samedi 25 avril 2015

Collins『教会ラテン語入門』第 5 課

John F. Collins, A Primer of Ecclesiastical Latin, The Catholic University of America Press, 1985 をもとにまとめた勉強メモ.諸注意は第 1 課の冒頭に書いたものを踏襲する.前回までのエントリ:第 1 課第 2 課第 3 課第 4 課

編集方針の追記.1) 本訳稿では voice の訳語は伝統的な教科書の用いる「相」ではなく「態」で統一する.「相」の語は aspect にあてたいためである.2) ultima, penult, antepenult の語は日本語にするとまどろっこしいので横文字のまま使う.



20. 動詞:概要


典型的な動詞形 (verb-form) は 5 つの特徴をもつ:人称 (person),数 (number),時制 (tense),法 (mood),態 (voice).

a. 人称b. 数 省略.

c. 時制:時間と相 動詞形は〔それが表す〕行為を過去か現在か未来かの時間 (time) のなかに置く.またそれは行為を時間の経過 (passage of time) との関係のなかに置く;これは相 (aspect) と呼ばれる.

英語には 3 つの時制がある:現在,過去,未来.各時制は 3 つの相をもつ:単純 (simple),進行 (progressive),完了 (completed).〔訳注:Completed は「完了 perfect」とは訳しわけるべきかもしれないが,「完結」では語弊を生じるし,よい案がなかった〕

ラテン語ではこれら 9 つの範疇はただ 6 つの時制形 tense-forms (そのおのおのが「時制 tense」と呼ばれる) で埋められる:現在 (present),未完了 (imperfect),未来 (future),完了 (perfect),過去完了 (pluperfect),未来完了 (future-perfect).
単純進行完了
現在videō [現在]videō [現在]vīdī [完了]
時間過去vīdī [完了]vidēbam [未完了]vīderam [過去完了]
未来vidēbō [未来]vidēbō [未来]vīderō [未来完了]

  1. 完了・過去完了・未来完了というのは正確な名づけである,というのもラテン語の perfectum は ‘completed’ を意味するので (pluperfect は plūs quam perfectum ‘more than completed’ からきている).
  2. 未完了も同様に適切な名前である,というのも imperfectum は ‘not completed’ を意味し,「(過去の) 進行」であるから.進行相はまた反復的 (repeated) ないし習慣的 (habitual) な行為をも含む.
  3. 現在と未来時制 (現在,未来,現在完了〔訳注:原文は perfect completed〕,未来完了) は主時制 (primary tenses),過去時制 (未完了,単純完了〔訳注:原文は perfect simple〕,過去完了) は副時制 (secondary tenses) と呼ばれる.
d. 法 英語とラテン語は 3 つの法 (すなわち表現の態度 attitude of expression) をもつ:直説法 (indicative),接続法 (subjunctive),命令法 (imperative).直説法の動詞形は事実を表現する.接続法の動詞形は不確実性 (contingency) や仮定的行為 (hypothetical action) を表す.命令法の動詞形は直接命令 (または依頼) を与える.
e. 態 英語とラテン語の動詞形は,能動 (active) と受動 (passive) の 2 つの態のどちらかをもつ.対格の直接目的語をとる他動詞だけが,能動だけでなく受動の形をもつことができる.

f. 主要形 英語とラテン語の動詞は,ありうるすべての形が正しく作られるためにはまず覚えねばならない基本的な形をもっている.これらは主要形 (principal part) と呼ばれる.

ラテン語では,各動詞は 4 つの主要形をもつ:videō, vidēre, vīdī, vīsus.  videō = 1 人称単数,現在直説法能動態.vidēre = 現在不定形能動態.vīdī = 1 人称単数,完了直説法能動態.vīsus = 完了受動分詞.

1. 定形 大部分の動詞形は文の述語として用いられうる.それらは特定の人称・数・時制・法・態をもち限定されているので定形 (finite form) と呼ばれる (たとえば分詞と不定詞は定形ではない).videō, vidēre, vīdī, vīsus の 1 つめと 3 つめの部分は定形であり,残りはそうでない.

2. 不定詞 不定詞 (infinitive) は動詞から作られその行為を伝える名詞とみなせる.この動詞的名詞 (verbal noun) は時制と態をもつが,人称・数・法では限定されていない.ラテン語には現在・完了・未来の不定詞がある.

3. 分詞 分詞 (participle) は動詞から作られその行為を伝える形容詞である.ラテン語には 4 通りの分詞がある:現在能動,完了受動,未来能動,未来受動.

4. 動名詞と動形容詞 動名詞 (gerund) は動詞から作られその動詞の行為を伝える名詞である.動形容詞 (gerundive) は未来受動分詞と同一である.

g. 4 つの活用 ラテン語の動詞は活用形の組によって分類される.ラテン語には 4 通りの活用 (conjugation) があり,おのおのは主要形の 2 番め (現在不定詞能動態) の penult の母音からすぐに同定できる.

第 1 活用:-ā- (laudāre).  第 2 活用:-ē- (monēre).  第 3 活用:-e- (dūcere).  第 4 活用:-ī- (audīre).



21. 現在幹の体系:3 つの時制


4 つの活用のどれでも,現在不定詞が現在・未完了・未来の 3 時制のもとになる.現在時制は現在幹 (present stem) + 人称語尾;未完了と未来時制は現在幹 + 時制を作る接尾辞 + 人称語尾.



22. 現在直説法能動態:第 1 活用


第 1 活用動詞の現在直説法能動態を作るには,現在不定詞から語尾 -re をとった現在幹に能動態の人称語尾 -ō, -s, -t; -mus, -tis, -nt を加える.

laudō, laudāre, laudāvī, laudātus 「ほめる」.現在不定詞 laudāre, 現在幹 laudā-.  活用形は以下:laudō, laudās, laudat; laudāmus, laudātis, laudant.



23. 語順


ラテン語では屈折形 (inflected form) が文中での機能を示すので,語順はしばしば強調と文体の問題である.若干の明らかな限界はある:たとえば前置詞はその格に先行する;属詞的 (attributive) 形容詞はその〔修飾する〕名詞の近くに置かれる.



24. 等位 (複文)


英語と同様,ラテン語でも等位接続詞 (coordinating conjunction) を用いて文が結びつき複文 (compound sentence) をなす.
Populus Deum laudat, nam bonus est. 「民衆は神を賞賛する,というのも神は善であるから」


25. 直接目的語としての対格


省略.



26. 間接目的語としての与格

Magister puerō praemium dat. 「教師は少年に報酬を与える」[dō, dare, dedī, datus, ‘与える’]


27. 分離の奪格


解放・分離・剥奪の〔を表す〕動詞のあとでは,分離の奪格 (ablative of separation) が現れることがあり,前置詞 (ab または ex) を伴ったり伴わなかったりする.
Dominus populum (ā) malō līberat. 「主を民を悪から解放する」[līberō, līberāre, līberāvī, līberātus ‘解放する’]


28. 動詞の複合:接頭辞としての前置詞


ラテン語の動詞の複合に関して,2 つの現象が注意されねばならない:1) 接頭辞としての前置詞のつづりの同化 (assimilate);2) 動詞における母音変化.

1) よく見られる複合される前置詞とその同化形は以下.ā (ab, abs): ā-, ab-, abs-, au-.  ad: a-, ac-, ad-, af-, ag-, al-, an-, ap-, ar-, as-, at-.  circum: circu-, circum-.  contrā: contrā-.  cum: co-, cō-, col-, com-, con-, cōn-, cor-.  : de-, dē-.  ē (ex): ē-, ef-, ex-.  in: i-, il-, im-, in-, īn-, ir-.  inter: intel-, inter-.  ob: o-, ob-, oc-, of-, op-, [obs >] os-.  per: pel-, per-.  post: post-.  prae: prae-, prē-.  prō: pro-, prō-.  sub: su-, sub-, suc-, suf-, sug-, sum-, sup-, sur-, [subs >] sus-.  super: super-.  trāns: trā-, trāns-.

注.分離不可の接頭辞 (前置詞としては用いられないもの) には re-, dis-, sē- がある.

2) 複合されるとき動詞の内部の母音が変化することがある.たとえば,sacrō, sacrāre, sacrāvī, sacrātus「聖化する,聖別する」が cum と複合されると cōnsecrō, cōnsecrāre, cōnsecrāvī, cōnsecrātus になる.

複合動詞の頻度は教会ラテン語の顕著な特徴をなす.しばしば複合は単純動詞をたんに強めた形であり,意味における差異は無視できる.sacrō と cōnsecrō は意味がほとんど違わない好例である.



29. 構文解析


省略.



語彙 (抄)


Dō と dōnō は基本的に「与える give」を意味する;dōnō は「許す forgive」を意味することがある.Dō は第 1 活用動詞ではあるが,一般的なパターンに従う主要形をもたない;とくに dare の短い -a- に注意せよ.

Rēgnō は rēgnum から作られた名詞由来動詞 (denominative verb) である.名詞由来動詞は大部分が名詞と形容詞から派生し,第 1 活用動詞の形を与える.

Documentum「例」は動詞 doceō「教える」の語根 (root) と接尾辞 -mentum「道具」から作られている.

Enim「なので」は nam よりも弱い;これは後置詞 (postpositive) であり,その節のはじめのほうに現れるが決して頭には立たない.

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