昨日公開した 1–2 章の続き。底本は C. C. Rafn (1832), s. 7–13. なおコメントで私が「原語」というとき、翻訳元であるデンマーク語と、そのさらなる原文である古アイスランド語のいずれを指す場合もあるが、つづりから明らかなので混乱はないだろう。
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3. そのすぐあとにシグルズルは天幕にいる彼の弟のところに〔戻って〕きて、言った:「銀をもってこい、いまや売買はまとまった」。「一瞬まえに* 俺は兄さんに渡したじゃないか」と彼は答えた。「いいや」とシグルズルは言った、「俺はそれを受けとっていない」。
* なんだか誇張めいているがれっきとした直訳 (D. for et Öieblik siden = E. lit. an eye-blink ago)。より自然に訳すなら「(ほんの) ついさっき」とでもするか。
そこで彼らはこの件をめぐって喧嘩になり、そののちにそのことを王に言った。するとほかの者たちはもちろん彼も悟った、〔銀入りの〕袋は盗み去られたのだと。そこで王は、この件が解明されるまえにはいかなる船も出航してはならないように、出発に対する禁止を行った。そのことを多く〔の人々〕が大きな不便であると考えた、それは長引くと市が終わったあとになってもそうであったので。
ノルド人たちはそこで審議のために彼らのあいだで集会をもった。そこにスラーンドゥルが出席しており、こう話した:「ここにいる人々はたいそう解決に困っているようだ」と彼は言った。「ではおまえはなにか解決策を知っているのか」と彼らは彼に尋ねた。「俺はたしかに知っている」と彼は答えた。「ではおまえの解決策を持って前に出てくれ」と彼らは続けた。「俺は無駄にそれをしたくない」と彼は答えた。
彼らは尋ねた、なにを彼は要求しているのかと。彼は答えた:「あなたがたのうちおのおのが俺に 1 オーレ* の銀をくれるべきだ」。彼らはそれは多いと言った。だがしかしながら妥協が成り、おのおのが彼に即座に半オーレを手渡し、さらにもし彼の提案が望ましい成果を生んだならばもう半オーレを約束した。
ノルド人たちはそこで審議のために彼らのあいだで集会をもった。そこにスラーンドゥルが出席しており、こう話した:「ここにいる人々はたいそう解決に困っているようだ」と彼は言った。「ではおまえはなにか解決策を知っているのか」と彼らは彼に尋ねた。「俺はたしかに知っている」と彼は答えた。「ではおまえの解決策を持って前に出てくれ」と彼らは続けた。「俺は無駄にそれをしたくない」と彼は答えた。
彼らは尋ねた、なにを彼は要求しているのかと。彼は答えた:「あなたがたのうちおのおのが俺に 1 オーレ* の銀をくれるべきだ」。彼らはそれは多いと言った。だがしかしながら妥協が成り、おのおのが彼に即座に半オーレを手渡し、さらにもし彼の提案が望ましい成果を生んだならばもう半オーレを約束した。
* デンマーク語 Øre (クローネの 100 分の 1 の補助通貨) をそのまま訳したが、古アイスランド語原文では eyrir で銀 1 オンスのことという (E. V. Gordon, A. R. Taylor (rev.), An Introduction to Old Norse)。それは貴金属の計量に用いられる金衡オンス (トロイオンス) のことだとすれば約 31.1 グラム。一方 Faulkes の英訳の脚注によれば eyrir は 10 世紀には約 25 グラム半であった。
その翌日、王は会議を催し、そのさい彼の決定を表明した。それはこの窃盗についての確かな情報がもたらされないうちは、何人も決してそこから離れ去ることはまかりならないということであった。
そのとき若い男が歩み出た。頭の毛はだらりと長く伸びて赤毛で、顔にはそばかすがありたいそう荒々しかった;彼は話しはじめ、こう話した:「ここにいる人々はたいそう解決に困っているようだ」と彼は言った。王の相談役は尋ねた、それではどんな解決策を彼は見いだしたのかと。
「これが俺の解決策だ」と彼は答えた、「ここに来ているめいめいが、王が要求するだけ多くの銀を前に置く。そしてその金がひとつところに集められたとき、人が被った〔ぶんの〕損害が補償されるが、王は残りのものを名誉の贈り物* として保有する。俺は知っている、彼〔=王〕はご自分の取り分をうまく用いられるであろうと。そうすると民衆はあたかも固く築かれた** かのようにここにいつづけ、ここに集まってきているこれほど多数の人々の大きな損害になる必要はない〔」〕。
そのとき若い男が歩み出た。頭の毛はだらりと長く伸びて赤毛で、顔にはそばかすがありたいそう荒々しかった;彼は話しはじめ、こう話した:「ここにいる人々はたいそう解決に困っているようだ」と彼は言った。王の相談役は尋ねた、それではどんな解決策を彼は見いだしたのかと。
「これが俺の解決策だ」と彼は答えた、「ここに来ているめいめいが、王が要求するだけ多くの銀を前に置く。そしてその金がひとつところに集められたとき、人が被った〔ぶんの〕損害が補償されるが、王は残りのものを名誉の贈り物* として保有する。俺は知っている、彼〔=王〕はご自分の取り分をうまく用いられるであろうと。そうすると民衆はあたかも固く築かれた** かのようにここにいつづけ、ここに集まってきているこれほど多数の人々の大きな損害になる必要はない〔」〕。
* 原語 Hædersskjenk (現代語では -skænk になる)、Mohnike の独訳では Ehrengeschenk。次の段落の同じ語句は原語 Æresskjenk だが、これは Ehrengeschenk によりよく対応し同義であろう。
** デンマーク語 fastmurede、しかし G. festgebannt「(呪文や魔法で) 呪縛された」、OIcel. veðrfastir「(悪) 天候に妨げられた」(Powell の英訳で ‘weather-bound’)。
〔このセリフはどうも全体的に意味不明だし、後述する莫大な報酬に値するほどのたいした解決案にも思われないのでまったくの誤訳かも。機会があれば再検討したい。〕
** デンマーク語 fastmurede、しかし G. festgebannt「(呪文や魔法で) 呪縛された」、OIcel. veðrfastir「(悪) 天候に妨げられた」(Powell の英訳で ‘weather-bound’)。
〔このセリフはどうも全体的に意味不明だし、後述する莫大な報酬に値するほどのたいした解決案にも思われないのでまったくの誤訳かも。機会があれば再検討したい。〕
この提案はただちに全体の賛成を勝ちとった。そして船長たちは言った、ここでぐずぐずして大きな損害になるよりは、喜んで金を出し王に名誉の贈り物とすると。そこで決定がなされ、金が集められ、それは相当な額になった。
すぐあとに彼らは船の大部分を海に出して去った。それから王はふたたび会議を催し、相当の多額の金が観察された。同じ〔金〕によっていまや最初の兄弟の損害は償われた;その次に王は彼の〔伴の〕男たちと話した、この大きな富によってなにがなされるべきであるかと。
そこで 1 人の男が話しはじめて、言った:「陛下* はこの解決策を与えた者になにが値すると思われますか」。それで彼らは気づいた、いま王のまえに立っている同じ若者が、その解決策を与えた者であったと。
すぐあとに彼らは船の大部分を海に出して去った。それから王はふたたび会議を催し、相当の多額の金が観察された。同じ〔金〕によっていまや最初の兄弟の損害は償われた;その次に王は彼の〔伴の〕男たちと話した、この大きな富によってなにがなされるべきであるかと。
そこで 1 人の男が話しはじめて、言った:「陛下* はこの解決策を与えた者になにが値すると思われますか」。それで彼らは気づいた、いま王のまえに立っている同じ若者が、その解決策を与えた者であったと。
* 原文はただ「あなたに eder」、しかし OIcel. は「わが主人よ」„herra minn!“ との呼びかけで始めており、私訳はこれに近い。
そこでハラルドゥル王は言った〔:*〕「このすべての財が 2 つの等しい部分に分けられ〔=2 等分され〕、一方の半分はわが〔伴の〕男たちがとり、もう半分はその後いまいちど 2 つの部分に分けられ、この若者がこれらの半分のうち一方の部分をとり、しかしてもう一方の部分は私が求めたい〔」〕。
* 底本デンマーク語の箇所ではセミコロンだがこれは誤植で、古アイスランド語・フェーロー語の対応箇所ではコロン。
スラーンドゥルはこのために美しく丁重な言葉を用いて王に感謝した、そしてスラーンドゥルに割りあてられた富は並外れて大きかったので、はっきりした数字を算出するのが困難なほどであった。
ハラルドゥル王は出航し、そしてそこにいた多くの民衆もみな同じように〔出航〕した。スラーンドゥルは彼が伴ってきていたノルウェー人の商人たちとともにノルウェーへ向かった。彼らは彼に留保していたところの金を支払った。
彼はそこで大きくてよい貨物船を買い、彼がこの旅で得たところの相当額の財をそれに積んだ。この船によっていまや彼はフェーロー諸島へと舵をとった、そして彼の全財産をもって無事にたどりついたのである;春には住居をガータに用意し、そしてなお富に不足はしていなかった*。
ハラルドゥル王は出航し、そしてそこにいた多くの民衆もみな同じように〔出航〕した。スラーンドゥルは彼が伴ってきていたノルウェー人の商人たちとともにノルウェーへ向かった。彼らは彼に留保していたところの金を支払った。
彼はそこで大きくてよい貨物船を買い、彼がこの旅で得たところの相当額の財をそれに積んだ。この船によっていまや彼はフェーロー諸島へと舵をとった、そして彼の全財産をもって無事にたどりついたのである;春には住居をガータに用意し、そしてなお富に不足はしていなかった*。
* 最近の Faulkes の英訳ではこの文までで第 3 章が終わる。また最新のフェーロー語訳 (Bjarni Niclasen, 1995) も同様。おそらくより最近の編集になる刊本の古アイスランド語テクストがそうなっているのだろう。次の文はたしかに部分的にはすでに書かれたことの繰りかえしに見えるし、あとはひどい悪口雑言である。
スラーンドゥルは体の大きな男で、髪は赤く、赤いひげで、顔にはそばかすがあり荒々しく、心は陰気で、悪賢くすべての陰謀の第一人者であり、ひねくれていて人々に対し邪悪、自分より立場が上の者に対しては甘い言葉を話したが、いつも心のなかでは不実であった。
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