dimanche 11 octobre 2020

田中『ラテン語初歩』練習問題解答 (10)

田中利光『ラテン語初歩』(岩波書店、初版 1990 年、改訂版 2002 年) 第 37 課から第 40 課までの解答例 (旧版・新版両対応)。改訂版と初版を比べると問題数の多さに比例して、各課の練習問題の前にある新語彙もほとんどの場合初版のほうが倍以上長い。並行してやっていると、初版ではとっくに既習の単語が改訂版では何課もあとになっていまさら新出なのかと驚くことしばしばである。もっとも新語彙が多すぎるのも初心者には不親切で負担が多いので、この点は一長一短であろう。できれば語彙は減らしつつ問題数は維持してもらいたかった。



XXXVII 不定詞 (2) ——未来能動および受動相


§348 (旧 §325). [練習問題 71]


1. 私たちは自分たちが罪から解放されるであろうことを希望する。

2. (彼らは) 永遠の平和が自分たちに与えられるであろうことを希望する。

3. 私は私たちが永遠の平和を得るであろうことを信じない。

4. 誰が自分が長く生きるであろうことを希望しないか。

5. 明日自分が死ぬであろうとはたいていの人は思っていない。

旧 1. =新 1.

旧 2. =新 2.

旧 3. =新 3.

旧 4. =新 4.

旧 5. =新 5.

旧 6. 地球はまもなく破壊されるであろうと彼らは予言する。

旧 7. 自然もまた変えられる (=変わる) であろうと私たちは思いはじめた。〔rērī は reor の不定法現在。mūtō の受動態はいわゆる中動態的受動態として「変わる」という自動詞的な意味をもつが、前問からのつながりを考えれば「(人間によって) 変えられる」という真の受動態が意図されている可能性もある。〕

旧 8. すべてのものは空虚 (である)。〔新版では §350 [引用句 24]。どうせ引用句として取りあげるならもっと難しい文章を詳しく説明してほしいものなのに、聖書関係の文句に執着しすぎである。〕

旧 9. すべての諸国民がローマ字を使うであろうと私は思う。〔ūsūrās は ūtor の未来分詞・女性複数対格。〕

旧 10. 君たちがラテン語でよく書き (よく) 話すであろうことを私は希望する。

旧 11. 君は君がこれを私にくれるであろうと約束した。

§349 (旧 §326). [練習問題 72]


1. Crēdidit omnīs salvātum īrī.

2. Putābam mē laudātum īrī, sed culpāta sum.

3. Prōmīsit sē ventūra (esse), sed nōn vēnit.〔本当なら cum や分詞構文でも使いたいところだが、まだ出てこないので。〕

4. Quis sē nōn spērat beātum futūrum (esse)?

5. Vōs diū vīctūrās (esse) omnēs putāmus [rēmur].

旧 1. =新 3.

旧 2. =新 2.

旧 3. =新 5.

旧 4. =新 4.

旧 5. =新 1.


XXXVIII 関係代名詞


§358 (旧 §334). [練習問題 73]


1. 悪人を容赦する者は、善人を害する。

2. 運命は軽薄である:(それは) 与えたものをすぐに返せと言う。〔id は quod の先行詞で、主文の対格目的語であって主語ではない。〕

3. 金銀で溢れている人は幸福だと多くの人が考えるが、それらによって多くの人がすでに滅びた。〔コンマで挟まれた関係文 quibus ... putant はいったん脇に置くと、主文はあくまで aurō et argentō「金と銀で=原因の奪格」と multī jam periērunt だけの簡単な文である。関係文のなかの主語は multī, 動詞は putant, そして考える内容が対格不定法の abundantem = beātum ということ。関係文をわざとらしく訳せば「それらで溢れている人は幸福であると多くの人が考えるところの金と銀」。〕

4. 神々が愛する者は若くして死ぬ。〔注にあるとおり adulēscens は「若くして」という述語的同格で、省略されている先行詞 is に一致している。もしそれがなければ「神々が愛する若者は死ぬ」とも読める。〕

5. 海を越えて駆ける者たちは、気候を変えるが魂は変えない。

旧 1. =新 1.

旧 2. =新 2.

旧 3. 運命それ自身が盲目であるばかりでなく、それがいつも助けるところの者たちを盲目にしもする。

旧 4. その (持っている) 富を幸福な人生に返さない貪欲な者を私たちは決してほめない。

旧 5. =新 3.

旧 6. =新 4.

旧 7. カエサルは陣営に適した場所を選択するための偵察者たちを先遣する。

旧 8. 自然法とはすべての人間のもとで同じ力を持つところのものである。〔原文そのままなのにめずらしく出典が記載されていないが、これはイングランドの法律家エドワード・クック (コークとも) の著作にある言葉らしい。〕

旧 9. =新 5.

旧 10. 勝利において自分に勝つ者は二度勝つ。〔「勝って兜の緒を締めよ」に似ている。〕

§359 (旧 §335). [練習問題 74]


1. Quī parciet malīs, nocēbit bonīs.

2. Fortūna cito reposcet (id) quod dat.

3. Aurō, quō abundantem beātum esse putās, multī jam periērunt.

4. Quem dī dīligunt adulēscens moriētur.

5.〔和訳の 5. の内容を詳しく敷衍して説明したもので、同文でよい。旧版ではかわりに注に「例えば,外遊したからといって賢くなるわけではない,というようなことを示唆する文」と説明されている。〕

旧 1. (Is) aeger erat, cui pecūniam dedī.

旧 2. Puella mē nōn amābat, quam (puellam) (ego) amābam.〔対比なので ego を入れてもよさそう。〕

旧 3. =新 1.

旧 4. Rosae ā quibus puellae mensam ōrnābant.

旧 5. Reddere dēbēmus quod accēpimus.


XXXIX 非人称動詞


§365 (旧 §341). [練習問題 75]


1. 法律は短くなければならない、それによって素人にもより容易に理解されるために。

2. 君と私にとってもっとも重要なのは君が元気でいることだ。

3. 罪を犯すことは誰にも許されていない。

4. 各人が自分の運命に不満をもっている。

5. 裕福な人たちはつねに妬まれるだろう。

旧 1. =新 1.

旧 2. すべての人たちにとって正しく行為することが重要である。

旧 3. =新 2.

旧 4. =新 3.

旧 5. 私たちが中立でいることはもう許されないだろう。

旧 6. 君が身体と同じく精神についても健康であることが必要である。〔animō, corpore は限定の奪格「〜の点で」。〕

旧 7. 長くかつ執拗に戦われた (=戦いが行われた)。

旧 8. =新 4.

旧 9. 雷が鳴るよりまえに稲光がする。

旧 10. =新 5.

旧 11. 犯罪が罰されないままにとどまらないことが国家にとって重要である。

§366 (旧 §342). [練習問題 76]


1. Nōs fortīs esse oportet.

2. Nostrā interest nōs bene vīvere.

3. Omnia facere mihi licet.

4. Mē paenitet meae stultitiae.

5. Semper invīsum est dīvitibus.〔「金持ち」dīvitibus は主語ではなく、非人称受動なので完了分詞は中性単数。「妬んだ」だが「いつも」があるので未完了 invidēbātur でもよいかも (人は妬んだものだった、という反復・習慣になる)。〕

旧 1. =新 1.

旧 2. =新 2.

旧 3. =新 3.

旧 4. Crās pluet.

旧 5. =新 5.


XL 分詞 (1) ——現在能動相


§375 (§351). [練習問題 77]


1. 流れる水のように年は過ぎゆく。

2. 老年はせわしく、いつも何かを行い、企てているものである。

3. 嘘をつく者とへつらう者の言葉は楽しいが有害 (である)。

4. 恋する者たちは狂っている。

5. 眠らずにいる者を法は助け、眠っている者を (助け) ない。〔「権利の上に眠る者を法は保護せず」という法諺があるが、これと同じ趣旨だろう。〕

旧 1. 流れる水のごとくに一切は過ぎゆく。〔mōre と modō を別々の日本語にするのは難しいので、やむを得ずひとつにまとめた。〕

旧 2. 自分に寛大な者たちはかならずしも他人に (寛大) ではない。

旧 3. ユダヤ人は豚を食べない民族である。

旧 4. 時間を賢く使う者は賢い。

旧 5. =新 2.

旧 6. 人間はいろいろに定義される。ホモ・サピエンス (賢い人)、ホモ・ロクエンス (話す人)、ホモ・ルーデンス (遊ぶ人) のように。

旧 7. =新 3.

旧 8. =新 4.

旧 9. 証明するのは主張する者の (義務) である。〔立証責任のようなことで、これも裁判に関わる法諺か。〕

旧 10. 誤っている人たちの多いことは誤りに庇護を生みださない。

旧 11. =新 5.

§376 (旧 §352). [練習問題 78]


1. Patientibus subvēnit.

2. Juvenis est semper aliquid mōliens.

3. Adūlantium verbum (est) nocens.

4. Amans āmens (est).

5. Jūs dormientī nōn subvenit.

旧 1. =新 1.

旧 2. Adūlantis est jūcunda dīcere sed nōn vēra.

旧 3. Līberīs in viā lūdentibus saepe placentam dabat [dedit].

旧 4. Sunt hominēs nōn edentēs animālia.

旧 5. Canis lātrans nōn mordet.

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