Sigrid Valfells and James E. Cathey, Old Icelandic: An Introductory Course, Oxford UP, 1981 をもとにした勉強用の抄訳 abridged translation です.
第 2 課 Lesson II
1. 文法 Grammar
(A) 名詞と形容詞の複数主格
(1) 名詞の複数主格:多くの男性・女性名詞は幹母音 -a-, -i-, -u- で特徴づけられ,これは特定の屈折形で最初の語幹音節 (「根」‘root’) と格語尾のあいだに現れる.「根」と屈折語尾とのあいだの幹母音を見せる形のひとつが複数主格である.
男性・女性名詞の複数種格語尾は -r である.それゆえ víkingr (víking-a-) の複数主格は víkingar で,幹母音が単数と複数を区別している.同様に (gest-i-)「客 guest」の単数主格は gestr で複数主格は gestir である.女性名詞の例は (veig-a-)「飲料,醸造酒 beverage, brew」で単数主格 veig, 複数主格 veigar. 中性名詞語幹は幹母音をもたず,中性複数主格語尾はゼロである.それゆえ hús や skip は単数でも複数でもある.
(2) 形容詞の複数主格:形容詞の複数主格語尾は,名詞の語尾と見かけは似るが,形容詞語幹は幹母音によって特徴づけられない.男性複数主格語尾はつねに -ir, 女性複数主格語尾はつねに -ar, 中性複数主格語尾はつねにゼロである.例:góðir víkingar, góðir gestir, góðar veigar, góð hús.
(3) a と ǫ の交替:幹母音 a と ǫ は名詞・形容詞の特定の女性・中性主格で交替する.(marg-) は女性単数主格と中性複数主格で mǫrg であり,(land-) は複数主格で lǫnd である.この交替については第 3 課でまた論じる.
(B) 動詞の 3 人称複数語尾
動詞の 3 人称複数語尾は -a. やはり be 動詞は不規則で,直説法現在 3 人称複数は eru.
(C) 加音のある語尾 Augmented Stems
語幹音節 (「根」) は幹末に j または v をもつことがある:(hersj-a-)「首領 chieftain」,(frægj-)「有名な」,(miðj-)「中間の,中央の」,(nýj-)「新しい」,(ǫlv-)「エール ale」.j-加音は,a または u が直接それに後続する特別な条件下で現れる:(miðj-) 男性複数主格 miðir, 女性 miðjar, 中性 mið. しかし (hersj-a-) の複数主格 hersar では j-加音は現れないし,(ǫlv-) の単数および複数主格も ǫl で v-加音がない.詳細は次の課.
(D) 語順
(1) 2 つの句または文が接続されるときは通常の語順がふつうである.両方が同じ動詞を含むときには,並列した構文で削除されることがある:‘Jarlar konungs eru margir, en frægir víkingar eru gestir hans.’ ‘Hús þeira eru hátimbruð ok salir konungs stórir.’
接続された構文において通常の語順の規則に対する重要な例外は,ok「と,そして」の場合に起こる.2 つの文が ok によって接続されるとき,この接続詞には直接第 2 文の動詞が後続する:‘Frægir víkingar eru gestir hans ok fœra þeir honum góðar gjafar.’ ‘Hús þeira eru hátimbruð ok (eru) salir konungs stórir.’
(2) 階級や地位を示す名詞のような,単一であるかあいまいさがない指示対象をもつ若干の名詞は,ふつう定冠詞をとらない:konungr「王 the king」,sól「太陽 the sun」.一般に,定冠詞は英語よりずっと使われない.所有表現では主部名詞は定冠詞を伴わない:jarlar konungs「王の伯爵たち the earls of the king」.属格におかれた名詞は指示対象の性質によって定冠詞をとることもとらないこともある:konungr Englands「イングランドの王」,konungr landsins「その国の王」〔訳注:あとで学ぶことだが,land-s-ins の -ins が単数属格の定形を表す語尾である.この形態は現代アイスランド語でも同様である〕.
3. 氷文英訳 (和訳) Text
〔新出の名詞の性はなるべく明記します.数および格とくに主格はしばしば明らかなので省略します.2 度出てくる接続詞 en は,語彙欄に ‘but’ とだけ載っているので逆説の「が」と訳していますが,いずれも不自然なので,むしろたとえばロシア語の а くらいのたんなる対比と思ってよいのかもしれません〕
Norskir víkingar eru djarfir ok sterkir. ノルウェーのヴァイキング [男複] は大胆かつ強い.
Norskir víkingar eru djarfir ok sterkir. ノルウェーのヴァイキング [男複] は大胆かつ強い.
Vápn þeira eru sverð, spjót, ok skjǫldr. 彼らの武具 [中] は剣 [中],槍 [中],盾 [男単] である〔中性では単複同形である:本文 A.1〕.
Hǫll konungs er hátimbruð ok salir konungs stórir. 王 [男単属] の広間 [男] は天井が高く,王の部屋 [男複] は広い〔本文 D.2 に konungs の形はあるが,単数属格の語尾は正式には第 7 課〕.
Borð ok bekkir eru húsbúnaðr þar, en langeldar brenna á miðju gólfi. テーブル [女単] と長椅子 [男複] は家具 [男単] でそこにあるが〔=家具 (調度品) はテーブルと長椅子があり?〕,長い火 [男複] が床 [中単与] の中央 [中単与] で燃えている〔前置詞 á は与格支配で,単数与格の語尾は第 3 課〕.
Jarlar konungs eru margir, en ríkir hersar ok frægir víkingar eru gestir hans ok fœra honum góðar gjafar. 王の伯爵 [男複] は多い [男複] が,有力な首領 [男複] と有名なヴァイキング [男複] は彼の客 [男複] で彼によい贈り物 [女複対] をもってくる〔女複対は複主と同形:第 6 課〕.
Matr þeira er ostr ok brauð, fuglar ok fiskar. 彼らの食べもの [男単] はチーズ [男単] とパン [中単],鳥 [男複] と魚 [男複] である.
Mjǫðr ok aðrar veigar eru drykkir þeirra. 蜂蜜酒 [男単] とその他 [女複主] の飲料 [女複主] は彼らの飲みもの [男複] である.
Mǫrg skáld koma til konungs ok kveða hátt ok vel. 多くの [中複] 詩人 [中複] が王 [男単属] のところへ来て,高く上手に朗唱する〔Mǫrg の基底形は (marg-) であり,a と ǫ が交替している:本文 A.3〕.
Konungr þakkar þeim kvæði þeirra ok allir drekka ok eru glaðir. 王は彼らに彼らの詩 [中複対] を感謝し,全員 [男複] は飲み喜ぶ〔Þakka「感謝する to thank」は与格の人に対格の事柄について感謝する〕.
〔2. 語彙,4. ドリル,5. 英文氷訳,は省略〕
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