samedi 25 avril 2015

Collins『教会ラテン語入門』第 1 課

John F. Collins, A Primer of Ecclesiastical Latin, The Catholic University of America Press, 1985 をもとにまとめた勉強メモを少しずつ残していくことにする.非営利の覚え書きとはいえ著作権・翻訳権等の問題が気にかかること,また現実的な作業量を勘案して,原文にある記述の多くを割愛し要約した抄訳である.必要に応じて原書をあわせて参照されたい.

編集方針.古典期のラテン語と同じ事柄はしばしば省略するが (箇条書きの番号が飛ぶのはそれを表している),忘れがちと思われる事項や,省略しすぎると古典期とどこまで同じなのかわかりにくい場合などはあえて記すことがある.名詞の格変化の順は (アメリカの本なので) 主属与対奪である.語例の若干は省略する.各課の末尾の単語リストは省くが,Vocabulary Notes のうち興味のあるものを選んで抄録する.また練習問題も省くが,これには別売の解答集があるようである (訳者は未見).丸括弧 (  ) は原語の併記を除いて原文,角括弧 [  ] はすべて原文である.訳者による補足は亀甲括弧〔  〕で示す.主に誤訳による困難を避ける目的で,初出の専門用語および原語が推測しにくいと思われる箇所では多く原語を明示する.

編集方針の追記 [第 5 課].1) 本訳稿では voice の訳語は伝統的な教科書の用いる「相」ではなく「態」で統一する.「相」の語は aspect にあてたいためである.2) ultima, penult, antepenult の語は日本語にするとまどろっこしいので横文字のまま使う.



1. 教会ラテン語の発音


アルファベットは K と W がないほかは英語と同じで,24 文字.

a. 母音 母音は a, e, i, o, u とまれに y で,長短がある.

  1. y は母音字としてのみ用い,ギリシア語からの借用語に使う.発音は短い i.
  2. べつの母音が後続するか,h によって隔てられる母音は,通常短い.
b. 二重母音 よく見る二重母音は ae, au, oe, ui で,ae と oe は ē のように発音し,ui は英語 dwindle の -wi- のように.

c. 子音 b は英語と同様だが,s, t の前では p に近い.c は e, i, ae, oe の前でのみ英語の ch の音になる.g は e, i, y の前でのみ英語の j の音になる.s は無声.v は英語と同じ.z は dz.

  1. gn の組は ny の音.
  2. sc は e, i の前では sh の音.
  3. ti に母音が続くときは tsi と読む.ただし s, t, x が先行する場合は別.
  4. ph は f の音.ch と th は k, t.
d. 分節法 省略.
e. 音節の長短,アクセント 本文は省略.

  1. -nf-, -ns-, -nx-, -nct- および (しばしば) -gn- は先行する母音を長くする:īnferus, cōnsecrō, conjūnx, sānctus, dīgnus (ただし măgnus).


2. 名詞:概要


a. 性b. 数c. 格d. ラテン語の格体系e. 名詞の曲用 省略.



3. 第 1 変化名詞


第 1 変化名詞は単数属格が -ae で,語尾は -a, -ae, -ae, -am, -ā; -ae, -ārum, -īs, -ās, -īs.

  1. ラテン語に冠詞はないので,vīta は文脈に応じて ‘life, a life, the life’ のどれでもありうる.


4. 前置詞:概要


教会ラテン語の顕著な特徴は古典ラテン語よりも多く前置詞を使うことである.たとえば,間接目的語を表す与格は教会ラテン語でも使うが,相当する前置詞句を用いることもある.

a. 対格支配b. 奪格支配 省略.

c. 同伴の奪格 (ablative of accompaniment) cum と sine のこと.



語彙 (抄)


Doctrīna は動詞 doceō 「教える」から派生した名詞.

Ecclēsia はギリシア語からの借用で,人にも建物にも用いる.

前置詞 ā は ā, ab, abs の 3 つの形をもつ;ā は子音の前,ab は母音 (または h) の前,abs は t の前でのみ用いられる.

前置詞 ē は ē と ex の 2 つの形をもつ.ē は子音の前でのみ用いる;ex は母音または子音 (とくに p) の前で用いる.

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