samedi 31 mars 2018

FEH ガチャ確率上昇時における ★4, ★3 の確率について

ファイアーエムブレムヒーローズ (以下 FEH) では,召喚ガチャで最高レアリティの ★5 が引けないことが続いた場合,5 回失敗ごとに ★5 の排出率が上昇していきます.

そのさい,確率の和はつねに 100 % ですから,★4, ★3 の排出率は反対に低下していくわけですが,この遷移の詳細については驚くほどなにもわかっていません.

FEH という検索ワードとあわせて,最初のいくつかの数字で検索をかけてみても,その法則どころか単純に数値を表にしたようなページすら見つからないので,外国語も含めて Google でヒットする範囲にはないものと思われます.


通常ガチャにおける確率変化


まず,私が確認してスクリーンショットを記録している範囲でそれをまとめてみると,以下のとおりです:

失敗数★5★4★3
0
3.00 %
58.00 %
36.00 %
5
3.25 %
57.69 %
35.81 %
10
3.50 %
57.38 %
35.62 %
15
3.75 %
57.07 %
35.43 %
20
4.00 %
56.77 %
35.23 %
25
4.25 %
56.46 %
35.04 %
30
4.50 %
56.15 %
34.85 %

もちろんこれ以上に爆死している画像も FEH 関連のまとめサイトなどをあされば山ほど見つかるでしょうが,当面はこの範囲だけを証拠としましょう.

これを見れば,どうやら ★4 の確率はおおむね 0.31 ポイントずつ,ただし 15 から 20 のときのみ 0.30 ポイントだけ減少していることがわかります.★3 のほうは 0.19 ポイントずつ,そして同じ箇所で 0.20 ポイントだけ減少します.

といっても,これらの減少は ★5 ピックアップと通常 ★5 が合計して 0.50 ポイント増加することの裏返しなのですから,和が 0.50 であるのはあたりまえです.したがって,計算は ★4 のほうだけを考えればよいことになります (ただし 1 点だけ注意があります.後述).

いま,この減少は等差数列であると考えましょう (これが本稿で唯一証拠のない仮定です).つまり「0.31 ずつ減少する,ただし 4 回に 1 回だけ 0.30 になる」というようなアドホックな規則ではなく,毎回 0.30 と 0.31 のあいだの一定の値,たとえば 0.308 ずつ減少していて,四捨五入のために上のような表示になっているものとみなします.そしてこの値 (公差) を求めることを目的とします.

なお,召喚画面から見られる「召喚についての注意事項」を確認すると,確率表示は小数点以下第 3 位で四捨五入されていることが明記されています.かりに 0.31 と 0.30 のように第 3 位以下がないのだとすると,このような注意は必要ありません.

だからといって等差だと決まったわけでもありません.たとえば「4 回に 3 回は 0.309, 1 回は 0.301」のような法則であってもかまわないのですから.もちろんこんな不自然な規則は考えがたく,等差とみなすほうがもっともらしいのでそう仮定するわけです.

求める公差を d とします.減少列ですから,これは厳密に言えばマイナス 0.30 いくつという値ですが,符号と言葉づかいが面倒になるため,あらかじめ絶対値を d とおくことに約束しましょう.このように文字を使うと難しそうに見えるかもしれませんが,やっていることはただの 1 次の連立不等式なので中学生くらいの範囲でしょう.

d の値について,私たちは上の表からすでに多くの手がかりを得ています.それは具体的には 6 本の不等式です.まず,5 回失敗したとき ★4 の確率は 57.69 % になるわけですが,これは四捨五入して 57.69 と書かれているのですから,58.00 から特定の値 d だけ減ったものがそうなるということは,

57.685 ≤ 58 − d < 57.695

ということで,移項して整理すれば 0.305 < d ≤ 0.315 です (等号の位置に注意してください).さらに次の行では 57.38 となっていますから,

57.375 ≤ 58 − 2d < 57.385

であり,これも整理すると 0.3075 < d ≤ 0.3125 となります.これだけ見ると 1 本めの式は無駄で,後半の式だけあればよいかのようですが,以下,

57.065 ≤ 58 − 3d < 57.075,
56.765 ≤ 58 − 4d < 56.775,
56.455 ≤ 58 − 5d < 56.465,
56.145 ≤ 58 − 6d < 56.155

を整理した

0.30833... < d ≤ 0.31166...,
0.30625 < d ≤ 0.30875,
0.307 < d ≤ 0.309,
0.3075 < d ≤ 0.309166...

を見ればそうではなく,下限 (不等式の左側) については 3 番めの式,上限 (右側) については 4 番めの式がいちばん厳しいことがわかります.5 本め,6 本めの式はあいにくなんの役にも立っていません.次に有用な式が来るのは,差分がふたたび 0.31 でなく 0.30 になる箇所の前後においてでしょう.

ちなみに細かいことですが,いま言った「下限」「上限」というのは数学用語としては間違った使いかたです.この場合本当は「 () (かい) 」「 (じょう) (かい) 」と呼ぶべきもので,下限・上限はそれぞれ最大下界・最小上界を意味することに決まっています.

求める公差 d はこれら 6 本の式すべてをみたさねばならないのですから,以上の連立不等式からその範囲は 0.30833... < d ≤ 0.30875 と評価されることになるはずです.しかし実際には ★3 のほうも考慮するとぴったり d = 0.30875 のときはアウトで,0.30833... < d < 0.30875 が最終的な答えとなります.

というのも,この右側についていた等号ですが,じつはちょうど d = 0.30875 のときには (それは 4 番めの式 0.30625 < d ≤ 0.30875 のもとの式 56.765 ≤ 58 − 4d < 56.775 の左側が等号で成りたつ場合ですから) ★4 = 56.765 %, ★3 = 35.235 % であって,この後者は四捨五入すると 35.24 % ですから最初の表にある 35.23 % という表示と矛盾します.このようにきっかり 0.005 ずつの端数が出る場面にかぎって ★3 のほうの不等式が意味をもちます.

推測によれば d はなんらかの一定の値,たとえば 0.3085 だったり 0.3087 だったりのどれかの値にびしっと決まるはずですが,私が得ているこの 6 本の式だけではこれ以上絞りこめないということです.

連立される不等式が増えれば増えるほど条件は厳しく狭められるわけですから,4.75 % 以上の爆死画像があればもう少しはっきりしたことがわかりますが,最大で 23 本の,しかも等号なしの不等式ですから,かりに望みうるすべてのデータが揃ってもユーザが正解の 1 つの値を算出することは不可能でしょう.


伝承ガチャにおける確率変化


もののついでなので,現在行われている伝承ガチャについてもわかる範囲で数字をまとめておきます:

失敗数★5★4★3
0
8.00 %
58.00 %
34.00 %
5
8.50 %
57.68 %
33.82 %
10
9.00 %
57.37 %
33.63 %
15
9.50 %
57.05 %
33.45 %
20
10.00 %
56.74 %
33.26 %
25
10.50 %
56.42 %
33.08 %
30
11.00 %
56.11 %
32.89 %
35
11.50 %
55.79 %
32.71 %
40
12.00 %
55.48 %
32.52 %

この範囲で ★4 の減少分を観察してみると,0.32 と 0.31 をちょうど交互に繰りかえしていることが見てとれます.この公差についても上と同じ計算をしてみると (面倒なので過程は省きます),結果は 0.315 < d < 0.315625 となります.

不等式評価ゆえ確たる 1 つの値こそ出ていないものの,通常ガチャについて求めたものと比べれば明らかに範囲が重なっておらず,こちらのほうが ★4 の減少分がはっきりと大きい (つまり ★3 の減少分が小さい) ことがわかります.といってもこちらは通常ガチャと比べてスタート時の ★3 率がかなり低いので,ケチっているというわけではないでしょう.