samedi 22 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (15)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 57 課から第 60 課までを扱う。



LVII 命令法能動相


§540. 練習問題 110


1. ごきげんよう、友よ、私に頻繁に (手紙を) 書いてくれ。

2. 双方にとって公正であれ。

3. つねに徳を追求せよ、子よ、そして悪い快楽は避けよ。

4. 誰であれそれがよいと思う者は手を挙げよ。〔ὅτῳ は不定関係代名詞 ὅστις の男性単数与格・短形。省略されている先行詞が主語。出典はクセノポン『アナバシス』3.2.38。〕

5. 聞いてくれ、妻よ、私はおまえに優美な言葉を言いたいのだ。

6. さあ留まって同じようにやっていろ。

7. 少しのあいだ私を待て。

8. 自由人らしく仕えよ;おまえは奴隷にはならない/ではなくなるのだから。〔XXXIV 課和訳 2. を命令法 2 単に変えたもの。〕

§541. 練習問題 111


1. χαίρετε, ὦ μαθηταὶ φίλοι. ῎ᾱκων καταλείπω ῡ̔μᾶς.

2. μένε, ὦ φίλε, τῷ ἄστει τῷδε.

3. ἡμῖν πέμψον εὐθὺς τὸν ἑρμηνέᾱ.

4. οἱ βουλόμενοι ἀκουσάντων ταῦτα ἃ λέγω.

5. μὴ λέξῃς μεγάλῃ τῇ φωνῇ.


LVIII 命令法中動および受動相


§546. 練習問題 112


1. 神々を恐れよ、そして諸法に従え。

2. 三段橈船はただちに準備されよ。〔命アオ受 3 複。〕

3. 諸君のうち誰であれ (自分の) 家族に会いたいと思う者は、(自分が) 勇敢なる男であることを思いだしてあれ (=肝に銘じておけ)。〔ἰδεῖν は ὁράω の不アオ能。やはり先行詞省略で、この関係節全体が主文の主語、すなわち μεμνήσθω という 3 人称命令の相手。肝に銘じる内容は、ἀνὴρ ἀγαθὸς εἶναι という主格不定法であることから、主文の主語じしんが不定法句の主語でもあるとわかる。出典は『アナバシス』3.2.39。〕

4. そして誰であれ生きたいと思う者は勝つことに努めよ。〔前問のすぐあとの文。家族に会いたいなら戦って生き残り祖国ギリシアへ帰りつこうということ。〕

5. 私のあとについてこい;村は遠く離れてはいないから。

§547. 練習問題 113


1. τοῖς τοῦ πατρὸς λόγοις πείθου.

2. πρὸς τοὺς πολεμίους μάχεσθε ἀνδρείως.

3. ὁ ἀχάριστος μὴ νομιζέσθω φίλος.

4. θᾶττον πορεύεσθε, ὦ στρατιῶται.

5. πρῶτον εὔχου τοῖς θεοῖς.

§548.〔エウクレイデース (ユークリッド)『原論』より〕


エウクレイデース『原論』第 1 巻 (命題) 18

(1) あらゆる三角形の (=任意の三角形において)、より大きな [長い] 辺はより大きな角に対する。〔比較級であることに注意。したがって、この命題は最長の辺についてに限らず、2 番めに長い辺と最短の辺とのあいだにも成りたつのである。〕

(2-1) なんとなれば、ΑΒΓ は (辺) ΑΒ より辺 ΑΓ をより長いものとしてもつ三角形とせよ;〔冠詞がついていないので、τρίγωνον τὸ ΑΒΓ をひとつの名詞句と見るか、主語・述語と見るかは微妙なところで、どちらともとれる。ここでは後者としたが、いずれにせよ証明には影響しない。〕

(2-2) (このとき) ΑΒΓ によって (なされる) 角もまた ΒΓΑ によって (なされる角) より大きいといえる。〔冗長なので「によってなされる角」は次からたんに「角 ΑΒΓ」のように言う。〕

(3) なぜならば、ΑΓ は ΑΒ よりも長いので、ΑΒ に等しいものとして ΑΔ が置かれよ、そして ΒΔ が結びあわされてあれ。〔3 人称命令らしく訳したが、これもふつうの日本語としてはそのように「ΑΔ をとり、ΒΔ を結べ」でよい。〕

(4-1) すると、三角形 ΒΓΔ の外側に角 ΑΔΒ があるので、内側にあり相対する角 ΔΓΒ よりも大きい;〔これはなぜかというと、三角形の内角の和が 180° で 2 直角に等しいから、∠ΔΒΓ + ∠ΔΓΒ = 180° − ∠ΒΔΓ = ∠ΑΔΒ であって、この式の最初と最後を見比べると ∠ΔΓΒ に正の角を足したものが ∠ΑΔΒ だから、後者のほうが厳密に大きいことになる。〕

(4-2) また辺 ΑΒ が ΑΔ に等しいので、角 ΑΔΒ は角 ΑΒΔ に等しい;〔二等辺三角形だから底辺の両端の 2 角は等しい。〕

(4-3) ゆえに角 ΑΒΔ も角 ΑΓΒ より大きい;

(4-4) ゆえに角 ΑΒΓ は角 ΑΓΒ よりもいっそう大きい。

(5) したがって、あらゆる三角形において、より長い辺はより大きな角に対する;まさにこれを示すべきであった (=これが証明すべきことであった)。〔ὅπερ は ὅσπερ の中性単数対格。ἔδει は非人称動詞 δεῖ の未完了過去。最後の 3 語は Ο.Ε.Δ. とも略され、そのラテン語版が Q.E.D. である。といっても逐語訳ではなく、ラテン語の E = erat は be 動詞の未完了過去、D = demonstrandum は動形容詞で、英語に直訳すれば which was to be demonstrated「これが証明されるべきであった」の意。〕

〔読解には影響のないことであるが、私にどうしてもわからないのは (4-2) の末尾で τῇ ΑΔ ἐστιν の ἐστιν にアクセントがないことである。少なくともハイベア (J. L. Heiberg) のエディションでもこうなっており、本書の誤植ではないらしい。ΑΔ を 1 文字ずつ「アルパ゠デルタ ἄλφα-δέλτα」と読むとすれば、ここでは与格だが δέλτα は無変化だからそのまま paenultima で、それに続く後倚辞 ἐστὶν のアクセントは重になるはずだろう。アクセントがなくなるということは、もしかして ΑΔ は「アド ἄδ」のように 1 音節のアクロニムとして読むのだろうか? それともまったくべつの読みかたがあるのか?〕


LIX 約音動詞の命令法.τυγχάνω その他と共に用いられる分詞


§553. 練習問題 114


1. いったいなんのゆえにこんな時刻に来たのか彼らに尋ねよ。

2. 不正な戦争を戦うな。〔巻末の語彙では πολεμέω は与格支配とあるが、ここでは明らかに他動詞として使われている。より新しい用法。〕

3. われわれに先んじてほかの人たちが勝利を報告することのないように、もっと早く行こうではないか。〔ἴωμεν は接現 1 複 (勧奨の接続法)、φθάσωσιν は接アオ 3 複、ἀπαγγείλαντες はアオ能分・男複主 (第 1 アオリストだが流音幹なので σ がない)。〕

4. 子どもたちよ、なるべく早くそれをやりなさい。

5. (彼らが) 君たちを好むように、その人たちによくしなさい。〔XXXVIII 課和訳 1. に類似。〕

6. 君は私たちにも最良のことを忠告するよう努めなさい。

7. そんなようなことをしようと欲するな;それは正しくないだろうからだ、男たちよ。

8. 君の言いたいことを私に明かしなさい。

9. その人が私のところに来てあったとき、私はちょうど旅をしていて不在だった。

10. おまえは私に知られずにそれをすることはないだろう。

§554. 練習問題 115


1. πειρῶ ἀνδρείως φέρειν πᾶσαν τὴν συμφορᾱ́ν.

2. σπεύδετε ἵνα φθάσητε τοὺς ἄλλους τοῦτο δρᾱ́σαντες [ποιήσαντες].

3. εὖ ποίει καὶ κακίστους ἄνδρας.

4. οἱ πολῖται ἐτύγχανον ἑορτὴν ἄγοντες.

5. ἐρώτᾱ τὸν παῖδα τίνα ζητεῖ.


LX 間接話法 (1)


§558. 練習問題 116


1. ソークラテースは若者に、一体に節制とは何であるかと尋ねていた。

2. 将軍は兵士たちに、敵たちは何をしているかと尋ねていた。

3. すると兵士たちは、敵たちはすでに武具をもって出撃しはじめていると言っていた。

4. 彼は何をするか言わなかった。

5. あなたが真実を言っていたのか否か私は知ろうと努めるでしょう。〔μαθεῖν は μανθάνω の不アオ能。〕

6. ヘーラクレースは快楽のと徳のと 2 つの道を見て、どちらへ進むのがよりよいか迷っていた。〔ἰδών は ὁράω のアオ能分。〕

7. 身体に関してはギリシア人たちのほうが蛮族どもよりも立派にもっていると彼らは言っていた。

8. 敵たちは出帆したかどうかと彼らは尋ねていた。

9. そのとき彼は何を言ったものかと困惑して黙っていた。〔注の示唆に従い、λέγοι の希求法はもとは接続法 λέγῃ であると解し、かつ続く作文 3. と対応するであろうから、「自分が何を言おうかと」ととるのが本命。だが副文の主語はべつの人と解して「相手が何を言っているのだろうかと」ともとれそうである。〕

10. その若者は勇敢であるがゆえに逃げることを恥じていると彼らは言っていた。

§559. 練習問題 117


1. ἠρώτησα [ἠρόμην] τὸν ἄνδρα τί λέγειν βούλοιτο.

2. εἶπεν ὅτι οἱ γονεῖς κακῶς ἔχοιεν.

3. ἠποροῦμεν τί ποιοῖμεν.

4. ἠρώτησα αὐτὸν εἰ μὴ ὁ βασιλεὺς μαίνοιτο.

5. εἰ ὡς ἀληθῶς τὴν πατρίδα φιλοῦσι βούλομαι μαθεῖν.

dimanche 16 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (14)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 53 課から第 56 課までを扱う。



LIII 可能性を示す希求法.数詞


§511. 練習問題 102


1. おお息子よ、おまえが父よりも幸運であるように、そしてほかの点では同様であるように。そうすればおまえは悪くない評判をとるだろう。〔途中までは XLIV 課和訳 1. と同文。〕

2. だがおそらく誰かが (こう) 言うだろう:私たちは一隻も船をもっていないのだから、いかにしてそうすることができようか、と。

3. 教育のないまま全生涯を終えることのかわりに、教育されてあることを誰が選ばないだろうか (=選ばない者がいるだろうか)。

4. どうしてそのことが起きたのかよく知っているけれども、私はあなたがたに話さないだろう。

5. 私を置いていかないでくれ、神々にかけて [お願いだから];私はひとりでいられないだろうから。

6. ああ、どうか父が私を見ないように。——だが君は父に知られずにいないだろう。

7. というのも、もし 1 人 (だけ) が彼らを堕落させ、ほかの者たちは (彼らを) 助けるならば、青年たちにはある大きな幸福がある (ことになる) だろう。〔『ソクラテスの弁明』12 章 (25b–c)。ソクラテスの裁判において、彼だけが若者たちを堕落させ、彼以外の市民は善導している、と言われた (というか言わせた) ことを受けた反論。〕

8. そうであればよいが、しかし私はその反対のことが起こりはしないかと恐れてある。〔『エウテュプロン』3a。〕

9. 牝獅子は、1 頭を産む [1 頭しか産まない] ことについて狐から非難されて、言った:「(たしかに) 1 頭だ、だが獅子の仔だ」。〔アイソーポス (イソップ) の寓話のひとつ。数よりも質ということ。私は以前に「谷口訳『中世アルメニア寓話集』「雌獅子と狐」の誤訳」という記事で、同じ寓話の中世アルメニア語版を読んで検討したことがある。寓話じたいはたいへん短いもので、記事の最後に翻訳のまとめがあるので、アルメニア語に関心のないかたは途中は飛ばしてご覧になるとよい。〕

§512. 練習問題 103


1. πῶς ἂν τὰ πολλὰ ποιεῖν δυναίμεθα ἐν βραχεῖ χρόνῳ ;

2. ἴσως (δ’) ἂν λέγοις τόδε.

3. τίς οὐκ ἂν ἥδοιτο ἐπαινούμενος ὑπὸ τῶν ἄλλων.

4. ἔτι νέῳ ὄντι σοι οὐκ ἂν πρέποι ταῦτα ποιεῖν.

5. πολλάκις ἐξ ἑνὸς ἁμαρτήματος γίγνονται πολλαὶ συμφοραί.


LIV 形容詞の不規則な比較


§515. 練習問題 104


1. 名声や名誉よりも徳は美しい。

2. 若者たちは老人たちよりも希望をより美しいものとしてもっている。

3. その娘たちは母よりも容姿の点で美しいと彼らは言っている。〔τὴν ἰδέᾱν は限定 (観点) の対格。cf. XLIV 課注 3。〕

4. 敵がより多いほど、それだけいっそうそいつらを討ったときの諸君にとっての栄誉は大きいだろう。

5. 諸国家にとって内乱よりも大きな悪は存在しない。

6. あらゆる快楽よりもソークラテースはよりよい;他方多くの者たちは快楽よりも悪い。

7. しばしば貧乏は人間をよりよいものにする。〔しかし「貧すれば鈍する」という言葉のとおり、逆のことも多いのではないか。〕

8. 優れた者たちよりも、より劣った者たちが時によるとより幸運である。

9. 足は速いが、風はもっと速く、精神はもっとも速い。

10. 何者も時より優れた忠告者ではない。〔なにか決断や行動を起こすまえに時間を置けということだと思う。時間が経つことで考えが変わったとすれば、それは時間が忠告をくれたとも言える。〕

§516. 練習問題 105


1. τοῦ θανάτου οὐκ ἔστι μεῖζον κακὸν τοῖς πολλοῖς.

2. ἐμοῦ ἔχεις σὺ τὴν κόμην καλλῑ́ω [καλλῑ́ονα].

3. οἱ Πέρσαι πολλῷ πλείους [πλείονες] ἦσαν τῶν Ἑλλήνων.

4. ἕτοιμοί ἐσμεν μείζω [μείζονα] κίνδῡνον ὑπομένειν.

5. θᾱ́ττων ὁ νοῦς ἢ οἱ ἄνεμοι.


LV 普遍的または反復的想定をあらわす条件文


§521. 練習問題 106


1. あるいは哲学者が統治するか、あるいは王が哲学するかでなければ、諸国家にとって悪の止まることはない。〔プラトン『国家』473c–d をかなり短く切りつめた文。〕

2. なんであれやりはじめたことについてはカイレポーンは熱心だった。

3. 蝿や蚋が蜘蛛の巣に陥るといつでも捕まえられる。

4. ありとある言葉は、(対応する) 事物が存在しないならばいつでも、無意味に見える。〔それぞれの言葉に「対応する」と補ったのは私の解釈で、ヴィトゲンシュタインの写像理論のような主張かと理解している。「およそ事物というものが存在しない」という仮定だとしたら、普遍的想定ではなく反実仮想で表すのではないか?〕

5. ソークラテースにはあらゆるうまい飲みものがあった、なぜなら彼は渇かなければ (いつも) 飲もうとしなかったので。

6. もし君が若いときに苦労すれば、繁栄した老年をもつだろう。

7. もし知性がそこにないならば、学問は何物でもない。〔παρῇ は πάρειμι の接続法現在 3 単。〕

8. もし彼が大きく強かろうと、小さく弱かろうと、善良な人は幸福である。

9. そんなようなことをしている者は誰であれ死に値すると少なくとも私には思われる。

10. ミダース (王) が手であれ足であれ触れたものはなんでも黄金に変じたものだった。〔未完了過去は「〜したものだった」という習慣。〕

§522. 練習問題 107


1. δοκεῖ μοι μῶρος ὅστις ἂν τὰ τοιαῦτα λέγῃ.

2. ἐᾱ̀ν ὁ παῖς κλαίῃ, αὐτῷ ἡ μήτηρ δίδωσι τὸ μέλι τὸ γλυκύ.

3. ἐᾱ̀ν συμμάχους ἔχωμεν τοὺς θεούς, ᾱ̓εὶ νῑκῶμεν τοὺς πολεμίους.

4. ἐπίστευεν ὅστις δοκοίη αὐτῷ πιστός.

5. χρηστόν τί μοι συνεβούλευεν, ὅτε ἀποροίην.


LVI 副詞.副詞の比較


§528. 練習問題 108


1. (そのなかで) 有益な者たちが尊敬されているようならば (いつでも) その国家は非常によく治められている。〔τῑμῶνται は直説法と同形だが接続法現在にとり、ἄν とあわせて普遍的条件文に準ずる関係文 (§§519f.) とみなす。〕

2. まことに、そのときには誰かが私を正当にも裁判所へ訴えるだろう。〔『ソクラテスの弁明』17 章 (29a)。τότε「そのときには」を条件文の前文のかわりとみなせる。〕

3. すべての人間は幸せであることを欲する。〔注 2 に εὖ πρᾱ́ττω が語釈されているが、すでに XLIV 課の練習問題で学んだことなのに繰りかえす必要はない。もっとほかに注をつけてほしいところがいくらでもある。〕

4. ゆっくり急げ:よりゆっくり進んでいるとき (こそ) より速く進むのだから。〔ラテン語で Festina lente.「急がば回れ」のこと。〕

5. アリストテレースは感謝は早く老いると言っている。〔ディオゲネス・ラエルティオス『哲学者列伝』5.1.18。同じくアリストテレスの発言として、ずっとまえに XI 課和訳 3. で「教育の根は苦いがその果実は甘い」という言葉を見たがこれも同じ箇所が典拠で、その直後に続くのが本問の文。〕

6. 私たちは他人の過ちは自分の (過ち) よりもより容易に目のなかにもつ (=目につく)。

7. 私はあなたがたの栄誉を自分の危険よりもより少なく考慮することはしない。

8. われわれは現在では昔よりもより安全に、より危険少なく海を渡っている。

§529. 練習問題 109


1. ταῦτα ἄν σοι λέγοιμι σαφέστερον.

2. ἅμα τῇ ἡμέρᾳ θᾶττον πορεύσονται.

3. μᾶλλον φοβούμεθα τοὺς θεοὺς ἢ τοὺς ἀνθρώπους.

4. πᾶσιν ἀρέσκει ἡ ᾠδή, ἄριστα δὲ ταῖς Μούσαις.

5. ὡς ἂν τάχιστα ποιήσαιμεν [ποιοῖμεν] (ταῦτα) ἃ κελεύσειας [κελεύοις].

§530. ΠΙΘΗΚΟΙ ΟΡΧΗΣΤΑΙ〔猿の踊り子〕


(1) あるエジプト人の王がいつか猿たちに踊ることを教えた。

(2-1) するとその獣たちは、はなはだ熱心に人間たちを真似るので、たちまちに学んで立派に踊りだした、衣装と面をまとって;〔μαθόντα は μανθάνω の第 2 アオリスト能動分詞・中性複数主格。〕

(2-2) そして長いあいだこの猿たちは大いに好評を博していた;

(2-3) だが最後にさる機知のある見物人が、クルミの実を懐にもっていて、(猿たちの) 真ん中へ投げこんだ。

(3-1) すると (それを) 見た猿たちは踊りをやめ、踊り子ではなく (もとの) 猿になった;〔この箇所の注 5 も蛇足。「やめる」という動詞に分詞の補語を伴うことは LI 課の本文 §486 で、まさに同じ παύομαι + 現在分詞の例文で説明されてある。〕

(3-2) そして衣装も面も脱ぎ捨てて、クルミをめぐって互いに争いはじめた。

samedi 15 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (13)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 49 課から第 52 課までを扱う。



XLIX 分詞 (2) —中動および受動相.情況を示す分詞


§476. 練習問題 94


1. ディオゲネースはある悪人にほめられて、「不安だ」と言っ (てい) た、「私はなにか悪いことをしてあるのではないかと」。〔XLIV 課和訳 8. を直接話法にしたもの。εἰργασμένος ὦ は ἐργάζομαι の接続法現在完了中動相 3 単。〕

2. へつらう者たちはだます者たちと同様に、信じられておりながら信じた者たちを悪く扱う (=ひどい目にあわせる)。〔πιστευθέντες の 1 語が状況を表す分詞句。アオリスト受動分詞・男性複数主格で主語に一致しており、主語の者たちが「信用されたのに、されたくせに」という譲歩、あるいは「されておいて」という手口の説明か。〕

3. もし誰かが嘘をつくならば、人間を恐れながら神を軽視している以外のなんであろうか。

4. 神々も人間たちから尊敬されると喜ぶ。

5. それでは私たちは頂上を占拠するために男たちを送ろうではないか。

6. その老人は身代金をもって娘を釈放してもらうために来た。〔「釈放してもらうために」は親切に注が答えを書いてくれているとおりであるが、現在中動分詞の中動の部分が「自分たちのために解放させる」という感じなので「してもらう」と訳せるということ。〕

7. ソローンは、いかにして国家において悪事が生じなかろうかと尋ねられて、答えた:「もし害されていない者たちが、害されている者たちと同じように憤慨するならば」と。

8. 若者たちを教育するもの [方法] は 2 つだ:悪いことをしている者たちへの処罰と、よい人たちへ与えられる贈り物 [報奨] と。〔念のため、コンマの次の ἥ は関係代名詞ではなく、次の後倚辞 τε からアクセントをもらっただけのただの定冠詞。〕

9. 国家とは共通の法令を用いる多数の人々の住まいである。

§477. 練習問題 95


1. τίς οὐκ ὀργίζεται [ἀγανακτεῖ] ἀδικούμενος ;

2. ὦ παῖ (μου), μὴ ταῦτα ποιήσῃς φοβούμενος θεόν.

3. ὁ ποιητὴς ἐτελεύτησε τῑμώμενος ὑπὸ πάντων τῶν πολῑτῶν.

4. ὑπὸ καλῷ διδασκάλῳ παιδευόμενος ὁ παῖς οὐκ ᾱ̓εὶ γίγνεται καλός.

5. ἦλθον λῡσόμενοι τοὺς παῖδας.


L 第三変化の名詞 (6) —複母音 (αυ, ευ, ου) 語幹の名詞.οἶδα の変化


§483. 練習問題 96


1. なんであれ大地がもたらしうるところのものを知らない者は、蒔くべきであるところの何物をさえ知らないであろう。

2. 両親を養わず、あるいは必需品を提供しない者は、市民権を失うところであるというのがアテーナイ人たちの法である。

3. 私は知らないことを (なんであれ) 知っていると思うこともしない。〔οὐκ οἶδα でなく μή なので一般的。原典は『ソクラテスの弁明』6 章 (21d)。cf. 田中『新ギリシャ語入門』§549。〕

4. アテーナーはオデュッセウスにとって、すべての危難・危険において同盟者であり忠告者であった。

5. 牛の類は人間にとってどんなことにも役に立つ。

6. アキッレウスの武具をめぐるアイアースとオデュッセウスとの争いを君たちは知らないのか。

7. その日の遅くに船団は港に来るだろう;嵐が恐ろしいから。

8. 陶工は陶工を妬み、王たちは王たちを (妬む)。〔たぶんヘシオドス『仕事と日』25–26 行改変。〕

9. 騎兵たちは馬たちを養い、馬たちは騎兵たちを乗せる。

10. インド人たちのところでは、神官たちの氏族は牧人たちや農民たちや職人たちの氏族から区別されてあった。〔動詞は直説法現在完了受動相 3 単。〕

§484. 練習問題 97


1. τί Ποσειδῶν ἐμῑ́σει τὸν Ὀδυσσέᾱ ;

2. μετὰ τὸν τοῦ Ἀχιλλέως θανάτου τὰ ὅπλα αὐτοῦ τῷ Ὀδυσσεῖ ἔδοσαν οἱ Ἕλληνες.

3. μετεπεμψάμεθα τὸν ἑρμηνέᾱ.

4. ἆρ’ οἶσθα τίς ἀπέκτεινε τὸν βασιλέᾱ ;

5. ἐπὶ τῆς νεὼς ἦγον τούς τε ἵππους καὶ τοὺς βοῦς.


LI 補語的に用いられる分詞.分詞の独立的用法


§491. 練習問題 98


1. われわれはみな (他人に) 忠告することに際しては賢いが、みずからが誤っているときには知らない [気づかない]。〔エウリピデス断片 1042。〕

2. 神々は人間たちによって尊敬されるときのみならず愛されているときにも喜ぶ。

3. 勇敢な者は逃げることを恥じるが、卑怯な者は逃げていても恥じない。

4. プラトーンは、アクラガースの市民たちが金をかけて家を建て贅沢に食事しているのを見て、彼らは永遠に生きるかのように家を建て、明日死ぬかのように食事していると言った。

5. アテーナイ人たちは後になってソークラテースを有罪としたことを後悔した。

6. その娘は、両親は渋っているのに、役者のところに嫁ぐ。

7. 平和を得ることができるときに、誰も戦争を選ばないだろう。

8. 魂を失った身体が死ぬのとちょうど同じように、そのように国家もまた法がなくば倒壊する。〔ἐστερημένον は στερέω の現在完了中受動分詞・中性単数主格で、属格のものを失って (奪われて) いる。後半の μὴ ὄντων νόμων の部分が独立属格。〕

9. 彼らは一日じゅうそのようなことを話すのをやめなかった。

§492. 練習問題 99


1. οὐκ αἰσχῡ́νονται ἁμαρτάνοντες.

2. ὕστερόν μοι μετεμέλησε τοῦτον (τὸν ἄνδρα) παίσαντι.

3. οἱ γέροντες ἥδονται τῑμώμενοι ὑπὸ τῶν νέων.

4. ἐξὸν ἐκ τοῦ ἄστεως φεύγειν, Σωκράτης οὐ τοῦτο ἐπειρᾶτο [ἐπειρᾱ́σατο].〔「しようとしなかった」というのはいろいろ訳しようがあり、ここでは πειράομαι「試みる」を使ったが、οὐ ... ἐβούλετο「したがらなかった」あるいは ἐποίει (未完了だけで「しようとする」を表す) でもいけそうである。〕

5. τῶν πολεμίων διωκόντων οὐκ ἐπαυσάμεθα δι’ ὅλης τῆς νυκτὸς πορευόμενοι.

§493. ΟΙΔΙΠΟΥΣ〔オイディプース〕


〔一文ごとに区切って訳を提示する。(1) から (5) まではソポクレス『オイディプス王』のあらすじ、(6) からは同人の『コロノスのオイディプス』の設定。といってもこの文章がそれら悲劇からの抜粋なのではなく、教科書の著者か誰かによって簡略化して書かれた散文の説明である。〕

(1) そのあとオイディプースは長いあいだテーバイをはなはだ成功裡に治めた。

(2) だが多年の後になって突然に生じた恐ろしい災いが国家をはなはだ重く圧迫しはじめた。

(3) そして非常に多くの市民たちが死んでいくので、王は当時の予言者たちのうちもっとも著名だったテイレシアースを呼び寄せ、この災いの原因を明らかにすることを命じた。〔τότε「当時」は副詞だが形容詞的に用いられていることはこれまで何度も説明されているとおり (e.g. XIX 課練習問題の注 1、XLVII 課の注 1)。〕

(4) すると彼は明確に言った、オイディプースがすべての悪いことに責任がある、(それは彼が) 父を殺し母と結婚したからであると。

(5) まさにそのときイオカステーは、オイディプースについての話を聞き、自分から首をくくって死ぬ。他方オイディプースは自分の両目をえぐりだす。神々の神託は空言でも偽りでもないことを遅ればせながら知ったことで。〔注のあるとおり、ここからの動詞は歴史的現在なので過去に訳してよい (が、ここでは語形をわかりやすくするため現在は現在に訳しておく)。τὰ περὶ τὸν Οἰδίπουν は前置詞句を名詞化しており「オイディプスについてのこと (話)」。後半オイディプスについての主文は ἐκκόπτεται τοὺς ὀφθαλμούς と中動相で言っていることで「自分から両目を=自分の両目を」という意味になる。〕

(6) 呪われ祖国から廃位された彼は、アンティゴネーとともにアッティカのコローノスにあるエウメニデスの神域のほうへ逃げこむ。そこではテーセウスが盲目の嘆願者 (=オイディプース) を親切に迎え入れた。〔巻末に ἀποκήρυκτος は「廃嫡された,相続権を奪われた」とあるのだが、すでに王として長年治めたあとでそぐわないので「廃位」と訳しておく。ἐδέξατο は δέχομαι のアオリスト中動相。〕

(7) その場所でわずかな時間のあと、あらゆる種類の受難と苦痛によって弱められてあった [弱っていた] この老人は亡くなる。〔κατακεκλασμένος は現在完了受動分詞なので、すでにこれまでの苦難の連続で弱った状態であったということ。〕


LII 形容詞の比較


§501. 練習問題 100


1. 海のそばでの生活は町での (生活) より心地よくはないか。

2. なんとうまいのだ、水は。——神々にかけて、だが葡萄酒はもっとうまいし甘い。

3. 追従者たちは友人たちよりも心地よいことを語るが、より恥ずべきことを (語る)。

4. 知恵より貴重な財産はない。

5. 蜜蜂はきわめてとげとげしい花やざらざらした棘のある草のなかにもっとも甘い蜜を見つける。

6. 夕方にかけて家々はより長い影をもつ (=家々の影はより長くなる)。

7. たいていの場合男たちは女たちより低い声をもっている (=声が低い)。

8. 人々のうちもっとも弱い者たちはもっとも妬み深い。

9. (彼は) 魚よりも無口でカラスよりも黒い。

10. アゲーシラーオスは友人たちにははなはだ穏やかだったが、敵たちにははなはだ恐ろしかった。

§502. 練習問題 101


1. ἡμῖν ἡ φιλίᾱ τῑμιωτέρᾱ ἐστὶ τοῦ χρῡσοῦ.

2. οἱ ἄνθρωποι ἐνόμιζον τὸν Σωκράτη σοφώτατον πάντων τῶν Ἑλλήνων.

3. ὀξυτέρᾱς ἔχουσι τᾱ̀ς φωνᾱ̀ς αἱ γυναῖκες ἢ οἱ ἄνδρες.

4. δοκεῖς μοι σοφώτερος αὐτοῦ.

5. οὐκ ἐμῑ́σει τὸν κάκιστον ἄνθρωπον.

vendredi 14 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (12)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 45 課から第 48 課までを扱う。



XLV 第三変化の形容詞 (2)


§443. 練習問題 86


1. 黄金も権力も人間を幸福にしない。

2. 悪口を軽蔑することは健全な精神の人のすることだ。〔属格の意味については後掲 5. と同様。〕

3. 人生をつねに幸福にもつことは不可能だ。〔この形容詞は「幸福な人生を」という限定より、「人生を幸福な状態でもつ」という述語的にとるほうがそれらしい。〕

4. まじめな息子は父を喜ばすが、愚かな息子は母にとって苦痛である。〔むろん前半は母にも、後半は父にもあてはまる話。したがって父・母と個別に挙げてはいるが、全体を通して両親のことを指しているというレトリックだと思う。〕

5. つねに真実のことを語ることは自由人のすることだ。〔XXXIII 課和訳 4. とほぼ同文。属格についての説明もその箇所の注にある。〕

6. 無学な力はしばしば害を生む。

7. 好学であれ、そうすれば君たちは博学になれるだろう。

8. 哲学者たちはしばしば無学な民衆に笑いの種を提供する。

9. なぜあなたは髪は黒いのに髭は白いのか。

10. オリュンポスの頂上には不死なる神々がいた。

§444. 練習問題 87


1. ὁ φιλομαθὴς οὐκ ᾱ̓εὶ πολυμαθής ἐστιν.

2. τὸν πατέρα εὐδαιμονίζομεν υἱοῦ σώφρονος.〔関係節で ὃς υἱὸν σώφρονα ἔχει と表現もできる。どちらにせよ出題意図は第 3 変化 σώφρων の斜格を書かせることにあろう。〕

3. ἆρα ἀληθῆ ἐστι πάντα ἃ λέγεις ;

4. ἀνεπαύοντο ἐν τῇ ῞ῡλῃ ἐσχάτης τῆς νήσου.

5. ὁ οἶνος πολλάκις ἀσθενῆ ποιεῖ τὸν νοῦν.


XLVI 約音動詞の希求法.可能的未来を示す条件文


§450. 練習問題 88


1. 彼らは敵たちがなにか悪いことをせぬかと恐れていた。

2. 全市民が祖国を愛していればよいのだが。

3. もしわれわれが蛮族どもを破ることができるなら、もはや面倒はないであろう。〔XXXVIII 課和訳 2. の予想的未来の文を可能的未来に書きかえたもの。〕

4. もしギリシア人たちが蛮族どもを破るならそれは結構であろう。

5. もしそれが正しくないならば、君が命じることごとのうち何事をも私は行わないであろう。

6. もし君がそうするならば私は君に感謝するだろう。

7. もしその計画を将軍が明らかにするならば、兵士たちはそれをするだろう。

8. もし君がそんなことを言うなら、ほかの人たちに笑いを止めておくことはできないだろう。〔XXXVIII 課和訳 9. に類似。〕

9. だがもし私たちに金があれば、私たちは友人をもつだろう。

10. もし私たちが武器をもたないならば、私たちは身体 [命] をも失うであろう。

§451. 練習問題 89


1. ἐφοβεῖτο μή τι ἀδικοῖεν ἡμᾶς οἱ ναῦται.

2. εἰ ταῦτα ποιήσαιτε, πρᾱ́γματ’ ἂν ἔχοιμεν.

3. εἰ μὴ πιστὸς εἴης, τῶν φίλων στερηθείης.

4. εἰ σὺ ἀλήθειαν [ἀληθῆ] λέγοις, καὶ ἐγὼ [κᾱ̓γὼ] δηλοίην ἂν τὸ βούλημά μου.

5. εἰ μὴ πείθοιντο τῷ στρατηγῷ οἱ στρατιῶται, οὐκ ἂν οἷοί τ’ εἴησαν [εἶεν] τοὺς πολεμίους νῑκᾶν.


XLVII 第三変化の名詞 (5) — ι, υ 語幹の名詞


§458. 練習問題 90


1. 彼らは私たちが来ているところの都市の名前を言っている。

2. ソークラテースは国家が神々とみなすところの (者たちを) (神々と) みなしていない。〔関係代名詞 οὕς のまえに先行詞 τούτους が省略されている。νομίζω には「信ずる」という訳語も与えられているが、これは 2 つの対格をとって「A を B とみなす」というふつうの用法で理解できる。すなわち関係節内ではポリスが οὕς を θεούς とみなす、外側の主文ではソクラテスが (τούτους) οὓς ... の全体を θεούς とみなさない、という構造の文で、θεούς も 2 度めは省略されている。〕

3. 嫉妬は悪い本性のしるしである。

4. 飲むこと・食べることにおいては友が多いが、まじめな事柄においては少ない。

5. 戦争は国家にとって無数の悪いことの原因であるが、兵士たちにとっては有用である。

6. 短い時間のうちに人間の生は終わる。

7. 昔の医者たちは、人生は短く技術は長いと書いていた。〔引用部は明らかにヒッポクラテスの格言で、« ars longa, vita brevis » というラテン語の形でいっそう有名なもの。それなのになぜ「医者たち」が複数なのかはわからない。ヒッポクラテス以外にもよく言われていたのだろうか?〕

8. おお希望よ、おまえ (たち) は甘く、しかしてあまりに短い。

9. ナイル川はあらゆる種類の魚を養う。

10. 友人たちはソークラテースに町から逃げるように空しく命じた。〔「空しく」というのは「命じたが無駄だった、甲斐がなかった」のように訳すのが日本語としては自然。英語の in vain などと同様:たとえば apologise in vain というのは「空しく謝罪する」でなく「謝罪してもだめだ」ということ。〕

§459. 練習問題 91


1. ἐν τῇ χώρᾳ πολλαὶ ἦσαν μεγάλαι πόλεις.

2. ἡ μήτηρ ἔπεμψά μοι πολλοὺς καρποὺς γλυκεῖς.

3. ἐν τῇ πόλει εὐδαίμονες ἦσαν πάντες οἱ πολῖται.

4. χαλεπόν ἐστι πολλὰ μανθάνειν ἐν βραχεῖ βίῳ.

5. διὰ μέσης τῆς πόλεως ῥεῖ ποταμὸς μέγας.


XLVIII 分詞 (1) —能動相


§469. 練習問題 92


1. そんなことを言っている者たちを信じるな。〔λέγουσι は現在能動分詞・男性複数与格。πείσῃ は πείθω の接続法アオリスト中動相 2 人称単数。中動相なので「与格の人を信じる、従う」の意。念のため、μή + 接アオは禁止の意 (§334)。〕

2. 悪いことを行っている者はみな光を憎む。

3. すべて苦しませるものは人間にとって不快である。

4. さきに休戦条約を破る者は悪い。破ることを防ぐ者はそうではない。

5. アテーナイ人たちはしばしば戦争に無経験な者たちを将軍に指名した。

6. 彼らは山の頂上まで登ると海を眺めた。〔たぶんクセノポン『アナバシス』の有名な « θάλαττα, θάλαττα » の場面のほのめかしか。〕

7. 敵たちはなにもせずに出帆した。

8. サラミスの海戦のあと、まだ子どもだったソポクレースは踊った。〔ギリシア軍の勝利を祝い、神に捧げる凱歌を歌う少年合唱団のリーダを務めた。子どもといっても 16–17 歳くらいだったようだが、当時のアテナイの成人年齢は 18 歳だった。〕

9. もし彼が誰か具合の悪い者を見たら、彼はその者を助けようと努めるだろう。

10. かつは若者たちを堕落させ、かつは国家が信ずる神々を信ぜずにほかの新奇なるダイモーンどもを (信じている)、ソークラテースは罪があると彼は言っている。〔大枠の構造は簡単で、φησίν が対格不定法の間接話法で「ソクラテスは罪がある」と言っているだけ。残りはすべてソクラテスの行状についての説明で、2 つの現在能動分詞 διαφθείροντα と νομίζοντα はそれゆえ対格主語 Σωκράτη に一致した男性単数対格になっている。〕

§470. 練習問題 93


1. οὐ πιστεύομεν τοῖς ταῦτα ποιοῦσι.

2. ἀνδρείως ἐμάχοντο ἤδη γέροντες ὄντες.

3. ῡ̔μᾶς δεῖ σπουδῇ μανθάνειν ἔτι νέους ὄντας.〔格に注意。〕

4. ταῦτα ἀκούσᾱσι ἡμῖν ἔδοξε εὐθὺς ἀποπλεῦσαι.〔§468 の例文を参考。最後の動詞は不定法アオリスト (例文の συναγαγεῖν もそうである;この不定法現在は συνάγειν)。〕

5. τίς ἐστιν ὁ ἔτι ἐν τῷ ἄστει μένων ;

jeudi 13 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (11)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 41 課から第 44 課までを扱う。



XLI 第三変化の名詞 (4) — σ 語幹 (ες, ας) の名詞


§407. 練習問題 78


1. 悪い利得はつねに罰をもたらす。

2. 悪い利得の望みは罰の始まり。

3. 煽動家たちは大衆に (彼らが) 喜ぶように語っている。

4. 人間にとっては時が性格の試金石である。

5. 輝ける家も大量の黄金も氏族の栄誉も支配権の大きさも、心には静穏をも平和をも与えない。

6. 私は年に 3 度アテーナイの友人たちのところへ来ている。

7. 三段橈船の指揮者はトリエーラルコスと呼ばれていた。

8. 肉はどこにある。——ほら、テーブルの上に肉と葡萄酒が (ある)。

9. 肉体は剣によって傷つけられるが、精神は嘘によって (傷つけられる)。

10. アンタルキダースは、青年たちの徳 [勇気] はスパルタの城壁だと言っていた。

§408. 練習問題 79


1. ὑπὸ τοῦ Σωκράτους ἐπαιδεύοντο [πεπαίδευνται] πολλοὶ νεᾱνίαι.〔「ていた」という問題文は未完了過去にも現在完了にもとれそうだが、「によって」に ὑπό を使えという初歩的な指示がわざわざ与えられているからには、(現在完了+与格行為者ではなく) 未完了を使ってほしいのかもしれない。〕

2. τοῖς στρατιώταις δίδωσι οὐ μόνον σῖτα, ἀλλὰ καὶ κρέᾱ.

3. ἐν τῇ ῞ῡλῃ ἐστὶ πολλὰ γένη θηρίων.〔日本語とは逆で、「種類」のほうが主格で「野獣」がそれを修飾する属格。〕

4. τῆς Σπάρτης τείχη ἐστὶν ἡ ἀρετὴ ῡ̔μῶν [ἡ ῡ̔μετέρη ἀρετή], ὦ νέοι.

5. αἰσχρόν ἐστι πλουτεῖν ἀδίκῳ κέρδει.


XLII 関係代名詞


§417. 練習問題 80


1. 誰であれ他人を傷つける者は自分自身をも傷つけるのだ。

2. ほかの人たちと共通に私たちがもっている悪いこと [欠点] は、私たちにとってより軽いものに見える。

3. 君たちが市民たちから得ている尊敬と名声はなんと立派であるか。

4. ああ、いま私たちがもっている運命は。

5. 君が話している事柄はなんと滑稽であるか。

6. 老人たちは彼らがもっているわずかな髪にも喜ぶ。

7. それ (=家) のなかでは主人が、(ちょうど) 外では法のゆえに (律されて) あるように、自分自身のゆえにそのようにあるところの (家) が、最良の家である。〔おそらく本書中もっとも難解な問題。まず無冠詞の ἄριστος οἶκος を述語にとる (あくまで構文解析の話。訳はべつに「最良の家とは〜」と始めてもかまわない)。主語は文頭の οὗτος で、これに ἐν ᾧ 以下最後までの長い関係節がかかっている。家のなかと外での態度が対比されており、外では「法律」のためにちゃんと生活している、それと同じことを家のなかでは「自分自身」を理由として行うこと、つまり自分で自分を律するということになる。この文が理解しがたいのはひとつには関係詞の多いこと、とくに初出の τοιοῦτος ... οἷος の使いかたがわかりづらいことと、前置詞の意味の説明が十分でないことにもよるが、内容じたい現代人の考えかたとなじまない点にも理由がありそうだ。私たちの常識では家のなかだろうと当然法律の支配下にあると思っているので、あたかも家のなかには法律が及ばないかのようなこの文の主張はなかなかピンとこず、訳せても正しいのかどうか確信しづらい。ちなみに原典はプルタルコス『モラリア』中の「七賢人の饗宴」12 節一部改変。〕

8. 誰であれ名誉に注目する者はみな自由でない。

9. 誰であれ自分自身を愛さない者は誰も存在しない。

10. ほかの人たちがすることを君が欲しないところのことをするな。

§418. 練習問題 81


1. ταῦτα ποιήσω ἃ τοὺς ἄλλους ποιεῖν βούλομαι.

2. γέλοιόν ἐστι πάντα ἃ λέγεις.

3. οἳ τῑμῶσι τοὺς ἄλλους καὶ ὑπὸ τῶν ἄλλων τῑμῶνται.

4. ταῦτα μὴ λέξῃς ἃ οὐκ ἀκούειν βούλομαι.〔聞きたくない「ような」という部分を重んじるなら関係節の否定詞も μή のほうがいいかもしれない。οὐ だとなにか特定の具体的な話題が念頭にあってそれを言うなという感じ、μή ならなんであれ僕が聞きたくないようなことは言うなという意味あいだと思う。〕

5. ὡς καλὴ ἦν ἡ ῞ῡλη ἐν ᾗ ἀνεπαυόμεθα.


XLIII 希求法能動相.目的および恐怖・危惧を示す副文章における希求法


§430. 練習問題 82


1. 君が欲しがっているものを君が得られるように。

2. 私たちが案内人をもてるように、その男を将軍は私たちに送ってよこした。

3. 私たちは (自分たちのために) クセノポーンを指揮官にした、敵の国を通って私たちを導いてくれるように。

4. 彼らは市民たちによって追放されはしないかと恐れてあった。

5. なぜなら彼ら自身が同じことを蒙りはしないかと恐れたのだ。

6. 私は十分な同盟者たちを得られないのでないかとそのことを恐れていた。

7. 私は彼らがなにを言っているのか彼らにしつこく尋ねた、同時になにかを私は彼らから学べもするように。〔ἅμα はここでは与格をとる準前置詞でなく、目的語なしに副詞として用いられているが、このことは本書の語彙集その他に説明がない。原典は『ソクラテスの弁明』7 章 (22b)。私=ソクラテス、彼ら=詩人たちで、詩の難解な箇所の意味を問いただしている。〕

8. 私たちが彼らからなにか悪いものを得るのではないかという危険があった。

9. だが私は彼女を恐れてあった、なにか悪いことを計画するのではないかと。〔副文の動詞は希求法アオリストであって現在 βουλεύοι ではないので「計画している」とは訳せない。〕

10. 私は君になにか有益なことを助言するために来ていた。

§431. 練習問題 83


1. μετεπεμψάμεθα αὐτόν, ἵνα ἡμῖν χρηστόν τι συμβουλεύσειεν [συμβουλεύοι].

2. κίνδῡνος ἦν μὴ τᾱ̀ς γεφῡ́ρᾱς καταλῡ́σειαν οἱ πολέμιοι.

3. ἐφοβούμεθα μὴ κακόν τι πάθοιμεν.

4. ταῦτά σοι ἔλεξα, ἵνα μὴ πρᾱ́γματα ἔχοις.

5. αὐτοῖς ἔπεμψα δῶρον καλόν [χαρίεν], ἵνα μὴ κακῶς λέγοιεν ῡ̔μᾶς.


XLIV 希求法中動および受動相.配慮・計画を意味する文


§437. 練習問題 84


1. おお息子よ、おまえが父よりも幸運であるように、そしてほかの点では同様であるように。

2. 私が欲することがではなく (真に) 有益なことが私に起こるように。

3. その人たちには金銭が彼らから奪いとられるのではないかという不安があった。

4. 医者たちはその病が不治にならないように努めている。

5. もし私たちが、最良の人々は尊敬を受けるように、他方ほかの人々は何事も不正を行わぬようにと思いめぐらすならば、それは結構なことだろう。〔前文は ἐᾱ́ν + 接続法現在 σκοπῶμεν、後文は直説法未来 ἕξει なので、予想的未来の条件文 (§373)。〕

6. 子どもたちが幸せであるようにということが父親にはなによりも気がかりなのだ。

7. アテーナイ人ティーモテオスは、ギリシア人のうち誰も彼を恐れるのではなく、不正な者たち以外は皆が安心していられるようにと行っていた。

8. ディオゲネースはある悪人からほめられて、(自分は) なにか悪いことをしてあるのではないかと恐れていた。

9. 私たちはあなたがたが誠実でないのではないかと恐れてあった。

10. 私は双方にとって正しく [公正で] あろうとしてそのように言っていた。

§438. 練習問題 85


1. ὦ νεᾱνίαι, γένοισθε ἡμῶν εὐτυχέστεροι.

2. ὁ πατὴρ ἐφοβεῖτο μὴ ὁ υἱὸς αὐτοῦ κακῶς παιδεύοιτο ὑπὸ σοφιστῶν.

3. ἐπεμελούμην ὅπως ὁ ἀνὴρ ἐπαινεθήσεται ὑπὸ πάντων τῶν πολῑτῶν.

4. ὁ στρατηγὸς ἐφοβεῖτο μὴ αὐτὸς αἴτιος εἴη τῆς ἥττης.

5. μέλει μοι, ὦ παῖ (μου), ὅπως εὖ πρᾱ́ξεις.

mercredi 12 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (10)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 37 課から第 40 課までを扱う。



XXXVII 条件文.母音幹 (第一,第二) 変化の約音名詞および約音形容詞


§369. 練習問題 70


1. 顔の (=顔を映す) 鏡は青銅だが、心の (鏡) は葡萄酒。〔酒に酔ったときに内心が映しだされる。アイスキュロス断片 393 改変。〕

2. イタリアには無花果の木々が生えている。

3. 真理の言葉は単純である。

4. もし君が私にそれをするよう命じたのだったら、私は喜んでそれをしたのだが。

5. もし君がもっとはっきりと答えたのだったら、私はふたたび君に尋ねなかったのだが。

6. だがもし彼らが善良な男たちである/あったならば、彼らはそんなことを受けない/なかったのだが。〔過去と現在どちらにも解せる。〕

7. もし君が静かにしているならば、君はどう困るのか。

8. もしマラトーンでアテーナイ人たちが勝っていなかったら、全ギリシア人が奴隷にされていただろう。

9. もしおまえが自発的に私についてくるのでないなら、私はおまえを嫌々でも連れていくだろう。

10. というのも、もしわれわれがみずから君の国へ来て、戦闘をして、敵のごとくに地を荒らしていたのなら、われわれに罪がある;だがまず彼らがわれわれに挑んだのなら、どうしてわれわれに罪があろう。

§370. 練習問題 71


1. τῇ παρθένῳ δίδωσι τὸν δακτύλιον τὸν χρῡσοῦν.

2. εἰ ἡσιχίᾱν ἦγον, οὐκ ἂν ταῦτα ἔπασχον.

3. εἰ ἑκων τοῦτο ἐποίεις, ἐπῄνεόν σε.

4. εἰ σὺ πρότερος ἔπαισας τοῦτον, ἀδικεῖ.

5. εἴ μοι πλοῦτος πολὺς ἦν, ἑκὼν [ἡδέως] ἐδίδουν ἂν χρήματα τοῖς πένησιν.


XXXVIII 約音動詞の接続法.予想的未来を示す条件文


§374. 練習問題 72


1. もし君たちがその男たちをよく扱う [親切にする] なら、彼らは君たちを好むだろう。

2. もし私たちが蛮族どもを征服すれば、もう困ることはないだろう。

3. もし君が財産をうまく使わないならば、君は非難を受けるだろう。

4. もしあなたがたが私を敵のように扱うならば、あなたがたが悪いだろう。

5. もし民会によいと思われる (=民会が決定する) ならば、将軍は黄金の冠をかぶらされて [かぶって] あるだろう。〔χρῡσῷ στεφάνῳ は道具の与格。動詞は未来完了の中・受動相。〕

6. もし彼が計画を明らかにするならば、私たちはそうするだろう。

7. もし私がその家を借りたなら、冬のあいだには海のそばで休むだろう。

8. もし君が命じるなら、私はそう書こう。

9. もし彼がそんなことを言うのなら、ほかの人たちに笑いを止めておくことはできないだろう。

10. だがもし君が海賊どもに捕まりはしないかと恐れるのなら、私たちが君と家までついていこう。

§375. 練習問題 73


1. ἐᾱ̀ν αὐτῷ πιστεύητε, ῡ̔μᾶς εὖ ποιήσει.

2. ἐᾱ̀ν ταῦτα ποιήσῃς, ἐπαινέσονταί σε πάντες οἱ ἄνθρωποι.

3. ἐᾱ́ν μοι χρῇ ὡς φίλῳ, πᾶν σοι ποιήσω.〔πάντα でなく単数 πᾶν としたのは §395 の例文にならった。〕

4. ἐᾱ̀ν κελεύσῃ ὁ στρατηγός, ὁ στρατιώτης ἀποκτενεῖ τὸν ἄνδρα.

5. ἐᾱ̀ν ἐθέλῃς [ἐθελήσῃς], ἄξω σε εἰς τὴν χώρᾱν.


XXXIX 不定法 (1)


§391. 練習問題 74


1. なぜ君たちは祖国のために戦うことを望まないのか、若者たちよ。

2. そこで私たちの兵士たちはその川を渡ることができなかった:船をもっていなかったからだ。

3. 若者よ、いったいおまえは医者の言葉を覚えておいて、乗馬したり踊ったりするのでなく家で安静にしておくべきでなかったか。〔μεμνημένον の男性単数対格は σε に一致しており、この分詞句はおまえ=若者の (あるべき) 状態を補足説明している。〕

4.もはや熟慮しているべき時ではない。そうではなく、もしよいと思われるならそれをなさねばならない。〔『クリトン』5 章 (46a) においてクリトンがソクラテスに脱出を急かす場面にやや似るか?〕

5. よく教育されていないがゆえに彼はこのようなことを言っている。

6. よい人々の娘たちにはよい [よくある、善良である] ことがふさわしい。

7. そのこと以外にはなにもほかのことを言うべきでなかった。

8. 彼が私たちにとってむしろ友人である [好意的である] ために、私たちはなにかよいことをその人にするべきだろう。

9. 祖国のために私はあらゆる危険を耐えることをあえてする。

10. 君たちは彼らのことを知るようにと私たちは君たちに忠告する。〔ῡ̔μᾶς αὐτούς は再帰代名詞の対格 (§§216f., 681) ではありえない:主文の主語が「私たち」であるから、不定法句の主語がそれと異なる場合別途に必要であり (§388)、それが対格主語 ῡ̔μᾶς である。したがって αὐτούς は強意代名詞であり、3 人称代名詞の代用として「彼らを」と訳した。しかし強意代名詞が再帰的に「自身を」の意味で使われることはありえ、結局「君たち自身を」ととることも可能である。〕

§392. 練習問題 75


1. (νῦν) ὥρᾱ τοὺς πολεμίους διώκειν.

2. δεῖ ἡμᾶς τὸν ποταμὸν διαβαίνειν.

3. συμβουλεύω σοι οἴκοι ἡσυχάζειν.

4. δικαίοις [δικαίους] εἶναι προσήκει τοῖς δικασταῖς.

5. ἕτοιμοί ἐσμεν πάντα κίνδῡνον τολμᾶν.


XL 不定法 (2)


§398. 練習問題 76


1. だが私は自分でさえほとんど私自身のことを忘れてしまった。〔『ソクラテスの弁明』冒頭の文 (17a) 一部省略。〕

2. 私は死なねばならない、たとえ欲しないとしても。

3. 荒涼たる平野を通って私たちは行軍していて、糧秣のないことのゆえに死なんとしていた。しかし多くの時間のあとでなく (=やがて) 友軍がその場に来て、彼らは私たちが死なないように救うことができた。

4. 父は病気を免れたと彼は言う。〔φημί はふつう発話内容に ὅτι でなく対格不定法構文をとる (cf. §562; また田中『新ギリシャ語入門』§605)。〕

5. われわれのところ [国] では戦いにおいて盾を投げ捨てて逃げるのは恥ずべきことである。〔XXIV 課和訳 5. と類似しており、われわれ=スパルタ人か。〕

6. 貧乏であることが非難せらるべきなのではなく、貧乏に敢然として耐えないことが (非難せらるべきなのである)。

7. もし (父が) 命じるならば (いつでも) 父に従うべきである。

8. われわれの兵士たちは敵たちが川を渡るまえに橋を壊してある。

9. 私はその男に親切にしようか、彼が私にむしろ好意的であるように。〔ποιῶ を接続法現在として訳したが、直説法現在として現在すでに「親切にしている」ともとれる。〕

10. 私たちは彼が計画を明らかにするまえにそうしよう。

§399. 練習問題 77


1. ἡμᾶς δεῖ τοὺς πατέρας καὶ τᾱ̀ς μητέρας τῑμᾶν.

2. ἆρα φῂς τοὺς πολεμίους διαβαίνειν τὸν ποταμόν ;

3. οὐ δυνάμεθα τὸν ποταμὸν διαβαίνειν διότι τὴν γέφῡραν λελύκᾱσι οἱ πολέμιοι.

4. πολλὰ ἠπορήσαμεν διὰ τὸ μὴ φίλους ἐν τῇ χώρᾳ ἔχειν.

5. τοῖς θεοῖς εὐχώμεθα πρὶν τὸν οἶνον πῑ́νειν [πῐ́ειν].

§400. ΕΙΣ ΟΙΝΟΝ〔葡萄酒について〕


酒を飲むときはいつも
不安たちは眠っている。
なぜ俺には涙が、苦労が、
不安が気がかりなのか [つきまとうのか]。
俺は死なねばならぬ、たとい欲せずとも。
なぜ人生をさまようのか。
とにかく酒を飲もう、
麗しきリューアイオス (=バッコス) の (酒を)。
俺たちが飲むとともに
不安たちは眠っている。

mardi 11 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (9)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 33 課から第 36 課までを扱う。



XXXIII 第三変化の名詞 (3) —流音幹の名詞


§323. 練習問題 62


1. 練達の男たちに輝ける栄誉が従う。

2. しばしばよい父たちから悪い息子たちが生まれる。

3. 私たちは祖国を共通の母とみなしている。

4. 真理を語ることは自由人の (すること) である。

5. 牧者たちは羊や山羊を草原へ連れていった。

6. 私たちは喜んで善い案内人 [指導者] たちに従う。

7. 隣人たちがつねに友人である [好ましい] わけではない。

8. アテーナイでは弁論家たちは民衆の指導者だった。

9. 月に 2 度水夫たちはアテーナイに来ている。

10. 金持ちたちは貧乏人たちに下着を与える。

§324. 練習問題 63


1. πολλάκις ἐκ καλῶν μητέρων γίγνονται αἰσχραὶ θυγατέρες.

2. οἱ ποιμένες τὰ πρόβατα καὶ τᾱ̀ς αἶγας φυλάττουσιν ἀπὸ θηρῶν.

3. ῎ᾱκοντες ἕπονται τοῖς κακοῖς ἡγεμόσιν.

4. οἱ κακοὶ υἱοὶ οὐ πείθονται τοῖς πατράσιν.

5. ἐν Ἀθήναις ἀγῶνας ἐθεᾱ́σαντο.


XXXIV 接続法能動相.勧奨・思案を示す接続法


§337. 練習問題 64


1. 森のなかで休もう。

2. 自由人らしく仕えよう;私たちは奴隷にはならないのだから。〔οὐκ ἐσόμεθα について、ここでは二コリ 12:6 οὐκ ἔσομαι ἄφρων「私は愚か者にはならない」を参考に訳したが、結局のところ未来において奴隷である状態でない、ということなので「(現在奴隷だが) 奴隷でなくなる」とも解せそうである。〕

3. 徳に向かって子どもたちを教育しよう。

4. よい弁論家の言葉を信じよう。

5. 父母に従おう。

6. それでは葡萄酒を飲もう。

7. 今日は家々の戸を閉めるな。

8. 収穫物を家へ運ぼう。

9. 逃げてはいけない、男たちよ、そうではなく祖国のために戦って [戦いながら] 死のう。

10. 私は秘密を暴露しようか [するべきだろうか]。

§338. 練習問題 65


1. ἄγωμεν τοὺς παῖδας εἰς τὴν οἰκίᾱν.

2. τήμερον κλείσωμεν τᾱ̀ς τῶν οἰκιῶν θύρᾱς ;

3. μετὰ τῆς μητρὸς φύγωμεν εἰς τὴν ῞ῡλην.

4. μὴ ἐκφαίνωμεν τὰ τῶν φίλων κρυπτά.

5. μὴ παίῃς τοὺς παῖδας, ὦ νεᾱνίᾱ.


XXXV 接続法中動および受動相.目的および恐怖,危惧を示す副文章における接続法


§349. 練習問題 66


1. 彼は 2 人のどちらにとっても友人であるためにそのようなことを言っている。

2. 現在の弁論家たちは昔の人たちには似ていないのではないかと私は恐れている。

3. 君が 1 人でいないようにと私は来ている。

4. 私たちにとってなにか有益なことを助言してくれるようにとその客を私たちは呼びよせる。

5. その弁論家たちが私たちを悪く言うのではないかという恐れはない。

6. 彼らは自分たちがみずからその同じことを蒙るのではないかと恐れている。〔πάθωσι は πάσχω の接続法アオリスト能動相 3 複。〕

7. 彼らは敗れるのでないかという恐れゆえに食事も眠りもとることができない。

8. 彼はもはや君に面倒をかけることのないようにと金を得てある。

9. 全市民に笑いぐさを与えないように黙っていろ。

10. 私たちは祭りを見物するためにみずから留まっていよう。〔主文は勧奨の接続法。〕

§350. 練習問題 67


1. φοβοῦμαι μὴ ῡ̔μᾶς οἱ πολῖται κακῶς λέγωσι.

2. οὐ δέος ἐστὶ μὴ ἠμᾶς διώκωσι οἱ πολέμιοι.

3. τόδε συμβουλεύω ῡ̔μῖν, ἵνα ἀλλήλοις φίλοι ἦτε.

4. πέμπω σοι χρήματα, ἵνα μὴ (σὺ) μόνος πρᾱ́γματα ἔχῃς.

5. ἥκομεν ἵνα μαχώμεθα [μαχεσώμεθα] ὑπὲρ τῆς πατρίδος.


XXXVI 母音交替.μέγας, πολύς の変化


§357. 練習問題 68


1. 人の住まぬ場所には多くの野獣どもがいる。

2. すでに長い時間あなたはすべての人々に対して陰謀を企んでいた。

3. 多くの小さな支流が結局は大きな川を作る。

4. 大きな幸運は大きな恐怖を生む。

5. 多くの富は多くの人々にとって大きな災いの原因である。

6. その若者たちはソフィストたちによって堕落させられてあった。〔完了受動分詞との複合形で表された過去完了受動相 3 複。なお分詞なのに διεφθαρμένοι という加音があるのは、φθ という 2 子音で始まるから畳音のかわりの加音 (§126 (ロ))。〕

7. 兄は父への敵対者たちによって中傷されてある。〔現在完了なので与格によっても行為者を表しうるが、ὑπό があるのでこちらを行為者にとる。すると与格 τῷ πατρί が浮くためこれは敵意の対象ととって訳したが、確実にそう読めるような語順すなわち ὑπὸ τῶν τῷ πατρὶ ἐχθρῶν という内側の位置にはなっていない。あるいは「父が原因で」とか「父に関して」中傷されたと解すべきかもしれない。〕

8. その弁論家たちに市民たちは石を投げていた;というのは彼ら (=弁論家たち) が祖国の裏切り者であると見えていたからだ。

9. 私は家に君に似た娘を置いてきてある。

10. テーブルはひっくりかえされてある:子どもがそれをひっくりかえしたから。

§358. 練習問題 69


1. ὁ παῖς ἔβαλέ με μεγάλοις λίθοις.

2. ἡ ὕβρις αἰτίᾱ γίγνεται [ἔσται] πολλῶν συμφορῶν.

3. τίς ἀνέτρεψε τὴν μεγάλην τράπεζαν ;

4. τήμερον ἔγραψα πολλαὶ ἐπιστολαί.

5. πολλὰ ἔπαθεν ἐν τῇ χώρᾳ.

lundi 10 janvier 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (8)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 29 課から第 32 課までを扱う。



XXIX 約音動詞 (2) — έω, όω に終る動詞の直説法の変化


§286. 練習問題 54


1. われわれはよき市民を尊敬するが、悪い市民は軽蔑する。

2. 賢者は後で考えず先に考える (ものだ)。

3. 彼らは真理を愛しているように見えるが、本当には愛していない。

4. 勇気をもつことは勝つことの始めである。

5. 恋は汝の心を盲目にする。

6. なんのゆえに市民たちは今日集会をしてあるのか。

7. 黄金が人間の心を明らかにする。〔主語 χρῡσός が無冠詞であることを重んじると「黄金は」ではなく「が」のほうがふさわしい。田中『新ギリシャ語入門』§321 注 1。〕

8. 神々とともにあって私たちは何物にも惑わないだろう。

9. キツネとカラスについての話は、追従者たちを信じるべきではないということを明らかにしている。〔アイソーポス (イソップ) の寓話のひとつ。カラスが肉を咥えているとキツネがやってきておだてられ、その美しい声を聞きたいと言われてつい口を開いたところ、取り落とした肉をキツネに奪われてしまうという話。〕

10. 害するか害されるか (の二者択一) が免れえないならば、私は害するよりもむしろ害されることを選ぶ。〔プラトン『ゴルギアス』469c を簡単化したもの。〕

§287. 練習問題 55


1. ὑπὸ τῶν μαθητῶν ὁ διδάσκαλος τῑμᾶται καὶ φιλεῖται.

2. ὁ χρῡσὸς πολλάκις τυφλοὶ καὶ τᾱ̀ς τῶν δικαίων ψῡχᾱ́ς.

3. αὔριον ποιήσομεν ἐκκλησίᾱν.

4. διὰ τί τοῦτο [τοιοῦτο] ἐποίησας ;

5. τοὺς στρατιώτᾱς ἐκελευσε μὴ φοβεῖσθαι τοὺς πολεμίους ἀλλὰ θαρρεῖν.

§288. アナクレオーン風歌謡 (Anacreontea) より


リュラについて

アトレウスの子らを語りたい、
またカドモスを歌いたい、
だが竪琴は絃にて
エロースのみを響かせる。
おととい取り替えたのだ、弦を
そしてリュラごとすっかりと。
そうして私はヘーラクレースの
苦闘を歌いだしたのに、リュラは
恋愛 (ばかり) を反響させていた。
しからば諸君ごきげんよう、
英雄たちよ;なにせリュラは
エロースばかりを歌うから。

〔7–8 行以外は各行対訳。Ἔρως は大文字書きの場合「エロース」(愛の神)、小文字では普通名詞と解した。〕


XXX 黙音幹動詞の完了諸形,直説法中・受動相


§296. 練習問題 56


1. スパルタ人は武器においてよく訓練されてあった。

2. 彼は魂が不死であることを説得されてあった (=信じていた)。

3. 不運のなかではわずかな友人だけが君に残されてあるだろう。〔ὀλίγοι は英 few や仏 peu と同じで「ほとんど〜ない」と訳してもかまわない。オウィディウスにもほぼ同趣旨の文句があるが、このギリシア語文は誰のものだろうか。〕

4. 若者よ、おまえは悪い者どもに説得されてあった (=言いくるめられていた、従っていた)。

5. ドラコーンの法は血で書かれてあった。

6. アテーナイ人たちの民主制はもっとも [きわめて] 長い時間にわたって自由のなかで育てられてある。

7. 賢明にも未来のことは神によって人間に隠されてある。

8. カルダイオイ人 [カルデア人] たちのうちある者たちは戦争によって生計を立てる習慣であった。

9. その子は家へ連れてこられてある。

10. それらのことは賢者によって言われてある。

§297. 練習問題 57


1. ἡ ἐπιστολὴ αἵματι ἐγέγραπτο.

2. ποῦ κέκρυπται ταῦτα τὰ δῶρα ;

3. οἱ στρατιῶται ἤδη ἠγμένοι ἦσαν εἰς Ἀθήνᾱς.

4. εἰθίσμεθα θαρρεῖν καὶ ἐν ἀτυχίαις.

5. ἐπέπειστο θεὸν τὸν ἥλιον εἶναι.


XXXI 第三変化の形容詞 (1)


§303. 練習問題 58


1. すべての事物 (=万物) の尺度は人間。

2. アテーナイ人たちはペロポンネーソス軍と夜じゅう戦っていた;月が輝いていたから。

3. 人間はしばしば心にもなく間違いを犯す。〔῎ᾱκοντες は副詞的に訳せる述語的同格 (cf. XVI 課練習問題の注 3)。〕

4. すべての人間に理性があるわけではない。

5. その詩人は時間はあらゆる苦悩の医者だと言っていた。

6. ドラコーンの法においては、ありとある罪にただ 1 つの罰が定められてあった:死である。〔ὥριστο は過去完了受動相。〕

7. サラミスの海戦は戦争全体の転機をなした。〔ギリシア軍の勝利でクセルクセスが戦意を喪失し、ペルシア戦争の趨勢が決した。〕

8. あらゆる動物は死すべきものである;またあらゆる人間は動物である;したがってすべての人間は死すべきものである。

9. 自然はすべての人間に優美な贈り物を与えるわけではない。

10. イーピゲネイアよ、君は全ギリシアのために嫌々ではなく (=進んで) 死んでいく。〔トロイア戦争に出立するギリシアの勇士たちがアルテミスの怒りによって船出を妨げられていたとき、ミュケナイ王女イピゲネイアが生贄に求められた。別伝によればアルテミスが直前に翻意したおかげで殺されずにすんで女神の神殿の巫女とされたともいう。〕

§304. 練習問題 59


1. ἔκλεισε πᾱ́σᾱς τᾱ̀ς θύρᾱς τῆς οἰκίᾱς.

2. πᾶσι τοῖς μαθηταῖς δίδωσι δῶρα χαρίεντα.

3. οὐχ ἑκόντες τοῦτο ἐποιήσαμεν.

4. οἱ στρατιῶται ῎ᾱκοντες ἐμάχοντο τοῖς πολεμίοις.〔技術的に ᾱ の上に ῎ を乗せられなかったので表示がずれている。〕

5. αἱ Μοῦσαι πᾶσαι τέρπονται ᾠδαῖς.


XXXII 流音幹動詞のアオリスト,未来,現在完了,過去完了の直説法能動および中動相


§315. 練習問題 60


1. たとえあなたがたが富を獲得してあっても (=所有していても)、まだすべての悪いことを免れてあるわけではない。

2. 協和心と節度なしには、なにも美しきこと善きことは実践されない、家 [家政] においても国家 [国政] においても。

3. それらのことがもし君によって実践されてあるならば、私もまた実践することに努めよう。

4. かくのごときことを他の人々は報告するだろうが、私は次のように報告する。〔後半の動詞は現在だが前半は未来であることに注意。〕

5. なんと恐ろしいことをその伝令は伝えてあるのだ;その敗戦は恐ろしい (=惨憺たるものだった) と言うのだから。〔XXVI 課和訳 9. の続き?〕

6. ゴルギアースはありとあることに対して答えるだろうと揚言している。

7. ラッパが合図した。

8. カドモスは竜を殺しそれの歯を蒔いた。〔ἀπέκτεινε も ἔσπειρε もそれぞれ未完了過去とアオリストの 3 単がたまたま同形である (ほかの人称では区別がつく:未完 1 単 ἀπέκτεινον とアオ ἀπέκτεινα、など)。〕

9. 君は不誠実だ:友人の秘密を暴露したのだから。

10. 知恵の収穫物は決して滅びないだろう。

§316. 練習問題 61


1. οὔπω πάντων τῶν κινδῡ́νων ἀπηλλάγμεθα.

2. τοιάδε ἀπήγγελται τῷ κήρῡκι.

3. ῎ᾱκων (ἀπ)έκτεινε τὸν γέροντα.

4. (ἐκεῖνος) τὰ κρυπτά σου ἐκφανεῖ.

5. κεκτήμεθα τὴν ἐλευθερίᾱν.