dimanche 25 juin 2017

ドイツ語既習者のためのデンマーク語学習 (2)

昨日の前半の続きとして,三村竜之『ニューエクスプレス デンマーク語』(白水社,2011 年) の章立てに沿ってデンマーク語とドイツ語の簡単な比較をしていきます.前回と同様,本稿におけるドイツ語や英語の例文は私の訳例なのでネイティブのものではありません.


第 11 課


vej : Weg : 英 way「道」,gerne : gern(e)「喜んで」,færdig : fertig「終えている,終わった」,opgave : Aufgabe「課題,レポート」,lykke : 英 luck「幸せ」に対する独 Glück < MHG gelücke は前つづり ge- のついたもの.

Jeg ved, at Nozomi ikke kan lide tomater. Nozomi er en pige, der ikke kan lide tomater. ― 従位接続詞や関係代名詞が導く従属節中でも定動詞が末尾に行かないことに大注意 (vgl. Ich weiß, dass Nozomi nicht gern Tomaten isst.).


第 12 課


angående : 蘭 aangaande「〜に関して」,bede : bitten : 英 bid「頼む」.tale「話す」は英 tale「物語」と同源.英 tale には廃義で「数,計算」の意味がもともとあり,独では Zahl にあたります.spørge「尋ねる」は独 spüren「感じる」に関連し,この後者は遡ると OHG spurian「追跡する,痕跡を探す」となってつながりを感じられます.

Hun er kommet hjem. Han er begyndt at lære dansk. ― 現在完了形の助動詞で have (har) : haben と være (er) : sein を使い分けることはドイツ語 (やフランス語など) と同様です.blive : bleiben (意味は werden) や begynde : beginnen に være : sein を使うことはドイツ語とよく似ています (フランス語では devenir, rester は être ですが commencer はつねに avoir です).


第 13 課


tænke : denken「思う,考える」,læse : lesen「読む」.få「手に入れる」は独 fangen「つかむ」に同源.dertil「そこへ」のような der と前置詞との複合は独 dazu, 英 thereto (古風) などとパラレルです.

man「(不特定の) 人は」の用法と訳しかたはドイツ語をご存知の人には説明するまでもないでしょう.また再帰代名詞 sig を伴う再帰動詞についても.

〔森田貞雄『デンマーク語文法入門』(大学書林,1971 年) は,この不定代名詞 man と通常の名詞 mand「男」が同源で ON maðr とその対格 mann に遡ると思われることにつき,用法も含めてフランス語の on, homme < 羅 homo, 対格 hominem の関係に似ていると指摘しつつ,「但し,ドイツ語の影響大」とも断っています (35 頁).〕


第 14 課


regne : regnen「雨が降る」,kold : kalt「寒い,冷たい」,vejr < ON veðr < PG *wedrą > OHG wetar > 独 Wetter : 英 weather「天気」.

天候や自然現象を表す文に形式主語 det : es : 英 it を用いることは共通しています.Det regner meget i august. に対し Es regnet viel im August. ; 英 It rains a lot in August. また Det bliver meget koldt om vinteren. に対し Es wird sehr kalt im Winter. ; 英 It gets very cold in winter.

Der er meget koldt i Island. ― være を用いた表現で場所を表す語句があると der を主語に用いる (?) ということですが,ドイツ語の場合こういう文で倒置が起こるとき形式主語の es は省かれないので Dort ist es sehr kalt. (comp. 英 It is very cold there.) であり,具体的な副詞句 in Island があるならば dort なしで In Island ist es sehr kalt. と言うと思います.

den her pige, den der pige ― 語順は違いますがドイツ語でも das Mädchen hier, das Mädchen da と言えます.フランス語で cette fille-ci などと言うときの -ci, -là にも似ています.


単語力アップ 曜日・月名・四季・時間帯


曜日のうち,「水曜日」もふつうに onsdag と言うので独 Mittwoch と異なります (独では方言でのみ Wodenstag).もうひとつ注意なのは lørdag「土曜日」で,これは ON laugardagr に遡り字義どおりには「入浴の日」を意味するということです.標準ドイツ語 Samstag は仏 samedi などとともに安息日 (サバト) に由来します.

i forgårs「おととい」の for- の部分は vorgestern と共通し,「あさって」i overmorgen : übermorgen も同様です.


第 15 課


åbne : öffnen : 英 open「開ける」,kende : kennen「〜のことを知っている」.gammel「古い」は北ゲルマン語の外では OE gamal (詩語),OHG gamol (人名中のみ) など中世前期までしか生き残りませんでした.

Biblioteket blev åbnet sidste år. Frikadeller er lavet af kød. ― 過去分詞と組みあわせる助動詞 blive : werden および være : sein によって動作受動と状態受動の使い分けが生じるのはドイツ語とまったく同様です.冒頭の文はドイツ語なら Die Bibliothek wurde im letzten Jahr eröffnet. Frikadeller sind aus Fleisch gemacht. と訳せるでしょう.

Jeg ved ikke, om det bliver fint vejr i morgen. Kender du det gamle tempel, som hedder Kinkakuji? ― この vide と kende の使い分けはドイツ語の wissen と kennen の区別と同様に思われます.

cykel, cyklen; gammel, gamle ― 弱い母音 -e- の脱落もドイツ語と同じ法則に従っています (z. B. dunkel, dunkles).ただし後者 gammel, gamle のような二重子音字の省略はドイツ語にはなかったかと思います (ぱっと例を思いつきませんが……).


第 16 課


ven : 氷 vinur < ON vinr「友人」,egen : eigen「自身の」.eksempel「例」および invitere「招待する」はもちろん羅 exemplum および invitare からですが,fest「パーティー」も借用元である独 Fest をさらに遡れば羅 festum.

Lars kyssede sin kone. Lars kyssede hans kone. ― 3 人称の所有形容詞は同一人物なら再帰形の sin を用い,3 人称の hans では別人になってしまいます.sein ではわかりにくいですが,ドイツ語でも Er wäscht sich. と Er wäscht ihn. では対象が違うことを考えればはっきりします.


第 17 課


betyde : bedeuten「意味する」,håb : Hoffnung : 英 hope「希望」.lækker「ハンサムな」は lecker「おいしい」にあたり,独 lecker も方言では「かわいい,魅力的な」の意味があります.familie「家族」はやはりドイツ語を通じてラテン語に遡ります.


第 18 課


gave「プレゼント」は geben に関係.end「〜よりも」は OHG enti, 羅 ante「〜の前に」が起源と言い,独 als とも英 than とも関係がありません.

比較級・最上級語尾 -ere, -est も英独とだいたい同じです.


単語力アップ 序数詞


1., 2. のようにアラビア数字の後ろにピリオドを打つと序数詞の意味になることはドイツ語と同じ.


第 19 課


hjælpe : helfen : 英 help「助ける」,grund : Grund「理由」,sælge : 英 sell「売る」,stærk : stark「強い」,vand : 氷 vatn : 英 water : 独 Wasser「水」.

Det er 〜, at / der / som ...「…なのは〜です」という強調構文は,ドイツ語でも Es ist [sind] 〜, das [welche, wo, uzw.] ..., また英語でも It is 〜 that [who, which] ... とパラレルです.いまさらっと触れたように,ドイツ語では形式主語 es ではなく本来の主語の数に従って動詞が sind ということもありますが,デンマーク語では ist も sind も er なので文法上単複どちらで扱われているのかはわかりません.

børnehave : Kindergarten「幼稚園」,fødselsdag : Geburtstag「誕生日」のごとき複合語の作りかたもいまさら特筆することはないでしょう.


第 20 課


måned : Monat : 英 month「(暦の) 月」,hurtig : hurtig「速い」.se frem til「楽しみにする」は逐語的には「見る・前方に・へ」なので英 look forward to と酷似しています.

反事実的仮定において過去形を用いるのは印欧語の常套手段です.

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