グリーンランド語入門第 3 回の範囲は,Kölbl, Grönländisch, S. 28–30 です (全体の目次は第 1 回をご覧ください).今回は名詞とその分類について見ていきます.
名詞:1 類,2 類,3 類
名詞には性も冠詞もありません.illu は „Haus“, „ein Haus“, „das Haus“ どれをも意味します〔日本人にとってはとてもありがたいことです〕.名詞は基本形 (Grundform) において -a, -i, -u, -k, -q, -t のいずれかでだけ終わります.それらは屈折によってさまざまに変化するので,3 つに分類しておくと便利です.この分類は基本形からは推測できないので逐一明記します.
いちどにすべてを説明するわけにはいかないので,まずは次のことだけ知っておいてください.2 類と 3 類の単語は -gaq や -neq のような末尾音節 (Endsilbe) をもち,屈折および接尾辞の付加のさい,つねにとある決まったしかたで変化します.1 類にはそのような末尾音節はなく,いくつかの場合にのみ屈折で変化があります.
-t による複数形の作りかた
複数形のための語尾は -t で,つなぎ母音 (Bindevokal) を伴うと -it, また a の後では -at になります (A-法則!).以下で „·“ の点は,どこに複数形〔の語尾〕がつくかを表します.arna·q のような単語の部分で,点よりも左側は単数・複数共通,右側は複数を作るとき置き換わります.複数形からその語尾を取り除くことで,屈折のさい必要な語幹が得られます.〔語幹を識別するため〕複数形を縦棒 (|) とともに表すことにします.従属格についてはすぐあとで見ます.
基本形,複数,類 単数形 複数形 語幹 単数従属格
illu·, -t (1)「家」 illu illu|t illu- illu|p
arna·q, -t (1)「女」 arnaq arna|t arna- arna|p
inu·k, -it (1)「人」 inuk inu|it inu- inu|up
assa·k, -at (1)「手」 assak assa|at assa- assa|ap
angut·, -it (1)「男」 angut angut|it angut- angut|ip
2 類と 3 類では,複数形で末尾音節がつねに変化します.
基本形,複数,類 単数形 複数形 語幹 単数従属格
atua·gaq, -kka|t (2)「本」 atuagaq atuakka|t atuakka- atuakka|p
na·noq, -nnu|t (2)「白熊」 nanoq nannu|t nannu- nannu|p
a·teq, -qq|it (3)「名前」 ateq aqq|it aqq- aqq|up
ka·mik, -mmi|t (3)「長靴」 kamik kammi|t kammi- kammi|p
erne·q, -r|it (3)「息子」 erneq erner|it erner- erner|up
qajaq, qaanna|t (2)「カヤック」 qajaq qaanna|t qaanna- qaanna|p
最後の qajaq は,単語全体が強く変化するめずらしい例です.
名詞は文中での働きに応じてさまざまな屈折語尾 (Beugungsendung) をとります.従属格 (Abhängigkeitsfall) は 2 つの重要な構文で必要とされます.1 つは属格 (Wesfall ノ格または Genitiv) に対応し,第 2 の使用格 (Anwendungsfall) にはまた後で出会うことになります.これは複数形から導くことができ,複数語尾が -t か -it かに応じて変わります.
1 類:複数の -t を -p に置き換える.-k で終わる語では,複数の -it を -up にする.-t で終わる語では,複数の -it を -ip にする.
2 類:複数の -t を -p に置き換える.
3 類:複数の -t は -p に,-it は -up に置き換える.
illup「家の」〔1 類 -t〕,angutip「男の」〔1 類 t, -it〕,qaannap「カヤックの」〔3 類〕.
複数の従属格は複数基本形と同じ:illut「家々」または「家々の」,angutit「男たち」または「男たちの」.
-p または -t をつけ,それから +lu「と」をつけると,〔前回説明した同化接尾辞の〕規則によってまったく同じ語尾になります:
illut「家々 (の)」+ lu = illullu「と家々」または「と家々の」,illup「家の」+ lu = illullu「と家の」.
基本形,複数,類 単数形 複数形 語幹 単数従属格
illu·, -t (1)「家」 illu illu|t illu- illu|p
arna·q, -t (1)「女」 arnaq arna|t arna- arna|p
inu·k, -it (1)「人」 inuk inu|it inu- inu|up
assa·k, -at (1)「手」 assak assa|at assa- assa|ap
angut·, -it (1)「男」 angut angut|it angut- angut|ip
2 類と 3 類では,複数形で末尾音節がつねに変化します.
基本形,複数,類 単数形 複数形 語幹 単数従属格
atua·gaq, -kka|t (2)「本」 atuagaq atuakka|t atuakka- atuakka|p
na·noq, -nnu|t (2)「白熊」 nanoq nannu|t nannu- nannu|p
a·teq, -qq|it (3)「名前」 ateq aqq|it aqq- aqq|up
ka·mik, -mmi|t (3)「長靴」 kamik kammi|t kammi- kammi|p
erne·q, -r|it (3)「息子」 erneq erner|it erner- erner|up
qajaq, qaanna|t (2)「カヤック」 qajaq qaanna|t qaanna- qaanna|p
最後の qajaq は,単語全体が強く変化するめずらしい例です.
-p による従属格
名詞は文中での働きに応じてさまざまな屈折語尾 (Beugungsendung) をとります.従属格 (Abhängigkeitsfall) は 2 つの重要な構文で必要とされます.1 つは属格 (Wesfall ノ格または Genitiv) に対応し,第 2 の使用格 (Anwendungsfall) にはまた後で出会うことになります.これは複数形から導くことができ,複数語尾が -t か -it かに応じて変わります.
1 類:複数の -t を -p に置き換える.-k で終わる語では,複数の -it を -up にする.-t で終わる語では,複数の -it を -ip にする.
2 類:複数の -t を -p に置き換える.
3 類:複数の -t は -p に,-it は -up に置き換える.
illup「家の」〔1 類 -t〕,angutip「男の」〔1 類 t, -it〕,qaannap「カヤックの」〔3 類〕.
複数の従属格は複数基本形と同じ:illut「家々」または「家々の」,angutit「男たち」または「男たちの」.
-p または -t をつけ,それから +lu「と」をつけると,〔前回説明した同化接尾辞の〕規則によってまったく同じ語尾になります:
illut「家々 (の)」+ lu = illullu「と家々」または「と家々の」,illup「家の」+ lu = illullu「と家の」.
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