松平千秋・国原吉之助『
新ラテン文法』(東洋出版,1992) の羅文和訳問題の解答を順次作成していきます.週 2 課のペースを予定しています.
第 III 課,練習問題 4
第 IV 課,練習問題 6
第 V 課,練習問題 8
第 VI 課,練習問題 10
お気づきの点があればコメント欄またはメールにてお知らせください.
各問の表示は,1 段めに問題のラテン文,2 段めにはその各語が名詞類 (名詞・代名詞・形容詞など) ならば性・数・格,動詞ならば (法・態・) 時制・人称および数という文法的情報を示しており,3 段めは語義でこれはグロッサリーにある訳語を基準としています.略記法等の凡例は各文書の 1 ページめの脚注に記しています.この形式は言語学に言うグロスにヒントを得て自分なりに工夫をしたもので今後なお改善の余地はありますが,訳文を作るにあたって最低限の情報をまとめたものであって,私の手もとの勉強ノートでもまったく同じように書いています (現物は必要に応じて 4 段めがあり,記憶に確信のない語について見出し語形と語形変化をメモしています).
古典語の初学者が陥りやすい誤りは,和訳にさいして各単語の意味を辞書で引き,せいぜいその語義と名詞の性だけをメモして訳文を作ろうとしてしまうことです.しばしば言われることですが,現代語に比べてもことにラテン語やギリシア語という文法的に緻密な言語は,辞書的語義をそのまま横並びに羅列すれば文意がとれるというようなものではなく,語形変化が不可欠の情報を担っています.見た瞬間に性・数・格ないし時制と人称が言えるという自信があるのでもないかぎり,
語形変化についての確認をしていないノートは古典語のノート失格であって,これをしていない人は例外なくとんちんかんな訳文,すなわち訳の日本語の巧拙以前の問題として格や人称から絶対にそのようにはとれないというような文をでっちあげます (たとえば第 III 課 5 の « Agricolae estis » を「農夫がいて」としてしまうがごとき).ここに公表する私の解答例が,最終的な訳文だけではなくこうして自分のノートを再現する面倒な形をとるのは,ふだんなかなか意識されない語学の勉強の方法について注意を促したいがためです.
また,第 3 段に語義は教科書巻末のグロッサリーにあげてある訳語を原則とするという点も注意に値します.一部の初学者が陥りやすい誤りのもうひとつが,立派な辞書を引いてしまうことです.これも先生がたが口を酸っぱくして言われることですが,古典語の教科書にはかならず単語集がついており,少なくとも
初級段階で独立した辞書を引く必要はありません.練習問題の和訳をするのに必要な訳語はかならず語彙の欄に載っているはずのものです (これから並行して
ギリシア語の解答例も作っていきますが,そちらの教科書がこの点で不十分なのは不都合なところです).したがってここで訳文作成の方針は,単語欄に載っている語義をなるべく逸脱せず,またこなれた意訳は避け,文意を損なわない範囲で可能なかぎり原文の語順に従うことを第一とします.
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〔2022 年 4 月 8 日追記〕当時これと併載して進めていた「
水谷『古典ギリシア語初歩』練習問題解答 (旧 4)」の記事にも追記した内容の繰りかえしになりますが、昨年の秋からなぜかこれらラテン語・ギリシア語の解答ファイルの閲覧共有が、一部のかたにおいてうまくいかないという問題が生じはじめたことをきっかけのひとつとして、改めて最初から解答を作りなおそうという思いを抱くようになりました。
その産物として水谷ギリシア語のほうはすでに、過去に取り扱ったぶんと同等以上の範囲を
新規記事として掲載しており、それを補填として過去の PDF ファイルは正式に公開を終了することを決定しました。こちらの松平・国原ラテン語についても、いずれは同様に新版を書くつもりでおり、勇み足ではありますがファイルの公開は現時点で終了することにしました。遠くないうちにできればと願っておりますが、しばらくのあいだ
松平・国原の解答は当ブログにはないということで、不便をおかけすることをご容赦ください。
教科書指定などでどうしても本書の解答を必要としているかたがたにはどうにもできないのですが、それ以外の一般の学習者のためには、以下の代表的な 3 種の教科書の解答を最後まで完成させてありますので、お役に立てるところもあろうかと思います。