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mercredi 17 avril 2019

エルヴダーレン語入門 (2)

出典および凡例については第 1 回のエントリを参照のこと。Nyström och Sapir 第 1 課の続きから。


5. Fem


Og wen ir eð-dar? ではあれは何ですか?

Eð-dar ir įe grån, eð. あれはモミの木です。grån f. = gran c.「モミ、トウヒ、エゾマツ」〔Steensland 式では gron〕。こういう動植物の名前の翻訳は辞書で一対一の単語対応を見ても難しく、間違いかもしれないが、いまはたいした問題ではないので無精させていただく。似た事例のケーススタディとして新谷 (2017)「アンデルセンの Grantræet はモミの木ではない?」を参照のこと。

Ukin ir ą̊ i ferg, ą̊-dar grånę? そのモミの木はどんな色ですか? ukin = vilken, vem, hurdan「どの、どれ、どんな種類の」。grånę は既知形〔この変化は第 8 課〕。3. の an-dar rattjin や 4. の an-dar erin にも見られるように、指示詞 ą̊-dar がつくと既知形になるようだ。

Ą̊ ir fel gryön. それは緑色です。gryön = grön「緑色の」。

Grånär irå gryöner. モミの木は緑色です。grånär は複数主格既知形。irå 現在 3 人称複数 < wårå。gryöner は一致によって女性複数主格形〔形容詞の変化は第 7 課〕。ドイツ語・オランダ語・フリジア語などの西ゲルマン語を除き、叙述用法 (述語位置、i predikativ (självständig) ställning) の形容詞は性数の一致をするから、スウェーデン語話者には自明の事柄であって文法的説明がない。

6. Sjäks


Jär sir an iet aus åv noger. ここではある種の家が見られます。jär sir an = här ser man「ここでは見られる (=人は見る)」〔男性単数の 3 人称代名詞 an は不定の主語にもなる。スウェーデン語では han と man を区別〕、iet aus åv noger = något slags hus (逐語的には ett hus av något)「なんらかの種類の家」。aus n. = hus n. の対応はエルヴダーレン語で語頭の h- が規則的に消えたためで、代名詞 an = han, ą̊ = hon も同様の例。

An dug it sją̊ åv ukk eð-dar auseð ir byggt. その家がなんの素材で建てられているのかわかりません (=見ることができない)。an は前文と同じく不定主語。dug 現在単数? < dugå = duga「する、適する」〔ここでは kunna「できる」の意〕、åv ukk(u) = av vad, av vilket material「何から、どんな素材から」。

Fråmånað ausę ir eð ien kall og įe kelingg. 家のまえに男と女がいます。fråmånað = framför, före「〜の前に」、kall m. = man, karl「男」、kelingg f. = kvinna「女」。ausę は単数与格既知形または複数主・対格既知形、ここでは前者〔前置詞の与格支配〕。動詞 ir が男女 2 人 (英語なら there are) ではなく eð に一致して単数であるのは、スウェーデン語 det är とパラレルとして理解できるか。

Sir du wen dier djärå? 彼らが何をしているかわかりますか? du pron.2sg. = du「君、あなた」、dier pron.3pl. = de「彼ら」。

Ja, dier knupå min ymsu. ええ、いろんなことで忙しくしていますね。knupå = pyssla「(med 〜で) 忙しい」、min = med〔この前置詞は単語欄に出ていないが本当にスウェーデン語話者が推測できるのだろうか? 第 2 課の文法解説 (与格支配の前置詞) に出る〕、ymsu = allt möjligt, både det ena och det andra「あらゆること、あれやこれや」。

Kalln kumb min watusilån og bjär wattneð. 男性は (桶をぶら下げた) 天秤棒を担いで水を運んでいます。watusilå (古く watusili) m. = ok n.「くびき (英 yoke)」、bjär wattneð = bär vatten〔wattneð 既知形 < wattn「水」は意味上は不定なのに定形標識がつく例。Sapir (2006), p. 25〕。

Keliendję stand nest jäldem. 女性は火のそばに立っています。stand 単数現在? < standa = stå「立っている」、nest = hos, vid、jäld m. = eld c.「火」。

Yvyr ånum aindjer eð ien ketil. その (=火の) 上には鍋がかけられています。yvyr ånum = över den m.「それの上に」〔yvyr など若干の場所の前置詞は与格および対格支配で、その使いわけはドイツ語などと同様。代名詞は男性名詞 jäld を受けたもの。ånum は an の与格、第 3 課〕、aindjer 単数現在 < aindja = hänga「吊るす」、ketil m. = gryta c., kittel c.「鍋」。

7. Sju


Eð-dar ir ien byönn. これは熊です。byönn m. = björn c.「熊」。

Byönn bruker wakken i aprill. 熊は 4 月に目覚めるもの (習性) です。bruka = bruka はここでは「〜する習慣である」の意。wakken = vakna、aprill m. = april。

An kuogär autyr åyvę. (それは) 巣穴から外を窺っています。kuogär 単数現在 < kuogå = titta「見る (look, glance, gaze, stare)」、autyr = utantill; utur, ur、åyve n. = ide n.「冬眠の巣穴」〔Steensland 式では åive。語尾 -ę は与格既知形で、「その熊の」という所有が前提されている。中性名詞の格変化は第 6 課〕。

Brukum sją̊ ferdär etter åm, men int so kringgt sos luokkallär bruka. (私たちは) 熊の足跡を見ることができるでしょうが、ロカ村の人々 (がそうしている) ほど頻繁にではありません。brukum 現在 1 人称複数 < bruka〔1・2 人称複数では代名詞主語が省略されることがある。Sapir (2006), p. 30〕、ferd f. = färd; (fot)spår「旅;足跡 (efter 〜の)」、etter = efter, efteråt、åm = honom「彼に、それに」〔an の与格で ånum の別形、第 3 課〕、sos = som, såsom, liksom、luokkallär = lokakarlarna, folket i byn Loka「ロカ村の人々」。

Isn-jär byönn jät ien fisk. この熊は魚を食べています。fisk m. = fisk c.「魚」〔黙って使われているが主格と同形の対格。対格の説明は第 3 課〕。

8. Åtta


Og wen ir eð-dar? それからあれは何ですか?

Eð-dar ir iet baur, eð. あれは倉庫です。baur n. = härbre, visthusbod「倉庫、貯蔵所」。

Og war stand eð-dar baureð? ではその倉庫はどこに立っているのですか。

Nų stand eð iem ą̊ gardem. いまは家の庭に立っています。nų = nu、iem = hem「家 (で)」〔中性名詞および副詞〕、ą̊ gardem = på gården〔gard m. = gård c.「庭」。前置詞 ą̊ は与格支配〕。

Avið it apt eð dar olltiett? いつもはそれはそこにないのですか。avið apt = har ni haft〔avið は åvå の現在 2 複、apt は同じく完了分詞〕。

Näi, för ar eð stendeð auti buðum. ええ、以前は店の外に立っていました。ar 現在単数 < åvå、stendeð = stått、auti = ute, uti、buð f. = affär, bod。否定疑問への同意なので näi「いいえ」は日本語の肯定。

Ir eð iet gåmålt baur? 古い倉庫なのですか? gåmålt は属詞位置で baur に一致し中性単数形。

Ja, eð-dar baureð ir allt liuotgåmålt, eð. ええ、その倉庫は本当に恐ろしく古いものです。liuot- = väldigt「ひどく、とてつもなく (強調)」。

Irið i baurę kringgt? あなたがたはよくその倉庫にいる (来る) のですか。irið 現在 2 人称複数 < wårå。

Näi, irum it dar noð kringgt. いいえ、そう頻繁にはそこにいません (来ません)。irum 現在 1 人称複数 < wårå、it noð kringgt = inte så ofta, sällan「頻繁ではない、めったにない」。

文法


§ 男性名詞、未知形と既知形。

A. M1a (唇音で終わる語):ien kripp — krippin「子ども」、ien wep — wepin

B. M1b (k または子音 + g で終わる語):ien korg — kordjin、ien påyk — påytjin。〔前舌音 i の影響で破擦音になり、正書法にも反映される。〕

C. M1c (歯音・歯茎音・そり舌音で終わる語) と M3f. (母音で終わる語):ien kall — kalln、ien såmår — såmårn、ien uott — uottn、ien eri — erin。〔これら歯音のあとの語末 -n は成節的 stavelsebildande、本書 s. 7。〕

§ 代名詞。人称代名詞、単数 ig, du, an, ą̊, eð; 複数 wįð, ið, dier。〔wįð と ið は省略されることがあり、じっさい上の 7–8. でもいちども現れていない。〕

指示代名詞 isn, isų, ittað(-jär)「これ」、an-dar, ą̊-dar, eð-dar「それ」。

不定冠詞 ien byönn, įe kulla, iet aus。

§ 動詞の現在形

A1 グループ (dalska, spilå)。エルヴダーレン語では非常にしばしば、動詞の主要形 (temaformer) をその不定形から知ることができない。〔エルヴダーレン語の動詞の主要形とは、不定形・現在単数・過去単数・完了分詞の 4 形。〕

スウェーデン語と同じく、エルヴダーレン語には強変化動詞と弱変化動詞がある。弱変化動詞 (A) はここでは 5 つのグループに分けられる。これらのグループのうちもっとも大きいのは A1 の dalska/spilå グループである。dalska 型の動詞は長音節、spilå 型は短音節である。主に次のことが言える:
  • 長音節動詞は語尾 -a (不定形), -er (現在単数形)
  • 短音節動詞は語尾 -å (不定形), -är (現在単数形)
  • 現在 3 人称複数形は不定形と同一。dalska > dier dalska

A1 グループの動詞の現在形は以下の規則に従って活用する:

dalska 型。ig, du, an dalsker, (wįð) dalskum, (ið) dalsk, dier dalska「tala dalmål エルヴダーレン語を話す」。bruka「bruka 使う;〜する習慣である;〜するつもりである」、ietta「heta 〜という名前である」もこの型。

spilå 型。ig, du, an spilär, spilum, spil, dier spilå「spela 遊ぶ」。kuogå「titta 見る」、luvå「lova 約束する、誓う」もこの型。

不規則動詞。重要な動詞 wårå「vara 〜である」と åvå「ha 持っている」は以下のように活用する。wårå: ig, du, an ir, irum, irið, dier irå。åvå: ig, du, an ar, amme, avið, dier åvå。

mardi 16 avril 2019

エルヴダーレン語入門 (1)

スウェーデンのダーラナ県北西部、エルヴダーレン市で数千人によって話されている、エルヴダーレン語 (övdalsk, スウェーデン語 älvdalska, 英語 Elfdalian; エルフダール語とも) という言語がある。伝統的にはスウェーデン語のいち方言と考えられてきたが、スウェーデン語との相互理解可能性はなく、近年ではひとつの言語とみなされてきている。

ゲルマン祖語・ノルド祖語・古ノルド語まではあったが現代のアイスランド語やスウェーデン語などでは総じて失われている鼻母音をいまも保存していることや、これまたアイスランド語・フェーロー語以外では失われている主格・対格・与格の区別を保っていること (属格もいちおうあるもののもはや生産的ではない、この点はフェーロー語と同じ) などのアルカイスム (古拙性) がとくに注目されている興味深い言語である。世界でもっとも遅くまでルーン文字が現用されていた言語でもある (ダーラナ・ルーン、英 Dalecarlian runes)。

ここでは Gunnar Nyström och Yair Sapir, Introduktion till älvdalska, ²2015 に沿ってこの言語の文法を学んでいくことにしよう。テキストは DiVA Portal にて PDF 全文と付属の音声ファイルとがオープンアクセスとなっている (しかし音声はかならずしもテキストと一致していない。おそらく 2005 年の初版とのあいだに異同があるのだろう)。

原文はスウェーデン語による解説であり、スウェーデン語の読者にとって容易に推定されるエルヴダーレン語の単語や文法事項については説明が省かれている。それゆえ以下に記すものはテキストの忠実な翻訳ではなく、日本語の読者にとって必要と思われたこと (そしてついでにスウェーデン語の勉強になること) を適宜補ったノートというべきものである。

正直に言ってこのテキストの解説はかなり不十分であり、その課で (あるいはテキスト全体のどこにも) 説明されていない事項も無数に出てくるので、たとえスウェーデン語の母語感覚があったとしても満足のゆく理解は難しいと思われる (ヨーロッパの語学入門書にありがちな、母語の類推でなんとなくわかったまま進めていくスタイル。弊害も多いが、人工的でなくまともな内容のある文を序盤から出せるという利点がある)。

したがって以下の日本語部分は括弧〔・〕の有無を問わず大半が私じしんのコメントである。そのさい Steensland のエルヴダーレン語–スウェーデン語辞典 Älvdalsk ordbok を頻繁に活用したことと、時に応じて Lars Levander (1909), Älvdalsmålet i Dalarna など若干の文献を参照したことを記しておく。

重大な注意として、エルヴダーレン語の正書法はいまだ確立されておらず、エルヴダーレン語言語評議会 Råðdjärum によるものと、2 人の著者 Steensland および Åkerberg それぞれのもの (いずれの人物にもこの言語の辞書や文法書などの著作があり、そこで採用されている) との合計 3 つが並立しているという状況のようである。ここで扱っているのは Råðdjärum 式だが上掲のオンライン辞書は Steensland 式なので使いかたには習熟を要する。

また、エルヴダーレン語には時代に応じて 3 期の区分が行われている。すなわち 20 世紀初頭まで使われており上掲 Levander (1909) の記述した古典エルヴダーレン語 klassisk älvdalska、おおよそ 1920–50 年生まれの話者が話す格変化を若干失った伝統的エルヴダーレン語 traditionell älvdalska、そしてそれ以降の世代の話者の現代エルヴダーレン語 modern älvdalska の 3 つである (時期区分については Garbacz (2010), ‘Word Order in Övdalian’, esp. pp. 35f.)。

しかし現在盛んな再活性化 revitalisering の運動のただなかにあるこの言語では、古風な特徴をとどめた古典エルヴダーレン語に大きな敬意が払われており、Nyström och Sapir で概説されているのも、Bo Westling 訳『星の王子さま』Lisslprinsn (初版 2007 年、改訂版 2015 年) が書かれているのもこの文法なのである。百年以上まえの Levander (1985 年にリプリントされた) をいまも参考にしうるのはこのゆえである。


第 1 課 (Fuost leksiuon)


1. Iett


Wen ir ittað-jär? これは何ですか? wen = vad「何」、ittað-jär n. = det här「これ (中性)」〔男性 isn-jär, 女性 isų-jär とともに 3 性を区別する〕。ir は be 動詞 wårå の現在単数形。

Ittað-jär ir įe kulla. これは少女です。kulla f. = flicka c.「少女」。įe は女性の不定冠詞。

Ur ietter isų-jär kullą? この少女はなんという名前ですか? ur = hur「どのように」〔スウェーデン語では vad heter と「何」を使う〕、ietter 現在単数 < ietta = heta「という名前である」。kullą は kulla の既知形〔弱変化女性名詞の既知形は第 3 課〕。

Ą̊ ietter Emma. 彼女はエンマといいます。ą̊ pron.f.sg. = hon, den f.「彼女、それ (女性名詞)」。

Ur gåmål ir ą̊? 彼女は何歳ですか。gåmål = gammal「古い、歳をとった」。

Eð ir it guott witå. それは簡単にはわかりません。eð pron.n.sg. = det「それ」、it = inte「〜ない」、guott 中性単数 < guoð = god「よい」、witå = veta「知る」。単語欄にこの全体が det är inte lätt att veta とあるのでそれを訳したが、エルヴダーレン語文を直訳すれば it is not good [to] know.  英語の to にあたる不定詞標識 te = att が省略されている (Sapir (2006), ‘Elfdalian, the Vernacular of Övdaln’, p. 30 を見よ)。

Ą̊ ir ellåv år, truor ig. 彼女は 11 歳だと思います。ellåv = elva「11」、år n. = år n.「年」、truor 単数現在 < truo = tro「思う、信じる」〔この動詞の活用は第 4 課〕、ig pron. = jag「私」。

Ą̊ sir aut so ny̨ögd og glað. 彼女はとても喜んでいてうれしそうに見えます。sir 単数現在 < sją̊ = se「見る」、aut = ut〔sją̊ aut = se ut「に見える」。sją̊ は Steensland 式の綴字法では sjǫ〕、so = så、ny̨ögd = nöjd「満足した、喜んだ (nöja の過去分詞)」、og = och、glað = glad「うれしい」。

Emma baðer i sju’mm kringgt. エンマはよく湖で (?) 水浴びをします。baðer < baða = bada「入浴する、水浴びする」、kringgt = ofta「しばしば」。sju’mm がわからず、sju m. = sjö c.「湖」の複数与格かと推測〔第 9 課 tjyr の複数与格 tjy’mm に比するか。Levander, s. 23 には sju の完全なパラダイムも載っているが、彼はたいへんややこしい文字表記を用いているため判断がつかない〕。

2. Twå


Wen ir ittað-jär? これは何ですか?

Ittað-jär ir ien påyk. これは少年です。påyk m. = pojke c.「少年」〔Steensland 式では påik。この語は明らかにフィンランド語 poika からの借用である〕。ien は男性の不定冠詞。

Wen bruker isn-jär påytjin djärå? この少年は何をしようとしているのですか? bruker 単数現在 < bruka = använda, bruka「使う、利用する」、しかしここでは英 will の意か。påytjin は påyk の既知形〔k > tj の発音変化はフェーロー語と同じだが、綴り字に反映されるところが向こうと違っている〕。djärå = göra, arbete「する、行う」〔Steensland 式では dşärå、Åkerberg 式では dşäro〕。

An bruker renn ą̊ skrikkskuo’mm. 彼はスケートをするつもりです。an pron.m.sg. = han, den m.「彼、それ (男性名詞)」、renn ą̊ skrikkskuo’mm = åka skridskor「スケートをする」〔ą̊ は与格支配の前置詞、この -’mm も複数与格語尾か〕。

Ur ietter eð an ar ą̊ nevum? 彼が手に持っている (つけている?) ものはなんという名前ですか? ar 単数現在 < åvå = ha「持っている」、ą̊ nevum = på händerna「(両) 手に」〔nevi (若い世代で nevå) m. = hand c.「手」〕。

Eð ir fel uottär. 手袋ですよ。fel = väl, ju, nog、uottär 複数主格既知形 < uott = vante c.「手袋」〔一見わかりづらいが PG. *wantuz > ON. vǫttr, vantr に遡る同源語。älv. および isl. vöttur, før. vøttur では nt > tt の同化が起こったため。男性複数形の説明は第 4 課〕。

3. Tri


Wen ir ittað-jär för iet krytyr? これは何の動物ですか? krytyr n. = djur n., kreatur n.「動物」。iet は中性の不定冠詞。för は調べがつかず、しかし会話の流れから見てこのようにしかとれないだろう。

Ittað-jär ir ien rakke. これは犬です。rakke m. = hund「犬」。

An-dar rattjin ir it stur, an itjä. その犬は大きくはありません。an-dar m. = den där m.「それ、その」〔同様に女性 ą̊-dar, 中性 eð-dar〕、rattjin は rakke の既知形。itjä も否定詞で、ここでは代名詞と否定詞が繰りかえされている (このような反復については Sapir 前掲論文 p. 30 に説明がある)。

Kanstji eð ir ien wep? おそらくこれは仔犬では? kanstji = kanske「たぶん、おそらく」、wep m. = valp c.「仔犬;動物の仔」。

An swisker rumpun, dar nogär kumb. 誰かが近づけば尻尾を振ります。swisk(a) rumpun = vifta med svansen「尻尾を振る」〔rumpa f. = svans c.「尻尾」〕、dar = när「〜するとき」、nogär = någon、kumb 単数現在 < kumå = komma「来る」〔kumå の活用は第 8 課。しかし、ここではなく後掲 6. の会話には kumb = kommer の注釈がある〕。

4. Fyra


Og wen ir eð-dar för krytyr? それからあれは何の動物ですか? やはり för の意味がとれず。しかもなぜ不定冠詞 iet が消えたのか?

Eð-dar ir ien eri. それは兎です。eri m. = hare c.「野兎」。

An ir it stur an eld! それはぜんぜん大きくありません。eld = eller, heller。2 つめの an は不明、代名詞の反復ならばほかの例ではコンマが前置されているが……?

War sit an-dar erin noger? その兎はどこに (座って) いますか? war = var「どこ」、sit 単数現在? < sittja, sitta = sitta「座っている、いる」、noger = någonstans「どこか」?

An sit fel nið ą̊ bokkam, i grasį. 野原に (座って) いますよ、茂みのなかに。nið ą̊ bokkam = på marken「地面に、野原に」〔bokka m. = mark c.「野原」〕、i grasį = i gräset「草のなかに」〔gras n. = gräs n.「草」。grasį は単数与格既知形〕。

An jät graseð, an. それは草を食べます。jät 単数現在 < jätå = äta「食べる」。graseð は gras の単数対格既知形〔中性名詞の語形変化は第 6 課〕。

Itjä ir erin slaik i ferg olltiett? 野兎はいつもこのような色をしていないのではありませんか? itjä = inte, icke〔Steensland 式では itşä〕、erin ir slaik i ferg = haren har sådan färg〔slaik = sådan「その (この) ような」、ferga f. = färg c.「色」〕、olltiett = alltid, hela tiden。

Näi, slaik ir an, dar såmårn ir. ええ、夏にはこんなふうなのです。dar såmårn ir = på sommaren (逐語的には när sommaren är)「夏に (=夏であるとき)」。

Um wittern ir an wait. 冬には白いです。witter m. = vinter c.「冬」〔um wittern = på vintern; um wittrą = på vintrarna〕、wait = vit「白い」。

Du lär fel witå ur erir uppa? 兎がどのように跳ねるかはよくご存知ですね? lär 単数現在? < lära = lära「教える;学ぶ」、erir = harar(na) 複数未知形および既知形、uppa = hoppa「跳ねる」。