lundi 19 septembre 2022

マン島語入門 (3) §§16–24

Edmund Goodwin 編、Robert Thomson 改訂の First Lessons in Manx (初版 1901 年、改訂版 1965 年) によってマン島語 (マニン・ゲール語) の文法を勉強するノート。副読本として適宜 J. Kewley Draskau, Practical Manx (Liverpool U.P., 2008) および G. Broderick, A Handbook of Late Spoken Manx (De Gruyter, 1984–86) をも参考にした。

目次リンク:第 1 回を参照のこと。


16. be 動詞過去時制肯定形 va。va mee 私は〜だった、v’ou 君は〜だった、v’eh 彼は〜だった、v’ee 彼女は〜だった、va shin 私たちは〜だった、va shiu 君たちは〜だった、v’ad 彼らは〜だった。

17. 過去時制疑問形または従属形 row。row mee? 私は〜だったか、r’ou? または row uss? 君は〜だったか、row eh? 彼は〜だったか、row ee? 彼女は〜だったか、row shin?, row shiu?, row ad?

単純形の rou〔とあるが r’ou の脱字か?〕が row と取り違えられそうな場合はいつでも、強勢形の row uss で代用するのが望ましい。

18. 過去時制否定形。cha row mee 私は〜ではなかった、cha row uss, cha row eh, cha row ee, cha row shin, cha row shiu, cha row ad。

19. 過去時制否定疑問形。nagh row mee? 私は〜ではなかったか、nagh row uss?, nagh row eh?, nagh row ee?, nagh row shin?, nagh row shiu?, nagh row ad?

20. マン島語には「もっている (英 to have)」を表す特別の動詞はない (§111 も参照);所有を表すふつうの表現は ta cabbyl ec Juan で、これは文字どおりには「馬がジョンのところにある」で「ジョンは馬をもっている」の意味になる。同様に過去では va cabbyl ec Juan, cha row cabbyl ec Juan などとなる。

前置詞 ec の次に人称代名詞が来るとき、両者は結合して 1 語になる。その形については §141 を見よ〔というが、次の例でも明らかであろう〕。

Ta thie aym. 私は家をもっている。
Ta thie ayd. 君は家をもっている。
Ta thie echey. 彼は家をもっている。
Ta thie eck. 彼女は家をもっている。
Ta thie ain. 私たちは家をもっている。
Ta thie eu. 君たちは家をもっている。
Ta thie oc. 彼らは家をもっている。

〔英語では他動詞で「〜をもっている」と言うわけだが、日本語で考えれば「私には家がある」と言うのとまったく同様の構文であることに気づくだろう。〕

Vel eh ayd? 君はそれをもっているか。
T’eh echey. 彼はそれをもっている。
Ta fys aym. 私は知っている (=私には知識がある)。
Cha row fys eck. 彼女は知らなかった。

21. 質問と応答。マン島語には「はい」「いいえ」を表す単一の語はない。質問に答えるさい、「はい」にあたるのは動詞の裸の形を独立形 (たとえば ta, va) で質問の動詞と同じ時制で使うことである。「いいえ」の答えには cha+従属形を適切な時制で用いる (たとえば cha nel, cha row)。人称代名詞は用いられない。

例:Vel eh ec y thie? — Ta. / Cha nel.「彼は家にいるか。—はい/いいえ」。Row fys ayd? — Va. / Cha row.「君は知っていたか。—はい/いいえ」。Vel oo goll thie? — Ta. / Cha nel.「君は家に行くのか。—はい/いいえ」。Vel shiu fakin? — Ta.「君たちは見ているか。—はい」。

〔thie「家」は英語の home と同様、前置詞なしで「家へ」という意味になるようだ。これは次の問題で goll dy schoill「学校へ行く」と比べると明らかである。〕

22.〔日本語に訳せ。〕

Ta lioar aym. 私は本をもっている。
Ta fys ayd. 君は知っている。
Nagh row thie ayd? 君は家をもっていなかったか。
Va thie aym. 私は家をもっていた。
Row thie oc? 彼らは家をもっていたか。
Cha row thie oc. 彼らは家をもっていなかった。
Vel fys ayd? 君は知っているか。
Cha nel fys aym. 私は知らない。
Vel ad ec y thie? それらは家にあるか。
Cha nel. いいえ。
Row ad ec y thie? それらは家にあったか。
Cha row. いいえ。
Nagh vel ad ec y thie? それらは家にないのか。
Ta. いいえ (ある)。
Cha nel. はい (ない)。〔Yes/No は英語と同じ、つまり否定疑問では日本語と逆になる。〕
Vel oo goll dy schoill? 君は学校に行くのか。
Cha nel; ta mee goll thie. いいえ、私は家に行く。
Vel shiu goll thie? 君たちは家に行くのか。
Ta shin goll thie. はい。
Cha nel shin goll thie. いいえ。
Vel shiu çheet? 君たちは来るか。
Ta. はい。
Vel eh çheet? 彼は来るか。
Cha nel. いいえ。
Vel shiu clashtyn mee? 君たちは私 (の言うこと) を聞いているか。
Cha nel; cred ta shiu gra? いいえ、あなたは何を言っていますか。〔前文とつながっているとすれば敬称の shiu だろう。前文のほうも敬称かも。〕
Ta mee gra dy vel mee goll dy schoill. 私は私が学校に行くところだと言っている。
Ta mee gra dy row mee ec y thie. 私は私が家にいたと言っている。

23.〔マン島語に訳せ。〕

彼らは行くところだったか。Row ad goll?
彼らは行くところだった。V’ad goll.
彼らは行くところではなかった。Cha row ad goll.
彼は来るところだったか。Row eh çheet?
はい/いいえ。Va. / Cha row.
彼は家にいたか。Row eh ec y thie?
彼女は家にいなかった。Cha row ee ec y thie.
彼らは家にいなかった。Cha row ad ec y thie.
彼は知っているか。Vel fys echey?
はい。Ta.
彼らは私が家にいることを知らない。Cha nel fys oc dy vel mee ec y thie.
君は本をもっているか。Vel lioar ayd?
はい。Ta.
彼は本をもっていない。Cha nel lioar echey.
彼らは見る、彼らは来る、彼らは聞く、彼らは言う、彼らはする。T’ad fakin, t’ad çheet, t’ad clashtyn, t’ad gra, t’ad jannoo.
私は見つける。私は見つけない。私は見つけるか。私は見つけないか。〔find にあたる動詞はまだ出ていないので答えようがない。が、じつは §6 で見た geddyn, feddyn——そこでは語義 ‘get’ としか書かれていない——が、§171 の活用表では ‘get, find’ となっているので、たぶんこれが編集ミスで落ちたものであろう。これを使えば Ta mee geddyn. Cha nel mee geddyn. Vel mee geddyn? Nagh vel mee geddyn?〕
彼らは与える、彼らは奪う。T’ad coyrt, t’ad goaill.
私は彼がその本を見ていると言う。Ta mee gra dy vel eh fakin yn lioar.

24. マン島語では任意の動詞の現在未完了 (imperfect, 英語の ‘I was going’, ‘I used to go’) は基本的に、動名詞とそのまえに be 動詞 ve の現在または過去形を置くことでできる。

ta mee creck 私は売る、売っている
cha nel mee creck 私は売らない、売っていない
vel mee creck? 私は売るか、売っているか
nagh vel mee creck? 私は売らないか、売っていないか
Ta mee kionnaghey 私は買う;Cha nel mee kionnaghey. Vel mee kionnaghey? Nagh vel mee kionnaghey?
Cha row ad jannoo eh. 彼らはそれをしていなかった。
V’ee creck eeym. 彼女はバターを売っていた。

動名詞が母音で始まるとき、ve の諸形のあとに置かれるそれには g を頭につける:eeck「支払う」、ta mee geeck, cha nel mee geeck, vel mee geeck?, nagh vel mee geeck?;aase「育つ」、ta mee gaase, cha nel mee gaase.

マン島語で記録されていない、より古い構文には、すべての動名詞の前に ec (英 at) の古形 ag があった。だがこれが子音の前では脱落し、母音の前に限って g を残したのである (それと gra「言う」も ag raa であった)。

〔マン島語で記録されていないというのはおそらく、アイルランド語かスコットランド・ゲール語との比較でこういうふうに推定されるという意味だと思う。〕

直接目的語として人称代名詞があるとき、現在時制についてすでに述べた (§11) のと同じ文語的な構文が未完了でも見られる。

〔つまり「彼は私/君/彼/彼女/複数の人を見ていた」は v’eh dy my akin, v’eh dy dty akin, v’eh dy akin, v’eh dy fakin, v’eh dyn vakin となるだろう。〕

dimanche 18 septembre 2022

マン島語入門 (2) §§10–15

Edmund Goodwin 編、Robert Thomson 改訂の First Lessons in Manx (初版 1901 年、改訂版 1965 年) によってマン島語 (マニン・ゲール語) の文法を勉強するノート。副読本として適宜 J. Kewley Draskau, Practical Manx (Liverpool U.P., 2008) および G. Broderick, A Handbook of Late Spoken Manx (De Gruyter, 1984–86) をも参考にした。

目次リンク:第 1 回を参照のこと。


10. 冠詞。マン島語に不定冠詞はない。したがって dooinney は英語の man と a man いずれをも意味する。

定冠詞は yn:yn dooinney (英 the man), yn soilshey (the light)。後続の名詞が子音で始まるとき、冠詞の最後の n はしばしば落ちる:y dorraghys (英 the darkness)。先行する無強勢の語が母音で終わるとき、冠詞の最初の y はしばしば落ちる:da’n dooinney (英 to the man), veih’n dooinney (from the man)。

As va’n fastyr, as y moghrey yn nah laa.「そして夕と朝が 2 日めにあった (創世記 1:8)」

複数名詞につく定冠詞は ny。

11. 名詞や代名詞は対格でも形を変えない。mee は「私は」と「私を」、oo は「君は」「君を」いずれでもある。t’ad fakin y dooinney 彼らはその男を見る、ta’n dooinney fakin ad その男は彼らを見る。

目的語が代名詞であるとき、べつの構文も可能でこれは書き言葉に頻繁である。例として:

t’eh dy my akin 彼は私を見る
t’eh dy dty akin 彼は君を見る
t’eh dy akin 彼は彼/それを見る
t’eh dy fakin 彼は彼女/それを見る
t’eh dyn vakin 彼は私たち/君たち/彼らを見る

動名詞〔ここでは fakin〕の変異 (§§186, 188) に注意せよ。my, dty, dy (男性) のあとでは軟音化 (lenition)、dyn のあとでは鼻音化 (nasalisation) をする〔女性の dy はなにも起こさない〕。この構文は 1・2 人称単数においてもっとも普通である。さらなる例:

ta shin dy dty voylley 私たちは君をほめる
ta dty lhatt as dty lorg dy my gherjaghey あなたの棒と杖が私を慰める (詩篇 23:4)
my ta dty hooill yesh dy dty hayrn gys peccah, pluck assyd ee, as tilg void ee あなたの右の目があなたを罪へと引き寄せるならば、それをえぐりだして捨てなさい (マタイ 5:29)
ta mish dyn goyrt shiu magh myr eayin mastey moddee-oaldey 私は狼のなかの仔羊としてあなたがたを送りだす (ルカ 10:3)

〔この時点で、my, dty, dy, dyn がどういう代名詞なのかとか、(代名詞でないほうの) dy がなんなのかとか、わからないことが多すぎるので、こんな例文を出されても途方に暮れる。とりあえず第 1 文は簡単で、dty のあとで軟音化した形が voylley なので、基本形は moylley「ほめる」である。

〔第 2 文からは、dty が your の意味で使われていることが見てとれる。そこで所有小辞を先取りして調べてみると (§66)、1 単 my, 2 単 dty, 3 単男 e, 女 e, 複数は人称によらず nyn で、3 単の e は男性のみ軟音化、nyn は鼻音化を引きおこすというので、完全に一致していることに気づく。ということは 3 単は dy e がつづまって dy だけに、また複数は dy nyn がつづまって dyn になったものであろうと推測される。

〔最後の 2 文はこんな序盤に掲げるにはわからない単語や文法事項が多すぎる。第 3 文ではまず冒頭の my は代名詞ではなく英 if の意の接続詞である。それから後半に 2 回出る ee に注目しよう。これは dty hooill yesh「あなたの右の目」を受けたもので、sooill「目」が女性名詞だから ee で受けたわけである。その sooill は dty のあとなので軟音化して h になっている。yesh は jesh「右の」の軟音化で、形容詞が後置修飾ということがわかる;こちらは女性単数名詞の後ろにあるので軟音化を受けたのである。動詞は hayrn < tayrn「引く」、これも軟音化。このように、軟音化の規則がわからないと辞書を引くことすらできないので難しい。なお pluck という動詞は英語をそのまま借用しているであろうから、そのままマン島語の命令形として通用しているのがおもしろい。

〔第 4 文、mish はすぐ下の §13 で説明される代名詞の強勢形である。goyrt は dyn のあとなので鼻音化した coyrt「与える」、これはすでに §6 で見た動詞である。そのほかの語はいまいちいち確認する必要はないだろう。〕

12. 形容詞は原則としてそれが修飾する名詞のあとに置かれる。cree dooie「優しい心」、dooinney boght「貧しい男」、dooinney berçhagh「裕福な男」。2 つの頻用の形容詞、shenn「古い」と drogh「悪い」はふつう名詞のまえに置かれ、そのとき軟音化を引きおこす (§186.13, 17)。

13. 人称代名詞に特別の強調が置かれるとき、いわゆる強勢形が要求される:単数 mish, uss, eshyn, ish, 複数 shinyn, shiuish, adsyn。これらは ta と縮約して、t’ou uss, t’eshyn, t’adsyn となる。

14. 語彙。
ayns 〜のなかに (英 in)
as と、そして (英 and)
dy 〜に (英 to)
cre 何。cre ta 〜は何か、cre vel 〜はどこか。
cred 何
c’raad どこ
mooar 大きい
rieau かつて、これまでに
ve それは〜だった
noa 新しい
schoill [女] 学校
schoillar [男] 学者
lioar [女] 本
pabyr [男] 紙
thie [男] 家
cashtal [男] 城
slieau [男] 山
beg 小さい
cronk [男] 丘
boayl [男] 場所、地点
ynnyd [女] 場所、立場
mie よい

〔cre ta が what is? で cre vel が where is?。疑問詞が同じで小辞が変わるだけで尋ねる内容が変わるというのは不思議だが、Broderick の辞書にもそうあり、間違いではなくそういうもののようだ。〕

ayns y に続く名詞はしばしば軟音化する (§186.12, 17)。また女性単数名詞のあとで形容詞は軟音化する (§184.4)。

マン島語に中性はない。生きものであろうとなかろうとすべての名詞は男性か女性かに分類される。dorrys「扉」は男性で、代名詞 eh で代理される。uinnag「窓」は女性で、ee で代理される。性が不明のとき、無生物を指すのに使われるのは男性形 eh。形式主語のように ‘it is’ がなにも特定の名詞を指さぬとき、しばしば t’eh のかわりに te、また v’eh (§16) のかわりに ve と書かれる。

drawer, dresser など英語からの借用語がときに使われるが、これらは可能なかぎり控えられるべきである。

童謡
C’raad t’ou goll? どこへ行くの。
Goll dy schoill. 学校へ。
C’raad ta’n lioar? 本はどこ?
Ayns y drawer. 引きだしの中。
C’raad ta’n drawer? 引きだしはどこ?
Ayns y dresser. 戸棚の中。
C’raad ta’n dresser? 戸棚はどこ?
Ayns y thie. 家の中。
C’raad ta’n thie? 家はどこ?
Ayns y clieau. 山の中。
C’raad ta’n slieau? 山はどこ?
Ayns y voayl ve rieau. かつてあったところ〔?〕

〔前置詞+冠詞のあとでは男女問わず軟音化し、とくに sl は cl になる (ふつう s は h になるところ)。〕

15. 日本語に訳せ。

Ta dooinney ayns y thie. 男が家のなかにいる。
Cha vel schoill ayns yn ynnyd. 学校はその場所にはない。
Cre vel yn lioar veg? その小さな本はどこにあるか。
Cre t’ou uss jannoo ayns y schoill noa? 君はその新しい学校で何をしているか。
C’raad ta’n cashtal mooar? その大きい城はどこにあるか。
Nagh vel oo fakin nagh vel pabyr ayns y thie? 君は家のなかに紙がないことを見ていないか。
Cha vel ad dy my chlashtyn. 彼らは私 (の言うこと) を聞かない。〔§11 の構文 t’ad dy my chlashtyn の ta を否定形 cha vel にしたもの。〕
T’ad gra dy vel cronk mooar ayns y voayl. 彼らはその地点に大きい丘があると言う。
Nagh vel shiu jannoo eh? 君たちはそれをしていないのか。

samedi 17 septembre 2022

マン島語入門 (1) §§1–9

Edmund Goodwin 編、Robert Thomson 改訂の First Lessons in Manx (初版 1901 年、改訂版 1965 年) によってマン島語 (マニン・ゲール語) の文法を勉強してみる。たいそう古い本だが、もう少し新しい Mona Douglas による Manx Lessons (1936 年) も事実上この Goodwin の教科書の改訂版のようなものであって、マン島語の入門書というのは結局これ以外にはないも同然なのである。

会話文例だけを集めたものなら片手に余るくらいはあるのだが、そういうものはろくに文法の解説がない。Stowell の Y Coorse Mooar: A Comprehensive Manx Course (1998 年) だけは唯一張りあえる候補かと思うが、これもなお会話と英語の対訳でもって覚えさせる比重が大きく、本の大きさのわりに扱っている文法の程度は Goodwin とさほど選ぶところがない。そのため文法を学ぶなら Goodwin のほうがコンパクトで見通しがよいのだが、現代的な例文の量は Stowell のほうがはるかに充実しているので、もし手に入るならおすすめである。

古い教科書ではあるものの、そもそもマン島語じたい 1974 年にいったん滅びてしまっているという事情もあり、現在復興されて使われているマン島語の文法やつづりを学ぶにあたってはまったく差し支えないと思われる。私個人の動機はマン島語訳『星の王子さま』Yn Prince Beg (R. Teare 訳、2019 年) や『不思議の国のアリス』Contoyrtyssyn Ealish ayns Çheer ny Yindyssyn (B. Stowell 訳、2010 年) を読むことにあるが、これらや下記 Kewley Draskau, Broderick の文法書・辞書で使われているつづりと見比べても正書法に違いは見られない。

残念ながらこの本には発音の説明が見あたらないので (初版にはあったようだがなぜか削られた)、基本的には発音は無視して進み、どうしても気になるところでは J. Kewley Draskau, Practical Manx (Liverpool U.P., 2008) や G. Broderick, A Handbook of Late Spoken Manx (De Gruyter, 1984–86) を参照することにしよう。

以下、セクション番号のついた本文は基本的に原文をおおよそ訳したもので、亀甲括弧内は私の補足コメントである。

目次リンク

  1. §§1–9 人称代名詞、be 動詞の現在、基本の不規則動詞
  2. §§10–15 冠詞、代名詞目的語の構文、人称代名詞強勢形など
  3. §§16–24 be 動詞の過去、所有表現、ec の活用など
  4. §§25–31 一般動詞の過去、複数命令と否定命令など
  5. §§32–43 ayns の活用、代名詞強勢形接尾辞、be 動詞の未来、指示代名詞など
  6. §§44–56 一般動詞の未来、イディオム、方向の副詞、da, jeh の活用など
  7. §§57–65 条件時制、助動詞 ve, jannoo による迂言形のまとめ、名詞の複数形
  8. §§66–73 所有小辞、副詞、er, lesh の活用、形容詞の複数形
  9. §§74–83 名詞どうしの修飾、冠詞の属格形
  10. §§84–88 前置詞の活用のまとめ、動作と状態を区別する動詞
  11. §§89–94 数詞、時刻・日付・年齢の表現
  12. §§95–100 規則動詞の助動詞によらない活用、受動態、関係節、仮定文など
  13. §§101–110 比較級と最上級、不完全動詞
  14. §§111–118 コピュラの用法など
  15. §§119–128 複合前置詞、動名詞の用法など


1. 人称代名詞単純形。mee 私、oo 君、eh 彼、ee 彼女、shin 私たち、shiu 君たち、ad 彼ら。敬称として shiu を単数の相手に使うこともある。

〔母音字の発音はだいたい英語と同じ。ee は長く狭いイー、oo は長く狭いウー、など。だが場合によっては短く広いイ・ウになったりしていちいち覚えるしかないようだ。英語でも oo は tool, loop などでは長く狭いウーだが book, wool などでは短く広いウで、規則などなくどうしようもない。

〔これらの代名詞は軽い語なのでいずれも短い。とりあえず mee [mi], oo [u], eh [e], ee [i], shin [ʃin′], shiu [ʃu], ad [ad] と覚えておくが、話者によっていろいろヴァリアントがあるようである (Broderick, §85)。〕

2. be 動詞の現在時制肯定形 ta。ta mee 私は〜だ、t’ou 君は〜だ、t’eh 彼は〜だ、〔t’ee 彼女は〜だ、〕ta shin 私たちは〜だ、ta shiu 君たちは〜だ、t’ad 彼らは〜だ。主語は動詞のあとに置かれる。

〔2 単 ou は誤字ではなくて、縮約形ではそうなるもの。のちに v’ou や r’ou が出てくる。発音も ou は [au]。〕

3. 現在時制疑問形 vel。vel mee? 私は〜か、vel oo? 君は〜か、vel eh? 彼は〜か、vel ee? 彼女は〜か、vel shin? 私たちは〜か、vel shiu? 君たちは〜か、vel ad? 彼らは〜か。

4. 現在時制否定形。cha nel mee 私は〜でない、cha nel oo 君は〜でない、以下訳語は略:cha nel eh, cha nel ee, cha nel shin, cha nel shiu, cha nel ad。否定形には nel も vel も使われるが、前者が口語的で後者は文語。

〔ch の発音はドイツ語の ach-Laut、スコットランド英語の loch。チャ行の子音は çh とつづる。〕

5. 現在時制否定疑問形。nagh vel mee? 私は〜でないのか、nagh vel oo?, nagh vel eh?, nagh vel ee?, nagh vel shin?, nagh vel shiu?, nagh vel ad? ときに nagh のかわりに ny。

cha, nagh など若干の小辞のあとで用いられる動詞の形は従属形 (dependent form)、肯定形で用いられるそれは独立形 (independent form) と呼ばれる。つまり ta は be 動詞 ve の現在独立形で、vel, nel は現在従属形。

6. ve ならびに以下の 9 つの動詞は基本中の基本で、ほとんどすべての文にどれかは現れる。以下のリストで 1 つめが動名詞 (verbal-noun) または不定形 (infinitive) と呼ばれるもの、次が命令形単数である:

çheet, 命 tar「来る」
goll, 命 immee「行く」
coyrt/cur, 命 cur「与える、置く」
goaill, 命 gow「とる」
gra, 命 abbyr「言う」
jannoo, 命 jean「する」
clashtyn, 命 clasht「聞く」
fakin, 命 jeeagh「見る」
feddyn/geddyn, 命 fow「得る」

〔çheet の発音は [tʃɪt] で ee が短い例。〕

これら以外の動詞もすべて同様だが、現在時制は動名詞形を ve の現在のあとに置いて作る。ただの現在と現在進行形はとくに区別しない。

Ta mee goll. 私は行く。
Ta mee gra. 私は言う。
Vel oo çheet? 君は来るのか。
Vel shiu çheet? 君たちは来るのか。
Vel mee goll? 私は行くのか。
Ta mee fakin. 私は見る。
T’ad goll. 彼らは行く。
Cha nel mee goll. 私は行かない。
Nagh vel oo goll? 君は行かないのか。

7.「〜ということ」や「〜する/しないように」「〜する/しないために」といった節は、肯定形なら dy、否定形なら nagh で導入され、その直後に動詞の従属形を置く。

t’ou fakin dy vel mee goll 君は私が行くのを見る
t’eh gra nagh vel ee çheet 彼は彼女が来ないと言う

8. 英語に訳せ。〔日本語にする。なお解答はついていないのであくまで私の答え、疑って見てください。〕

Vel oo goll? 君は行くのか。
Ta mee goll. 私は行く。
Cha nel mee goll. 私は行かない。
Vel ee çheet? 彼女は来るのか。
T’ee çheet. 彼女は来る。
Cha nel ee çheet. 彼女は来ない。
Nagh vel oo çheet? 君は来ないのか。
Cha nel mee çheet; ta mee goll. 私は来ない、私は行く。
Vel oo clashtyn? 君は聞いているか。
Immee. 行け。
Ta mee clashtyn. 私は聞いている。
Vel ad goll? 彼らは行くのか。
Vel shiu goll? 君たちは行くのか。
Vel shin goll? 私たちは行くのか。
Vel eh goll? 彼は行くのか。
T’eh goll. 彼は行く。
Cha nel eh goll. 彼は行かない。
Jeeagh! 見ろ。
T’eh çheet. 彼は来る。
Tar. 来い。
Abbyr. 言え。
Ta mee gra. 私は言う。
Ta mee fakin dy vel eh goll. 私は彼が行くのを見る。
Ta shin clashtyn dy vel oo goll. 私たちは君が行くと聞いている。
Vel oo fakin nagh vel ad çheet? 君は彼らが来ないのを見るか。

9. マン島語に訳せ。

私は来る。Ta mee çheet.
君は行くか。Vel oo goll?
私は行かない。Cha nel mee goll.
彼は来るか。Vel eh çheet?
彼は来る。T’eh çheet.
彼女は行く。T’ee goll.
彼らは来るか。Vel ad çheet?
彼らは行く。T’ad goll.
私は行かないのか。Nagh vel mee goll?
君は行かない;君は来るのだ。Cha nel oo goll; t’ou çheet.
彼は行くか。Vel eh goll?
彼は行く。T’eh goll.
君たちは行くか。Vel shiu goll?
私たちは行かない、私たちは来る。Cha nel shin goll, ta shin çheet.
私は来ない。Cha nel mee çheet.
君は彼が行くのを見る。T’ou fakin dy vel eh goll.
彼らは行くか。Vel ad goll?
彼らは来る。T’ad çheet.
来い。Tar!
行け。Immee!
君は見えるか。Vel oo fakin?
私は彼らが来るのを見る。Ta mee fakin dy vel ad çheet.
君は彼女は行かないと言うのか。Vel oo gra nagh vel ee goll?
彼は聞いているか。Vel eh clashtyn?