vendredi 26 août 2022

伝エラトステネス『星座論』(3) へびつかい座・さそり座・うしかい座

伝エラトステネス『星座論』摘要 Epitome Catasterismorum の翻訳。この記事では 6. へびつかい座、7. さそり座、8. うしかい座の 3 章を扱う。

目次リンク:第 1 回を参照のこと。


6. Ὀφιοῦχος〔へびつかい座〕


Οὗτός ἐστιν ὁ ἐπὶ Σκορπίου ἑστηκώς, ἔχων ἐν ἀμφοτέραις χερσὶ τὸν ὄφιν. λέγεται δὲ εἶναι Ἀσκληπιός, ὅν Ζεύς, χαριζόμενος Ἀπόλλωνι, εἰς τὰ ἄστρα ἀνήγαγεν. τοῦτον τέχνῃ ἰατρικῇ χρώμενον, ὡς καὶ τοὺς ἤδη τεθνηκότας ἐγείρειν, ἐν οἷς καὶ Ἱππόλυτον ἔσχατον τοῦ Θησέως. καὶ τῶν θεῶν δυσχερῶς τοῦτο φερόντων, εἰ αἱ τιμαὶ καταλυθήσονται αὐτῶν, τηλικαῦτα ἔργα Ἀσκληπιοῦ ἐπιτελοῦντος, λέγεται τὸν Δία ὀργισθέντα κεραυνοβολῆσαι τὴν οἰκίαν αὐτοῦ, εἶτα διὰ τὸν Ἀπόλλωνα τοῦτον εἰς τὰ ἄστρα ἀναγαγεῖν· ἔχει δὲ ἐπιφάνειαν ἱκανήν, ἐπὶ τοῦ μεγίστου ἄστρου, λέγω δὴ τοῦ Σκορπίου ὤν, εὐσήμῳ τῷ τύπῳ φαινόμενος.

最終文でサントーニに倣い τοῦ Σκορπίου の次に ὤν を加えた。また彼女は第 3 文頭 τοῦτον τέχνῃ ἰατρικῇ χρώμενον の対格も属格 τούτου ... χρωμένου に改めている、すなわちこの箇所を絶対属格句とみなしている。私としてもそちらのほうが読みやすく文の流れがよくなると思うが、アルマ版でも読めないことはないので旧状を維持した。

これは蠍〔=さそり座〕の上に立っている男で、両手で蛇をつかんでいる。アスクレーピオスであると言われており、彼のことをゼウスが、アポローンに対する厚意として、星々のなかへ上げた。彼〔=アスクレーピオス〕は、すでに死んでいた者たちをも蘇らせるような医術を用いており、その (蘇らされた者の) なかでテーセウスの (息子) ヒッポリュトスが最後となった。しかし神々は、アスクレーピオスがあまりに偉大な仕事を成しとげているゆえに、もし彼らへの尊敬が毀損されるとすればそれは耐えがたいと考えていたので、ゼウスは激怒して彼〔=アスクレーピオス〕の家を雷撃した、それからアポローンのために彼を星々のなかへ上げたと言われている。(この星座は) 最大の星々すなわち蠍〔=さそり座〕の上にあって、十分な視認性があるので、その形がやすやすと見られる。

医神アスクレーピオスはアポローンの息子であり、本文でアポローンへの配慮と 2 度言っているのは息子を殺された彼への慰めあるいは償いという意味である。

この章でアルマ師の仏訳には大きな訳し抜けがある。私の訳で示すと「しかし神々は……考えていたので」がまるまる抜けており、いきなりゼウスが理由なしに雷撃を敢行しているのである。もうひとつ細かいことを言うと、アスクレーピオスの家をではなく直接 le tua「彼を殺した」と訳されている。


7. Σκορπίος〔さそり座〕


Οὗτος διὰ τὸ μέγεθος εἰς δύο δωδεκατημόρια διαιρεῖται· καὶ τὸ μὲν ἐπέχουσιν αἱ χηλαί, θάτερον δὲ τὸ σῶμα καὶ τὸ κέντρον· τοῦτόν φασιν ἐποίησεν Ἄρτεμις ἀναδοθῆναι τῆς κολώνης τῆς Χίου νήσου, καὶ τὸν Ὠρίωνα πλῆξαι, καὶ οὕτως ἀποθανεῖν, ἐπειδὴ ἐν κυνηγεσίῳ ἀκόσμως αὐτὴν ἐβιάσατο· ὃν Ζεὺς ἐν τοῖς λαμπροῖς ἔθηκε τῶν ἀστέρων, ἵν’ εἰδῶσιν οἱ ἐπιγινόμενοι ἄνθρωποι τὴν ἰσχύν τε αὐτοῦ καὶ τὴν δύναμιν.

誤字と思われる Κολόνης をサントーニに従い κολώνης に改めた。彼女はまたこの τῆς κολώνης の前に前置詞 ἐκ を補っている。

これはその巨大さゆえに (黄道の) 十二分割部 2 つぶんにわたって分かたれている。その一方を両鋏が、また他方を胴体と (尻尾の) 針が占めている。言うところでは、これをしてアルテミスがキオス島の丘より飛び出さしめ、オーリーオーンをば刺さしめて、かくて (彼は) 死した、なんとなれば (彼は) 犬猟の最中に破廉恥にも彼女を暴行しようとしたからである。これ〔=蠍〕をゼウスは星々のなかでも (もっとも) 明るいところに置いた。(将来に) 生まれくる人間たちがそれの力と強さとを知るようにと。

アルマ師の仏訳はキオス島をクレタ島と勘違いしているのだが、オーリーオーンがクレタ島の蠍に殺されたとする伝承もたしかにあるようだ (とはいえその場合アルテミスを怒らせた理由は別のこと、もしくはそもそも彼女とは関係がなくふつうに長生きしたうえでそうなったらしい。32. オリオン座の項目、およびシャーデヴァルト『星のギリシア神話』邦訳 34 頁を参照)。ちなみにキオス島はオーリーオーンが別件で訪れたことがある:そこのオイノピオーン王の娘メロペーに彼は求婚したもしくは襲った、ために王は怒って彼を盲目にして放逐したという話である。

また最後の文では、蠍の功績を讃えて言ったように読める「力と強さと」という語句を、仏訳はどういうわけか qualités nuisibles「有害な性質」と訳している。


8. Ἀρκτοφύλαξ〔熊の守り手=うしかい座〕


Περὶ τούτου λέγεται, ὅτι Ἀρκάς ἐστιν ἐκ Καλλιστοῦς καὶ Διὸς γεγονώς, ὃν κατακόψας Λυκάων, ἐξένισε, τὸν Δία παραθεὶς ἐπὶ τράπεζαν· ὅθεν ἐκείνην μὲν ἀνατρέπει· ἀφ’ οὗ ἡ Τραπεζοὺς καλεῖται πόλις. τὴν δὲ οἰκίαν αὐτοῦ κεραυνοῖ, τῆς ὠμότητος αὐτὸν μυσαχθείς· τὸν δὲ Ἀρκάδα πάλιν συμπλάσας ἔθηκεν ἄρτιον, καὶ ἐν τοῖς ἄστροις ἀνήγαγεν.

2 つめのコンマのあと、サントーニに従い関係代名詞 ἣν を ὃν に改めた。前者だとカリストーを切り刻んだことになるが、続く話と整合しない。

これについてはこう言われている。彼〔=うしかい座となったアルカス〕はカリストーとゼウスから生まれた息子であり、彼をリュカーオーンが切り刻んで、ゼウスを饗応して食卓 [トラペザ] の上に並べられた。そこで (ゼウスは怒って) それをひっくりかえした。このことからトラペズースの町はそう呼ばれている。そして (ゼウスは) その残酷さゆえに彼〔=リュカーオーン〕を忌み嫌って、彼の家を雷で撃った。そしてアルカスをふたたび寄せ集めて形作り五体満足となし、星々のあいだに上げてやった。

1. おおぐま座で見たとおりリュカーオーンはカリストーの父、したがってアルカスの祖父にあたる。この物語をこの星座の縁起として採用する場合、星座の描くものは熊と化した母カリストーとともにいる狩人アルカスということになる。

一方うしかい座と呼ばれるその見かたもすでにホメーロスが知っていたものであって、Βοώτης の訳語である。その場合牛飼いはイーアシオーンという名の、デーメーテール女神に愛された男であって、大きな星座のほうは熊ではなく車——牛に牽かせている犂もしくは穀物を載せた車——と見られることになる。

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