vendredi 16 juin 2017

グリーンランド語入門 (3) 名詞の分類

グリーンランド語入門第 3 回の範囲は,Kölbl, Grönländisch, S. 28–30 です (全体の目次は第 1 回をご覧ください).今回は名詞とその分類について見ていきます.


名詞:1 類,2 類,3 類


名詞には性も冠詞もありません.illu は „Haus“, „ein Haus“, „das Haus“ どれをも意味します〔日本人にとってはとてもありがたいことです〕.名詞は基本形 (Grundform) において -a, -i, -u, -k, -q, -t のいずれかでだけ終わります.それらは屈折によってさまざまに変化するので,3 つに分類しておくと便利です.この分類は基本形からは推測できないので逐一明記します.

いちどにすべてを説明するわけにはいかないので,まずは次のことだけ知っておいてください.2 類と 3 類の単語は -gaq や -neq のような末尾音節 (Endsilbe) をもち,屈折および接尾辞の付加のさい,つねにとある決まったしかたで変化します.1 類にはそのような末尾音節はなく,いくつかの場合にのみ屈折で変化があります.


-t による複数形の作りかた


複数形のための語尾は -t で,つなぎ母音 (Bindevokal) を伴うと -it, また a の後では -at になります (A-法則!).以下で „·“ の点は,どこに複数形〔の語尾〕がつくかを表します.arna·q のような単語の部分で,点よりも左側は単数・複数共通,右側は複数を作るとき置き換わります.複数形からその語尾を取り除くことで,屈折のさい必要な語幹が得られます.〔語幹を識別するため〕複数形を縦棒 (|) とともに表すことにします.従属格についてはすぐあとで見ます.

基本形,複数,類  単数形  複数形  語幹  単数従属格
illu·, -t (1)「家」  illu   illu|t   illu-   illu|p
arna·q, -t (1)「女」 arnaq  arna|t  arna-  arna|p
inu·k, -it (1)「人」  inuk   inu|it   inu-   inu|up
assa·k, -at (1)「手」 assak  assa|at  assa-  assa|ap
angut·, -it (1)「男」 angut  angut|it  angut-  angut|ip

2 類と 3 類では,複数形で末尾音節がつねに変化します.

基本形,複数,類     単数形  複数形  語幹   単数従属格
atua·gaq, -kka|t (2)「本」 atuagaq  atuakka|t  atuakka-  atuakka|p
na·noq, -nnu|t (2)「白熊」 nanoq   nannu|t  nannu-  nannu|p
a·teq, -qq|it (3)「名前」  ateq   aqq|it   aqq-   aqq|up
ka·mik, -mmi|t (3)「長靴」 kamik  kammi|t  kammi-  kammi|p
erne·q, -r|it (3)「息子」  erneq  erner|it  erner-  erner|up
qajaq, qaanna|t (2)「カヤック」 qajaq qaanna|t qaanna- qaanna|p

最後の qajaq は,単語全体が強く変化するめずらしい例です.


-p による従属格


名詞は文中での働きに応じてさまざまな屈折語尾 (Beugungsendung) をとります.従属格 (Abhängigkeitsfall) は 2 つの重要な構文で必要とされます.1 つは属格 (Wesfall ノ格または Genitiv) に対応し,第 2 の使用格 (Anwendungsfall) にはまた後で出会うことになります.これは複数形から導くことができ,複数語尾が -t か -it かに応じて変わります.

1 類:複数の -t を -p に置き換える.-k で終わる語では,複数の -it を -up にする.-t で終わる語では,複数の -it を -ip にする.
2 類:複数の -t を -p に置き換える.
3 類:複数の -t は -p に,-it は -up に置き換える.

illup「家の」〔1 類 -t〕,angutip「男の」〔1 類 t, -it〕,qaannap「カヤックの」〔3 類〕.

複数の従属格は複数基本形と同じ:illut「家々」または「家々の」,angutit「男たち」または「男たちの」.

-p または -t をつけ,それから +lu「と」をつけると,〔前回説明した同化接尾辞の〕規則によってまったく同じ語尾になります:

illut「家々 (の)」+ lu = illullu「と家々」または「と家々の」,illup「家の」+ lu = illullu「と家の」.

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