lundi 30 avril 2018

デンマーク語の受動態に関する覚書

デンマーク語の文法書から受動態に関する箇所を抜粋翻訳した。それぞれ異なる本なので、過去分詞 (præteritum participium) と完了分詞 (perfectum participium) のように同じものを別様に呼んでいる部分もあるが、大きな混乱はないであろうからそれぞれの用語法を尊重して訳してある。


次のものは Ane Børup, Ulrik Hvilshøj, og Bolette Rud. Pallesen, Dansk Basisgrammatik, 2. reviderede udgave, 2000, s. 46f. より。

§45. 能動態/受動態

能動態/受動態 (aktiv/passiv, handleform/lideform) は、状況を記述する 2 つの異なった方法と関わっている。動詞の能動形を用いるとその行為を遂行する人に強調が置かれるのに対し、受動形を用いるとその行為にさらされる人または物に焦点があてられる:

能動態 Lægerne opererer den lille dreng på torsdag
    (医師たちは木曜にその小さな少年を手術する)
受動態 Den lille dreng bliver opereret af lægerne på torsdag
    (その小さな少年は医師たちによって木曜に手術される)
    Den lille dreng bliver opereret på torsdag
    (その小さな少年は木曜に手術される)

したがって受動形を用いるとその行為を受ける者 (「その小さな少年」) が強調され、またそれによって、その行為を遂行するのが誰であるのか (「医師たち」) についての情報は背景に押しやられるか、あるいは最後の文におけるように完全に省略される。

能動文を受動文に転換させるときには 4 つのことが起こる:
  1. 能動文の目的語 (「その小さな少年」) が主語になる
  2. 助動詞 blive が中に置かれる
  3. 主動詞は過去分詞に変えられる (operereropereret に変えられる)
  4. 本来の主語 (「医師たち」) は前置詞 af とともに現れるか、または完全に省略される

§46. Blive-受動態と s-受動態。上述の例における受動態は、助動詞 blive によって作られるために blive-受動態 (blive-passiv) と呼ばれる。デンマーク語にはもうひとつのタイプの受動態、すなわち s-受動態 (s-passiv) があり、これは動詞の不定詞形に -s を加えることによって作られる。例:Den lille dreng opereres på torsdag. S-受動態はたいてい書き言葉において見られる。たとえば新聞の見出し (例:Fiolteatret lukkes「フィオル劇場閉館」)、料理のレシピ (例:Kartoflerne halveres på langs「じゃがいもを縦に半分にします」)、使用説明書 (例:De forreste skruer afmonteres「最初のねじを取り外す」)。

ある種の動詞は受動形をもたないか、もしくはめったに受動態におかれない。これにあてはまるのはたとえばいくつかの自動詞、dø「死ぬ」や sejre「勝利する」がある (§49 を見よ)。いくつかの動詞は受動形でのみ見られ、それにもかかわらず能動の意味をもつ。例:De kan ikke enes「彼らは合意・和解しえない」、Vi trives godt「私たちは十分に幸せである、繁盛する、成長する」、Han væmmes ved tanken「彼はその考えに気分を悪くする」。


次のものは Erik Hvid og Flemming Olsen, Kursus i dansk grammatik: Grundbog, 2002, s. 22f. より。

受動態

A. Min far sælger bilen「私の父は車を売る」という文は能動文 (aktiv sætning) と呼ばれる。私の父の行動は彼がその自動車を売ることにある。彼はその行為を行っているので「私の父」は主語である。

私たちがその自動車を出発点にとるならば、この文は Bilen bliver solgt af min far あるいは Bilen sælges af min far「その車は私の父によって売られる」となる。ここでは「その車」は主語になっている。しかしだからといってその行為を行う者になったのではない。それはある行為もしくは過程にとっての対象とされている。

文法的主語が行為をするのでなく「される」ところの文は受動文 (passiv sætning) と呼ばれる。この文では「その車」は受身になっている。この受動文における行為者はやはり「私の父」である。

B. 前述の 2 つの文、すなわち能動文と受動文は、どちらも同じ出来事を述べている:両方の場合において、ある車を売るある人について語られている。出発点が私の父か車かで違っているが、結果は同じである。

能動文を受動に転換するとき、能動文における目的語は受動文における主語になる。動詞の時制は変化しない:
能動 Min far sælger bilen.
受動 Bilen sælges af min far.
したがって、受動態に転換されるためには能動文中に目的語がなければならない。すなわち、動詞が他動詞として用いられている文だけが、受動文に転換されうるのである。

能動文における主語 min far が、受動文では前置詞句 af min far になっていることに注意せよ。この前置詞句 af min far は文中で副詞句として働いているので、A のマークをつけてある〔訳注。ここでは省略している〕。

C. 動詞が自動詞として用いられている文は、受動文に転換できない:
Cecilie stank af tobak da hun kom hjem fra mødet.
(セシリエは会議から帰ってきたときタバコで悪臭を放っていた)
Christoffer havde ligget og sovet på sofaen det meste af dagen.
(クリストファーはその日の大半をソファに横になって眠っていた)
Inflationen er steget med 1%.
(インフレが 1 % 進行した)
D. デンマーク語では多くの場合、2 通りのしかたで受動態を作ることができる:

S-受動態 (s-passiv):動詞が -s で終わる形。とくに現在形において見られる。
Varerne bringes ud til kunderne.
(その商品は客たちのところへ運びだされる)
Lygterne tændes en halv time efter solnedgang.
(ライトは日没の半時間後に灯される)
Dørene lukkes kl. 7.
(扉は 7 時に施錠される)
Blive-受動態 (blive-passiv):blive と完了分詞からなる形。多くの動詞は過去形で blive-受動態を用いる。現在と過去以外の時制では、blive-受動態のみが用いられうる。
Passagererne bliver ramt hårdt af busstrejken.
(乗客たちはバス・ストライキによって著しく影響を受ける。現在)
Mødet blev holdt i skolens aula.
(集会は学校の講堂で行われた。過去)
Det mord er aldrig blevet opklaret.
(その殺人事件は決して解決されていない。現在完了)
E. S-受動態はいつでも有効である事柄に関して用いられるのに対し、blive-受動態は個別の出来事に関して用いられる、という傾向がある。次の 2 段の文〔訳注。原文では左右に 3 文ずつだが、ここでは段組にせず並べている〕を比較せよ:
Gamle møbler købes og sælges.
(古い家具が売り買いされている)
Den teknik kendtes ikke i Middelalderen.
(その技術は中世には知られていなかった)
Tv? Det fandtes ikke dengang.
(テレビ? そんなものそのころにはなかった)
Maden bliver serveret af lejede tjenere.
(料理は雇われた給仕たちによって供される)
Firmaet blev grundlagt i 1924.
(その会社は 1924 年に設立された)
Pengene blev fundet i tyvens hjem.
(その金は泥棒の家で見つかった)
F. -s に終わるいくつかの動詞は、受動の形にもかかわらず能動的な内容をもっていることに注意せよ。それらは他動詞・自動詞いずれでもありうる:
Der findes mange dyrearter.
(たくさんの動物の種が存在する)
Hun mindedes sin ungdom.
(彼女は自分の若いころを回想した)
Forsøget lykkedes.
(実験は成功した)
Det kunne vanskeligt undgås.
(それを避けることは難しいだろう)
Jeg længes efter sommeren.
(私は夏を待ち焦がれている)


次のものは Lisa Holm Christensen og Robert Zola Christensen, Dansk grammatik, 3. reviderede udgave, 2007, s. 106f. より。

受動形

多くの動詞は能動形または基本形 (aktiv form, grundform eller handleform) と受動形 (passiv form, lideform) とに活用しうる。能動と受動とのあいだの区別は、高度な用語では (diatese) と呼ばれる。受動の活用は不定詞、現在および過去に適用されうる。受動形態素 (passivmorfeme) はどの形でも -s である。不定詞の受動形は -s の付加によって作られる:hentehente-s。現在の受動形は不定詞の受動形と同一である。不定詞受動形と現在受動形はそれゆえ同音異義語である。言語史的な説明では、現在受動形は現在 + s から作られるが現在形は -r で終わり、-rs の組みあわせが強勢のない位置では調音が難しいので、[rs] が [s] に融合したのである。過去受動形は能動の過去形に -s を付加することで作られる:hentedehentede-s。しかしながら受動に活用しうる過去形の動詞のすべてがそうなのではない。意味論的な理由から、だいたいにおいて命令法の受動形は見られない。というのは命令法、とくに要求のために用いられるそれは、何事かをするよう駆り立てられるところの人じしんが能動的に行為を行わねばならないことを前提するからである。〔込み入った文なので「意味論的……」からの原文を載せておく:Af semantiske grunde forekommer der stort set ikke verber i imperativ passiv, da imperativ, der især bruges til at opfordre med, forudsætter, at den, som anspores til noget, selv skal udføre handlingen aktivt.〕

動詞の形態論的受動形 (morfologiske passiv) の概観
不定詞受動形現在受動形過去受動形
henteshenteshentedes「連れてこられる」
læseslæseslæstes「読まれる」
sessessås「見られる」
〔訳注。ここで「形態論的 morfologisk」とは「迂言的 perifrastisk」に対置される用語で、同書 s. 54 によればそれらは「屈折 bøjning によって作られる」ものと「書きかえ omskrivning によって作られる」ものを指す。それぞれ「総合的」(英 synthetic) と「分析的」(英 analytic) に言いかえても大過ないであろう。〕

しばしば強変化動詞は s-受動態を作れない:*hjalp-s, *åd-s。このため blev + 完了分詞による迂言的受動態 (perifrastisk passiv) が必要とされる。

現在能動形現在受動形過去能動形過去受動形
stikkerstikkesstakblev stukket
flyverflyvesfløjblev fløjet
finderfindesfandtblev fundet
hjælpehjælpeshjalpblev hjulpet

完了分詞は受動形の s-形態素を伴って変化することがまったくできないので、受動の意味を表すためにはつねに迂言的な形が必要とされる:Hun er blevet hentet af sin far「彼女は父から呼ばれてきた」〔現在完了〕;Han var blevet udskrevet fra sygehuset「彼は〔すでに〕病院から退院していた」〔過去完了〕;Bilen var blevet undersøgt af politiet「その車は警察によって調査されていた」〔過去完了〕。(Jf. s. 122f.)


次のものは Christensen og Christensen, op.cit., s. 113 より。

〔S. 107 以下「諸活用形のはたらき」の節中の〕受動形

受動形の動詞は 3 つのはたらきとそれに結びついた意味とをもちうる。それらは受動構文 (passiv konstruktion) を作るために用いられうる。形態論的受動形を用いた文は迂言的受動形に変換しうる (大なり小なり意味の変化を伴う)。
Stakittet skal males hvidt. ≈ Stakittet skal blive malet hvidt.
(柵は白く塗られる予定だ)
Lønnen betales af staten. ≈ Lønnen bliver betalt af staten.
(給与は国によって支払われる)
動詞の s-形の第 2 のはたらきは、中間構文 (medial konstruktion) にある。これは典型的には複数形の名詞 + s-形の動詞から構成され、主語の指示対象が (相互的に) お互いに対してとりおこなうところの動詞の行為を媒介する。これらの構文は迂言的受動態に置きかえることはできない。
Per og Line sloges. ≠ Per og Line blev slået.
(ペールとリーネは喧嘩した ≠ ペールとリーネは殴られた)
Vi ses i morgen. ≠ Vi bliver set i morgen.
(私たちは明日会う ≠ 私たちは明日会われる)
Vi samles hos mig klokken 9. ≠ Vi bliver samlet hos mig klokken 9.
(私たちは 9 時に私のもとに集まる ≠ 私たちは 9 時に私のもとに集められる)
Børnene fulgtes til skolen. ≠ Børnene blev fulgt til skolen.
(子どもたちは学校までいっしょに行った ≠ 子どもたちは学校までついてこられた)
Skal I deles om opvasken?
(あなたたちは皿洗いを分けあうか)
De skændtes hele tiden.
(彼らは一日じゅう口論していた)
デポネント動詞 (deponent verb, jf. s. 102) は能動の動詞と同じように使われるが偶然に s-形を獲得したものである。能動形の動詞のなかにこれらとの類義語がしばしば見つかる。
Jeg længes efter dig. (jf. Jeg savner dig.)
(私は君を待ち焦がれている)
Der findes ingen som dig. (jf. Der er ingen som dig.)
(君のような人は誰もいない)
Det lykkedes mig at vinde. (jf. Jeg formåede at vinde.)
(私はうまく勝つことができた)
Hun væmmes, når hun ser ham. (jf. Hun føler sig utilpas, når hun ser ham.)
(彼女は彼に会うと気分が悪くなる)
Bo synes ikke om hende. (jf. Bo elsker hende ikke.)
(ボーは彼女のことを好きではない)
形態論的および迂言的受動構文は 122 頁以下でも扱っている。動詞の s-形のもつその他のはたらきについてはこれ以上扱われない。

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