mardi 8 février 2022

田中・松平『ギリシア語入門』練習問題解答 (16)

田中美知太郎・松平千秋『ギリシア語入門』(岩波書店、新装版 2012 年) の練習問題の解答例。このページでは第 61 課から第 64 課までを扱う。



LXI 間接話法 (2)


§565. 練習問題 118


1. 私は神々が存在するとは思わない。

2. このように知らないときに私は知っていると思いもしない。〔出典は『ソクラテスの弁明』17 章 (29b)。〕

3. 私が思うに、いまだかつて何事もあなたがたにとってこれよりよい善が国家のうちに生じたことはない。

4. その人は (なにも) 知らないのになにかを知っていると思っているのだが、私はといえば、ちょうど知らないとおりに、知っていると思いもしていない。〔『ソクラテスの弁明』6 章 (21d)。〕

5. 私は戦争が多くの悪 [禍] の原因となってあることを見る。

6. 精密に考察すれば、君は多くの僭主たちが最大に友人と思われた者たちによって殺されてあることを発見するだろう。〔σκεψάμενος アオ中分・男単主、διεφθαρμένους 現完受分・男複対、δοκούντων 現能分・男複属。〕

7. 願わくば人生の終わりに至ったとき、われわれは空しく生きてしまった (=無駄な生きかただった) と自覚してあることのないように。〔ἀφικόμενοι アオ中分・男複主 < ἀφικνέομαι, ἀφῑκόμην。συνειδείημεν 希現完 1 複。ἡμῖν αὐτοῖς は 2 語で再帰代名詞の 1 複与。〕

8. もし君がまじめである/あったなら追従者たちを信じていない/いなかっただろうに、と私は言っていた。〔未完了は現在の事実に反する仮定だが、過去でもありうる (cf. §364)。〕

9. もし私たちが光をもたないなら私たちは盲人と同様だろうと彼は言っていた。〔可能的未来。〕

10. ソークラテースは言った、もし害するか害されるか (の二者択一) が免れえないならば、(自分は) むしろ害されることを選ぶだろうと。〔XXIX 課和訳 10. に関連。〕

§566. 練習問題 119


1. ἤκουσε τὸν φίλον ἔτι ἐν τῷ ἄστει μένοντα.

2. οἴομαι ἐκεῖνον τὸν ἄνδρα οὐκ εἰδέναι οὐδέν.

3. τὸν στρατηγὸν τῇ πόλει πάντων τῶν κακῶν αἴτιον ὄντα ἴσμεν.

4. ἆρ’ οὐκ οἴει [οὐ νομίζεις] αὐτὸν ἀμφοτέροις δίκαιον εἶναι ;

5. τὸν βασιλέᾱ τεθνηκότα εἰδὼς οὐκ ἔλεξεν οὐδὲν τοῖς στρατιώταις.


LXII 動詞的形容詞


§576. 練習問題 120


1. はたして徳は教えられうることと君には思われるか (=君は思うか)。〔σοι は動詞的形容詞の動作主ではなく φαίνεται の補語ととる。〕

2. 敵たちはなにもせずに出帆した。〔XLVIII 課和訳 7. に類似。〕

3. もし君が友人たちから愛されたいのならば、友人たちによくしてやるべきだ。

4. だがもし君が身体についてもよく [壮健に] もちたいならば、苦労と汗とともに身体を鍛えねばならぬ。

5. 知恵は君によって愛されねばならぬ (=君は知恵を愛すべきだ)。

6. 彼らがひそかに脱出しないように警戒せねばならぬ。

7. 神にも人にも、私たちはよりよい (神や人) に従うべきである。

8. (魂が) できるだけ最善であるように魂を気遣わねばならない。

9. 多くの富よりも立派な名前のほうが望ましい。

10. (もし) 哲学するべきか哲学しないべきかとしたら、哲学するべきである。しかるに (実際) 哲学するべきか哲学しないべきかなのである;したがっていずれにせよ哲学するべきである。

§577. 練習問題 121


1. τῑμητέον τοὺς γονέᾱς [τῑμητέοι οἱ γονεῖς] καὶ φιλητέον τοὺς ἀδελφούς [φιλητέοι οἱ ἀδελφοί].

2. νομίζει διδακτὸν τὴν ἀρετήν.

3. πειστέον τοῖς θεοῖς ἢ τοῖς ἀνθρώποις.

4. πάντων μάλιστα φευκτέον τὴν πλεονεξίᾱν.

5. διωκτέᾱ πᾶσι τοῖς ἀνθρώποις ἡ ἀρετή ἐστιν.


LXIII 間接話法 (3)


§583. 練習問題 122


1. テルモピュライでのラケダイモーン人たちは、もし包囲されなかったらペルシア人たちに敗北しなかっただろうにと私は思う。〔過去の事実に反対の仮定。〕

2. 正当にも誰かが言うかもしれない、もしパリスがヘレネーを掠奪しなかったら、ギリシア人たちとトローイアー人たちとの戦争は生じなかっただろうにと。

3. ソークラテースはもしほどほどにでも裁判官たちにへつらったら容易に (刑を) 免れただろうと私たちは知っている。

4. 彼が話すのを君が喜んで聞く (だろう?) とは私は思わない。〔この文の ἄν の意味はどうしてもわからない。語彙欄に与えられているとおり οἶμαι は οἴομαι の別形ゆえ、これは主文に〈ἄν+直現〉ということになるから、可能性の希求法でもないし条件文の 5 つの型のいずれでもない。本書の説明で解けるとしたらありうるのはひとつで、(そういうことが可能かはわからないが) ἄν は少し離れた不定詞 ἀκούειν と結んでおり ἡδέως ἂν ἀκούοις、これを間接話法にしたところ ἄν が外側に出てきたということではないか。〕

5. ソークラテースは言っていた、ほかの人々は食べるために生きているが、自分は生きるために食べているのだと。

6. ある人がクセノポーンに情報をもたらした、もし彼が侵入すれば捕らえられるだろうと。

7. 敵たちには先んじて仇をなし、友人たちには善をなすような人は、最大の称賛に値すると君は思うか。〔〈ἐᾱ́ν+接続法〉の普遍的想定に準ずる (cf. §§517–520)。〕

8. (自分は) 進んであなたから報酬を奪いはしないでしょうと彼は言っていた。

9. あなたはどこにもその人より優れた何者をも見いださないでしょうと彼は言っていた。

§584. 練習問題 123


1. τοῦτον ἔφη μῶρον ὃς τοιαῦτα λέγοι.

2. νομίζω αὐτὸν ὑπὸ πάντων τῑμηθῆναι, εἰ μὴ τοῦτο ἐποιήσεν.

3. οἱ στρατιῶται ἐλεξαν ὅτι ποιοῖεν (ταῦτα) ἃ ἐκέλευσεν ὁ στρατηγός.

4. οἶδα οὐκ ἀληθὲς ὄν τοῦτο ὃ λέγει.

5. γράφει [ἔγραψα] ὅτι ὁ ποιητὴς ὠργίζετο εἰ αὐτὸς τοῦτο λέγοι.


LXIV 否定詞


§591. 練習問題 124


1. 何物も徳より貴重 (な財産) でも確固たる財産でもない。

2. 何事も苦労と勉強なしには進まないし、神なしには増大しない。

3. 君がもっている意見をいつでも誰に対しても発表するものではない。

4. 決して恥ずべき何事をもひそかにすることを望むな。

5. 守備兵たちのうち誰も私たちが侵入するのを許さない者はいないだろう。〔つまり守備兵が侵入を看過するということで奇妙な状況だが、οὐδείς—οὐ の順なので「しない者はいない」という二重否定で肯定にならざるをえない。守備兵は内通していたということ? 出典がわかればいいのだが。〕

6. このことをも君の注意を免れしめるな (=君はこのことも忘れるな)。〔λανθανέτω 命現 3 単。出典はクセノポン『キュロスの教育』5.2.37。〕

7. 彼らについていまだかつて何事も明確なことを誰からも私は聞いたことがない。

8. 彼は船長たちに兵士たちを渡らせることを禁じた。

9. 彼は私が真実を言っているということに異議を挟む。〔ἀμφισβητέω の語義が「とやかく言う」とだけ書かれていて語法がなんら説明されていないので、これだけでは「真実を言っていることにとやかく言う」、つまり真実を暴露したことに不平を鳴らしていると誤解してしまう。そうではなくまったく逆で、「おまえは真実を言っていないだろう」と異議を申し立てているのである。〕

10. われわれは立派なことを立派でないと否定し去ることをどうしてあえてできようか。

§592. 練習問題 125


1. μὴ εἴρξῃς με μὴ οὐ τοῦτο ποιῆσαι.

2. πιστεύω οὔτε τούτῳ τῷ ἀνδρὶ οὔτε τῷ ἀδελφῷ αὐτοῦ.

3. οὐδεὶς εἴρξει με μὴ οὐ εἰσελθεῖν.

4. οὐδεὶς ἡμῶν οὐ φιλεῖ τὴν πατρίδα.

5. οὐδεὶς ἀμφισβητεῖ μὴ οὐκ αὐτὸν δικαιότατον τῶν πολῑτῶν.