mercredi 21 juin 2017

グリーンランド語入門 (8) 未来・否定

グリーンランド語入門第 8 回の範囲は,Kölbl, Grönländisch, S. 47–50 です (全体の目次は第 1 回をご覧ください).内容は未来時制と否定文で,さほどつながりはありませんが作りかたには共通するところがあり,おのおのが短いので 1 回にまとめてしまいます (ちなみに「未来時制」というのは言葉の綾のようなもので,これを「時制」と呼べるかには問題があります).


-ssa- による未来 (Zukunft)


未来の行為 (zukünftige Handlung) は特定の語尾〔=接辞〕によって標示されます.語幹の最後の子音を切りとりますが,〔接辞 -ssa- に続く語尾は前々回見た「過去-現在」形のそれと〕すべての動詞について同一です.

〔見出し形 aperi|voq, 語幹 aperi-「尋ねる」〕
1 単 aperi|ssaanga 私は尋ねるだろう〔以下同様〕
2 単 aperi|ssaatit
3 単 aperi|ssaaq
1 複 aperi|ssaagut
2 複 aperi|ssaasi
3 複 aperi|ssapput

2 人称と 3 人称には特別の疑問形があります.

〔見出し形 sinip|poq, 語幹 sinip-「眠る」〕
2 単 sini|ssavit? 君は寝るだろうか/つもりか〔以下同様〕
3 単 sini|ssava?
2 複 sini|ssavasi?
3 複 sini|ssappat?

未来の他動詞形を作るには,すべての動詞で -ssa- に他動詞語尾 (前回の vara, vat, vaa など) を組みあわせます:

neri|ssavara 私はそれを食べるだろう
atua|ssavara 私はそれを読むだろう
naapi|ssavarput 私たちは彼に会うだろう
atua|ssavisiuk? 君たちはそれを読むだろうか

〔欄外注:〕-ssa- 形は „soll“〔〜すべきだ〕の意味ももちます.

Tuper|mi sini|ssa|agut. 私たちはテントで〔処格〕寝るつもりだ/べきだ〔未来・1 複〕.
Angallat aqagu tiki|ssa|aq. その船は明日来るだろう〔未来・3 単〕.〔主語は原文で das Schiff と書かれていますが,自動詞文で基本形なので定・不定いずれにも訳せるでしょう.〕


-nngila- による否定


否定 (Verneinung) は切断接尾辞〔-nngila- により表され〕,その語尾はすべての動詞について同一です.

1 単 aperi|nngilanga 私は尋ねない〔以下同様〕
2 単 aperi|nngilatit
3 単 aperi|nngilaq
1 複 aperi|nngilagut
2 複 aperi|nngilasi
3 複 aperi|nngillat

3 人称単数のみ,否定疑問において特定の形をもち,そこでは -q が脱落します:sininngila?「彼は寝ないのか」

neri|nngilara 私はそれを食べなかった
atua|nngilara 私はそれを読まなかった
naapi|nngilarput 私たちは彼に会わなかった
atua|nngilisiuk? 君たちはそれを読まなかったのか

〔欄外注:〕他動詞では -va-, -ppa-, -rpa- は -nngila- に置きかえられます.

Tuper|mi sini|nngila|gut. 私たちはテントで〔処格〕寝ない.
Atuagaq atua|nngila|ra. 私はその本〔基本形〕を読んでいない〔否定・1 単・3 単〕.

これらすべての形は問題なく未来形にできるでしょう.-nngila- の前に -ssa- を挿入すればよいのです.

Angallat aqagu tiki|ssa|nngila|q. 船は明日来ないだろう〔未来・否定・3 単〕.

非常に重要な動詞として nalu(v)aa「彼はそれを知らない」があります.肯定の「知っている」は,これの否定形によって表現されます:

nalu|nngila|ra 私はそれを知っている〔否定・1 単・3 単〕

〔「知らない」が無標で「知っている」のほうが有標というのは驚くべきことで,この動詞をどのように自然に理解できるのでしょうか? 「知らない」という訳しかたには私たち日本語やドイツ語話者の先入観が否応なしに反映されています.〕


文の核 (Satzkern)


グリーンランド語の文はつねに,他動または自動の語尾のひとつを伴った動詞だけを含みえます.これは誰が中心的な行為者 (=文の主語) であるのかを確定する重要な文の核です.このことは 1 つの文に複数の動詞が必要になるときに意味をもちます.

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