中山恒夫『標準ラテン文法』(白水社、1987 年) 第 7 課と第 8 課の解答例。同じ著者による『ラテン語練習問題集』(白水社、1995 年、新装版 2009 年) と似通った文がある場合気づいたかぎりで補足している;そのさい「同文」とは一字一句すべてが同じものだけを言い、「ほぼ同文」は動詞の時制や名詞の数、固有名詞、意味に違いを及ぼさない範囲の語順など、ごく細かい点が違っているときを指す (たとえば以下の第 7 課和訳 1. では人物の名前、4. では文頭に utrum があるかないかだけが違う)。それ以上に相違点のある場合は「類似」と称するが、それでも参考にできる程度には共通しているものを選んでいる。
目次リンク:第 1 課・第 2 課・第 3 課・第 4 課・第 5 課・第 6 課・第 7 課・第 8 課・第 9 課・第 10 課・第 11 課・第 12 課・第 13 課・第 14 課・第 15 課・第 16 課・第 17 課・第 18 課・第 19 課。
目次リンク:第 1 課・第 2 課・第 3 課・第 4 課・第 5 課・第 6 課・第 7 課・第 8 課・第 9 課・第 10 課・第 11 課・第 12 課・第 13 課・第 14 課・第 15 課・第 16 課・第 17 課・第 18 課・第 19 課。
❀
第 7 課
§33 練習
exercitus : exercitus, exercitūs, exercituī, exercitum, exercitū; exercitūs, exercituum, exercitibus, exercitūs, exercitibus.
genū : genū, genūs, genū, genū, genū; genua, genuum, genibus, genua, genibus.
spēs : spēs, speī, speī, spem, spē; spēs, (spērum), (spēbus), spēs, (spēbus).
faciēs : faciēs, faciēī, faciēī, faciem, faciē; faciēs, (faciērum), (faciēbus), faciēs, (faciēbus).
和訳
1. 君は何をするつもりか、クィーントゥスよ。―― 私は友人のマールクスを訪ねるつもりだ。〔『練習問題集』VI 1. 1) とほぼ同文。〕
2. 君は昨日森で散歩していたか。―― 森でではなく、川岸で散歩していた。〔練 VI 1. 5) と同文。〕
3. ローマの詩人たちのどんな名前が君たちになじみであるか。
4. マールクスは帰ってきたか否か。〔練 XXVIII 3. 9) とほぼ同文。〕
5. アレクサンデルは誰の生徒 [弟子] だったか。〔「どの生徒」ならば疑問形容詞は主格の quī discipulus でないといけない。〕
6. 市民たちの不和は国にとって妨げになるのではないか。
7. いったい市民たちの不和は国の役に立つだろうか。
8. 盗賊は服の下に持っていたナイフで商人たちを殺した。〔練 XX 7. 4) とほぼ同文。後発のそちらでは商人が単数の mercātōrem になっているが、さすがに 1 人の盗賊がナイフだけで複数の商人を殺すのは無理があると思って変更したのだろうか。〕
9. ダイダロスとイーカロスは、祖国へ船出することを許されていなかったので、翼を自分たちのために用意した。〔練 XII 4. 6) とほぼ同文。〕
10. 協調あるところにはつねに勝利あり。
11. 知恵において優れている者は国にとって役に立つだろう。〔この sapientiā は関係 (限定) の奪格だが、これは第 14 課 §64 まで説明されないので不親切。〕
12. 私は君が命じることはなんであれ行うつもりだ。
13. 私は君がそれであるところのものだった;君は私がそれであるところのものになるだろう。〔きわめて直訳調に訳したが、要するに「私は君だった、君は私になるだろう」で、墓碑銘に使われる文 (私=墓に眠る死者、君=それを読んでいる生者)。同義の « Tū fuī, ego eris. » の形のほうが有名かもしれない。〕
14. 黙っている者は同意しているものと見られる。〔知覚動詞構文 (対格不定法) を受動態にした形 (主格不定法) として説明できる。能動で「(私たちは) 彼が同意しているのを見る」は Eum cōnsentīre vidēmus. と書けるが、これを受動にすると Is cōnsentīre vidētur. となる。この is に関係文を付け加え is を消去すると問題の文になる。〕
15. 悪人たちを大目に見る者たちによって善人たちが害される。〔関係代名詞をわざとらしく直訳すれば、「その人によって悪人たちが大目に見られるところのその人によって〜」ということ。noceō, parcō ともに与格目的語をとるため非人称受動。能動文に直せば Quī malīs parcit, (is) bonīs nocet.〕
16. レーヌス (川) の向こうに住んでいたゲルマーニー人は、そのときガッリアにいたローマ人によって大いに恐れられていた。
17. 順境 (=順調な状況) においてのみならず、逆境においても私たちは友人たちへの誠実さを守る。〔練 XI 7. 1) とほぼ同文。〕
18. 友人たちに希望をかける者は、ときどき無駄に期待する (=期待が無駄になる)。〔この完了は普遍的現在の意味の格言的完了 (§20 B. [3]) ととるのがよいように思われる。〕
19. 祭日の日々の列 (=一連の祭日) をローマ人たちはフェーリアエ (休日) と呼んでいた。
20. 少年たちは喜んで戦功について聞く。〔rēs gestae「戦功、偉業」は文字どおりには「行われたこと」の意。〕
21. 港では大波の騒ぎが大きく、高い大波が船乗りたちの接近を妨げている。〔後半の flūctūs altī は単数属格にも複数主格にもとれるが、属格ととって「高波の接近を」とすると残る nautārum が浮いてしまう。それにしても portus, tumultus, flūctus, adventus と第 4 ばかり使ってこういう自然な文を作れるのはすごい。〕
22. 勝者は国家のすべての制度を変えた。
23. マールクス・ミヌキウス・ルーフスはクィーントゥス・ファビウス・マクシムスに名声の点で及ばなかった。〔この glōriā も限定の奪格。〕
24. 第二次ポエニー戦争のときルーキウス・アエミリウス・パウッルスとガーイウス・テレンティウス・ウァッローが執政官だった。
1. Quid in tabulā vidētis?
2. Estne aegrōtus frāter tuus? ― Est.
3. Nōnne vōcem patris tuī audīvistī?
4. Procul nautae portum sinumque vidēbant [vīdērunt].〔未完了 vidēbant のほうが練 XI 4. 4) と同文。〕
5. Taurus duo cornua habet. / Taurō duo cornua sunt.〔後者のほうが日本語文に近いかもしれないが、所有者の与格 (第 13 課 §62) はまだ出てきていないのでいちおう別解とした。〕
cantō, cantāre, cantāvī, cantātum〔歌う〕
habeō, habēre, habuī, habitum〔持っている〕
lūdō, lūdere, lūsī, lūsum〔遊ぶ〕
faciō, facere, fēcī, factum〔する〕
vocō, vocāre, vocāvī, vocātum〔呼ぶ〕
legō, legere, lēgī, lēctum〔読む〕
stō, stāre, stetī, statum〔立っている〕
videō, vidēre, vīdī, vīsum〔見る〕
rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum〔笑う〕
agō, agere, ēgī, āctum〔追う〕
tangō, tangere, tetigī, tāctum〔触れる〕
iaciō, iacere, iēcī, iactum〔投げる〕
veniō, venīre, vēnī, ventum〔来る〕
sentiō, sentīre, sēnsī, sēnsum〔感ずる〕
clārus, clārē〔はっきりと〕。miser, miserē〔悲惨に〕。aeger, aegrē〔かろうじて〕。celer, celeriter〔速く〕。sapiēns, sapienter〔賢明に〕。brevis, breviter〔簡潔に〕。
1. カエサルは包囲をやめることを強いられた。〔obsidiōne は dēsistō の奪格目的語。〕
2. 多くの人が競技を見物するために劇場へ行った。〔『練習問題集』XXV 4. 1) と同文。〕
3. ギリシア人たちによって攻撃されたトロイアの記憶を詩人ホメーロスが私たちのために保存した。
4. たいていのことは言うに易しいが行うに難い。〔plēraque が中性複数の主語。練 XXV 4. 3) に類似。〕
5. キケローは執政官として選ばれた。
6. 嫉妬心が君たちによって克服されるまでは、君たちは幸福にはならないだろう。
7. その友人が大きな危険から救われたところの少年は神々に感謝していた。〔dīs は deus の複数与格の別形。cf. §11 [4]. この文は練 XII 4. 2) とほぼ同文だが、そちらでは主文がそのままで副文の動詞だけが受動態過去完了でなく完了 servātus est に変わっている。過去完了のほうが前後関係がはっきりしそうだが、どちらも同じ意味で言えるのだろうか。〕
8. マールクスよ、詩人ウェルギリウスの本を読め。
9. あまりに大きなものは避けるべし;小さなもので喜ぶことを忘れるべからず。
10. 兄に母の病気について (手紙を) 書くか、もしくは彼に知らせを送れ。
11. この手紙を君の父に持っていけ。
12. 正しいことを行い、本当のことを言え。〔rēctum は regō「支配する」の目的分詞・完了受動分詞とも同形でまぎらわしいが、ここは rēctus「正しい」の中性単数主格。〕
13. 黄金時代には地 (上) の住民たちは幸福に暮らしていた。〔練 XV 4. 3) とほぼ同文、XVI 8. 4) とも類似。〕
14. ソローンは商人として多くの国を知っていた。〔練 XVII 2. 4) とほぼ同文。mercātor は述語的同格。cognōverat は過去完了だが、完了 cognōvī が「知っている」という現在の意味 (§20 B. [2]) であるように、これは過去の意味。〕
15. すべての生徒たちが無傷で (=無事に) 川を泳ぎ渡った。
16. マールクスよ、君は上手に書く、だがルーキウスよ、君は下手に (書く)。〔練 XV 4. 5) とほぼ同文。〕
17. 奴隷たちは主人たちによってしばしば残酷に罰せられていた。〔練 XVIII 5. 9) と同文。〕
18. カエサルが最初にローマの軍勢をブリタンニアに渡らせた。
19. 使者たちは悲しみながら来たが、喜びながら去った。
1. Medicīna ā medicō parāta est.
2. Haec mīrābilia audītū sunt.
3. Et animum et corpus exercē!〔練 XIX 6. 1) に類似。〕
4. Puerī puellaeque pulchrē cantāvērunt.〔練 XV 4. 4) とほぼ同文。〕
5. Frāter epistulam mātris prīmus lēgit.〔練 17 課 2 節の例文とほぼ同文。〕
9. ダイダロスとイーカロスは、祖国へ船出することを許されていなかったので、翼を自分たちのために用意した。〔練 XII 4. 6) とほぼ同文。〕
10. 協調あるところにはつねに勝利あり。
11. 知恵において優れている者は国にとって役に立つだろう。〔この sapientiā は関係 (限定) の奪格だが、これは第 14 課 §64 まで説明されないので不親切。〕
12. 私は君が命じることはなんであれ行うつもりだ。
13. 私は君がそれであるところのものだった;君は私がそれであるところのものになるだろう。〔きわめて直訳調に訳したが、要するに「私は君だった、君は私になるだろう」で、墓碑銘に使われる文 (私=墓に眠る死者、君=それを読んでいる生者)。同義の « Tū fuī, ego eris. » の形のほうが有名かもしれない。〕
14. 黙っている者は同意しているものと見られる。〔知覚動詞構文 (対格不定法) を受動態にした形 (主格不定法) として説明できる。能動で「(私たちは) 彼が同意しているのを見る」は Eum cōnsentīre vidēmus. と書けるが、これを受動にすると Is cōnsentīre vidētur. となる。この is に関係文を付け加え is を消去すると問題の文になる。〕
15. 悪人たちを大目に見る者たちによって善人たちが害される。〔関係代名詞をわざとらしく直訳すれば、「その人によって悪人たちが大目に見られるところのその人によって〜」ということ。noceō, parcō ともに与格目的語をとるため非人称受動。能動文に直せば Quī malīs parcit, (is) bonīs nocet.〕
16. レーヌス (川) の向こうに住んでいたゲルマーニー人は、そのときガッリアにいたローマ人によって大いに恐れられていた。
17. 順境 (=順調な状況) においてのみならず、逆境においても私たちは友人たちへの誠実さを守る。〔練 XI 7. 1) とほぼ同文。〕
18. 友人たちに希望をかける者は、ときどき無駄に期待する (=期待が無駄になる)。〔この完了は普遍的現在の意味の格言的完了 (§20 B. [3]) ととるのがよいように思われる。〕
19. 祭日の日々の列 (=一連の祭日) をローマ人たちはフェーリアエ (休日) と呼んでいた。
20. 少年たちは喜んで戦功について聞く。〔rēs gestae「戦功、偉業」は文字どおりには「行われたこと」の意。〕
21. 港では大波の騒ぎが大きく、高い大波が船乗りたちの接近を妨げている。〔後半の flūctūs altī は単数属格にも複数主格にもとれるが、属格ととって「高波の接近を」とすると残る nautārum が浮いてしまう。それにしても portus, tumultus, flūctus, adventus と第 4 ばかり使ってこういう自然な文を作れるのはすごい。〕
22. 勝者は国家のすべての制度を変えた。
23. マールクス・ミヌキウス・ルーフスはクィーントゥス・ファビウス・マクシムスに名声の点で及ばなかった。〔この glōriā も限定の奪格。〕
24. 第二次ポエニー戦争のときルーキウス・アエミリウス・パウッルスとガーイウス・テレンティウス・ウァッローが執政官だった。
作文
1. Quid in tabulā vidētis?
2. Estne aegrōtus frāter tuus? ― Est.
3. Nōnne vōcem patris tuī audīvistī?
4. Procul nautae portum sinumque vidēbant [vīdērunt].〔未完了 vidēbant のほうが練 XI 4. 4) と同文。〕
5. Taurus duo cornua habet. / Taurō duo cornua sunt.〔後者のほうが日本語文に近いかもしれないが、所有者の与格 (第 13 課 §62) はまだ出てきていないのでいちおう別解とした。〕
第 8 課
§36 練習
cantō, cantāre, cantāvī, cantātum〔歌う〕
habeō, habēre, habuī, habitum〔持っている〕
lūdō, lūdere, lūsī, lūsum〔遊ぶ〕
faciō, facere, fēcī, factum〔する〕
vocō, vocāre, vocāvī, vocātum〔呼ぶ〕
legō, legere, lēgī, lēctum〔読む〕
stō, stāre, stetī, statum〔立っている〕
videō, vidēre, vīdī, vīsum〔見る〕
rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum〔笑う〕
agō, agere, ēgī, āctum〔追う〕
tangō, tangere, tetigī, tāctum〔触れる〕
iaciō, iacere, iēcī, iactum〔投げる〕
veniō, venīre, vēnī, ventum〔来る〕
sentiō, sentīre, sēnsī, sēnsum〔感ずる〕
§41 練習
clārus, clārē〔はっきりと〕。miser, miserē〔悲惨に〕。aeger, aegrē〔かろうじて〕。celer, celeriter〔速く〕。sapiēns, sapienter〔賢明に〕。brevis, breviter〔簡潔に〕。
和訳
1. カエサルは包囲をやめることを強いられた。〔obsidiōne は dēsistō の奪格目的語。〕
2. 多くの人が競技を見物するために劇場へ行った。〔『練習問題集』XXV 4. 1) と同文。〕
3. ギリシア人たちによって攻撃されたトロイアの記憶を詩人ホメーロスが私たちのために保存した。
4. たいていのことは言うに易しいが行うに難い。〔plēraque が中性複数の主語。練 XXV 4. 3) に類似。〕
5. キケローは執政官として選ばれた。
6. 嫉妬心が君たちによって克服されるまでは、君たちは幸福にはならないだろう。
7. その友人が大きな危険から救われたところの少年は神々に感謝していた。〔dīs は deus の複数与格の別形。cf. §11 [4]. この文は練 XII 4. 2) とほぼ同文だが、そちらでは主文がそのままで副文の動詞だけが受動態過去完了でなく完了 servātus est に変わっている。過去完了のほうが前後関係がはっきりしそうだが、どちらも同じ意味で言えるのだろうか。〕
8. マールクスよ、詩人ウェルギリウスの本を読め。
9. あまりに大きなものは避けるべし;小さなもので喜ぶことを忘れるべからず。
10. 兄に母の病気について (手紙を) 書くか、もしくは彼に知らせを送れ。
11. この手紙を君の父に持っていけ。
12. 正しいことを行い、本当のことを言え。〔rēctum は regō「支配する」の目的分詞・完了受動分詞とも同形でまぎらわしいが、ここは rēctus「正しい」の中性単数主格。〕
13. 黄金時代には地 (上) の住民たちは幸福に暮らしていた。〔練 XV 4. 3) とほぼ同文、XVI 8. 4) とも類似。〕
14. ソローンは商人として多くの国を知っていた。〔練 XVII 2. 4) とほぼ同文。mercātor は述語的同格。cognōverat は過去完了だが、完了 cognōvī が「知っている」という現在の意味 (§20 B. [2]) であるように、これは過去の意味。〕
15. すべての生徒たちが無傷で (=無事に) 川を泳ぎ渡った。
16. マールクスよ、君は上手に書く、だがルーキウスよ、君は下手に (書く)。〔練 XV 4. 5) とほぼ同文。〕
17. 奴隷たちは主人たちによってしばしば残酷に罰せられていた。〔練 XVIII 5. 9) と同文。〕
18. カエサルが最初にローマの軍勢をブリタンニアに渡らせた。
19. 使者たちは悲しみながら来たが、喜びながら去った。
作文
1. Medicīna ā medicō parāta est.
2. Haec mīrābilia audītū sunt.
3. Et animum et corpus exercē!〔練 XIX 6. 1) に類似。〕
4. Puerī puellaeque pulchrē cantāvērunt.〔練 XV 4. 4) とほぼ同文。〕
5. Frāter epistulam mātris prīmus lēgit.〔練 17 課 2 節の例文とほぼ同文。〕
Aucun commentaire:
Enregistrer un commentaire