樋口勝彦・藤井昇『詳解ラテン文法』(研究社、1963 年、新装版 2008 年) の第 29 課から第 32 課までの解答例。
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XXIX. ut と nē (ut nōn) の文句
§131.
1. 私たちは新しい軍勢が到着しないのではないかと恐れていた。
2. 将軍は兵士たちにひそかに逃げるよう説得した。
3. 誰かが心配しないように私はこれを書く。
4. 彼は私たちが泣きわめいたり絶望したりしないように私たちを励ました。
5. 水夫たちよ、どういうわけで私たちがこれほど迂回してイタリアへ旅することになっているのか。
6. なんらかの企みで君が欺かれることのないように、というまさにそのために私は君に忠告している。
7. キリスト教徒たちの愚かさは、私たちの神々に祈ることを欲しないというほど、それほどである。
8. 被告人が逃げ失せないようにということが最大の危険である。
9. そしてそのことを見ると、医者は、「彼の足が見えるようにせよ」と言った。
10. 君にお願いする、青年よ、私の商品を婦人たちに見せることが私に許されるように。
11. 婦人はプリーニウスに頼んでいた、(彼が) 自分から苦難を取り除くようにと、なぜなら船でなければ逃亡のなんらの希望もなかったから。
12. そのとき母は息子を大いに励ましはじめた、できるしかたで自分を守るようにと。
13. 神はミダースに命じた、(彼が) とある泉で身を洗うようにと。
14. 妻よ、君が元気であり、私たちの子どもたちを愛するように心がけてくれ。お元気で。ローマより送る、6 月 13 日 (lit. 6 月のイードゥースに)。〔Roma は奪格。〕
15. 彼らは友人たちが自分たちを発見しないことがないようにと [発見しないのではないかと] 恐れていた。
16. (彼女たちは) 見物をしに来る、(また) 彼女たち自身が見物されるために来る。〔樋口訳「彼女たちは見物しにくるのだが、自身人に見られるためにもきているのだ」(平凡社ライブラリー版 13 頁);沓掛訳「女たちは芝居見物にやってくるのだが、自分たちの姿を人に見られるためにもやってくるのだ」(岩波文庫版 13 頁)。〕
XXX. 比較;属格の用法
§142.
(1) 曲用練習
1. patiens : patientior, patientissimus.
2. similis : similior, simillimus.
3. brevis : brevior, brevissimus.
4. idōneus : magis idōneus, maximē idōneus.
5. amīcus : amīcior, amīcissimus.
6. bonus : melior, optimus.
7. grātus : grātior, grātissimus.
8. bene : melius, optimē.
9. pauper : pauperior, pauperrimus.
10. miserē : miserius, miserrimē.
(2) 和訳
1. 古いことわざにおけるように、始めることは成就することよりはるかに易しい。
2. たとえ君が年上であって、私のほうがより強い。
3. おお、解かれた心配 (=心配からの解放) より幸福なこととは何か。〔solutis は solvo の完了分詞で文末の curis にかかる。〕
4. この女性たちについて何かを言ってくれ;何物もそれより楽しいことはない。
5. 君が勤勉に働くほど、それだけ君は裕福になる。
6. 遠くないところに医者が住んでいる、それより優れたものはローマにおいてさえほとんど見いだされえないほどの。〔quo は medicus を先行詞とし、比較の奪格「その人より」。Romae は地格「ローマで」。〕
7. 少年は美しい花々をまったく評価していなかった。
8. 私と息子たちはあまり長くないあいだ船のなかで散歩するつもりだ。
9. そしてその叫びを聞くと (lit. 叫びが聞かれると)、母は、眠りから振り落とされ、明かりを灯して娘の寝台へできるだけ早く駆けつけた。〔quo = et eo で、eo clamore audito は独立奪格。excussa は女性単数主格で母に一致。〕
10. 机を主人は彼が所有していたあらゆる最良のもので熱心に積み上げていた。
11. カエサルはイタリアからできるだけ早く出発して、アレシアへガリア人たちの考えより早く到達した。
12. 皇帝ネローについて君はかなり多くのことを読んだか。—— 本当に多くのことを (読んだ);彼はカリグラと等しく馬に熱心だった。
13. もうおしまい! (私の) 連れあいはどこ? 私の哀れなこと! なにかしら悪いことが彼に起きたのだわ。
14. 私たちの伯父の畑は君の (畑) より 5 倍だけ大きい。
15. 都でははるかによい生きかたができる (lit. よく生きられている)。だから君は私とともに家を出発することを欲するのではないのか。
16. 銀は金よりも安い、金は美徳よりも (安い)。
17. 私は人間である:人間に関する何事も私に無縁ではないと私は考える。
18. 彼らのうちそれぞれ最初に来た者は来るやいなや城壁の下に整列していき、そして戦いながら自分たち (の仲間) の数を増していった。〔近山訳「敵はそこへ着くとまず防壁の下に止まり、戦いながら数を増して行った」、国原訳「彼らは到着するはしから、めいめい思い思いに城壁の下に持場を取り、戦友の数を刻々にふやした」、石垣訳「最初に到着した者が防壁の下に陣取ってからはどんどん戦う人数が増えていって大軍になった」。この問題に付されている注が正しいとすれば、正確に訳出しているのは 3 つのうち国原訳のみ。近山訳は切りつめすぎていて理解しているのか怪しく、少なくとも primus を到着順ではなく「まず」という到着後の行動に取り違えている (そうではなく主格で quisque に同格なので、venerat を補足する副詞的な述語的同格なのは明らか)。石垣訳は ut も quisque もごまかして訳せておらず、最初の者が 1 人だけに見える。〕
XXXI. 関係詞と接続法
§145.
1. 私は食料を買うような金をまったくもっていない。
2. 手荷物を兵士たちは残した [放棄した]、それによってより速く急行するために。
3. カエサルは不正に容赦するような者ではなかった。
4. カエサルは水を求めるための者を送った。
5. 私たちが夕食をとるような場所がない。
6. 敵たちは将軍の到着を知らなかったので川を渡った。
7. カエサルはそのことを疑っていたにもかかわらず人質たちを放った。
8. かつてはまったく読むことを学んでいないような多くの市民たちがいた。
9. 執政官は、じっさい前もって警告されていたために、このことを待っていた。
10. 誰もあのことを信じるほど愚かではなかった。
11. (彼は) 大きな勇気のために褒美を受けとるに値する。
12. これらの本は少女たちが読むのに適している。
13. この国ではその人たちにとって新しい法律が以前の (法律) に比べてより公正であるとみなされるような人たちは少ない。
14. 誰がそれほど愚かであるか、勇敢に戦うことがローマ人の兵士たちの (本分) であることを知らないほどに。
15. 私は君たちが聞きたがっているような多くのことをまったく知らないことを [知らないのではないかと] 恐れている。〔haud が否定語なので、§128 の nē nōn の場合と同じ型。〕
16. 君と同じように感じる若干の人々がいつもいた。
17. 手紙を手渡せ、奴隷よ、そして台所へ行け、そこでおまえの食べるようなものをおまえは見つけるだろう。
18. キケローはあまりに多くの賛辞で自分のなしたことを持ち上げた、と思うような者がいるのではないか。
19. 君は何かを私たちに語りたいのではないかね、それによってより楽しい時間が過ぎるような。
20. 私がその助言を与えたということでその私に (彼は) 感謝した。〔dedissem の接続法によって、助言が感謝の理由であることは「私」の考えではなくその当人の主張であることがわかる。〕
21. 王はその者たちの助言によってすべてのことを行うために年長者のうちから百人を選び、その者たちを老年のゆえに元老 (院議員) と名づけた。
XXXII. 主文に用いられる接続法
§147.
1. 君は私たちを憐れまないように。
2. ここへ近寄れ、子どもたちよ;帆の陰に座っていよう、私が君たちに獅子についての話を語っているあいだ。
3. 君が書いたものを聞こう。
4. いつまでも生きませ、おお王よ。
5. なにか催し物を見物したいのですが。役者たちをさえ舞台の上でかつて見たことがないのです。
6. 哀れな私はどこへ向かったらいいのだ。〔懐疑の接続法。se vertere「赴く、向かう」、比喩的に「どちらの側に加担する」の意味の場合もある。〕
7. よければ説明しよう、どんなふうにして独裁官カエサルがアレクサンドレイアで敵たちにより包囲されていたとき水の不足を軽減したか。
8. 私たちは死のう、戦闘のただなかに突っこもう。敗者たちにとって唯一の救いは、なんらの救いをも望まないことだ。〔media の訳しかたについては 36 頁注 1 (中山『標準ラテン文法』§46 の言葉では「部分を表す述語的同格」)。victis は vinco の完了分詞「破られた者」の複数与格。〕
9. すべてに愛は打ち勝つ、私たちもまた愛に応じよう。
10. かつて愛したことのない者に明日愛させよう。愛したことのある者みなにも明日愛させよう。
11. 名もなき川と森とを私は愛そう。
12. たとえ私にとって貧乏が、君といっしょなら楽しかろうとも、ネアエラよ、君なしには王たちの贈り物をもなんら私は欲しない。
13. 君を眺めんことを、私に最期の時が訪れるときに。そして死にながら衰える手で (君を) 抱きしめんことを。〔suprema は行末の hora にかかる。moriens は主語 (私) に同格の接合分詞。deficiente manu は奪格。なお 60 行頭は Loeb 版では et でなく te teneam となっている。〕
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