samedi 10 décembre 2022

小林『独習者のための楽しく学ぶラテン語』練習問題解答 (2)

小林標『独習者のための楽しく学ぶラテン語』(大学書林、1992 年) の解答。このページでは第 6 課から第 12 課を扱う。

目次リンク:第 1 回を参照。


第 6 課 第一第二変化形容詞


練習問題 10


(1) ポリュドールスはギリシアの詩人である。フラックスの息子マールクスにギリシア語と哲学を教えている。

(2) ポリュドールスはマールクスに偉大なギリシア人たちの話を語る。快い話はマールクスを喜ばせる。

(3) フラックスは大きな屋敷をローマにもっている。(彼は) 多くの友人たちを夕食に呼ぶ。

(4) 主人フラックスと友人たちは広い食堂で夕食をとる。彼らは多量のよい葡萄酒を味わう。

(5) 女主人と侍女たちは小さな台所で座っている。侍女たちは疲れている。女主人が尋ねる:「なぜおまえたちは食事を食堂へ運ばないの、侍女たちよ」。


第 7 課 第一第二変化名詞形容詞の別形


練習問題 11


(1) 先生がマールクスに教える:「古代のローマ人の男たちは偉大だった」。

(2) 哲学者でなければ完全で満ち足りた生活を送ることはできない。

(3) フラックスが叫ぶ:「(わが) 息子マールクスよ、おまえはなぜ哀れな人々にお金を与えないのだ」。

(4) 美しい少女たちが広場から聖なる神殿へ入る。

(5) 哀れな奴隷たちが魂の自由な言葉を発することはできない。〔miserī, servī, animī はそれぞれ miser, servus, animus の (男性) 単数属格か複数主格の可能性がある。ここで miserī が離れた animī にかかるとすれば「哀れな心 (単属) の奴隷たち (複主) が自由な言葉を」ととることも可能。〕

練習問題 12


(1) Tū es magister bonus Rōmānōrum, magne poēta.〔「良き」が「先生」にかかるとして訳したが、「ローマ人たち」にかかるならば magister Rōmānōrum bonōrum。〕

(2) Mārcus habet multōs librōs Graecōs.

(3) Magnum erat imperium Rōmae.

(4) Nostrī diī sānant miseriam.

(5) Flaccus pulchrīs fīliābus dat virōs.


第 8 課 第三変化動詞,第四変化動詞


練習問題 13


(1) 時間は逃げ去る。

(2) なぜなら手紙は赤くならないから。

(3) 彼らは教えているとき学んでいる。〔教えることは学ぶこと。〕

(4) 名声は言葉によりて心に火をつけ、怒りを積みあげる。〔dictis は dictīs の誤り。〕

(5) しかしなぜ私たちは聞いていないのか。なぜなら私たちは言っていないから。

(6) 私たちは記憶で保持できる〔=覚えられる〕のと同じ量だけ知る (ことができる)。

練習問題 14


(1) Scrībimus Flaccō multās epistulās.

(2) Dominus servōs ad amīcōs mittit.

(3) Sī multum legis, multum discis.〔問題文のヒントにある短い si は誤字。〕

(4) Ōtium gignit vitium.

(5) Nōn cupiunt stultī scientiam.


第 9 課 人称代名詞,再帰代名詞,確定代名詞


練習問題なし


第 10 課 前置詞


練習問題なし


第 11 課 未完了過去時制,語順


練習問題 15


(1) Mārcus Saturam Horātiī legēbat : « Dum vītābant stultī vitia, in contrāria currēbant. »

(2) Plautus, poēta comicus Rōmānus, scrībēbat : « Hūmānum amāre erat, hūmānum autem ignōscere erat. »

(3) Terentius dīcēbat in fābulā : « Pecūniam in locō neglegere interdum maximum lucrum erat. »

(4) Seneca scrībēbat in epistulīs : « Immodica īra gignēbat insāniam. » « Nōn vītae, sed scholae discēbāmus. »

(5) Flaccus et amīcī audiēbant prōverbia in Sententiīs Pūbliliī Syrī et rīdēbant : « Animō virum pudīcae, nōn oculō ēligēbant. » « Malō in consiliō fēminae vincēbant virōs. » « Fēminae nātūram regere dēspērāre erat ōtium. »

練習問題 16


(1) Flaccī fīlius ad [in] theātrum currēbat.

(2) Magister multa prōverbia [multās sententiās] dīcēbat, sed Mārcus nōn audiēbat.

(3) Dormiēbās ? Nōn legēbās librum ?

(4) Margarītās ante porcōs mittēbāmus.

(5) Antiquī Rōmānī linguam Graecam nōn discēbant.


第 12 課 不規則動詞,不完全動詞


練習問題なし

vendredi 9 décembre 2022

小林『独習者のための楽しく学ぶラテン語』練習問題解答 (1)

小林標『独習者のための楽しく学ぶラテン語』(大学書林、1992 年) の解答を適当に作っていく。

目次リンク:あとで


第 2 課 sum 動詞の現在,未完了過去時制


練習問題 1


(1) — Quis erās tū ? — Ego eram Gāius Licinius Flaccus.

(2) — Quis erat ille ? — Erat Mārcus, meus fīlius.

(3) — Quī erant illī ? — Erant meī amīcī.

(4) — Rōmānī erātis ? — Rōmānī erāmus.

(5) Erat deus in nōbīs.

〔(5) 以外はほとんど文が意味をなさない笑止な練習問題。これだったらたんに「未完了過去の活用を書いて練習せよ」という設問のほうがよほどよい。〕


第 3 課 第一変化動詞,第二変化動詞,possum の変化


練習問題 2


(1) Nōn salūtat.

(2) Docēmus. Sed illī nōn docent.

(3) Cūr rīdēs ?

(4) Nōn laudāre poteram.

(5) Videt et narrat.

練習問題 3


(1) あなたがたはなにを命じるのか。

(2) リキニウスは教えることができるか。

(3) 愛することが傷つけるときもある。〔aliquandō「あるとき;ときどき」が巻末語彙集に載っていない。〕

(4) 詩人が物語り、私の友人たちがほめる。

(5) 彼らは食事もし笑いもする。


第 4 課 第二変化名詞,「性,数,格」


練習問題 4


dominus : 単主 dominus, 呼 domine, 属 dominī, 与 dominō, 対 dominum, 奪 dominō ; 複主・呼 dominī, 属 dominōrum, 与 dominīs, 対 dominōs, 奪 dominīs.〔複数呼格は主格とつねに同形なので以下繰りかえさない。〕

annus : 単 annus, anne, annī, annō, annum, annō ; 複 annī, annōrum, annīs, annōs, annīs.

lūdus : 単 lūdus, lūde, lūdī, lūdō, lūdum, lūdō ; 複 lūdī, lūdōrum, lūdīs, lūdōs, lūdīs.

mortuus : 単 mortuus, mortue, mortuī, mortuō, mortuum, mortuō ; 複 mortuī, mortuōrum, mortuīs, mortuōs, mortuīs.

Brūtus : 単 Brūtus, Brūte, Brūtī, Brūtō, Brūtum, Brūtō ; 複なし。

somnus : 単 somnus, somne, somnī, somnō, somnum, somnō ; 複 somnī, somnōrum, somnīs, somnōs, somnīs.

incendium : 単主・呼 incendium, incendiī, incendiō, incendium, incendiō ; 複 incendia, incendiōrum, incendiīs, incendia, incendiīs.〔中性では単数でも主=呼なので以下省略する。〕

forum : 単 forum, forī, forō, forum, forō ; 複 fora, forōrum, forīs, fora, forīs.

templum : 単 templum, templī, templō, templum, templō ; 複 templa, templōrum, templīs, templa, templīs.

以下略。

練習問題 5


(1) Flaccus nōn amat theātrum.

(2) Mārcus meus fīlius lūdum amat.

(3) Cum Flaccus in forō est, Mārcus sedet in theātrō.

(4) Mārcus cum amīcō [amīcīs] lūdum videt et rīdet.〔主語は Mārcus の単数で、友達はあくまで前置詞句なので動詞は単数形になる。もし友達を Mārcus et amīcī [Mārcus amīcīque] のように主格で並べたならば動詞は複数 vident, rīdent でないといけない。〕

(5) Flaccus in forō amīcum [amīcōs] salūtat.

練習問題 6


(1) 言葉は飛び、文書は残る。

(2) ブルートゥスよ、おまえもか。

(3) 主の年に。

(4) 死者たちは悲しまない。死者たちは噛みつかない。

(5) 眠りのなかで火事を見ることは危険を意味する。

(6) 模範は教え、しかして命じない。〔命令によってではなく模範を示すことによって教える、模範それじたいが教育的であるということ。exempla が複数主格の主語。ただしこれを複数対格の目的語ととって、「彼らは模範を教えるが命令はしない」と解することも文法的には可能。〕

(7) おまえは愛する私の息子だ。


第 5 課 第一変化名詞


練習問題 7


ignōrantia : 単 ignōrantia, ignōrantiae, ignōrantiae, ignōrantiam, ignōrantiā ; 複 ignōrantiae, ignōrantiārum, ignōrantiīs, ignōrantiās, ignōrantiīs.

insānia : 単 insānia, insāniae, insāniae, insāniam, insāniā ; 複 insāniae, insāniārum, insāniīs, insāniās, insāniīs.

īra : 単 īra, īrae, īrae, īram, īrā ; 複 īrae, īrārum, īrīs, īrās, īrīs.

以下略。

練習問題 8


(1) Philosophia ancilla theologiae est.

(2) Nātūra docet.

(3) Poēta scientiam laudat.

(4) Ancillae rogant, respondet domina.

練習問題 9


(1) 知は力なり。

(2) 無知は有害である。

(3) 医者が治療し、自然が癒やす。

(4) わが生命こそがたしかに疑い [危機] のなかにあるのだ。

(5) 怒りは狂気の始まり。

(6) 私はひげとギリシア風マントを見るが、哲学者を見ていない。〔哲学者らしい見せかけが哲学者を作るのではない、それらを備えているからといって哲学者になるわけではないということ。〕

jeudi 8 décembre 2022

ハーヴェステラ人物名鑑

『ハーヴェステラ』に出てくる全人物名の事典。五十音順。ネタバレ多数なので注意、かならずストーリークリア後にお読みください。

ここにいう「人物」とはいわゆる人間に限らず、個性をもったひとつの人格、作中の言葉でいえば「知性」のひとりひとりを指すものとします(+一部「知能」をも含む)。作中で名前が一度でも挙がった人物名は全員載せ(姿が出ない故人なども含む)、ごく一部名前がなくても役割のある人物は含めています(「〇〇の父親・母親」は省略)。

解説はなるべく簡潔を旨とし原則 2 文までに限ったため、情報を網羅したものではありません(と、当初早く完成させるためにそう決めていたのが、あとから書き足したものほど長くなっています;ほかのも少しずつ加筆していきたい)。2024 年 8 月 27 日最終更新。


ア行


アイク (Ike)
レーテの村の男の子。忙しい両親から放置されていることを気に病んで家出したところをデュランレプスに保護された。登場:レーテのクエスト「怪しい手紙」

アイナ
ブラッカの故郷の村長の娘。故人。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

アイン (Ein)
プレーヤーの分身である主人公。月の揺り籠で眠っていたカイン種人類の意識を、リ・ガイアによってアベル種人類の肉体(その本来の持ち主については不明)へ移し入れられた存在。登場:メインストーリー 第一話〜

蒼き髪の乙女 (blue-haired maiden)
→ イヴ

赤髪の青年 (young man with flame-red hair)
「棺の国」を組織した人物で、なんらかの手段で若返りもしくは長命を得ていたほか、「赫き病」の特効薬である銀の林檎をもっていた。不治の病に冒されたイヴを救う手段を探し求めたが叶わずに命を絶った。登場:なし(貴重品文書のみ)

アジール (Asyl)
ネメアの街の自警団の青年。登場:メインストーリー 第三話 共通〜

アネモイ (Anemoi)
オートマタ。冬のシーズライトの帰化現象によって現れた 21 世紀中葉の機械。災害予測ができ、ジーグフェルド司祭はこれを利用して神託と称する予言を行っていた。登場:メインストーリー 第三話 C

アマデウス (Amadeus)
キルケゴールとともに 12 年前にブラッカの故郷の村を滅ぼした喰罪種。晩年は喰罪種としての本能に逆らって穏やかな暮らしを送り、モルドールに殺された。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

アラン (Alan)
ラケルの父。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

アリア (Aria)
西暦 2078 年の「未来」から来た科学者。「厄災」解決のため若くして人類の先頭に立ち奮闘するが、レッドクイーンの星核に触れたことで二千年あまりのあいだ魂を囚われていた。フルネームはアリア・レベンタール。登場:メインストーリー 第一話〜

アルヴァ (Alvar)
アルジェーンに住む老人。身寄りがなく、エルマを本当の孫のように思っている。登場:アルジェーンのクエスト「嘘から出た本当」

アンリ (Annie)
ネメアの孤児院の女の子。本来はしっかりした行儀のいい子だが、養子の話を断りナナに譲るために悪い子のふりをする。登場:ネメアのクエスト「いたずらの真相」

イヴ (Eve)
アリアの次にレッドクイーンに触れて「幼年体チャイルドフッド 2」となった蒼い髪の女性と思われる名前。寓話集『楽園の終わり』では「蒼き髪の乙女」と称され、赤髪の青年の妹とされる。登場:なし(貴重品文書のみ)

イザベラ
スコットのおそらく妻(エマとともに名前が挙がるため、どちらが妻でどちらが娘かは曖昧)。故人。登場:スクラップド・エデンのクエスト「バイバイ ヒューマン」

イスティナ (Istina)
ネメアの孤児院の先生。元「影のアサシン」と呼ばれる暗殺者だった。登場:メインストーリー 第三話 A〜

イリス (Iris)
夏のシーズライトに関係している水の大妖精。登場:メインストーリー 第三話 B〜

ヴィラマンド (Viramand)
→ シュリカ

ヴェルト゠ガイスト (Welt Geist)
→ ガイスト

エアリル (Aeril)
春のシーズライトに関係している風の大妖精。登場:メインストーリー 第三話 A〜

エディ (Eddy)
ラケルをかばっていた子どもたちのうちの男の子。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

エペ
シュリカの話に出てくる、免罪花を身につけていなかったためにキルケゴールに操られることを免れた人物で、おそらく同僚の神官か。テルと同じく愛称のようで正式な名は不明。登場:メインストーリー 第三話 C
◇ 欧米語版ではシュリカのセリフに対応する内容がなく、日本語版のみの登場。性別不明だが、テルシテスと同様にギリシア神話からとられた名前とすれば、正式な名はエペイオスまたはエペイゲウスと推測され、男性か。

エマ
スコットのおそらく娘(イザベラの項を参照)。故人。登場:スクラップド・エデンのクエスト「バイバイ ヒューマン」

エミリー (Emily)
不治の病で余命いくばくもない女性。詩を書くのが趣味。登場:キャラクターストーリー ディアンサス

エモ (Emo)
シャトラの酒場の歌姫。セイレーン族最後の生き残り。登場:メインストーリー 第三話 B〜

エリー (Ellie)
サハギンのブブゼラ様に宝物をとられた子どもたちのうちの女の子。登場:シャトラのクエスト「サハギンを追え!」

エルマ (Elma)
アルジェーンの住民の女性。アルヴァを騙して遺産をせしめようとしていた。登場:アルジェーンのクエスト「嘘から出た本当」

オーナー (Landlord)
シャトラの酒場のオーナー。本名はニコラウス。エモを騙して働かせ、しまいには売り飛ばそうとしたり、かと思えば高価な衣装を用意してやったりと、愛憎相半ばする複雑な執着をもっている。登場:メインストーリー 第三話 B、シャトラのクエスト「終・マスターの秘密」

オルテラ (Otella)
ティエラの予備個体として作られた人造人間。ティエラとしての記憶ももっており、そのためにアジールに執着する。登場:キャラクターストーリー アジール


カ行


ガイア (Gaia)
科学者集団アニムスにより制作された、星そのものを計算機に仕立てたガイアコンピュータの OS。ネットワークから抽出した人類の集合的無意識が滅びを希求していると判断し、ガイアダスト(死季)を発生させた。正式名称は「星の少女 Gaia type」。登場:メインストーリー 最終話(姿は第六話も)

ガイスト (Geist)
魔族。死季解決を目指すクラウドの首班だったがロストガイアを訪れたのち変節、人類の進化を促すため「適切な滅亡」を与えようとシーズライト破壊に向けて暗躍した。敗北後の新人格は「殻の楽園」構想に方針転換し、一行に人類の真実を伝えカイン・アベルいずれが生き残るべきかの選択を迫る。登場:メインストーリー 第三話 A〜最終話(姿は第一話〜)

ガイスト MK-II (Geist Mk-II)
ガイスト旧人格が制作した小型支援デバイス。旧人格・新人格いずれの構想をも乗りこえて一縷の希望を証明した一行に、旧人格の「遺言」としてシーズライトの帰化現象や星の記憶領域仮説を伝える。登場:メインストーリー 最終話

鍛冶屋 (Smithy)
レーテの村で鍛冶屋を営む年配の女性。「中世」の村人にもかかわらずロストガイアやカレノイドの素材を知悉しており、ハイネの作った機械や銃、アリアディアンサスのもつ未来の武器さえも改良できる常軌を逸した技術力を有する。登場:メインストーリー 第一話〜

カリステフス (Callistephus)
月の揺り籠を防衛するレーベンエルベのリーダー。登場:メインストーリー 第七話〜第八話

“彼” (him, his)
地球人類ではじめて月に到達した人物(=アメリカの宇宙飛行士ニール・アームストロング)。セレーネからモノライトを託された。登場:カレノイド

キルケゴール (Kierkegaard)
表向きには季石教団の司祭ジーグフェルドと名乗る。アルジェーンの全住民を食い荒らそうとしていた喰罪種で、12 年前アマデウスとともにブラッカの故郷を滅ぼした。登場:メインストーリー 第三話 C

グラッド (Gladd)
ビスハイム商会の人間で、商会の跡取りである酒場のマスターに嫌がらせをし彼を連れ戻そうとした。登場:シャトラのクエスト「続・マスターの秘密」「終・マスターの秘密」

クラリエ (Clarie)
アルジェーン聖堂の懺悔室(のち、お悩み相談室)の担当神官で、非常なお人好し。登場:アルジェーンのクエスト「雪を積む女」「善意という名の罪」「彼女が積み上げてきたもの」

クリス
季石教団の巡礼師見習い。巡礼師の仕事についていけずバックレ、シャトラの酒場で飲んだくれているのを目撃されている。登場:ブレイクタイム

クレス (Cres)
レーテの村の医者。どこに行っても通用する腕前と評されており、ほかの街の住民からも頼られている。登場:メインストーリー 第一話〜

クロド
ブラッカの幼馴染。故人。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

コロちゃん (Mr. Coco)
商才がないとしてコロネル族の里を追放され、行き倒れていたところをミーナに拾われた。実際にはしゃべることができ、追放もアルジェーンの宿屋にもぐりこむための偽装であった。登場:アルジェーンのクエスト「教都の宿屋の秘密」「コロちゃんの内緒話」


サ行


サファギン (Sahagin)
遠見の丘の「あやしい池」に住みつくサハギン。登場:不定(水辺バイオーム完成後)

ジェド (Jade)
リリアとともに駆け落ちの途中、海難事故により記憶を失う。もとアルジェーンの神官の家の息子。登場:シャトラのクエスト「逃避の結末」「再会の約束」

ジェームズ
アリアの父と親交があった、21 世紀後半の進化心理学者。人間のもつ心あるいは自我とは、肉体的な弱さを補償するために発生した器官だという説を唱えた。登場:メインストーリー 第六話

シェリー (Cherie)
ネメアの街に住む娘。もとシャトラに住んでいたが、幼いころ魔物に襲われる事故で両親と生き別れ、そのさいの怪我で記憶を失っていた。本来の名前はリン。登場:ネメアのクエスト「海を見たい娘」「蘇る記憶」「桜のいたずら」

ジーグフェルド
→ キルケゴール

ジャバウォッキー (Jabberwocky)
スクラップド・エデンの白い魔族。もともと大隔壁の外の世界に興味をもっており、外に出る主人公一行に同行、道案内や機械の読みとりなどに協力する。登場:メインストーリー 第五話〜第六話

ジュノー (Juno)
秋のシーズライトに関係している火の大妖精。登場:メインストーリー 第三話 共通〜

シュリカ (Shrika)
季石教団に所属する、「翼主の子」と称される最強の巡礼師。もと孤児であったが才能を見いだされてジーグフェルド司祭に拾われた。フルネームはシュリカ・ヴィラマンド。登場:メインストーリー 第三話 共通〜

シリィ (Shirii)
冬のシーズライトに関係している土の大妖精。登場:メインストーリー 第三話 C〜

シリン (Shirin)
レーテの村外れの空き家を管理している女性。ベルクの恋人。登場:レーテのクエスト「ユーレイ屋敷のウワサ」「かえらぬ傭兵」「待ち続けたふたり」

スコット (Scott)
機械のボディに人格を移した人間。数百年前にスクラップド・エデンの閉鎖環境に嫌気が差して外に出たまま行方不明になっていた。登場:スクラップド・エデンのクエスト「バイバイ ヒューマン」

ゼニス
レーテの村長が冒険者だった時代の仲間。手紙が書けなくなってからは孫のセラに代筆させていた。故人。登場:レーテのクエスト「村長のペンフレンズ」

セラ (Serra)
ゼニスの孫娘。村長の新たな文通相手となる。登場:レーテのクエスト「村長のペンフレンズ」

セレーネ (Selene)
現在の形にされるまえの月が本来有していた星の意思。シーズライトを打ちこみ勝手に月をテラフォーミングした魔族に対抗すべく、アベル種人類を生みだした。登場:カレノイド

ソフィア
高次人工知能。野蛮だったアベル種を教化するために『汎化聖典』を編纂し、季石教団の教母マザーとなった。およそ千年前にリ・ガイアに落下する以前には『楽園の終わり』プロジェクトを進めていた。登場:キャラクターストーリー シュリカ

ソルバス (Sorbus)
魔族。人口調整の任務としてある村を滅ぼしたが、それに罪悪感を覚えて孤児院に匿名でプレゼントを行っていた。(その旧人格は消去されているという意味で)故人。登場:ネメアのクエスト「消えた送り主」

村長 (Mayor)
レーテの村の村長。登場:メインストーリー 第一話〜


タ行


チャイルドフッド 1 (Childhood 1)
→ アリア

チャイルドフッド 2 (Childhood 2)
→ イヴ

ディアンサス (Dianthus)
登場:メインストーリー 第二話〜

ティエラ (Tiella)
記憶喪失でアジールに保護されていた女性。正体は生体兵器である竜を制御する OS として作られた未来の人造人間。登場:メインストーリー 第三話 A

ディム (Dim)
クレスの弟。診療所を手伝っている。登場:メインストーリー 第一話〜

デュランレプス (Duranrepes)
魔族。家出して翡翠の森にいたアイクを保護していた。登場:レーテのクエスト「怪しい手紙」

テルシテス (Thersites)
季石教団の不良神官で、シュリカの幼馴染。もともと信仰に熱心ではなかったが、教母マザーの真実を知ったことで反マザー派の首魁となり、教団を瓦解させることでシュリカの解放を狙った。登場:メインストーリー 第三話 C、キャラクターストーリー シュリカ

テレサ (Theresa)
アルジェーンに住む女の子。ラケルをかばっていた子どもたちのうちの 1 人。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

トゥイードルディー (Tweedledee)
白い魔族のなかでは珍しく新しいもの好きで、リ・ガイアに行きたがったりボディの改造パーツをほしがったりしている。登場:スクラップド・エデンのクエスト「ボクをリ・ガイアに連れてって!」

通せんぼしてた神官 (Blocking Priest)
自宅に押し入った泥棒を過剰防衛で殺害しかけ、露見を恐れ神官のふりをして家を封鎖していた青年。本名は知られず、クエスト解決後も「通せんぼしてた神官」名義で手紙を送ってくる。登場:アルジェーンのクエスト「通せんぼの真実」

トッド (Todd)
ネメアに住むシスコンの兄。妹ミシェラを過保護にしすぎて疎まれている。登場:ネメアのクエスト「妹の里帰り」

トリー
ブラッカの妹分で、ロットとは双子。故人。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

トルガ (Tolga)
シャトラの町の灯台守だが、灯台の明かりがもとで死亡事故が起きてから気を病んで飲んだくれていた。登場:シャトラのクエスト「失われた灯火」「灯台守の罪」「未来を照らす灯火」

ドレル (Dorell)
ネメアの街に住む男性。飲んだくれのろくでなしであったが、妻モーラが天の卵に攫われて生死不明となってからは心を入れかえ彼女を探していた。登場:ネメアのクエスト「帰らぬ妻」


ナ行


謎の人物
ロストガイアのフィールド上、ランドマークタワーに酷似したビルの陰におり、「刀と鞘」を探して渡すとサムライのジョブを伝授して消える。その正体も、どれほどの期間どのようにしてロストガイアで生存していたのかも不明。登場:不定(メインストーリー 第六話以降)

ナナ (Nana)
ネメアの孤児院の女の子。姉のように慕うアンリとともにホラーツ夫妻の養子となる予定。登場:ネメアのクエスト「いたずらの真相」

ニコラウス (Nikolaus)
→ オーナー

ニナ (Nina)
酒場のマスターに恋する女性。思いこみが強く、クエストクリア後は主人公に執心しアルジェーンに移って新居を探している。登場:シャトラのクエスト「マスターの秘密」

ニバリス (Nivalis)
登場:メインストーリー 第四話〜最終話

ノエラ (Noella)
アルジェーンに住む女の子。ラケルをかばっていた子どもたちのうちの 1 人。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

ノスタルジック・プレイヤー (Nostalgia Player)
→ ファンタスマゴリア


ハ行


ハイドランツァ (Hydolanzer)
ガイストの部下の魔族。登場:メインストーリー 第二話(姿は第一話〜)

ハイネ (Heine)
シャトラの町の発明家。登場:メインストーリー 第三話 共通〜

ハース (Haas)
ミシェラの彼氏。登場:ネメアのクエスト「妹の里帰り」

バドル
ブラッカに狩りを教えてくれた兄貴分。故人。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

バルド
悪辣な商売で財を成したビスハイム商会の会長だが、病床にありもう長くないと見られている。酒場のマスターの父。登場:シャトラのクエスト「終・マスターの秘密」

バン (Van)
レーテの村の男の子。登場:メインストーリー 第一話〜

バンダースナッチ (Bandersnatch)
スコットの友人であった白い魔族。登場:スクラップド・エデンのクエスト「バイバイ ヒューマン」

ビスハイム
→ バルド、フィオレ、マスター

ファンタスマゴリア (Phantasmagoria)
オートマタ。もとは幻灯園のうちノスタルジータウンというエリアのみを管轄する「郷愁再生装置」ノスタルジック・プレイヤーで、来園者の記憶を読みとり過去の幸せな思い出を見せる機能をもつ。人類が消え去ったあと、客の来ない寂しさに耐えかねてその力を頼ってきた他の AI たちを配下に収め、園全体を支配するに至った。幸福な幻影のなかで静かに眠ることこそ最善と判断しアリアたちを攻撃する。登場:メインストーリー 第六話

フィアソラ (Fiasola)
ハイネの相棒であり姉のような存在だった発明家の女性。セイレーン族。ハイネより先に潜水艦を完成させるが、深海にて消息を絶った。登場:キャラクターストーリー ハイネ

フィオレ (Fiore)
酒場のマスターの妹。ビスハイム商会を改革して真っ当な商売に立ち戻らせようとしている。登場:シャトラのクエスト「終・マスターの秘密」

ブブゼラ様 (Lord Vuvuzela)
子どもたちの宝物の泥団子を盗んだサハギン。光り物を集めてキングサハギンを目指していた。登場:シャトラのクエスト「サハギンを追え!」

ブラッカ (Brakka)
アルジェーンで出会う黒衣の傭兵。喰罪種キルケゴールアマデウスへの復讐を目的としている。登場:メインストーリー 第三話 C〜

ヘテロヴィリウス (Heterovilius)
登場:幻影城のクエスト「壁の向こう側」

ベルク (Berg)
レーテの村出身の傭兵で、村外れの空き家の主。シリンとは恋人。登場:レーテのクエスト「かえらぬ傭兵」「待ち続けたふたり」

ベント (Vent)
レーテの村の男の子。登場:メインストーリー 第一話〜

ホラーツ夫妻 (Hollatz)
ネメアに住む裕福な商人とその夫人。アンリを養子に引きとろうとしている。登場:ネメアのクエスト「いたずらの真相」

ボロゴーヴ (Borogove)
スクラップド・エデンの白い魔族。失われた料理の研究のため料理納品を求める。登場:メインストーリー 第五話〜


マ行


マグノリス (Magnolis)
魔族。海洋環境の保全を担当しており、海面上昇や珊瑚礁の修復などを研究している。登場:シャトラのクエスト「シャトラの危機」

マザー
→ ソフィア

マスター (Bartender)
シャトラの酒場のマスター。ビスハイム商会の跡取り息子であったが、強引なあるいは違法な商売で拡大する実家を嫌って若いころ出奔した。本名はレオン・ビスハイム。登場:メインストーリー 第三話 B〜

マスターコロネル (Chief Conellu)
シャトラの町の地下で謎の店を開いているコロネル族。コロネル人形を集めている。登場:不定(メインストーリー 第三話 B 以降)

ミシェラ (Miscela)
トッドの妹。過保護な兄が面倒になり、彼氏のことを報告できずにいた。登場:ネメアのクエスト「妹の里帰り」

ミーナ (Mina)
アルジェーンの宿屋の看板娘。コロちゃんを拾い宿屋の一室で匿っていた。登場:アルジェーンのクエスト「教都の宿屋の秘密」「コロちゃんの内緒話」

ミリカ (Milika)
レーテの村の女の子。登場:メインストーリー 第一話〜

モノケロス (Monokeros)
ユニコーンと色違いの一角獣。出生の秘密を知った結果やぶれかぶれになり「王の使い」を名乗ってアルジェーンを脅迫、ユニコーンとの一騎打ちに敗れる。登場:キャラクターストーリー ユニコーン

モーラ (Maura)
ドレルの妻。登場:ネメアのクエスト「帰らぬ妻」

モルドール
喰罪種アマデウスを殺害した人物。ブラッカの聖銃のような武器をもたなかったゆえにアマデウスを喰うことでとどめを刺し、そのため自らも喰罪種になりかけていたところをブラッカに引導を渡された。登場:キャラクターストーリー ブラッカ


ヤ行


ユニコーン (Unicorn)
ロストガイアの架空の生き物で、魔族により実験的に作りだされた存在。リデル姫に忠誠を誓う騎士であるという虚構の記憶を植えつけられており、姫を探している。登場:メインストーリー 第二話〜


ラ行


ライ (Lye)
ベルクと組んで傭兵業を行っている男性。登場:レーテのクエスト「かえらぬ傭兵」

ライト (Wright)
サハギンのブブゼラ様に宝物をとられた子どもたちのうちの男の子の片方。登場:シャトラのクエスト「サハギンを追え!」

ラケル (Rachel)
アルジェーンに住む女の子。もと病弱だったため過保護な両親に外で遊ぶことを禁じられていた。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

リ・ガイア (ReGaia)
地球の星核をクローンしたさいに生まれたガイアの複製体。ガイアが地球人類の集合的無意識を抽出して滅びを与えたように、レーベンエルベの集合知を学習しその「祈り」に応えるために死季の解決を目指し、両世界を知る主人公アインを導く。登場:メインストーリー 第一話〜最終話

リーザ (Liza)
ネメアの孤児院の料理担当の女性。登場:ネメアのクエスト「消えた送り主」

リスレット (Lislette)
レーテの村に住む女性。村の枯れ井戸から夜な夜な不気味な声がすることで不安がっている。登場:レーテのクエスト「井戸の呼び声」

リデル姫 (Princess Liddell)
ルイス城に住む王女ということになっている架空の人物。ユニコーンが敬愛する主君。『ルイス城通信号外』では「ルイス姫」と呼ばれている。登場:メインストーリー 第三話 閑話〜第四話、キャラクターストーリー ユニコーン

リフォーム屋 (Renovator)
レーテの村でリフォーム屋を営む青年。どんな仕事も一晩あれば片づける。登場:メインストーリー 第一話〜

リリア (Lilia)
ジェドとともに駆け落ちをした女性。出身はアルジェーン。登場:シャトラのクエスト「逃避の結末」「再会の約束」

リン (Lyn)
→ シェリー

ルイス王 (King Lewis)
ルイス城に住む国王ということになっている架空の人物。登場:メインストーリー 第四話

ルイス姫
→ リデル姫

ルリ (Lugli)
シャトラに住む女の子。シェリーの妹。登場:ネメアのクエスト「海を見たい娘」「蘇る記憶」「桜のいたずら」

レヴァン (Levan)
ロデアムと幼馴染の傭兵。登場:アルジェーンのクエスト「彼女が積み上げてきたもの」

レオ (Leo)
ネメアの孤児院の男の子。年長でみんなの兄貴分として振る舞っているが、夜にこっそり抜け出しては魔物に殺された両親の墓に参っている。登場:ネメアのクエスト「二つのヒミツ」

レオン
→ マスター

レギア (Regia)
魔族。花粉症の治療薬を研究して旅をしている。登場:ネメアのクエスト「隠れ薬師の長い旅」

レザノア (Rezanoa)
ネメアの孤児院の先生。登場:ネメアのクエスト「いたずらの真相」

レベンタール夫妻 (Lebenthal)
アリアの両親。いずれも星核研究の第一人者だったが、娘が魂を失ったあと最終的にガイアダストの解決を断念、殻の楽園構想を進める途上で臨界実験により殉死した。登場:メインストーリー 第六話〜第八話

ログ (Rog)
シャトラの灯台守トルガの息子。登場:シャトラのクエスト「失われた灯火」「灯台守の罪」「未来を照らす灯火」

ロズニー (Rosny)
イスティナの古巣である暗殺組織の女性。登場:キャラクターストーリー イスティナ

ロックス (Rox)
サハギンのブブゼラ様に宝物をとられた子どもたちのうちの男の子の片方。登場:シャトラのクエスト「サハギンを追え!」

ロット
ブラッカの弟分で、トリーとは双子。故人。登場:キャラクターストーリー ブラッカ

ロデアム (Rodeum)
商人。レヴァンとは幼馴染で、行商のさいはいつも彼に護衛を依頼している。登場:アルジェーンのクエスト「彼女が積み上げてきたもの」

ロニヤ (Roniya)
ラケルの母。登場:アルジェーンのクエスト「親の心 子の心」

samedi 3 décembre 2022

ハーヴェステラ資料翻訳集成 (0) 序論

『ハーヴェステラ』の作中には、本編には関わらないが明らかに作品世界の謎を解く鍵と目される、全部で 12 の文書が世界各地で発見される。これからそれらについて、日本語版のみならず各国語版とも比較しながら詳しく読み解いていくつもりだが——これは以前に行った「シンオウ神話翻訳集成」シリーズと同様の試みである——、その前段階として本稿ではざっと全体からわかることについて、いささか散漫ではあるが思いつくまま考察めいたことをしたためて序論に代えたい。

〔関連記事:ハーヴェステラ人物名鑑 (作中に現れるすべての個人名を集め、それぞれに短い解説を付した)。〕

貴重品欄の並びに沿って掲げるとそれら 12 件の文書のタイトルは
  • 『蒼き髪の挟まった手記』
  • 『棺の国 調査記録・前』
  • 『棺の国 調査記録・中』
  • 『棺の国 調査記録・後』
  • 楽園の終わり 一篇「永遠」
  • 『楽園の終わり 十二篇「増殖」』
  • 楽園の終わり 四十一篇「遡行」
  • 『楽園の終わり 七十五篇「無限」』
  • 『楽園の終わり 百十八篇「失楽」』
  • 『楽園の遺書の断片』
  • 『幼年体の確保報告』
  • 『プロジェクト凍結のお知らせ』
である。ただし入手できる順番——つまり制作者によって意図された情報開示の順番——にこれを直せば、まず『楽園の終わり』の 12, 41, 75, 1、次に『棺の国』が中・前・後の順、それから『蒼き髪』、『遺書の断片』、『凍結のお知らせ』、最後がラストダンジョンで手に入る『幼年体の確保報告』となる。いま挙げられなかった『楽園の終わり』118 は爆弾 Lv. 2 さえあればいつとりにいっても構わないが、敵のレベルを考えればだいたい『凍結のお知らせ』の前か後に入るだろう。


文書の成立順の特定


するとなぜ入手順と並び順が大きく異なっているかがひとつの問題となる。『楽園の終わり』の順番は番号順、『棺の国』も前中後のほうが見やすいから直したというのはわかりやすいが、それだけなら『楽園の終わり』1, 12, 41, 75, 118、『棺の国』前・中・後、そして『蒼き髪』など残りの文書という順番でも構わないはずだ。

そうではなく『蒼き髪』を最初に出して次に『棺の国』、それから『楽園の終わり』と逆転しているのはなぜかと考えてみると、2 通りの理由が想定しうる。それは 12 の文書をぜんぶ集めきったあとにこの順に読めば全貌の理解が容易になる、そういう体系的な順番に整理したのだということ。そしていま言ったことと無関係ではないのだが、おおよそそれが作中における文書の成立順とも一致しているのだと思われる。文書の書かれた年代の順番に読めばわかりやすいというのはもっともなことだろう。実際にはこの 2 つの理由の折衷だと思われる。

もう少し詳しく流れを見ていこう。最後の『凍結のお知らせ』によれば、『楽園の終わり』という説話集は高次人工知能ソフィア——これはのちの季石教団の教母マザーと同じ名前だが——によってアベルのために編纂されたものである。その内容が「アベル種に対する不適切な情報開示」になるおそれがあるということでプロジェクトは差し止められたということだから、当然まず『楽園の終わり』が成ったあとにそれを検閲した結果『凍結のお知らせ』に至ることになる。

『楽園の遺書の断片』とあわせて考えれば明らかに、『楽園の終わり』は実際に起こった複数の (おそらく 118 ヶ所の) 楽園の崩壊の事実をもとに、それを寓話の形に仕立てたものである。そのさいソフィアがもとにしたデータが『遺書の断片』そのものであるかは不明だが、魔族の勤勉さを考えると記録じたいはおそらく楽園の崩壊が発覚したあと遅滞なく行われたであろうから、これに限っては成立順と貴重品欄の並びが反転していると考えられる。

さて『楽園の終わり』のなかでも第一篇に着目すると、ここには明らかに『蒼き髪の挟まった手記』の内容と顕著な符合が見られる。『手記』じたいはその蒼い髪の女性当人による証言と考えるのが素直なので、その人が生きて字を書けた時期のものとみなさねばならない。それはむろん〈第 1 の楽園〉が崩壊するまえのことであって、彼女らの楽園の滅亡をもとに『楽園の終わり』1 が書かれたわけであるから、ここの前後関係はおのずから明らかである。

『手記』『棺の国』『楽園の終わり』を総合して考えれば、蒼い髪の女性を助けるために赤髪の青年が銀の林檎をもって楽園を巡る旅に出た、その途上で彼を指導者とする棺の国が成立していったという筋書きが見えてくる。総じてこれらは謎めいた文書であって、たとえば「銀の林檎」とは何物なのかといった不明な点は数多くあるが、いま言ったところの大枠の流れについては比較的明瞭に読みとれる。

『棺の国 調査記録』は、「棺」と呼ばれる謎の移動国家に興味をかきたてられて調査に出た、ある楽園の住人による記録である。この人は最終的に「棺」の長である赤髪の青年に接触し、彼から得た「銀の林檎」をもって出身の楽園に戻る。このことからわかるとおり、この文書は赤髪の青年が棺の国を組織したあと、まだ無事な楽園が残っていたころの記録なのであって、『手記』と『楽園の終わり』の中間の時点に位置づけられねばならない。

以上によって成立の時系列はほぼはっきりした。『蒼き髪の挟まった手記』『棺の国 調査記録』『楽園の遺書の断片』『楽園の終わり』『プロジェクト凍結のお知らせ』、この 5 つの成立順はこれで確定する。残されたのは『幼年体の確保報告』の位置づけだけであるが、じつはこれがかなりの難問なのである。


『幼年体の確保報告』という外れ値 (アウトライア)


『幼年体の確保報告』は形式的にはもっとも短い文書であって、内容としてもほかの文書からはほとんど独立している。「イヴ」という名前が『楽園の終わり』41, 118 と共通している——それを介して間接的に『蒼き髪』ともつながっている——以外には明示的な関連がまるでない。むしろこれは、メインストーリー第六話の星核螺旋研究所において明らかになったアリア意識喪失後の情報を補完し、それを『蒼き髪』へと接続していく役割をもっているのであろう。

したがって内容の点から見ればこれは全体の外側、つまりいちばん最後に置かれるほうが合理的でないかと思われる。そもそも『凍結のお知らせ』は『楽園の終わり』と直接的関係がある文書なのだから、『楽園の終わり』『遺書の断片』『凍結のお知らせ』はひとまとまりにされるほうが自然である。また入手順=ゲームの都合から言っても、『確保報告』は最後に手に入るアイテムであるから最後に置かれるのが自然である。にもかかわらず、あえて間に挟まる不自然な位置に置かれている理由はなんだろうか。体系順でも入手順でもない、それら両方に反してでもあえてここに並べられた理由とはなにか。

可能性としてはいくつか考えられる。まずこれまで論じきたったとおり、ほかの文書がおおよそ成立順に並んでいることと比べるなら、この『確保報告』も同じで、体系順より成立順が優先されたのだと考えれば全体に説明がつく。それはすなわち、『確保報告』はソフィアが『楽園の終わり』を完成させてから「寓話製造プロジェクト」が凍結されるまでのあいだの時点に成ったのだ、ということを示唆する。これは少々想像がゆきすぎかもしれないが、有意味な結論を導くという点で私としては本命の説である (後段で改めてその帰結を論じる)。

それともまた、このままでじつは体系順になっているのだという可能性もある。つまり私がまだ正しく諸文書を解釈できていないだけであって、じつは「イヴ型幼年体」云々は私の考える以上に密接に『楽園の終わり』と関連しているのかもしれない。もとより『楽園の終わり』とはイヴのために赤髪の青年=赤き蛇が策動する物語なのだから、関連が存することじたいは論をまたないのであるが。あるいはそもそも順番に深い意味などないのかもしれない。


イヴが月の揺り籠に届くまで


いずれにせよ『幼年体の確保報告』をほかの文書とあわせ読むことでわかる全貌を、全体のまとめがてらに解説してみよう。それはガイア滅亡後の最初の千年間——後述するように二千年間ではない——の失われた歴史の輪郭とも言いかえられる。

『手記』および『楽園の終わり』1 に見られるとおり、蒼き髪の乙女=イヴは不治の病に冒され余命いくばくもなかったが、彼女を救うため「永遠」を求めた赤髪の青年によって、「女王」=レッドクイーンに引きあわされた。その結果アリアとまったく同様に、魂とでも呼ぶべきものを星核に囚われて幼年体「チャイルドフッド 2」と化す。星核螺旋研究所での情報やアリアのキャラクターストーリーから見えてくるように、この状態になった「幼年体」は脳の動きがまったく停止したまま、体だけは生きつづけるらしい。

だが『楽園の終わり』118 にあるとおり、最終的に赤髪の青年=赤き蛇は求めていたものを見いだせずに終わり、「棺の国」は空中分解して 1 人となった彼は失意のなか「赫き霧」となって消える。そうなるまでのあいだイヴはおそらく、赤髪の青年が指導者を務める「棺の国」で庇護され存在を秘匿されていたのだと思われる。彼が研究者の手にみすみすイヴを委ねるとは思えないからだ。彼が消えてしまったあとはじめて発見されたイヴは「新たな幼年体」として「確保」された、それが『確保報告』なのであろう。ちなみに確保されたイヴが保存されている「オービタル・クレイドル」とは月の揺り籠の英名である。

ここで不審を抱いた読者もいるかもしれない。そもそも「棺の国」=月の揺り籠なのではないのか、そう考えれば赤髪の青年によるイヴの秘匿などという根拠のない想像を差し挟まずとも簡潔に解釈できるではないか、と。みずからこれらの文書を考察しようと試みた人ならいちどは思い至ったであろう発想である。

『棺の国 調査記録・前』によれば「彼の国は大地を東から西へと歩んでいく」とある。東から西に進むといえば、誰しも太陽や月を思い浮かべるはずだ。そして月の揺り籠に並んでいるカイン種人類の眠るポッドはたしかに棺桶を連想させるところがある。だから棺の国=月の揺り籠と考えてみれば、赤髪の青年はその長=揺り籠の管理者としてイヴ=チャイルドフッド 2 をポッドに収めた、この時点でただちに『確保報告』と相成った——ひょっとすると青年自身が報告者だったかもしれない——と考えれば流れとしては成立する。

だがそれはさまざまな点で諸文書の描写と食い違っている。まず棺の国の構成員は「ひとりひとりが棺をかついでおり、その有様はまるで幽鬼の葬列のようだ」と言われている。ポッド=棺のなかにすっぽり入っていることを「担いでいる」と称するのははなはだ無理があるし、「葬列」というのも長い列をなして行進するものであるから、縦横に並び全体で円形をなして静止している月の揺り籠の様子には少々似つかわしくない。

『調査記録・中』で「“棺” の目的は楽園の記録の調査」と言われていることともそぐわない。ポッドを保管する目的の揺り籠が外部に手出しをする理由などないからだ。作中でも月の揺り籠には直下の幻影城から軌道エレベータを起動して昇っていったとおり、揺り籠のほうから積極的に外部と行き来する手段は確認できない。同じく『中』によれば、棺の国は楽園を訪れるごとに「新たな棺を葬列に加え」ているが、このようないわば新国民を順次増やしていくというところも揺り籠らしくない。揺り籠に新たな搭乗員を募る余裕などないであろう。このように、閉鎖的で静的な揺り籠に対して、棺の国はある意味積極的で拡張的であるという、顕著な対照がある。

もうひとつダメ押しに、『楽園の終わり』118 において「棺の列はやがてほつれていき、果てには赤髪の青年だけが残っていた」と言われている。これに対しレーベンエルベの管理のもとカイン種人類を未来のために保存している揺り籠のポッドであれば、勝手にばらばらになって解散してしまうなどという事態は考えられない (揺り籠は複数あるとガイストが言っていたが、そのいずれであっても)。だいいち人間である彼が揺り籠の「長」として起きて活動しているということからして奇妙ではないか。以上のとおり、棺の国を月の揺り籠とみなすことは不可能である。

というわけで私は、『確保報告』の記すとおりイヴが月の揺り籠に確保されるまでのあいだ、赤髪の青年はどこかべつの場所で彼女を秘密裏に隠していたのであろうと考えざるをえなかったのである。もともと彼ら 2 人が「女王」に会いにいったあとの足どりは知られていない。棺の国がどんなものかは結局わからないが、移動国家の長というくらいだから匿うことじたいは可能だったであろう。話は前後するが、じつはこの秘匿という発想はもともと先述の成立順についての考えから導かれたものなのである。

『調査記録・後』において棺の国の長である青年は、「成立時期を考慮すると計算が合わない」ほど異常に若いと言われている。こう表現されるからには少なくとも数十年か、ひょっとすると数百年前から棺の国は存在しているのであろう。そして幼年体イヴはそれだけのあいだ彼のもとで匿われていた。そう考えることが成立順とも符合していることを次に見ていこう。


諸文書の成立時期と、凍結された『楽園の終わり』がなぜ出回っているか


ガイアが滅びてから作中の現在に至るまでには二千年の時が流れているわけだが、諸文書の成立時期はもっと絞りこむことができる。なぜなら『楽園の終わり』はソフィアがアベル種のために編纂したもの、つまり魔族が埋めこんだシーズライト 4 機の働きによってリ・ガイアにアベル種人類が発生してから、ソフィアがリ・ガイアに墜落するまでのあいだに準備されたものだからである。

シュリカのキャラクターストーリーで語られるとおり、ソフィアはその後なんらかの事故によって軌道上から落下、リ・ガイアに墜落して季石教団の教母マザーとなる運びとなるが、それがおよそ千年前という話である。この時点で彼女は衛星軌道上のレーベンエルベとは連絡が切れ、聖堂地下の開かずの間に籠もり独自にマザーとしてアベル種人類を教化していく。ルイス城の魔族が配り制御しているはずのモノライトの使用を季石教団が差し止めようとするとか、季石教団の司祭の不祥事をルイス城通信が後追いで糊塗するとかいった、ちぐはぐな動きから魔族とマザーは連携がとれていないことがわかるからだ。

したがって時系列としてはこうなる。千年以上前、ソフィアがまだ軌道上にいたころ古代アベルのために『楽園の終わり』を編纂するが、上位権限によりプロジェクトが凍結される。『お知らせ』には「処置:人工知能ソフィアの凍結」と書かれているとおり、これは寓話集編纂事業のみならずソフィアという AI そのものが停止されたのである。だがちょうど千年ほど前、なんらかの事故によってソフィアはリ・ガイアに落下、魔族からは行方不明となる。いちばん新しい『お知らせ』がそれより前ということは、結局すべての文書が千年以上前のものであることになる。

ちなみにこの事故でレーベンエルベのシステムと物理的につながりが切れたおかげでソフィアの知能は復活したのだと考えられる。アベル種に広めるべきでないとして差し止められたはずの『楽園の終わり』が結局リ・ガイアに流布されているのはこういうわけで理解できる。おそらくソフィアが寓話製造プロジェクトごと凍結されるとき、どうせ凍結される彼女にはプロジェクトの処遇までいちいち通知されなかったのであろう。『楽園の終わり』を広めるな、という命令を受けることはなかったわけである。受けたのに通信途絶をいいことに自己判断で勝手に変更した、と想定するよりはこのほうがもっともらしいだろう。

現在私たちがもっている、最終的にリ・ガイアに流布された『楽園の終わり』が、千年以上前に作られた当初のままかどうかは定かでない。マザー=ソフィアは野蛮だったアベル種に道徳を教え啓蒙するために、改めて地球の諸宗教をベースに『汎化聖典』を編纂したが、説話集『楽園の終わり』のほうもその季石教団の教えに沿う形で微調整したということは十分に考えられるだろう。しかしともかくそれはわかりようのないことなので話を戻そう。


文書の配列の意図


最古の『蒼き髪』と次の『調査記録』、そして『調査記録』と『楽園の終わり』とのあいだには、それぞれ数十年から数百年の隔たりがあるはずである。前者についてはさきにも触れたとおり、『蒼き髪』のあと赤髪の青年は楽園を巡る旅を始め「棺の国」を組織するに至り、『調査記録』では異常に若いと評されているから。後者については『調査記録』のあとすべての楽園が滅びて「棺の国」が解散、赤髪の青年が絶望して消えてしまうほどの時間、さらにそれが判明して『楽園の終わり』としてまとめられるだけの時間を要するからである。

ここでだいぶまえの話に戻るのだが、赤髪の青年は消えてしまうまでのあいだ「イヴ」を秘密裏に保護していたはずだ、というのが私の考えであった。そうするとこの秘匿が解けたタイミングで『幼年体の確保報告』が来ることになる。『楽園の終わり』118 が事実とすれば、赤き蛇=赤髪の青年が消え去るとともに最後の楽園も終わる、それはとりもなおさず (断片となるまえの)『楽園の遺書』が完成した瞬間でもある。楽園の滅亡が記録されるのとイヴが確保されるのは事実上同時のことである。

これにて全体の成立順は『蒼き髪』『棺の国 調査記録』『楽園の遺書』『幼年体の確保報告』『楽園の終わり』『凍結のお知らせ』とすべて判明したことになった。そのうえでゲーム中の貴重品欄の表示順は、話を理解しやすいように『楽園の終わり』だけを 2 つまえに移動させた、なんとなれば『遺書』と『確保報告』はそれぞれ『楽園の終わり』12 と 41, 118 をさきに見せておいたほうが効果的だから、というところで並びの意味は解決ということにしたい。


より大きな謎の数々


以上で私は資料とストーリーから読みとれることをもとに、なるべく不確かな想像を加えることなく確実にわかることだけを論じるようにしてきた。唯一重大な仮定に頼ったのは、『確保報告』の位置を決定するために「青年はイヴを秘匿していたはずだ」とした部分だけであり、それ以外については作中の情報から文字どおり読みとれることとその論理的帰結のみを基礎としたつもりである。

しかるにこのようなただでさえ謎めいた文書群を相手にするにあたって、堅実な論理だけで突き止められることはあまり多くない。たとえば私は「棺の国」が月の揺り籠ではないということを論証したが、では「棺の国」とはなんなのかという、もっと大きく興味深い謎についてはなんら答えを与えられないでいる。赤髪の青年とは、蒼き髪の乙女とは誰か、銀の林檎とは何物でそれが「絶望」だというのはいかなる意味か、といった疑問についてもしかり。これが論理の限界であって、いっそう真実に迫るには想像力が必要とされる——、そう認めざるをえない (もっともこれで作中の情報を余すところなく使いきったというには時期尚早なので、なお突き詰められる部分はありそうだが)。

そうした疑問について語りたい思いつきはまだまだあるのだが、それにしてもこの記事はすでにかなり長くなってしまった。このあたりでいったん筆を擱いて、次回の記事から改めて、ひとつひとつの文書についてより細密な検討を始めることにしたい。