副詞、名詞は強アクセントであったが、一方動詞は (古英語におけると同様) より弱い強勢をもっており、詩においてはときに非アクセントとして扱われた。〔訳注:accent(ed) はアクセント、stress(ed) は強勢と一貫して訳しわけたが、違いはいまいち判然としない。〕

mercredi 29 décembre 2021

Gordon and Taylor『古ノルド語入門』(1) §§1–10

気が向いたら訳すシリーズ。E. V. Gordon and A. R. Taylor, An Introduction to Old Norse, 1956, pp. 265–267 より、「古ノルド語小文法」§§1–10。気分が乗ったら続きをやります、これくらい気楽なほうが結果的にはよいかもしれないというか、なにもやらないよりは少しでも進めたほうがいいというか。もちろん翻訳そのものは真剣にやっています、だからこそ気力が必要。

いくつか注意。まず図表については再現が難しいもしくは面倒なので基本的に割愛していきます。たぶん古ノルド語を勉強したい人はこの本をもっていることが多いと思うので、それを見ていただくということで。語形論——まで到達するかはべつとして——に入ったら変化表もいちいち書かないと思います。出版でもさせてもらえるならそのときに作業しますが……。最後に、訳語のうち「変異」というのはまあウムラウトのことなんですけども、本が Umlaut ではなく mutation としか言わないものだからそれに従っています。それでもウムラウトと書いたほうがわかりやすいかな? 要検討。

目次リンク:ここもあとで暇だったら編集。


序論


1. 古ノルド語 (Old Norse) は、北ゲルマン諸民族 (スカンディナヴィア人) によって、ノルド語がはじめてほかのゲルマン諸民族の言葉から区別されるようになった時期、すなわち大略 100 年ころから 1500 年ころまで話されていた言語である。古ノルド語の歴史のなかで、その発展段階に応じて時期を区切っておくと便利である:原ノルド語 (Primitive Norse) 100–700 年、ゲルマン語の母音と語尾がまだよく保存されていた時期;ヴァイキング・ノルド語 (Viking Norse) 700–1100 年、非強勢母音が消失し変異が完了した、最大の音声変化の時期;文語古ノルド語 (Literary Old Norse) 1100–1500 年。最初の 2 つの時期の言語はもっぱらルーン碑文において記録されている。

2. 古ノルド語における諸方言はヴァイキングの時期に発達したが、その差は 1000 年ころまでは軽微であった。この年代までに、ノルウェーとその植民地で話されていた西ノルド語と、スウェーデン・デンマークおよびその植民地で話されていた東ノルド語とのあいだの差異が画され、続く時期においてそれらは急速に分岐した。11 世紀ころにはまた、アイスランド語とノルウェー語のあいだ、またスウェーデン語とデンマーク語のあいだに最初の差異が発達したが、それらの区別は 2, 3 世紀後まではまだ目立たなかった。方言的差異の詳細は後掲 §187 以下に与えられる。古ノルド語諸方言の関係は次のように図示しうる:

〔省略。共通ノルド語 (Common Norse) が西ノルド語と東ノルド語に分かれ、またそれぞれのなかで古ノルウェー語と古アイスランド語、古スウェーデン語と古デンマーク語に分かれる。〕

3. 古アイスランド語の記録はほかのどのノルド語方言よりもはるかに豊富であり、かつ興味も大きい:幾分とも価値のある古ノルド語文献のほぼすべてはアイスランド語で書かれている。古アイスランド語はまたもっとも保守的な方言であったから、古ノルド語文法研究においてはこれを基礎にとるのが便利である。本書の説明ももっぱら、大部分の古ノルド語文献がはじめて書きとめられた「古典期」1150–1350 年のアイスランド語に関わる。採用される綴り字は 1250 年ころにアイスランドで用いられていたものの標準化した形である。最初期アイスランド語写本のつづりとの主要な違いは以下 §§8, 9, 21, 204 で言及される。ほかの古ノルド語の方言は、それらが古アイスランド語との重要な差異を呈するかぎりにおいてのみ記述される。


第 1 部 アルファベットと発音


4. 古ノルウェー語とアイスランド語のアルファベットは、ラテン・アルファベットを古英語が採用したことに基礎をもっていた;それはラテン文字にルーン文字 þ および改変した文字 ð, ǫ, ø を加えたものからなっている。これらの追加的な文字のうち þ と ð は古英語から借用された。ルーン文字 þ はすでに知られていたが、写本における使用はイングランドから来たのである。

母音


5. 母音は長または短でありうる。標準化されたテクストでは、また散発的には写本においても、長母音は鋭アクセント (´) によって識別されている。例外は æ と œ で、これらはつねに長い。12 世紀の作品、いわゆる『第一文法論文』が、それらの発音の案内を与えてくれている。以下の表において古アイスランド語の母音および二重母音の近似した発音はキーワードと国際音声字母による記号で示してある。

〔省略。あとで暇だったら載せる。ただ ø₁ [ø], œ [øː], ø₂ [œ] はとくに注意しておく。〕

6. 注意すべきは æ が ę の、œ が ø₁ の長音であることである。13 世紀までに e は、アイスランドにおいては、より開いたものになっており ę の音と同一であった。この本のテクストでは区別をしていない。また i, o, u といったほかの短母音も、13 世紀には低まりの傾向があったということはありうる。ほかのノルド語諸方言において ę の音は æ で表されており、それゆえ長い æ は記号によって識別されねばならない〔訳注:ǣ のようにマクロンを付すということ〕。

7. 13 世紀の後半のあいだに ǫ は前方化され、ø₂ の音 (ふつう e の w-変異) と同一になった。標準化されたテクストでは区別されず、現代アイスランド語におけるようにどちらも ö と印刷されることがある;ø₁ はふつう e へと非円唇化された—— kømr は kemr になり、œ は音において æ と同一になった。

8. 1250 年までに á は唇の丸めを発達させ、音において ǫ́ と同一であった。のちには á という綴り字が両方に用いられた。本書でも同様。また y と ý を非円唇化し、それらをそれぞれ i, í と水平化する傾向が、すでに 13 世紀の末までに始まっていたことを示唆する証拠もある。

9. 非強勢音節における i と u の音質は不確かである。12 世紀の写本では e と o がこれらの位置で普通であった。単数与格 skipeno「船へ」=のちの skipinu のように。おそらく 13 世紀にはこれらの i と u は強勢音節における i と u よりも低く、それぞれ英語 pity の y、good の oo に似ていたのだろう。

10. 12 世紀の後半まで、アイスランド語の母音および二重母音は、鼻子音の直前直後にあるとき、またはすでに失われていた原ノルド語あるいはことによるとゲルマン〔祖〕語における鼻子音が直後にあったとき、鼻音化して現れてもいた。こうして sýna、mér「私に」、í (原ノルド語 in)、fær (ゲルマン語 *fanh-) は鼻母音をもっていた。この鼻音の性質は最初に非強勢音節において失われ、それから長い音節に続く母音において、そして短い音節に続く母音において失われた。

mardi 28 décembre 2021

古代ギリシア語訳『星の王子さま』を読む:序文

現代の文学作品が古代ギリシア語に翻訳された例は数少ないのだが、そのわずかななかに『星の王子さま』が含まれているのは幸運というべきか、それとも必然であるかもしれない。この訳業はセント・アンドリューズ大学で長年ギリシア語とラテン語を講じている Juan Coderch 氏が 2017 年に公にしたもので、氏は現代の世界のニュースを古代ギリシア語で紹介するという活動 (Akropolis World News) をすでに 2002 年から 20 年来続けてこられている、生きた言語としての古代ギリシア語の普及に熱心な人物である。

そしてたいへんありがたいことに、彼はギリシア語とラテン語の文法書をはじめとした自著のほとんどをホームページで無償で公開しておられるのだが、『星の王子さま』のギリシア語訳もまたその例に漏れていない (ちなみに紙の本の販売も行われている)。この訳書は CC BY-NC-SA 3.0 のライセンスで公開されており、著者名を正しくクレジットし非営利の利用であるかぎりは全文の転載も翻案も自由である。

この恩恵にあずかって、以下では古代ギリシア語版『星の王子さま』の精読を行い、翻訳に加えて文法の分析・語彙の解説をしていきたい。本書は副題に ‘with vocabulary help’ とあるとおり難しい単語に語注がついているのではあるが、(私のように) 文法を通り一遍終えた程度で語彙力はぜんぜんない者にとってはこれでも不足しており、ギリシア語で説明されている語注それじたいが理解できないということもまれではない。イマージョン教育を目的とした本書の編集方針をぶち壊しにすることになってしまうが、私は日本人の学習者のために日本語で語義を与え日本語で文法を説明していくことにする。

では、例によって序文 (献辞) から順番に読みはじめるとしよう。


Τῷ Leon Werth


レオン・ヴェルトに

献辞。名前の部分はラテン文字表記で無変化で使われており、定冠詞によってこれが与格であることが示されている。ちなみに Léon のアクサンはなぜか落ちている。


Tοὺς παῖδας συγγνώμην αἰτοῦμαι διότι ταύτην τὴν βίβλον ἀνθρώπῳ τινὶ καθιέρωσα ἤδη τελείῳ ὄντι.


私は子どもたちに許しを請う、この本をすでに成人しているある人物に捧げたことについて。

συγγνώμην (女) 単対 < συγγνώμη「許し、容赦」。

αἰτοῦμαι 直現中 1 単 < αἰτέω「求める」。自分のために求めるという中動態。

διότι 接「〜なので、という理由で」。理由を表す接続詞。διὰ ὅτι より。

καθιέρωσα 直アオ能 1 単 < καθιερόω「捧げる」。

τελείῳ 男単与 < τέλειος, (α,) ον「最終的な、完全な;大人の」。


ὅμως δέ, μεγάλη μοι πρόφασις ὑπάρχει· οὗτος ὁ ἄνθρωπος βέλτιστός ἐστί μοι τῶν ἐμῶν ἐν πάσῃ τῇ οἰκουμένῃ φίλων·


とはいえ、私には大きな言い訳がある:この人は全世界の私の友人たちのうちで最良の (友人) なのである。

ὅμως 接「しかしながら、それにもかかわらず」。

πρόφασις, εως (女) 単主「動機、理由;口実、言い訳」。

ὑπάρχει 直現能 3 単 < ὑπάρχω「根底にある、以前に存在する;[与] の手にある、自由に使える」。

βέλτιστος 最・男単主 < ἀγαθός「よい」。不規則な最上級 (補充形)。

οἰκουμένῃ (女) 単与 < οἰκουμένη「人の住む領域、世界」。πᾶς は位置によって意味が変わる単語なので、教科書どおりに考えると「全世界」というには冠詞の内側で ἡ πᾶσα οἰκουμένη ということになりそう——外側では「すべての世界、どの世界でも」になりそう——だが、なんでかこのように言うらしい。


καὶ δὴ καὶ ἄλλην πρόφασιν ἔχω· οὗτος ὁ ἄνθρωπος οἷός τ’ ἐστι πάντα συνιέναι, ἄλλα τε καὶ τὰς βίβλους τὰς τοῖς παισὶ γεγραμμένας·


さらにまたほかの言い訳もある:この人はすべてを理解できる、ほかのことも子どもたちのために書かれた本をも (理解できる人なのである)。

καὶ δὴ καί このような小辞のニュアンスのちゃんとした説明は私の手に余る。Denniston, Greek Particles, pp. 253, 255 によれば、καὶ δὴ καί の第一義的な意味は καὶ ... δή と基本的に異なるところがなく、この後者は καί による付け加えが重要なものであることを意味するという。

οἷός τ’ ἐστι「できる、能力がある」。οἶος だけでは「そのような、どのような」という関係代名詞であるが、οἶός τ’ εἶναι になるとどんなわけかそういう意味になる。

συνῑέναι 不現能 < συνῑ́ημι「知覚する、理解する」。


τρίτη δὲ πρόφασίς μοι κεῖται· οὗτος ὁ ἄνθρωπος ἐν τῇ Γαλατίᾳ οἰκεῖ, οὗ πεινῶν τε καὶ ῥιγῶν πάσχει, δεῖ οὖν μάλιστα πραΰνειν αὐτόν·


また 3 つめの言い訳も私にはある:この人はガリアに住んでいて、そこで彼は飢えと寒さに苦しんでいる、それゆえ彼を慰めることが大いに必要なのである。

Γαλατίᾳ (女) 単与 < Γαλατίᾱ「ガラテア;ガリア」。新約聖書にも出てくる小アジアの地方ガラテアと、アルプスの両側のガリアいずれをも指すが、ここではもちろんガリア=フランスのこと。

πεινῶν (女) 複属 < πεῖνα「飢え」。

ῥῑγῶν (中) 複属 < ῥῖγος, εος「冷気、寒さ」。

πραΰνειν 不現能 < πραΰνω「和らげる、なだめる、落ちつける」。


εἰ δὲ αὗται αἱ προφάσεις οὐχ ἱκαναί εἰσιν, βούλομαι ταύτην τὴν βίβλον τῷ παιδὶ καθιεροῦν ὅς ποτε οὗτος ὁ ἄνθρωπος ἦν,


だがもしこれらの言い訳が十分でないならば、私はこの本を、かつてこの人がそれであったところの子どもに捧げることにしたい。

ἱκαναί 女複主 < ἱκανός, ά, όν「十分である、満足である」。

καθιεροῦν 不現能 < καθιερόω。οω 動詞の不定法語尾の形に注意。だがなぜここに不定法アオリスト καθιερῶσαι でなく現在が選ばれたのかはいまいちわからない。「捧げようとしたい」という起動 (inchoative) の感じか?


πάντες γὰρ οἱ ἄνθρωποι παῖδες ἦσαν τὸ πρότερον (καὶ εἰ ὀλίγοι τινὲς τούτου μέμνηνται)·


というのもすべての人間は以前には子どもだったのだから (たとえ少数の人しかそのことを覚えていないとしても)。

πρότερον 中単対 < πρότερος「前の、以前の;前者の」。πρό から作られた比較級。この中性はもちろん副詞として働いている。

μέμνηνται 直現完中 3 複 < μιμνήσκω「思いだす、覚えている」。記憶に関する動詞は属格目的語をとるのが相場 (高津春繁『基礎ギリシア語文法』§118.2.a.)。


ἐπανορθῶ οὖν τὴν ἐμὴν καθιέρωσιν· Τῷ Leon Werth τότε ποτὲ παιδὶ ὄντι


それゆえ私は私の献辞を書きなおす:かつて子どもだった当時のレオン・ヴェルトに

ἐπανορθῶ 直現能 1 単 (約音後) < ἐπανορθόω「修正する、改訂する」。

καθιέρωσιν (女) 単対 < καθιέρωσις, εως「献呈」。

lundi 27 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (16)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 63 課から第 65 課までを扱う。今回が最終回である。

〔2022 年 1 月 19 日追記〕引きつづき、田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題解答を制作中。本書よりも少しだけ程度が高く、基礎固めや復習にうってつけである。



LXIII ἵστημι


§635.《練習問題 122》


1. 神は動物たちのうちで人間だけをまっすぐに立たせた。

2. マタイは立って彼に従った。

3. 彼は労働者たちが仕事がなくて広場に立っているのを見た。

4. 彼が死人たちのなかから甦るのは必然である。

5. 彼らは神の正義を知らないでおり、自分の (正義) を立たせることに努めている。

§636.《練習問題 123》


1. ὁ ἄνθρωπος μόνος τῶν ζῴων ὀρθὸς ἕστηκεν.

2. ἀναστάντες ἠκολούθουν αὐτῷ.

3. εἶδον αὐτὸν ἐν τῇ συναγωγῇ ἀναστάντα καὶ κηρύσσοντα.

4. τῇ τρίτῃ ἡμέρᾳ ἀνέστη ἐκ νεκρῶν.

5. ἐζήτουν τὴν ἰδίᾱν δικαιοσύνην στῆσαι, ἀλλὰ ἠγνόουν (τὴν δικαιοσύνην) τοῦ θεοῦ.


LXIV δείκνῡμι. 未来完了.組合わせ活用


§644.《練習問題 124》


1. (一般的に) 手本を用いることなく徳を教示することは難しい。

2. 主よ、救いたまえ、私たちは滅びようとしている。〔単語欄に与えられているとおり「滅びる」と訳すと大仰すぎてなにか人類の存亡がかかっているかのようだが、原文マタイ 8:25 の文脈はイエスが乗りあわせた船が嵐に遭って沈もうとしているとき弟子たちが彼に頼みこんでいるところで、ふつうに「死にそう」だとか (聖書協会共同訳、口語訳)、状況を汲んで「おぼれそう」と訳すものも多い (新共同訳、新改訳、フランシスコ会訳)。〕

3. 十字架の言葉は滅びる者たちにとっては愚かさである。

4. 彼らは彼の教えのゆえに驚いていた;というのは彼は権威をもっているかのように彼らに教えていたから。(括弧内:彼は会堂へ入って教えていた [教えはじめた]。)

5. そしてヨハネはラクダの毛 (の衣) を着てあった。

§645.《練習問題 125》


1. τοῖς νεᾱνίαις δείκνῠτε ἀρετὴν οὐ χρώμενοι παραδείγμασιν.〔個別具体的事例なので οὐ による。念のため、ῠ の上の記号はブレーヴェといい、ῡ のマクロンと反対に母音が短いことを明示するもの。次の 2., 3. も同様。マクロンと同様書く義務はないのだが、これらの動詞では活用形により長短が変化することが大事なのでとくに示してある。〕

2. σώσατε αὐτούς, ἀπολλῠ́ᾱσιν.

3. ὡς μῶροι ἀπολλῠ́ντες τὴν γῆν.

4. ἦσαν διδάσκοντες ἐν ταῖς συναγωγαῖς.

5. ὁ Ἰωάννης ἐνεδέδυτο τρίχας καμήλου.〔もとが完了分詞+未完了過去なので、過去完了に相当する。〕


LXV εἰμί, εἶμι, φημί, κεῖμαι, κάθημαι


§653.《練習問題 126》


1. 闇のなかに座っている民は大きな光を見た。〔なぜか ᾱͅ にマクロンが乗っているが、§10 の説明のとおりこれは不要。〕

2. あなたがたは産着で包まれて飼い葉桶のなかに横たわっている赤ん坊を見いだすだろう。

3. あなたの病苦から (離れて) 健康でいなさい。〔ὑγιής は男女同形だが、原文のマルコ 5:34 では相手は女性。〕

4. 自分の母親の腹から (=生まれながら) 足萎えであったある男が、神殿へ入っていこうとしているペトロとヨハネを見て、施しを受けようと頼みはじめた。

5.「私たちは悪を行おう」とパウロが言っているとある人々が言った。〔ποιήσωμεν は接続法アオリストで 1 複なので勧奨の意。ὅτι は直接話法と解する。〕

§654.《練習問題 127》


1. ἦσαν καθήμενοι ἐν σκοτίᾳ.

2. βρέφος ἔκειτο ἐν φάτνῃ.

3. ἔστε ὑγιεῖς.

4. Πέτρος εἰσῄειν εἰς τὸ ἱερόν.

5. Παῦλος ἔφη ἀνθρώπους τινὰς λέγειν ὅτι πίωμεν καὶ φάγωμεν, αὔριον γὰρ ἀποθνῄσκομεν.


ここまでギリシア語の学習をひととおり終えたこと、お疲れさまでした。この連載の冒頭でも触れたことですが、同じ著者によるラテン語入門書、田中利光『ラテン語初歩』(岩波書店、改訂版 2002 年) の解答例も以前に作ってあります。ギリシア語を学ぶ人はすでにラテン語も身につけているか同時に進めていることが多いでしょうが、もしまだラテン語をやったことがないというかたがいたら、同じ感覚で取り組むことのできるこの本をおすすめします。

知る人ぞ知るところですが、この教科書は旧版のほうが練習問題や文例がずっと豊富で、新版になるとレベルが下がってしまいます。私の作った解答は旧版・新版いずれにも対応しており、ざっと何ページか眺めていただければどれほど旧版独自の文が多いかただちにわかるでしょう。ともあれ、どちらをお持ちでも利用いただけるようになっているので、ぜひお役立ていただきたいと思います。

dimanche 26 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (15)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 59 課から第 62 課までを扱う。



LIX 命令法中・受動相


§597.《練習問題 114》


1. たえず祈りつづけよ。

2. 恐れるのをやめよ。

3. 私の願望ではなくあなたの (願望) をして成就せしめよ。〔命令法現在中動相。〕

4. 天にいるわれらの父よ、汝の名が崇められよ。

5. あなたの願望が成就せよ。〔命令法アオリスト受動相 (3. と同じ動詞だが、§596 の注 1 のとおり今度は受動型能相欠如動詞として使われている)。〕

§598.《練習問題 115》


1. ἀδιαλείπτως προσεύχου.

2. μὴ φοβοῦ.

3. εὐχάριστοι γῑ́νεσθε.

4. ἁγιάσθητε.

5. γενήθητι [γενοῦ] ἐλεύθερος.〔受動と中動どちらでもよい。なお相手が女性なら形容詞はもちろん ἐλευθέρᾱ。〕


LX 間接話法


§607.《練習問題 116》


1. なぜあなたがたは「あなたは冒涜している」と言うのか。

2. 私たちはなにを食べようか、あるいはなにを飲もうか、あるいは着ようか、と言って思い煩うな。〔引用部は第 43 課の和訳問題 §439. 2. と同じ。〕

3. あなたがたの命のことでなにを食べようとかなにを飲もうとか、またあなたがたの体のことでなにを着ようとか思い煩うのはやめよ。

4. 彼は生きていると彼らは言っている。

5. 復活というものはないと彼らは言っている。

§608.《練習問題 117》


1. τί σὺ λέγεις ὅτι ἐβλασφήμει ;

2. μὴ μεριμνήσῃς λέγων ὅτι φάγω.〔接続法アオリスト。〕

3. μὴ μερίμνᾱ τῇ ψῡχῇ σου τί φάγῃς.〔命令法現在。〕

4. λέγουσιν ὅτι αὐτὸς ζῇ.

5. ἔλεγον ἀνάστασιν μὴ εἶναι.


LXI 動形容詞.冠詞の一用法


§618.《練習問題 118》


1. 知恵は君によって愛されねばならない。(括弧内:君によって知が愛されねばならない。)

2. それができるだけ最善であるように魂を世話せねばならない。

3. 不正を行っている者たちはまさしく罰せられねばならない。〔ἀδικοῦσι は現在能動分詞の男性複数与格。動詞の直説法現在 3 複ではないので注意。なおこの δίκην δίδωμι という表現についてはラテン語 poenās dō と比較してみるのも興味あることであろう。この後者もやはり字面は「罰を与える」に見えるけれども実際には「罰せられる」という意味なのである。これについて樋口・藤井『詳解ラテン文法』15 頁脚注に、「この奇妙な意義は,古代における刑罰が一種の補償の観念から発生していることを考えればうなずける」と説明されている。〕

4. 幸福であることを欲する者は節制を追求し努力せねばならない。〔注にあるとおりであるが、もしここが動作主の与格 τῷ βουλομένῳ であったとすれば述語形容詞も一致して与格 εὐδαίμονι にならざるをえないはずで、たぶんそれが気もち悪いことも手伝って対格不定詞扱いになっているのではないか?〕

5. カエサルのものはカエサルに返せ、神のものは神に (返せ)。

§619.《練習問題 119》


1. τὸ ἔργον ἡμῖν φιλητέον ἐστίν.

2. ἐπιμελητέον ῡ̔μῖν τοῦ σώματος ὅπως ὡς ὑγιέστατον ἔσται.

3. κλέπτοντι (δὴ) δοτέον δίκην.

4. τὸν βουλόμενον καλὸν εἶναι σῶμα γυμναστέον.

5. τὰ τοῦ θεοῦ ἐδίδασκεν ἐν συναγωγῇ.


LXII δίδωμι, τίθημι, ἵημι


§625.《練習問題 120》


1. 私たちの生きるために必要なパンを今日私たちに与えたまえ。(括弧内:私たちの生きるために必要なパンを日ごとに私たちに与え (つづけ) たまえ。)〔τὸ καθ’ ἡμέρᾱν は冠詞がつくことによって名詞化されているのだが、それが中性単数対格なので結局副詞として動詞を修飾することになるのである。同じことがルカ 19:47 にもある。〕

2. 彼は乞食たちにパンを与えていた。

3. 彼は彼女に言った:あなたの (もろもろの) 罪は許されてある。(括弧内:私たちに私たちの罪を許したまえ。)〔本文は直説法現在完了受動相 3 複、括弧内は命令法アオリスト能動相 2 単。〕

4. 彼は自分の命を私たち全員のために捨てた。

5. 誰に対しても悪をもって悪に報いるなかれ。〔命令法アオリスト。〕

§626.《練習問題 121》


1. δότε ἡμῖν τὸν ἄρτον καὶ τὸ ἔργον.

2. ἔδωκεν ἡμῖν τὸν ἄρτον καὶ τὴν ἐλπίδα.

3. εἶπεν αὐτῇ· ἀφείθη σου ἡ ἁμαρτίᾱ.

4. καλόν ἐστι θεῖναι τὴν ψῡχὴν ὑπὲρ φίλου.

5. κακὸν ἀντὶ ἀγαθοῦ ἀπεδίδοσαν.

samedi 25 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (14)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 55 課から第 58 課までを扱う。



LV 形容詞の比較と副詞の比較


§568.《練習問題 106》


1.「なんとうまいのだ、水は」「神々にかけて。だがワインはもっとうまいし甘い」

2. 蜜蜂はもっとも苦い花やもっともとげとげした茨のなかにもっとも甘い蜜を見つける。

3. 神の愚かさは人間たちよりも賢く、神の弱さは人間たちよりも強い。

4. ヨハネは (こう) 言って宣べ伝えていた:私よりも強い人が私のあとに来ている。

5. 天の王国はどんな種子よりも小さいところの芥子の種に似ている。

§569.《練習問題 107》


1. τοῦ οἴνου ἡδὺ τὸ ὕδωρ.

2. ἡ μέλιττα εὑρισκει ἐν δρῑμέσι ἄνθεσι καὶ τρᾱχείαις ἀκάνθαις μέλι γλυκύ.

3. τὸ σοφὸν [ἡ σοφίᾱ] τῶν ἀνθρώπων μωρότερον [μωροτέρη] τοῦ θεοῦ.

4. ὁ ἀσθενέστερός σού εἰμι.

5. ὁ κόκκος σινᾱ́πεως μῑκρότατός ἐστιν πάντων τῶν σπερμάτων.


LVI 副詞.形容詞の不規則な比較


§574.《練習問題 108》


1. 姿形の点で娘たちは母より美しい。

2. 若者たちは老人たちよりも美しい希望をもっている。

3. (諸) 国家にとって内乱よりも大きな悪は存在しない。

4. 多くの群衆が彼 (の言葉) を喜んで聞いていた。

5. 私は速やかにあなたがたのところへ行くだろう。

§575.《練習問題 109》


1. καλλῑ́ων τὴν ἰδέᾱν ἡ μήτηρ τῶν θυγατέρων.

2. καλλῑ́ων ἔχει τὴν ἐλπίδα ὁ νέος ἢ ὁ γέρων.

3. τῆς πενίᾱς εἰσὶ μείζονες [μείζους] συμφοραὶ τοῖς ἀνθρώποις.

4. ὁ πολὺς ὄχλος ἤκουσαν αὐτοῦ ἥδιστα.

5. ἐλεύσεται θᾶττον πρὸς ἡμᾶς.


LVII 数詞


§580.《練習問題 110》


1. マルタよマルタよ、あなたは多くのことについて心配し心を乱されているが、少数のもしくは 1 つのことが必要である。

2. 誰も 2 人の主人に仕えることはできない。

3. 彼らは彼のところへ 4 人によって担がれた中風患者を運びながら来た。

4. 3 日後に私は甦る。

5. 私は海から上がってくる、10 本の角と 7 つの頭をもっている獣を見た。

§581.《練習問題 111》


1. δυοῖν ἢ τριῶν ἐστιν χρείᾱ.

2. οὐδεὶς δύναται ἅπαξ τὰ τρία ποιεῖν.

3. τέτταρες ἦλθον φέροντες πρὸς αὐτὸν παραλυτικόν.

4. μετὰ τέτταρας ἡμέρᾱς εἴδομεν αὐτόν.

5. εἶδον ἐκ τοῦ ὕδατος θηρίον ἀναβαῖνον, ἔχον πόδας δέκα.〔「怪物」の訳語が θηρίον でよいかわからないが、巻末語彙集にも出ていないのでやむをえない。〕


LVIII 命令法能動相


§588.《練習問題 112》


1. ただ信じつづけよ。

2. あなたの父と母を敬いつづけよ。

3. 求めつづけよ、そうすればあなたがたに与えられるであろう。探しつづけよ、そうすればあなたがたは見つけるであろう。叩きつづけよ、そうすればあなたがたに開かれるであろう。〔「求めよ、さらば与えられん」云々として非常に有名なマタイ 7:7=ルカ 11:9 の文句であるが、命令法アオリストでなく現在なので、「1 回求めれば与えられる」というのとは違い「たえず求めつづけていろ」というニュアンスがあることがわかる。〕

4. あなたがたのために財宝を地の上に貯えるものではない [貯えるのはやめよ]。

5. あなたがたの死すべき体のうちで罪に支配させておくのはやめよ。

§589.《練習問題 113》


1. μόνον πιστεύετε.

2. τῑμήσατε τὸν πατέρα ῡ̔μῶν.

3. αἴτει, καὶ δοθήσεταί σοι.

4. μὴ θησαυρίσῃς σοι θησαυροὺς ἐπὶ τῆς γῆς.

5. βασιλευσάτω ἡ ἐλευθερίᾱ ἐν ῡ̔μῖν.

vendredi 24 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (13)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 51 課から第 54 課までを扱う。



LI 分詞 (1) ——能動相


§524.《練習問題 98》


1. 自分自身を高くする者はみな低くされるだろう、だが自分自身を低くする者は高くされるだろう。

2. もっている者みなに与えられるだろう。

3. 悪いことをする者はみな光を憎む。

4. 彼らは彼のところへ、悪くある (=具合の悪い) 者たちと悪霊に憑かれている者たち全員を運んでいた。

5. 荒野で叫んでいる者の声 (がする)。

§525.《練習問題 99》


1. πάντες οἱ ὑψοῦντες ἑαυτοὺς ταπεινωθήσονται.

2. πᾶσι τοῖς ἔχουσι ἐδόθη.〔「持っている者達」は主語でないので動詞は 3 単。〕

3. πάντες οἱ φαῦλα πρᾱ́σσοντες μῑσοῦσι τὸ φῶς.

4. ἤνεγκον πρὸς αὐτὸν τὸν παῖδα τὸν κακῶς ἔχοντα [女 τὴν παῖδα τὴν κακῶς ἔχουσαν, 中 τὸ παιδίον τὸ κακῶς ἔχον].〔「子供」を表す語および性が指定されていないので、3 通りすべて与えた。〕

5. ἤκουσαν φωνᾱ̀ς [φωνῶν] βοώντων ἐν τῇ ἐρήμῳ.〔ἀκούω の目的語の格については §53 の注 2 を見よ。〕


LII 分詞 (2) ——中・受動相.状況を示す分詞


§535.《練習問題 100》


1. へつらう者たちはちょうどだます者たちのように、信じられておりながら信じた者たちをひどい目にあわせる。

2. ある賢い人が、ある悪人にほめられていると「心配だ」と言った、「私はなにか悪いことをしたのではないかと」。

3. もし誰かが嘘を言っているならば、その人は人間たちを恐れていながら神を軽視しているのだ。

4. 青年はそこでその言葉を聞いて悲しみながら立ち去った。

5. 彼はしもべの姿をとり自分自身を空しくした。

§536.《練習問題 101》


1. τῷ κολακεύοντι πιστεύσᾱς ἐξηπατήθην.

2. ἐπαινεθεῖσα ὑπὸ κακούργου τινός, φοβοῦμαι μή τι κακὸν ἐργάζομαι.

3. εἴ τις τὸ ἀγαθὸν ποιεῖ, τὸν θεὸν εὐλογεῖ.

4. ἀκούσᾱσαι δὲ αἱ γυναῖκες τὸν λόγον ἀπῆλθον λῡπούμεναι.

5. ἑαυτὴν ἐκένωσεν μορφὴν δούλης λαβοῦσα.


LIII 属格と対格の独立的用法.οἶδα


§547.《練習問題 102》


1. 太陽が沈んでいくころ、いろいろの病気で弱っている者たちをもっているかぎりのありとある者たちは、彼らを彼のところへ連れてきたものだった。

2. 教師たちが教えているのに弟子たちは学んでいない。

3. 働かなければならないのに彼らは働いていない。

4. あなたは自分が知っていないことをしゃべっている。

5. 彼らは真理を知っていると思っている。

§548.《練習問題 103》


1. δῡ́νοντος τοῦ ἡλίου ἅπαντες ὅσοι εἶχον ἀστενοῦντας νόσοις ποικίλαις ἤγαγον αὐτοὺς πρὸς αὐτόν.〔ここまでの課で、対応する和訳問題と 100 % 同文というものはなかったが、これはまったく同文。変える余地があるとすれば文頭の独立属格の分詞をアオリスト分詞 δῡ́σαντος にするくらいか?〕

2. ὁ μαθητὴς οὐ μανθάνει τοῦ διδασκάλου διδάσκοντος.

3. ἐργάζεσθαι δέον οὐ θέλετε ἐργάζεσθαι.

4. ἃ αὐτοὶ οὐκ ἴστε γράφετε.

5. οἰόμεθα εἰδέναι τὴν ἀλήθειαν, ἀλλὰ οὐκ ἴσμεν.


LIV 黙音幹動詞の中・受動相の完了形


§555.《練習問題 104》


1. 女たちは敵たちに (すでに) 連れていかれてしまっていた。

2. 若者よ、おまえは悪い者どもに説得されてしまっていた。

3. 彼は魂が不死であると説得されていた。

4. 賢明にも神によって人間に、必ずやきっと起こることごとは隠されてある。

5. 預言者イザヤ (の書) に書かれているように、荒野で叫んでいる者の声が、ヨハネが荒野に現れた。

§556.《練習問題 105》


1. αἱ παῖδές τινι [τισιν] ἠγμέναι εἰσίν.

2. πέπεισθε, ὦ νεᾱνίαι, ὑπὸ τοῦ πονηροῦ.

3. πεπεισμέναι εἰσὶν καλαὶ εἶναι.

4. σοφῶς ὑπὸ θεοῦ ἀνθρώποις τὰ μέλλοντα κεκρυμμένα εἰσίν.

5. καθὼς γέγραπται ἐν τῷ Ἠσαίᾳ ἐγένετο.

jeudi 23 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (12)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 47 課から第 50 課までを扱う。



XLVII 希求法中・受動相.目的を示す副文における希求法


§484.《練習問題 90》


1. あなたの言葉に従って (=言葉どおりのことが) 私に起こりますように。

2. そうならないように。

3. 私があなたから利益を得られるように。

4. あなたがキリスト教徒になるように私は神に祈るでしょう。

5. おお子よ、おまえが父よりも幸運になるように。

§485.《練習問題 91》


1. γένοιτο κατὰ τὸ θέλημά σου.

2. μὴ γένοιτο τοιοῦτο.

3. ἡμεῖς ῡ̔μῶν ὀναίμεθα.

4. εὐξαίμεθα ἂν γενέσθαι τὸ θέλημά σου.

5. ὦ παῖδες, γένοισθε ἡμῶν εὐτυχέστεροι.


XLVIII 約音動詞の希求法.条件文 (3) ——仮想の場合


§492.《練習問題 92》


1. 私はあの少女から愛されたいものだ。

2. もしかりに君が彼女を愛していないというのなら、君は彼女に愛されているだろう。

3. 君が君の父と母を敬わんことを。

4. もしかりにあなたがたがほかの人たちに良くしてやるなら、ほかの人たちもあなたがたに良くするでしょう。

5. 市民すべてが祖国を愛さんことを。

§493.《練習問題 93》


1. ὑπὸ τῶν πολῑ́των φιλοίμεθα.

2. εἰ ἔχοιτε χρήματα, καὶ ἂν φίλους ἔχοιτε.

3. εἴθε τῑμῷεν τὸν νόμον.

4. εἰ ἀγαθοποιοίης τὸν ἄλλον, καὶ ὁ ἄλλος ἄν σε ἀγαθοποιοίη.

5. εἴθε πάντες οἱ πολῖται τὴν πατρίδα φιλοῖτε.〔πάντες οἱ πολῖται は書かれていない主語 ῡ̔μεῖς に同格ということ。cf. §441.〕


XLIX 関係代名詞


§503.《練習問題 94》


1. 誰であれ他人を傷つける者は自分自身を傷つける。

2. 誰であれ彼を愛さない人は誰もいない。

3. 老人は彼らがもっているわずかな髪にさえ喜ぶ。

4. あなたがたの父である神は、あなたがたが必要としているものを知っている。

5. 誰であれ持っている人には与えられ有り余るほど与えられるだろう;だが誰であれ持っていない人からは持っているものさえ取りあげられるだろう。

§504.《練習問題 95》


1. ὅστις ἄλλον τῑμᾷ τῑμᾶται καὶ ἀπ’ ἄλλου.

2. οὐκ ἔστιν οὐδεὶς ὅστις ἑαυτὸν μῑσεῖ.

3. οὐχ ἥδεται τοῖς πολλοῖς οἷς [ἃ] ἔχει χρήμασιν.〔論理的には対格 ἅ だが、前の語に牽引を受けた οἷς のほうがたぶん自然なのだろう。〕

4. οἶδα (τοῦτο) οὗ χρείᾱν ἔχεις.

5. ὅστις εἶχεν, ἐδόθη αὐτῷ.


L 条件文 (4) ——一般的に仮定をする


§510.《練習問題 96》


1. ソクラテスにはあらゆる甘い飲みものがあった、というのは彼は渇いていなければきまって飲まなかったので。

2. 善良な男は裕福であれ貧乏であれ幸福である。

3. ミダス王が手であるいは足で触れたものはきまって黄金になった。〔ἅπτομαι は属格目的語をとる。cf. §393.〕

4. 彼は (子どもたちが) 願い求めるものはなんであれ子どもたちに与える。

5. もし自分の命を救わんと欲している者はそれを失うであろう;だが私のゆえに自分の命を失う者はそれを見いだすであろう。

§511.《練習問題 97》


1. οὐ πῑ́νω εἰ μὴ διψῶ.

2. ὁ ἄδικος ἀνὴρ ῎ᾱθλιός ἐστιν ἐᾱ́ντε πλούσιος ἐᾱ́ντε ὑγιὴς ᾖ.

3. οὗ ἅπτηται τῇ χειρὶ γίγνεται χρῡσός.

4. ἐδίδου τῷ παιδὶ ἅττα αἰτήσαιντο.

5. ὃς ἐᾱ̀ν ζητῇ, εὑρήσει.

mercredi 22 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (11)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 43 課から第 46 課までを扱う。



XLIII 接続法中・受動相.主文における接続法


§439.《練習問題 82》


1. 神が息子をこの世へ遣わしたのはこの世が彼を通して救われるためである。

2. われわれはなにを食べたものだろうか。飲んだものだろうか。着たものだろうか。

3. 思い煩うな。

4. 食べよう、飲もう。明日には死ぬのだから。

5. 触るな、味わうことも触れることもするな。

§440.《練習問題 83》


1. ἦλθον εἰς τὴν συναγωγὴν ἵνα διδαχθῶσιν.

2. μὴ πίητε μηδὲ φάγητε.

3. μὴ μεριμνήσῃς.

4. ἐσθίωμεν καὶ πῑ́νωμεν.

5. μὴ ἅψησθε μηδὲ γεύσησθε μηδὲ θίγητε.


XLIV 約音形容詞・名詞.条件文 (1) ——事実に反対の仮定をする


§450.《練習問題 84》


1. 真理の言葉は単純である。

2. もしマラトンでアテナイ人が勝たなかったら、全ギリシア人が奴隷にされていただろう。

3. 彼らは黄金と白銀の偶像を崇拝している。

4. もし神があなたがたの父であるならば、あなたがたは私を愛するだろう。

5. もし彼が正しい人でなかったならば、彼は苦しんでいなかっただろう。

§451.《練習問題 85》


1. ἁπλοῦν τὸ ἔπος τῆς ἀληθείᾱς.

2. εἰ ἐνῑ́κησαν, κατεδούλωσαν ἂν πάντας τοὺς Ἕλληνας.

3. προσκυνεῖτε τὸ εἴδωλον τὸ χρῡσοῦν.

4. εἰ ὁ θεὸς πατὴρ αὐτῶν ἦν, ἠγάπησαν ἂν αὐτόν.

5. εἰ ἦσαν δίκαιοι ἄνθρωποι, οὐκ ἂν ἐποίουν οὕτως.


XLV 約音動詞の接続法.条件文 (2) ——予想の場合


§457.《練習問題 86》


1. もしあなたがたが人々に親切にしているならば、人々もあなたがたに親切にするだろう。

2. もしあなたが味方を利し敵を害していれば、あなたは正しい人と呼ばれるだろう。

3. もしあなたがたが勝ちつづけていれば、あなたがたは人々からほめられるだろう。

4. もしあなたがたが善を熱心に追い求める人となれば、誰があなたがたを虐待するだろうか。

5. もしあなたがたが私の言葉のうちに留まるならば、あなたがたは真理を知り、真理はあなたがたを自由にするであろう。

§458.《練習問題 87》


1. ἐᾱ̀ν εὖ ποιῇς τὸν ἄνθρωπον, καὶ ὁ ἄνθρωπος εὖ ποιήσει σε.

2. ἐᾱ̀ν φιλοὺς ὠφελῶμεν καὶ ἐχθροὺς βλάπτωμεν, δίκαιοι ἄνθρωποι κληθησόμεθα.

3. ἐᾱ̀ν νῑκᾷς, ἐπαινεθήσῃ ὑπὸ τοῦ ἀνθρώπου.

4. τίς κακώσει ἡμᾶς ἐᾱ̀ν τοῦ ἀγαθοῦ ζηλωταὶ γενώμεθα ;

5. ἐᾱ̀ν σὺ μένῃς ἐν τῷ λόγῳ αὐτοῦ, γνώσῃ τὴν ἀλήθειαν.


XLVI 希求法能動相.主文における希求法


§471.《練習問題 88》


1. あなたがよい状態であってほしい (=お幸せに)。

2. 全員が同意するだろう。

3. おまえは滅んでおれ。

4. 希望の神があなたがたをあらゆる喜びと平安で満たしますように。

5. いったいなにをこのおしゃべり屋は言わんと欲しているのだろうか。

§472.《練習問題 89》


1. εὖ πρᾱ́ττοιτε.

2. οὐδεὶς ἂν ὁμολογήσειεν.

3. ῡ̔μεῖς εἶτε εἰς ἀπώλειαν.

4. ἡμᾶς πληρώσαις ἐλπίδος.

5. τί ἂν θέλοιεν αἱ γυναῖκες ἐκεῖναι ποιεῖν ;

mardi 21 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (10)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 39 課から第 42 課までを扱う。



XXXIX 疑問代名詞と不定代名詞


§394.《練習問題 74》


1. 節制とはなにか。——ある種の快楽を、そして欲望を自制すること。

2. あなたがたのなかで賢く知識がある者は誰か。

3. ある人が 2 人の息子をもっていた。

4. 誰かが私に触った。

5. なんのために彼は死んだのか。——正義のために。

§395.《練習問題 75》


1. τί ἐστι σοφίᾱ ; εὐβουλίᾱ.

2. τίς σοφὴ ἐν αὐταῖς ;

3. ἄνθρωποί τινες ἔχουσιν πολὺν πλοῦτον.

4. ἥπτοντό μού τινες.

5. τίνος ἕνεκεν ἐργάζῃ ; ἕνεκεν χρημάτων.


XL 不定詞 (1)


§409.《練習問題 76》


1. 私は正しき人たちをではなく罪人たちを招くために来た。

2. 人間によりもむしろ神に服従すべきである。

3. すでにあなたがたは眠りから目覚めさせられる (=目覚める) べき時である。

4. 男にとって女に触らないことはためになる。

5. 私は使徒と呼ばれるに十分でない。

§410.《練習問題 77》


1. οὐκ ἦλθεν κρῖναι τὸν κόσμον.

2. ἡμᾶς πειθαρχεῖν δεῖ δήμῳ.

3. νῦν ὥρᾱ ἡμᾶς ἐργάσασθαι.

4. καλὸν γυναικὸς μὴ ἅψασθαι.

5. ἐγὼ οὐκ εἰμὶ ἱκανὸς κληθῆναι διδάσκαλος.


XLI 不定詞 (2)


§418.《練習問題 78》


1. ヘロデはそれを殺すために幼児を探している。〔幼児 (=幼子イエス) はもちろん人間だが、中性名詞なので αὐτό で受けられている。〕

2. 私は平和をではなく剣を投げるために来た。

3. 彼は十字架につけられるために引き渡された。

4. 私にとって死ぬことは利益である。

5. 根をもっていないためにそれは枯らされた。

§419.《練習問題 79》


1. ἦλθεν τοῦ τοῖς ἀνθρώποις δοῦναι ζωήν.

2. ἦλθεν ποιῆσαι εἰρήνην.

3. ἦλθεν εἰς τὸ βαλεῖν μάχαιραν.

4. ἐμοὶ τὸ ζῆν ὡς οὐδέν.

5. διὰ τὸ ἔχειν ἐλπίδα ζῶμεν.


XLII 接続法能動相.目的を示す副文における接続法


§427.《練習問題 80》


1. ヨハネは光について証言するために来た。

2. 神が息子をこの世へ遣わしたのはこの世を裁くためにではない。

3. 私が来たのは彼らが命を持つためにである。

4. マリアはそこで泣くために墓へ赴いた。

5. 彼らは食べ飲むために生きている。

§428.《練習問題 81》


1. ἦλθεν ἵνα δῷ τὸ φῶς.

2. ἐν τῷ κόσμῳ εἰσὶν ἵνα κρῑ́νωσιν τὸν κόσμον.

3. ἦλθεν ἵνα ζωὴν σχῶσιν.

4. ἦλθον εἰς τὸ μνημεῖον ἵνα κλαίωσιν ἐκεῖ.

5. ἐσθίει ἵνα ζῇ.

lundi 20 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (9)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 35 課から第 38 課までを扱う。



XXXV 形容詞 第三活用 (2)


§362.《練習問題 66》


1. 黄金も権力も人々を幸福にはしない。

2. 真実を彼は言っている。

3. 哲学者たちはしばしば笑いの種を無学な民衆に提供する。

4. プラトンの本はソクラテスの有益な言葉で満ちている。

5. エチオピア人たちは黒い。

§363.《練習問題 67》


1. τὸν ἄνθρωπον εὐδαίμονα ποιεῖ δικαιοσύνη.〔この主語はあえて無冠詞にしてある。§321 の注 1 を参照。〕

2. ἀληθῆ λέγεις.

3. κολακεύουσιν ἀμαθῆ ὄχλον.

4. ἡ βίβλος ἥδε πλήρης ἐστὶ χρηστῶν ἐπῶν.

5. μέλαινά ἐστι.


XXXVI 名詞 第三活用 (5) —— ι, υ 音幹名詞


§369.《練習問題 68》


1. 嫉妬は悪い本性のしるしだ。

2. 飲むこと・食べることにおいては仲間が多いが、真面目な事柄においては少ない。

3. 春は心にも体にも活力を提供する。

4. ソクラテスは町から逃げなかった。

5. そこで彼らは彼に言う:私たちはここでは 5 つのパンと 2 匹の魚のほかにはもっていない。

§370.《練習問題 69》


1. φύσεως ἀγαθῆς σημεῖόν ἐστιν ἡ χάρις.

2. πόσιν καὶ βρῶσιν φιλοῦμεν.

3. ὁ οἶνος ἰσχῡ̀ν παρέχει τῇ ψῡχῇ.

4. ἐν τῷ ἄστει ἐπαίδευε νεᾱνίᾱν.

5. ὁ δὲ λέγει αὐτοῖς· οὐκ ἔχετε ὧδε εἰ μὴ ἕνα ἄρτον καὶ ἕνα ἰχθῡ́ν.


XXXVII 形容詞 第三活用 (3).πολύς,μέγας


§376.《練習問題 70》


1. 多くの富は多くの人々にとって大きな災いの原因となる。

2. おお愚かで心の鈍い者たちよ。

3. 短い時間で人間たちの命は終わる。

4. 人間たちの命は多くの時間留まらない。

5. 希望よ、おまえ (たち) は甘いが、あまりにも短い。

§377.《練習問題 71》


1. πλοῦτος πολὺς πολλοῖς αἴτιος μεγάλων μεριμνῶν ἐστιν.

2. ὦ ἀνόητε καὶ βραδὺ τῇ καρδίᾳ.

3. βραχῦς ὁ βίος.

4. ὁ βίος τῶν ἀνθρώπων βραχὺν χρόνον μένει.

5. ἡδεῖα μὲν εἶ, ὦ ἐλπίς, βραχεῖα δ’ ἄγαν.


XXXVIII 名詞 第三活用 (6) —— ευ 音幹名詞


§383.《練習問題 72》


1. アイアスとオデュッセウスはアキレウスの武具のことで争った。

2. 陶工も陶工に敵意をもつし、大工にも大工が (敵意をもつ)。
 乞食も乞食を妬むし、吟唱詩人も吟唱詩人を (妬む)。

3. そしてエッサイはダビデ王を生んだ。

4. 私はあなたがたを人々の漁師にするだろう。

5. あの人は王たちのなかの王、主人たちのなかの主人である。

6. 昨日私はペイライエウスへ歩いていった。

§384.《練習問題 73》


1. τὰ ὅπλα τοῦ Ἀχιλλέως ἔδοσαν Ὀδυσσεῖ.

2. βασιλῆς [βασιλεῖς] βασιλεῦσι φθονοῦσιν.

3. βασιλέᾱς [βασιλεῖς] τῑμᾶτε.

4. ἐγένοντο ἁλιεῖς οὐκ ἰχθύων ἀλλὰ ἀνθρώπων.

5. ἐκεῖνός ἐστιν προφήτης προφητῶν.

dimanche 19 décembre 2021

田中『新ギリシャ語入門』練習問題解答 (8)

田中利光『新ギリシャ語入門』(大修館書店、1994 年) の練習問題の解答例。このページでは第 31 課から第 34 課までを扱う。



XXXI εω, οω 動詞の直説法


§321.《練習問題 58》


1. 恋はあなたの心を盲目にする。

2. 黄金が人間たちの魂を明らかにする。

3. 知恵は後から考えるのではなく先に考える (ものだ)。

4. 神は世界を愛した。

5. 世界は彼を憎んだ。

6. 隣人をあなた自身のように愛しなさい。

7. ギリシア人たちは知恵を探し求める。

8. 私のなかには善いものが住んでいない。

§322.《練習問題 59》


1. ὁ ἔρως τυπλώσει τὴν ψῡχήν σου.

2. ὁ χρῡσὸς τᾱ̀ς τῶν ἀνθρώπων ψῡχᾱ̀ς δηλώσει.

3. μετενόουν.

4. ὁ θεὸς ἠγάπᾱ τὸν κόσμον.

5. ὁ κόσμος μῑσεῖ τὸν θεόν.

6. οὐ μετανοήσεις ἀλλὰ προνοήσεις.


XXXII 流音幹動詞の未来とアオリストの直説法能動相および中動相


§331.《練習問題 60》


1. 彼らは彼を鞭打ち殺すだろう。

2. 彼は黙っていてなにも答えなかった。(括弧内:彼はもはやなにも答えなかった。)〔同じ能相欠如動詞 ἀποκρῑ́νομαι だが、本文はアオリスト中動相 ἀπεκρῑ́νατο、括弧内はアオリスト受動相 ἀπεκρίθη が使われている。§330 の注 1 を参照。〕

3. 彼らは見て聞いたところのものを報告した。

4. われわれは地を汚すだろう。

5. 私はよき種を地に蒔くだろう。

§332.《練習問題 61》


1. ἐμαστῑ́γωσαν αὐτὸν καὶ ἀπέκτειναν.

2. σιωπήσει καὶ οὐκ ἀποκρινεῖται οὐδέν.

3. ὃ εἴδομεν καὶ ἠκούσαμεν, ἀπαγγελοῦμεν.

4. ἐφθείραμεν τὴν γῆν.

5. οὐκ ἐσπείραμεν καλὸν σπέρμα ἐπὶ τὴν γῆν.


XXXIII 名詞 第三活用 (3) —— σ 音幹名詞


§342.《練習問題 62》


1. 彼らは偽りを愛し、行っている。

2. 決して偽りから善きものは生じない。

3. (一方では) 刀剣によって肉体は損なわれ、(他方では) 偽りによって魂は (損なわれる)。

4. 悪しき利益はつねに罰をもたらす。

5. 彼は肉も食べなかったし葡萄酒も飲まなかった。

6. 苦しみによって学び (がある)。

§343.《練習問題 63》


1. φιλεῖ καὶ ποιεῖ ψεύδη.

2. οὔποτε ἐκ ψεύδους ἀγαθὰ γίγνεται.

3. τοῖς μὲν ξίφοσι φθείρεται τὸ σῶμα, τῷ δὲ ψεύδει ἠ ψῡχή.

4. κέρδος πονηρὸν εὐδαιμονίᾱν ᾱ̓εὶ φέρει.

5. οὐκ ἐσθίουσι κρέας οὐδὲ πῑ́νουσιν οἶνον.


XXXIV 名詞 第三活用 (4) ——流音幹名詞


§355.《練習問題 64》


1. しばしばよい父たちから悪い息子たちが生まれる。

2. 妻である (=妻として) あなたがたは夫たちに服従させられて (=服従して) いるか。

3. しばしば民衆は悪い弁論家たちに従う。

4. 富んでいる (=富者として) われわれは貧乏人たちに下着と上着を与える。

5. 羊飼いたちは羊たちと山羊たちを牧場へ連れてきてある。

§356.《練習問題 65》


1. πολλάκις ἐξ ἀγαθοῦ πατρὸς γίγνεται κακὸς υἱός.

2. ἡ γυνὴ οὐχ ὑποτάσσῃ τῷ ἀνδρί.

3. πολλάκις ὁ δῆμος ἕπεται κακοῖς ἡγεμόσιν.

4. τῷ πένητι χιτῶνα καὶ ῑ̔μάτιον δίδωσιν ὁ πλούσιος.

5. ὁ ποιμὴν ἤχεσαν τὰ πρόβατα καὶ τᾱ̀ς αἶγας εἰς τὸν λειμῶνα.