dimanche 1 février 2026

ヒポクラテス゠ガレノス医学の要諦

最近読んだシリア医学の論文 Alexey Muraviev (2014), « La médecine thérapeutique en syriaque (IVᵉ–VIIᵉ siècle) » の付録 (Appendice 1, pp. 275f.) に,ヒポクラテス゠ガレノス流の西洋古代医学の要諦が 12 ヶ条で手際よくまとめられていたので,それを翻訳して載せてみる.論文のタイトルのとおり,ギリシア゠ローマの医学を承けた古代シリアの医学の概要ではあるが,それがアラビアに受けつがれて次には中世ヨーロッパに伝わり近代まで続くわけであり,ガレノス医学の後裔はだいたいこういうものだと思ってもそんなに間違わないだろう.太字は原文にはないもの.

  • 実験(批判的経験主義)はあらゆる治療の基礎である.すべての患者,すべての症例が研究の機会.
  • 体液説(四体液と四気質[κρᾶσις, ܡܘܢܓܐ])が生理学・病態生理学の原理として確立している.
  • 三分法の生理学.肝臓,心臓*,脳は栄養の三つの系統の源泉.
  • 生体における自然な均衡というヒポクラテスの原理.病気はそれの不均衡
  • 解剖学はアレクサンドリア流.診断はその解剖研究の成果にもとづく.
  • 観察は予後判断の基本.
  • 病理における因果性.どんな病気にも直接の原因と遠隔の原因があり,症状・症候群・最終診断(死因)を伴う.
  • ガレノス医学は逆症療法,すなわち手段(薬,熱,冷,ワイン)と病気とのあいだの対応にもとづく.
  • 非侵襲的な方法が外科手術よりも広く用いられる.例外は瀉血.
  • 医療は共同のものである.病気を治すためには医師は患者の信頼を得なければならない.
  • 摂生法 (la diététique),温熱療法 (le thermalisme),瀉血 (la saignée) がもっとも用いられた三大治療法.
  • 薬学的知識の重要性.
* 原文は le foie, la tête et le cerveau「肝臓,頭,脳」なのだがさすがに誤記だろうから私の判断で修正した.